カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aadavari Matalaku Ardhale Verule】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2007/05/10 22:00   >>

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 この頃テルグ映画を観ていないことにふと気付いた。去年は【Pokiri】と【Bommarillu】で大騒ぎしたので、なんだかいろいろ観ているような気になっていたが、実際にはこの2本だけ。それで、そろそろテルグ映画を、と思っていたら、お誂え向きの1本が登場してくれた。
 この映画は私にとって二つの点で必見だった。
 一つは、タミル映画界の気鋭・Selvaraghavanが監督していること。
 彼はタミル映画史上に輝く画期的名作【7G Rainbow Colony】(04)を撮った人で、今回は彼のお気に入りスタッフを引き連れてテルグ映画界に乗り込む。トリウッドでどんな仕事をするのか見ものだ。
 もう一点は、トリシャがヒロインを演じていること。
 私はトリシャのファンで、「好きなインドの女優は?」と聞かれれば、まずトリシャを挙げる。たんに私の好みというだけでなく、彼女はやはり名実共に南インド最高の若手女優の一人だと言えると思う。にもかかわらず、昨年は【Stalin】も【Sainikudu】も見逃してしまったので、今回は外すわけにはいかない。

【Aadavari Matalaku Ardhale Verule】 (2007 : Telugu)
作・脚本・監督 : Selvaraghavan
出演 : Venkatesh, Trisha, Sreeram, Kota Srinivasa Rao, K.Viswanath, Colors Swathy, Sunil, Suman Setty, Melkote, Mumaith Khan, Meghna Naidu
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Bala Murugan
編集 : Anthony
制作 : N.V.Prasad, Sanam Naga Ashok Kumar

《あらすじ》
 ガネーシュ(Venkatesh)は大学でコンピュータを勉強したものの、英会話の拙さから、いい年をして未だ職に就けないでいた。彼は、母はおらず、教師をしている父(Kota Srinivasa Rao)と二人暮しだった。父はそんなガネーシュを不甲斐なく思いつつも、やはり可愛い息子には違いなかった。
 ある時、ガネーシュは美しい女性・キールティ(Trisha)と出会い、一目惚れする。彼は、彼女がソフトウェア会社に勤めていることを知り、またその会社が技術者を募集していることを知って、一夜漬けでソフトウェアの勉強をする。彼は揚々と採用試験を受けに行くが、俄か勉強と英語力のなさから苦戦する。しかし、執念が実を結んで、研修生ではあったが、合格することができた。
 キールティはその会社でプロジェクト・リーダーをやっており、新人の研修も担当していた。幸運なことに、ガネーシュはキールティと同じチームに入った。だが、キールティはパリッパリのキャリアウーマンで、ガネーシュの甘い幻想は打ち砕かれ、彼は彼女に毎日のように叱り飛ばされていた。
 そんなある日、キールティのチームはオーストラリアへ出張に行くことになった。オーストラリアでガネーシュとキールティは幾分親しくなり、とうとう彼は彼女に恋を打ち明ける。だが、キールティはそれを拒否する。彼女は従兄との婚約が決まっており、1ヵ月後に結婚が予定されていたからである。
 失意のうちにインドに戻ったガネーシュ。息子がしょげ返っている理由を知った父は、キールティに会いに会社まで行く。しかし、興奮してしまった彼女は、ガネーシュと父の二人共につい平手打ちを喰らわせてしまう。その夜、ガネーシュの父は心臓麻痺で急死してしまう。
 ガネーシュは、失恋と父を失ったショックで絶望のどん底に落ちる。
 ガネーシュにはワス(Sreeram)という親友がいた。ワスは結婚の準備のために田舎へ帰るところだったが、ガネーシュの気分を換えるために、彼を自分の田舎へ連れて行く。だが、驚いたことに、キールティの婚約者とはまさにこのワスだったのであり、ガネーシュはキールティと再会することになる。
 田舎での賑やかな生活は確実にガネーシュの気分を変えた。彼は、当地の人々との生活を通して、ワスやキールティの家族たちから絶大な信頼を得るようになった。
 結婚が間近に迫ったものの、キールティは自分がガネーシュを愛していることに気付く。彼女はガネーシュに気持ちを伝えるが、彼は平和な家族を混乱させるのを嫌い、身を引こうとする。このことを知ったキールティの祖父(K.Viswanath)は、彼女の穢れを祓うためにプージャを行い、ガネーシュに村を去るよう要求する。
 ガネーシュは言葉どおりワスの家を後にするが、途中で、以前に懲らしめたことのある村の悪漢にナイフで刺されてしまい、病院に担ぎ込まれる。折りしも、ワスとキールティの結婚式が行われようとしている丁度その時に、彼らの下にその知らせが届く、、、。

