カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Bommarillu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2006/09/20 22:00   >>

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 もう1ヶ月以上も前に観た作品であるが、ヒットしていて今も上映されているので、書いておく。
 街角で初めてこの映画のポスターを見たとき、【Boys】(03)のペアだったシッダールトとジェネリアが写っていたので、二番煎じかと思い、さして期待もせずに観に行った。だが、予想は裏切られ、お気に入りの1本となった。
 「Bommarillu」は「人形の家」という意味。

【Bommarillu】 (2006 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Bhaskar
出演 : Siddarth, Genelia, Prakash Raj, Kota Srinivasa Rao, Jayasudha, Sunil, Brahmanandam, Dharmavarapu Subramanyam, Ravi Varma, Satya Krishnan, Surekha Vani, Tanikella Bharani, Chalapathi Rao, Neha
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : Vijay C.Chakravarthy
編集 : Marthand K.Venkatesh
制作 : Dil Raju

《あらすじ》
 シッドゥ(Siddarth)は裕福な家庭の次男坊。大学を出たばかりの彼には2つの夢があった。1つは、自分で選んだ仕事でキャリアを積むこと。2つ目は、理想の女性と恋をし、結婚すること。
 だが、シッドゥの父・アラウィンド(Prakash Raj)はそれを許さない。建設会社を営む彼は、もちろんシッドゥを自分の会社で働かせようとした。アラウィンドは、子供には何でも与えるが、何一つ自由にはさせないというタイプだった。シッドゥは友人たちと酒を飲んでは、父について悪態をつく日々だった。
 そんな父だったから、シッドゥの縁談も独断専横。父が持ってきたお嬢様(Neha)との婚約話に、シッドゥはつい「イエス」と言ってしまう。
 だが運命は皮肉なもの。婚約が決まった直後に、シッドゥはハシニ(Genelia)と出会い、一目惚れする。
 ハシニはシッドゥの大学の後輩だった。お寺の管理人をしている父(Kota Srinivasa Rao)との二人暮しで、家は貧しかった。彼女は屈託のない快活な性格だったが、どこか調子外れで天然ボケ系の女性だった。シッドゥはそんな彼女にますます惹かれ、何度かデートしているうちに、ハシニもシッドゥを愛するようになる。
 だが、二人の関係は父・アラウィンドの知るところとなる。彼は激怒し、あの女はシッドゥに相応しくないと決め付ける。だがシッドゥは父に懇願し、ハシニを家に呼び、1週間家族と共に生活させてみて、彼女が本当に自分に相応しくないかどうか判断してくれと頼む。アラウィンドはこれを受け入れる。
 ハシニとアラウィンド家の奇妙な共同生活が始まった。初めこそ、ハシニのすっとんきょうな言動は家族を当惑させたが、やがて彼女の率直で裏表のない性格に家族は一目置くようになる。だが、シッドゥは焦り、何度も彼女を叱りつける。
 そうして予定の7日が終わったが、意外なことに、ハシニはもはやシッドゥと結婚する気はないと言って、家を去る。シッドゥは家の外と中とでは全くの別人であり、シッドゥが家の外で愛したハシニは家の中では愛されないと悟ったからである。
 しかし、シッドゥの気持ちは収まるはずがない。彼は父に、全ては父のせいで、自分は人生で多くのものを失い、今まさにハシニをも失いかけている、と訴えかける。
 息子の真摯な訴えを聞いたアラウィンドは自分の非を悟り、ハシニを説得するために、家族総出で彼女の家へ赴く。だが説得する相手はハシニだけではない。彼女の父との問題もあった。シッドゥは以前酒に酔って、ハシニの父にそうとは知らずに無礼を働いたことがあった。シッドゥの前にはこの父親も立ちはだかっていたのである、、、。

   *    *    *    *

 と、こんなふうに書いていると、この映画のストーリーが平凡なものであることに気付いた。登場人物の設定も特に珍しいものではないし、主題もずばり「家族の絆」、「父と子の関係のあるべき姿」。これはもう、これでもかと言うぐらい繰り返しインド映画に現れたものだ。

 じゃあ、この映画は陳腐な凡作かというと、全然そうは思えない。
 この映画を観た人は口を揃えて、「新しい」、「フレッシュだ」、「異色作」、「なんか違う」と言う。私もそう思った。不思議な作品だ。
 第一、私はこの映画を観て、爽やかな気分になった。インド映画には今まで何度も泣き、笑い、感動させられ、唸らされたものだが、「爽やか気分」というのは、、、珍しい!

