カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Duniya】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2007/03/30 22:48   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 11 / コメント 0

画像

【Duniya】 (2007 : Kannada)
脚本・監督 : Suri
出演 : Vijay, Rashmi, Rangayana Raghu, Kishore, その他
音楽 : V.Manohar, Sadhu Kokila
撮影 : Satya Hegde
制作 : T.P.Siddaraju, A.T.Lokesh

《あらすじ》
 シヴ(Vijay)は村の石切り場で働く青年。教養はなく、数も12までしか数えられないが、純朴な心と頑強な体が取り柄だ。
 母と二人きりで赤貧洗うが如しの生活をしていたが、その母も病気で死んでしまう。彼は、せめて母のために墓を建ててやりたいと思い、お金を稼ぐために街へ出ることにした。
 その途上でシヴは、レイプ目的で誘拐された女子大生・プールニー(Rashmi)を救い出す。
 二人はヒッチハイクをして街まで向かうが、たまたま拾った車が暴力団のチンピラが乗っている車で、途中で警察の手入れを受け、二人は警察署まで連行されることになる。
 無実の二人は当然解放されるが、男と二人で事件に巻き込まれたことを嫌悪した女子寮の長は、プールニーを寮から追い出してしまう。もともと孤児で身寄りのない彼女は行き場を失くしてしまう。
 シヴは街で酔いどれのサティヤ(Rangayana Raghu)という男と出会い、職を斡旋してもらう。それは暴力団の仕事の片棒を担ぐものだったが、世間知らずで他に選択肢もないシヴは、生活のために引き受ける。
 また、シヴはサティヤから廃車になったバスを紹介してもらい、彼はそこを住居として、行き場のないプールニーと二人で生活することにした。
 シヴは持ち前の生真面目さと体の強さから首尾よくヤクザ業をこなし、他のチンピラ仲間から一目置かれるようになる。プールニーはそんなシヴに一抹の不安を感じつつも、彼を愛するようになる。
 ある時、プールニーのことがきっかけで、シヴは同じチンピラ仲間と派手な喧嘩をやらかす。以来、シヴは他のチンピラから恨まれることになる。また、失望したプールニーはうち(バス)を飛び出し、女友達の部屋に転がり込む。
 そしてある日、暴力団の有力なチンピラの一人が殺された。また、ボスそのものも殺害されるという事件が起きた。それはどちらもシヴは関与していなかったが、恨まれていた彼は下手人にされてしまう。また、警察も殺人容疑としてシヴをマークする。しかしサティヤの垂れ込み情報により、この容疑は一応晴れることになる。
 警察は、暴力団殲滅のため、暴力団同士の抗争を黙認していた。ある時、そんな抗争が起こり、シヴも巻き込まれたいたが、そこへ警察がやって来る。パニックに陥った彼は警察官の銃を奪って逃走してしまう。
 警察はプールニーを連行し、シヴ逮捕のためのおとりに使おうとする。
 プールニーはそれを承諾し、シヴの隠れ家で彼が現れるのを待つのであったが、、、。

   *    *    *    *

 アクション、暴力、流血に満ちた作品。
 相変わらず、南インドではアンダーワールドの映画がトレンドで、アクション・暴力シーンもエスカレートする一方。それが時には度を越し、眉をひそめたくなるようなものも多い。
 だが、この【Duniya】はちょっと違っている。
 まず、なんと言ってもリアルであった。
 タミルやテルグ、カンナダのヒーローたちが繰り広げるアクションは、特撮を駆使して、ことさら強く見せようとする。その結果、異様に現実離れして、それが効果を上げている場合もあるが、多くは滑稽である。
 だが、この【Duniya】のヒーロー、シヴは「端的に」強い。
 さすがは石切り場で鍛えたという設定だけあって、筋肉の躍動や汗臭さはほとんど動物的であった。
 そして、このシヴの強さの影響か、あるいは映画の持つリズム感のせいか、映画全体から「力」のようなものが感じられ、それが他の作品とは一味違った気持ち良さを生み出していた。
 私的には好感している。

◆ パフォーマンス面
 ヒーローを演じたウィジャイは新人。ヒロイン・プールニーを演じたラシュミも新人。監督のスーリがこの二人の新人を使った意図は明白だ。
 つまりは「リアル」を求めたということ。
 上に書いたとおり、この頃の南インドのヒーローは大衆に迎合するあまり、現実味のない「スーパー」ヒーローになってしまっているものが多い。しかし、スーリ監督はリアルに強いヒーローを要求している。そして、大衆も却ってそれを歓迎している。
 このウィジャイという男が今後ブレイクして第一線に出て来るとは考えにくい。しかし、【Duniya】の「シヴ」に限って言えば、カンナダの大衆的映画ファンは、このハンサムでもなく、洗練もされていないヒーローを支持しているようだ。
 (写真下:主演のウィジャイ。このジャングルから出て来たような男がカンナダ映画界を救うか?)