   *    *    *    *

 さすがはセルワラガヴァン監督らしく、丹念な感情描写と間延びしないセリフのやり取りで、退屈知らずの作品だった。
 しかし、クライマックスは意外にあっけなかったし、親友のワスがキールティの婚約者だったという設定もさることながら、一緒に酒も飲む間柄でありながら、ガネーシュとワスがお互いにキールティを巡る関係を知らなかったというのは不自然すぎる。

 題名の「Aadavari Matalaku Ardhale Verule」は「Women Tell Different Meanings」という意味。主にキールティの揺れる気持ちを示唆したものだろう。キールティや家族たちの気持ちを変えさせたのは、結局、ガネーシュの「人柄の良さ」に還元され、それがこの作品の根幹でもある。
 しかし、親が決めた縁談を翻して、また、カーストの壁を越えてまで恋愛を通すのは、かなり強い意志や情熱、動機があるはずなのに、この作品ではそれが希薄だ。結局はガネーシュの「人柄」を愛した家族たち(特に女性陣と子供たち)が彼を後押しする、という形になっている。だが、どう見てもワスも好青年だし、何か悪いことをしたわけでもないのに、気が付いたら振られ役に回されていて、なんとなく「好きな者同士が結ばれるのが一番」という形で終わってしまっているのは残念だと思う。

◆ パフォーマンス面
 この作品の優れている点は、俳優たちの個性と演技が光っているところだろう。
 まず、ガネーシュを演じたウェンカテーシュ。野暮だが好人物で、弁も立つという、いかにもインド人好みの人物を快演している(英語が下手という設定もご愛嬌)。彼の作品では【Nuvvu Naaku Nachav】(01)しか観ていないが、役柄も映画の主題も本作とよく似ている。彼がスクリーンに現れると、心が和み、陽気な気分になるから不思議だ。(ちなみに【Nuvvu Naaku Nachav】は【Gowramma】という題名でカンナダ映画にリメイクされ、ウペンドラが主演した。)

 トリシャも文句なし。私的には【Varsham】(04)や【Nuvvostanante Nenoddantana】(05)以上の好演だと思うのだが、さて、主演女優賞が取れるかどうかは微妙な線だろう。酔い潰れてゲロを吐くシーンがあるが、トリシャのゲロ吐きシーンなど、おそらくこれが最初にして最後の、貴重な映像になると思う。
 (後日付記:Trishaはこの役でFilmfare Awardsの主演女優賞を取っている。)

 こういう家族関係が主題の映画では、ヒーロー・ヒロインの親族役の出来がカギになるのだが、その点でも申し分なかった。
 ガネーシュの父親役のKota Srinivasa Raoはまさに名演。キールティに平手打ちを喰らわされた晩、ガネーシュと一緒に滅多に飲まないビールを飲みながら訥々と語り合うシーンなど、おそらくテルグ映画史上に残る名場面と言って言い過ぎでないと思う。非常にうまい。(写真下)

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 キールティとワスの祖父で、田舎の厳格な名士を演じたK.Viswanathも渋かった。

 そして、今回の最大の発見は、何と言ってもColors Swathy! 彼女はキールティの妹役として、後半からの登場であるが、絶妙の間とポジション取りのうまさで笑いをさらっていた。本筋とはあまり関係がないのだが、間違いなく映画の空気を形作っていた。彼女はMaa TVの‘Colors’という番組で司会を務めて有名になったそうで、まだ10代の小娘だが、コメディーができる若手女優は珍しいので、これからも注目していきたいキャラだ。
 (写真下:Venkateshの右にいる青ドレスがColors Swathy。)

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◆ テクニカル面
 Yuvan Shankar Rajaの音楽が良くって、本作のムード作りに大きく貢献している。
 主人公たちが田舎へ行く道中のソング・シーンではムマイト・カーンがアイテム出演していて、味のあるダンスを見せている。

・満足度 : 3.5 / 5

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
面白かったですね。終わりが少し尻すぼみでしたけど。
ウェンカテーシュさん良かった。子どもたちに遊ばれるシーンとか、川に飛び込み溺れた妹?に説教食らわすシーンとか…。英語が苦手っていうのも面白い設定でしたね。ワイシャツにネクタイもいいですね。
コータさんの息子と酒を酌み交わしたシーン良かった。ブリンダヴァナムでスリハリさん(最近公開されたテルグ映画「Thoofan」のスチル探したらスリハリさん激やせしてて驚きました。別人ですよアレ(>_<))の家に行かなきゃいけないって酒を片手に愚痴ってたシーンを思い出しました。
トリシャさんの嘔吐は仰け反ったのでは?
死んだふりしてたおばあちゃん役の女優さん、シャールクカーンさんの「Swades」の主人公のお母さん役なさってましたね。味わいのある演技なさいますよね。
ところで、結婚式の準備の買い出しの車内のシーンの時に使われていた曲ですが有名な曲なのでしょうか?ブラフマージーさんの「Gana」の69分ころ、ブラフマージーさんが歌っていた曲で、Ganaからの引用とは思えないので。
ナン
2013/09/22 20:53
>最近公開されたテルグ映画「Thoofan」のスチル探したらスリハリさん激やせしてて驚きました。別人ですよアレ

