カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Care of Footpath】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2006/12/25 23:31   >>

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 何かと平均的なところからはみ出すことの少ない日本と比べて、インドでは桁違いなことがしばしば見受けられ、驚かされることがある。
 この映画も、作品そのものは地味なものだが、監督をしたMaster Kishanがなんと10歳の少年! 「最年少映画監督」ということでギネスブックにも登録されたのだそうだ。ポスターにも「WORLD RECORD HOLDER」と赤刷りしてあり、その気合いに押されて観に行った。(写真上が監督兼主役のMaster Kishan。)

【Care of Footpath】 (2006 : Kannada)
物語 : Master Kishan
脚本 : Vagdevi, Master Kishan
台詞 : Mysore Harish
監督 : Master Kishan
出演 : Master Kishan, B.Jayashree, Tara, Sourab Shukla, Deepthi, Jackie Shroff, Sudeep
音楽 : Shri Shyla
撮影 : Mathew Rajan
制作 : Srikanth

《あらすじ》
 スラム少年(Master Kishan)は幼児期に道端で捨てられ、スラムに住む貧しいおばあさん(B.Jayashree)に拾われ、育てられる。
 スラム少年は、生活のためにゴミを拾って集めるばた屋をしていたが、成長するにつれ、学校で勉強したいという欲望が強くなる。
 しかし、周りの人はだれも取り合ってくれない。そこでスラム少年は近所に住む小学生に文字を習い、読み書きができるようになると学校のノートを借り、独学を始める。
 勉学への思いがますます募るスラム少年。そこで、学校に入れるよう町の政治屋(Sourab Shukla)にも相談するが、彼は少年を適当にあしらい、からかうだけだった。

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 しかし、スラム少年はめげない。近所の家に掃除に行き、代金代わりにそこの小学生の学校制服をもらう。おばあさんもなけなしの貯金を崩し、少年のために「靴」を買ってあげる。それで、やっとのことで学校に潜入することに成功するが、正規の学生ではないということで追い出されてしまう。
 さすがに落ち込むスラム少年であったが、その学校のサラスヴァティ先生(Tara)は少年の能力を見抜き、励ます。
 ある日、サラスヴァティ先生は学校で病気のために倒れてしまう。それを見て少年は速やかに医者を呼びに行き、おかげで先生は一命を取りとめる。これが評価されて、少年は教室で授業を聞くことを許される。

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 驚くべき速さで知識を吸収するスラム少年。しかし、お金の問題や、病気のおばあさんのことなどで、学校を休みがちになる。
 そこで、サラスヴァティ先生やソーシャルワーカーのディープティはスラム少年をなんとか正規の生徒にしようと、試験を受けさせようとする。
 9歳のスラム少年は、制度上は第5学年の試験しか受けられないが、しかし少年は第7学年の試験を受けたがった。先生たちもそれを支持し、制度を変えるよう教育大臣に働きかける。そして、スラム社会やマスコミ、世論も味方にし、とうとうカルナータカ州首相(Jackie Shroff)をも動かして、試験が実施されることになる。
 猛勉強を始めたスラム少年。その途中で愛するおばあさんも亡くなるが、面接試験にも筆記試験にも見事合格し、自分の志が正しかったことを証明したのであった。

   *    *    *    *

 映画はきわめて正統的な手法でまとめられ、上手くできていたと思う。単純なストーリーだが筋運びがよく、退屈しなかった。貧困をテーマにした社会派映画にありがちな陰惨なムードもなく、もう徹底して前向き、明るさと希望に満ち満ちた作品で、好感が持てた。

 そこで気になるのは、はて、この10歳のMaster Kishan少年がどこまで作品制作に関与したのか、ということである。
 ギネスブックに最年少監督として載るぐらいだから、正真正銘、監督をやったのだろう。映画の冒頭もわざわざKishan少年がカメラの横に立って「アクション!」と号令をかけるシーンから始めていて、「この子が撮ったんですよ」ということを強調しているようだった。
 しかし、やっぱりこの少年がした「監督」というのと、例えばマニラトナムや黒澤明がした「監督」というのとでは、ずいぶん違っていることであろう。Kishan少年が一体どのようにスタッフをまとめ、俳優を指導したのか、興味は尽きないところである。
 彼が実際に神童なのか、それとも周りの大人たちのやらせなのか、いずれにせよ、「まぁ、子供が作ったんだし」とは言わせないような質の高さだったと思う。

 もう一つ穿った見方として、この映画のそこかしこに政治的な意図が感じられたことである。ネルーの写真などは何度も出てきたし、ジャッキー・シュロフ演ずるカルナータカ州首相なども実に好人物に描かれていた。
 10歳の少年が監督をやる「不自然さ」や、低予算のはずなのにJackie ShroffやSourab Shukla、TaraやSudeepなどのヒンディー映画、カンナダ映画の大物が出演したり、俳優兼コングレスの政治家で大臣までしているM.H.Ambareshも出演したりしていることを考えると、もしやこれは政策的なプロパガンダ映画?「カルナータカ州政府は貧困政策、児童教育政策において、かくも人道的ですよ」という宣伝なのではないかと、ふとそんなことも頭をよぎった。
 とは言うものの、それはそれとして、クズ拾いをしていた少年が委員会の人たちの前で小気味よく質問に答え、見事インタビュー試験に合格するシーンなどは、ヒンディー映画【Black】の面接シーンなども連想させ、胸を打つものがあった。

 ただ、気に入らない点として、Kishan演ずるスラム君は天才的な少年で、それで先生も政府も動き、救いの手が差し伸べられたわけであるが、実際には貧困層の子供たちが皆こんな天才であるわけではない。そんな平凡な子供たちはどのようにして支援されるのだろうか、この映画からは見えて来なかったような気がする。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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【Billion Dollar Baby】 (Kannada)
 先日、インドのマーラーヴァト・プールナという13歳の少女がエヴェレスト登頂に成功し、女性登頂最年少記録を更新したということで話題となったが(こちら)、インドではこうした大人顔負けの能力、精神力をもった子供が時おり現れる。  インド映画界ではどうかというと、よく知らないのだが、少なくともカンナダ映画界ではキシャン少年が10歳で【Care of Footpath】(06)を監督し、当時の最年少映画監督としてギネスブックに登録された例がある。  そして今度はインドの最年少女性映画監督である... ...続きを見る
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