 結局、タッチが良かったのだと思う。
 この映画の生命線となっているのは、ほとんど音楽的とも言えるテンポ、リズム感だと思うが、あれは、カット割りやセリフの配置、間、編集などに、かなり苦労したに違いない。だが、そうやって作り出された軽快なズムがあってこそ、観客の笑いの絶えない、明るく爽やかなラブストーリが実現できたのだと思う。

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◆ パフォーマンス面
 そもそも、登場人物の性格付けがうまい。役者との相性も良かったと思う。
 父親役のプラカシュ・ラーイは、まさにこうあるべし、という演技をしていた。この人は押しの強い強面俳優であるが、どこか愛嬌があって、アミタブ・バッチャンやアムリーシュ・プリーほど重くない。今回も、厳しくはあるが、実は物分りの良い父親を好演していた。

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 シッダールトとジェネリアは、【Boys】ではちょっと青くさい感じがしたが、この映画では良かった。シッダールトは自然進化を遂げたのか、それとも【Rang De Basanti】で脱皮したのか、主役の張れる頼もしい役者になったと思う。

 ジェネリア扮するハシニはこの映画最大の見どころの一つ。【Bommarillu】が漂わせている新鮮な雰囲気はほとんどハシニから来ていたと思う。(どんなふうに新鮮かは、実際に映画を観ていただく他はないのだが。)

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◆ テクニカル面
 音楽はDevi Sri Prasadという人の担当だが、めちゃめちゃ良い。
 音楽シーンもコミカルだったり、リリカルだったり、センティメンタルだったりするが、押しなべてフレッシュ。

 制作はDil Rajuという人。彼は【Dil】(03)、【Arya】(04)、【Bhadra】(05)と、手がけた作品がすべて大ヒットするという、テルグー映画界注目の敏腕プロデューサーだそうだ。

 監督のBhaskarは、本作では原作、脚本、演出も手がけている。実はこの【Bommarillu】がデビュー作。この作品の完成度の高さからすると、これは驚きだ。
 影響を受けた作品は、イラン映画の【Children Of Heaven】(Majid Majidi監督、1997年、邦題【運動靴と赤い金魚】)だそうだが、なるほど、分かるような気がする。
 この頃、【Vettaiyaadu Vilaiyaadu】のGautham Menon監督にしても、【Cyanide】のA.M.R.Ramesh監督にしても、デビュー1、2作目から新感覚の映画でヒットを飛ばしている監督が目に付く。ボリウッドでも同じ傾向があるようだ。インド映画ファンにとってわくわくする時代がやって来たのかもしれない。

◆ 総評
 【Bommarillu】は、映画が総合芸術である以上、物語やテーマよりも、描き方が勝負を決める、ということを証明したような作品だ。この映画を観ると、「インドの家族はどうあるべきか」ではなく、「インドの家族映画はどうあるべきか」ということを知るだろう。
 題名には「Love Makes Life Beautiful」という副題が付いているが、こういう直截なメッセージも違和感なく受け入れられるほど、爽やかな作品だった。

・満足度 : 4.0 / 5
¶参考
http://domidomipiyoman.at.webry.info/200812/article_13.html
 

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tamil版のsantosh sabmatrum(綴りは自信ありません)はDVDで観ていましたが、originalのtelugu版はようやくyoutubeで日本でも観れました。しかも英語字幕付だったので Hasiniの相手先の家でのとんちんかんな台詞がようやく理解できました。食事前のお祈りの意味など。geneliaは表情がとても魅力的な女優さんだと思いますが、telugu版とtanil版の表情がシーンで全く同じといっていいほどでしたが、フィルムを部分的に共用する事があるのでしょうか。着ている服は違っていたと思います。ちなみにtamil版ではほとんど毎回違うロングスカートに布のショルダーバッグでしたがこれが非常に似合っていました。彼女にはモデルとしての才能もあると思います。



tuji
2013/07/31 02:56
>telugu版とtanil版の表情がシーンで全く同じといっていいほどでしたが、フィルムを部分的に共用する事があるのでしょうか。

2言語同時製作版なら、フィルムを共有することは普通ですが、「Bommarillu」と「Santhosh Subramaniyam」の場合はそれはないと思います。しかし、意図的に同じ表情でやったんでしょうね。

>ちなみにtamil版ではほとんど毎回違うロングスカートに布のショルダーバッグでしたがこれが非常に似合っていました。

おお、細かいところまでご覧ですね。まったく気付きませんでした。

それにしても、「Bommarillu」は好きな作品なんですが、どうしてこの映画が面白いのか、いまだにうまく説明できません。
 
カーヴェリ
2013/08/01 02:36

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