画像

 ラシュミについても似たようなことが言える。
 ボリウッドではすでにアイシュワリヤやプリヤンカ・チョープラといった、ミスコンクラス、スーパーモデルクラスの女優が跋扈している。カンナダ映画界でも遂に【Aishwarya】のディーピカ・パドゥコーネが出現した。
 そういった美女たちをスクリーンを通して楽しめるのもインド映画の醍醐味に違いないが、なにやらこの頃は妙にけばけばしく人工的になっている。そして、実際にはそういった女性は身近にいるわけではなく、少なくとも40ルピー払って映画を見るのがやっとの冴えない男の子たちには縁遠い存在で、本当の意味で胸をしめ付けてくれるようなヒロインにはなりにくいはずだ。
 スーリ監督は、あえてそういったボリウッド規格のスーパー・ヒロインに対抗するために、プールニーのようなぽってり太った、従来の南インド標準で、どこの街角にでもいそうなヒロインを登場させたのではないだろうか。
 (写真下:ヒロインのラシュミ。この大福餅のようなぽっちゃり娘がカンナダ映画界を救うか?)

画像

◆ テクニカル面
 監督のスーリという人については、新人、若い、という以外情報が入って来ず、困っている。これまでいくつか脚本を書き、本作で監督デビュー、次は、サドゥ・コキラが監督する【Gange Baare, Thunge Baare】という作品に脚本で参加するそうだ。本作でも原作・脚本・監督をこなしており、才能は豊かなようだ。
 【Duniya】の作風を見る限り、ウペンドラやラーム・ゴーパル・ヴァルマとかの作品を熱心に観ていたに違いない。
 特にウペンドラに関しては、【Duniya】は、アンダーワールドのリアルな描写やギリギリのところで喘ぐ登場人物たち、作品から発せられる力、観客の熱気、ヒーローが一言発するたびに送られる声援など、ウペンドラの初期の作品を彷彿とさせるものがある。(ついでに言うと、ヒロインを演じたラシュミは【Om】や【Upendra】のプレマにどことなく似ている。)
 また、「duniya」はヒンディー語で「世界」という意味だが、この映画では「スーリの世界」を表しているらしい。この自己中心的なタイトルの付け方も、自分の名前を作品のタイトルにしてしまったウペンドラと発想が似ていなくもない。
 彼は強度のウッピー・ファンだったと思われる。
 と言うわけで、スーリにウペンドラの分身を見出さない訳でもないが、だからと言って彼がポスト・ウペンドラになりうるかと言えば、ウッピー作品の知的さや発想の大胆さ、形而上学的な突破力、アイロニーの鋭さに比べると、まだまだ平凡な感じがする。後続の作品を観てから判断したい。
 だが、ウペンドラの【Parodi】が不発に終わった背後には、この【Duniya】がせっせとウッピー・ファンを食っていたのは確かだと思う。

◆ 総評
 【Duniya】はインディーズ映画の味わいを持った作品。
 持って生まれた境遇の悪さから、イノセントでありながら結局は悲劇に至る若い男女の物語が、さしてきれいな描き方ではないが、時折きらきら輝く美しさと共に描かれていた作品だった。