Toofanは見なかったので、知りませんでした。
なしてシュリーハリに痩せる必然性が・・・?

>トリシャさんの嘔吐は仰け反ったのでは?

はい、この映画、タミル語版とカンナダ語版のリメイクもあり、それぞれ人気女優が吐いていました。

>死んだふりしてたおばあちゃん役の女優さん、シャールクカーンさんの「Swades」の主人公のお母さん役なさってましたね。

Kishori Ballalという方ですね。

>ところで、結婚式の準備の買い出しの車内のシーンの時に使われていた曲ですが有名な曲なのでしょうか?

チェックしましたが、分かりませんでした。
 
カーヴェリ
2013/09/28 01:21
調べてみました。
1955年リリースされた元祖NTRさんのMissamaという映画のAadavari Matalaku Ardhale Veruleというタイトルの歌のようですね。そのあとブラフマージーさんのGanaであのように少し使われて、パワンカルヤンさん主演のKushiでアレンジされてその一節を使った一曲になってますね。そのあとにこの映画で使われたようです。元ネタが元祖NTRさんだとは…。私はまだ生まれていない頃の映画です。こんな歴史のある歌だったんですね。白黒映画時代の歌とは驚きでした。
しかしなぜスリハリさんあんなに…。ご病気なのかと心配になりますね。ボリウッドを意識するとみなさん痩せたくなるのでしょうか?NTRジュニアさんが激やせした時のファンの気持ちがなんとなくわかった気がしました。
ナン
2013/09/28 23:16
>1955年リリースされた元祖NTRさんのMissamaという映画のAadavari Matalaku Ardhale Veruleというタイトルの歌のようですね。

おお、情報、ありがとうございます。(そういえば、上のレビューを書いていたときに、そんな記事を読んだような。)
実は、私、MissammaもKushiも見てるんですが、まったく覚えていませんでした。あきませんなぁ、健忘症で。
 
カーヴェリ
2013/10/01 01:18
健忘症…私もですf^_^;)。
ウェンカテーシュさんも好きになってきました。この人の人懐こい愛嬌のある表情…私も弱いです。
トリシャさんのご出演映画の「Nuvvostanante Nenoddantana」を見たのですが、それも面白かったですね。
トリシャさんのお兄さんがスリハリさんで、シッダールトさんのお父さんがプラカシュラージさんという結構無理やり感のあるキャスティングが個人的にはツボでした。侮辱され静かに地元に帰り、先のある若者の代わりに自首するスリハリさん。意外と物分りのいい父親プラカシュラージさん。辛い食事を食べて我慢して耐えられなくなるっていう演技よかったです。最後の結婚式のお祝いダンスで、本当お二人が楽しそうにダンスしてるのが印象的的で…。
牛さんダンスとかいろいろとお金かかってますね。
ナン
2013/10/02 12:53
>トリシャさんのご出演映画の「Nuvvostanante Nenoddantana」を見たのですが、それも面白かったですね。

はい、これも傑作ですね。この映画を見て、シュリーハリが好きになりました。
トリシャー、プラカーシュ・ラージ、シュリーハリ絡みなら、前にもオススメしましたが、「Varsham」と「King」はもうご覧になりました?
 
カーヴェリ
2013/10/06 09:58
オススメの「Varsham」テルグ語のみで見ました。面白かったです。ご案内ありがとうございました。
プラカシュラージさん演じる親父最低なオヤジじゃないですかw。本当こういう役もとてもうまいですね。超オールマイティな役者さんですね。
主演のプラバスさん、なかなか男前で熱くていいですね。
ガソリンスタンドの5人の仲間にスニールさんとアジャイさん。特にアジャイさんが若くて初々しくてかわいいw。
ヴェーヌマーダヴさん、あごひげがあって最初わかんなかったです。でも声でわかりましたけど。
ナン
2013/10/07 02:01
>プラカシュラージさん演じる親父最低なオヤジじゃないですかw。

私もこの映画を見たあたりから、プラカーシュ・ラージのことが好きになりました。
 
カーヴェリ
2013/10/10 00:56

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