カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Sivaji - The Boss】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2007/07/14 19:43   >>

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 ついに観ることができた【Sivaji - The Boss】!

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 なんか公開日からとてつもない歳月が流れたような気がする。
 その間、すでに観た連中からいろいろなコメントが、、、中には「非常に素晴らしかった」という意見もあったものの、「ストーリー性がない」とか「面白いけど、一度観たら十分だ」とか「シャンカルとラジニの取り合わせなので、もっと面白いものを期待した」とか、否定的な意見も多く、「これは脳天気なタミル映画、アゲインか?」と、次第に懐疑的にならぬでもなかった。
 しかし、実際に観てみて、、、どこのすっとこどっこい野郎だ、そんな戯言を言うヤツは!

 腰を抜かすほど面白かった。
 私が近ごろ「面白い」と思って観た娯楽映画などすべてクリーンアップ。
 違うんです、この映画は。別物なんです。
 むしろ、もはや映画という次元を超えてるかもしれない。
 表現は難しいけれど、強いて言えば、二次元平面上に出現した不可解な有機体。非常にパワフルで、それ自身が生命を持つ平面。
 いやいや、それこそが真の映画であるはず。
 私は常々、映画とは光と音と観念を伝える手段であるだけでなく、スクリーン自体が生命力を表出し、それが観客の力と呼応して非常に力動的な空間を造り上げる、それが映画というもので、そんな映画を観たいと思っていた。しかし、そうした作品には滅多に出会えない。【Sivaji】はそんな稀な映画だと思う。

 まず私の度肝を抜かせたのはダンスシーンだ。
 ダンスシーンはすべて私の想像と期待と常識のレベルを大きく越えていた。
 アホですね、シャンカルは。
 こんなことのために、これを見せたいがために、これほどの大金を注ぎ込むとは!
 夢の具現化のためには限度を設けない彼の映画は、いつも製作費が膨れ上がる。会ったことないが、シャンカルは非常にパラノイアックな男なのだろう。彼を船に乗せたら、きっとコロンブスになったに違いない。

 メイン・ストーリーは、ラジニカント演ずるシヴァージが悪徳実業家や腐敗政治家&官僚たちと闘いながら、慈善事業の大学病院を完成させる、というもの。
 ヒーローが貧者・弱者を食い物にする金持ちや権力者に敢然と立ち向かうというのは、シャンカルが一貫して取り上げ続けているテーマだ。デビュー作【Gentleman】(93)は、貧者のための医科大学を設立するために泥棒まで働く男の物語だが、【Sivaji】とも重なるところが多い。
 ということは、この15年もの間、インドにおけるこの問題点は全然改善されていないわけで、そのシャンカルの苛立ちはアメリカから帰国したばかりのシヴァージのセリフに簡潔に表現されている。「街は発展しても、乞食は変わらず、か。」
 しかし、よく見ると、まだ経済の高度成長前夜だった【Gentleman】の悲愴な叫びに比べて、バブル期真っ只中の【Sivaji】はどこか楽天的で、お祭りめいた雰囲気さえある。
 結局インドは変えられるさ、というシャンカルとインド人の自信みたいなものを感じた。

 そして、ラジニカント。
 この映画では3つのラジニの相を楽しむことができる。
 1つ目はリッチなNRIとしてのラジニ。これがまた趣味の悪い服装&メイクで、まともに見ればどさ回りの喜劇役者。しかし、不思議と映画とはマッチしており、お洒落と滑稽の間を微妙に行き来していて、笑えた。
 2つ目は一文無しになってからのラジニ。例によって、ぼさぼさ髪で、その辺のマーケットで250ルピーぐらいで買ってきたようなシャツを着てアクション・シーンを演じるところは泣かせる。これぞラジニ美学! 美しいですねぇ、見事ですねぇ、それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ、て、淀川長治やってる場合ちゃうがな。
 3つ目は死から蘇生した後のラジニ。ここからはもうやりたい放題。誰か止め!ちゅうねん、、、て、今度は西川のりおですか。
 アホですね、このオッサンも。
 あんた、もう還暦も近いし、くたびれた爺なんだから、もっと大人しくしてなはれ、と言いたいところだが、それを言わせないところがすごい。
 しかし、よく見ると、ダンスやアクションには往年の切れがなく、やはり歳は取っているのである。さぞやお疲れになったことであろう。精も根も使い果たしてまで、とことん観客を楽しませようという姿勢は、さすがにスーパースターだと思う。

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 ヒロインのタミルチェルウィを演じたShriya Saranは、私は全く知らなかった。完璧に初めて見た、と思い込んでいたが、調べてみると、テルグ映画界で活躍しており、例えば【Santosham】(02)や【Tagore】(03)にも出ているということが分かった。この2つの作品なら観ているので、もちろん彼女も見ているはず。なんという記憶力の悪さ。その頃の彼女はオーラが弱かったのか、はたまた私の目がフシ穴だったのか、とにかくこの映画に関する限り、彼女は旬の美しさを見せている。
 もちろん、ストーリーの中ではラジニカントやヴィヴェックのような押しの強い男優陣に囲まれて芝居どころの騒ぎではなかったが、ダンス・シーンでは光り輝いていた。

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 さて、冒頭で「懐疑的」という言葉を使ったが、白状すると、最近インド映画をいろいろ観ていて、南インドで作られているような映画は時代遅れで、遅かれ早かれ消えていくのではないかと、ふと思うことが多かった。それが間違っているとは言えないにせよ、しかし、今回【Sivaji】を観て、ガツンと頭を殴られたような気がする。ここまで典型的な特徴を持つタミル映画が、私の頭の中では、ハリウッドであれボリウッドであれ、あるいは他州のインド映画であれ、ことごとく踏み潰してしまったからである。
 結局、南インド映画もタミル映画も独自の良さがあり、独自に展開していくべきだと、認識を新たにした。

 そんなわけで、ラジニカントとシャンカルは私の頭の中では奇跡的存在として君臨し、【Sivaji】はタージマハルに取って代わって、「新・世界の七不思議」の一つとなっている。

【Sivaji - The Boss】 (2007 : Tamil)
物語・監督 : S.Shankar
脚本 : Sujatha
出演 : Rajinikanth, Shriya Saran, Vivek, Suman, Raghuvaran, Manivannan, Vadivukkarasi, Raja, Uma Padmanabhan
音楽 : A.R.Rahman
撮影 : K.V.Anand
美術 : Thotta Tharani
アクション : Peter Hein
編集 : Anthony
制作 : M.S.Guhan, M.Saravanan

・満足度 : 4.5 / 5

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