・満足度 : 3.5 / 5

¶参考
【Duniya】前置き (というか、【Parodi】)
http://cauvery-south-cine.at.webry.info/200703/article_1.html
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(11件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Inthi Ninna Preethiya】
 カンナダ映画。スーリ監督の第2作。  スーリといえば、ちょうど1年前に【Duniya】で見事なデビューを果たした新進監督だ。【Duniya】は大ヒットし、私にとっても去年のカンナダ映画の中で印象に残る1本となっている。  そのスーリの才能を見極めるためにも、待望の2作目だった。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/02/22 14:27
【Junglee】
 スーリ監督、ヴィジャイ主演のカンナダ映画。  スーリといえば、【Duniya】(07)で世に出た監督で、私も注目している一人だ。前作(第2作)の【Inthi Ninna Preethiya】(08)では「アルコール中毒」の問題を扱い、なんとも悲惨な内容が嫌われて、フロップに終わってしまった。  本作では【Duniya】のヴィジャイを再びヒーローに、注目株のアンドリタ・レイをヒロインに起用し、娯楽アクション路線を狙った模様。前作の暗雲をスカッと晴らしたいところだ。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/02/26 02:21
【Ambaari】
 クリケットの‘Indian Premier League’の開催と総選挙のおかげで、インド映画の新作公開も控え目となり、私もホッと一息ついている。こんな時こそ後回しになっていた作品を観るチャンスと、カンナダ映画の【Ambaari】を観に行った。  この作品は1月30日に公開になったもので、ちょうど「100日」達成。実は、カンナダ映画も今年に入ってすでに50本近くが公開されたのだが、100日突破したのはこれ1本のみで、現在公開中のものを見ても、100日行きそうなものはない。今年上半期... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/05/10 22:03
【Geleya】 (Kannada)
 この【Geleya】と次回アップ予定の【Aa Dinagalu】は共にカンナダ映画のギャング物。  一時帰国の準備で忙しかったのだが、どうしても押さえておきたい2作だったので、映画館をはしごして鑑賞して来た。  「Geleya」は「友達」という意味。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/07/25 01:05
【Avva】 (Kannada)
 この頃カンナダ映画をよく観ていて、私のこの日記もカンナダ映画のページと化しつつある。  私自身、今年はカンナダ映画強化年間と定めているので、そうなるのも当然のことだが、しかし、もしそうじゃなくても、やっぱりカンナダ映画の方に足が向いたかもしれない。それぐらいこの頃のカンナダ映画には勢いが感じられるのである。  バロメーターの一つが新聞(Times of India誌)の映画欄の星印。ここ1,2年のカンナダ映画といえば星2つ、3つが当たり前で、なかなかそれ以上は出て来なかったが、今年は... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/11/21 13:03
【Shankar IPS】 (Kannada)
 「ブラック・コブラ」こと、ヴィジャイ主演のカンナダ映画。  インド映画にスターはあまたいれど、私の目から見て「なんでこいつがスターやねん」と思えるスターも多い。この、【Duniya】(07)でブレイクしたカンナダのヴィジャイも「なんでこいつがスターやねん名鑑」に入る一人だ。  【Duniya】一発で終わるかな、と思っていたのだが、しかし、筋骨隆々の肉体を売りにしたフル・アクション俳優というのも近ごろ珍しく、庶民派のヒーローとして、興行収入の期待できる俳優になってしまった。  し... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/05/26 03:40
【Mr. Theertha】 (Kannada)
 サドゥ・コキラ監督のカンナダ映画。  サドゥ・コキラはサンダルウッドの人気コメディアンだが、音楽監督、映画監督としても才を見せ、監督作品としては【Raktha Kanneeru】(03)や【Anaatharu】(07)などのヒット作もものにしている。  これら2作はリメイク作品だったが、本作【Mr. Theertha】もリメイク。元ネタはモハンラル主演のマラヤラム映画【Sphadikam】(95)で、これは傑作だと聞いている。【Sphadikam】はその後ナーガールジュナ主演のテ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/07/15 01:49
【Jackie】 (Kannada)
 スーリ監督のカンナダ映画。  自主制作映画の味わいを持つデビュー作の【Duniya】(07)、フロップに終わったが、オフビートな内容が印象的だった【Inthi Ninna Preethiya】(08)と、スーリ監督は私にとって注目の若手監督であるが、第3作の【Junglee】(09)は興行的に成功したものの、私は駄作だと見ている。さて、第4作はどうだろうか?というところだが、売れっ子のプニート・ラージクマールを主役に据え、本格的な娯楽アクション映画を撮ってくれたようだ。(写真下:ス... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/11/02 21:27
【Ugramm】 (Kannada)
 カンナダ映画も変りつつあることを実感させてくれるギャング映画が現れた。監督はプラシャーント・ニールという聞いたことのなかった人だし(新人)、主演はフロップ続きで良いところのなかったムラリ(シュリームラリ)なので、ノーマークだったが、各方面からの評判が良かったので、観に行くことにした。  ヒロインは私が勝手に「ハリピー」と呼んでいるハリプリヤー。こっちにも注目したい。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/03/05 02:43
【Ganapa】 (Kannada)
 まぁ、【Baahubali】はそのうち観るとして、この週末は私の好みっぽい低予算・カンナダ・ヤクザ映画を観て来た。  監督のプラブ・シュリーニワースという人は、本業は振付師だが、監督として過去に【Jeeva】(09)と【Parijatha】(12)を撮っている。どちらも興業的には成功しなかったが、【Jeeva】は個人的にちょっと好き。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/07/15 20:50
【Kendasampige】 (Kannada)
 カンナダのスーリ監督は好きな監督で、期待もしているが、個人的に最近はやや不満を感じていた。それというのも、【Jackie】(10)や【Kaddipudi】(13)のような大スターを起用した娯楽映画を撮り始めると(これらも良かったのだが)、デビュー作【Duniya】(07)と第2作【Inthi Ninna Preethiya】(08)で見せた強烈な個性、ぶっきらぼうな作風が希薄になってしまったからである。インドの商業映画というのは結局そういうものだし、仕方ないのかなぁ、と思っていたが、... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/10/02 18:21

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Duniya】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる