カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【No.73 Shanthi Nivasa】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2007/07/02 22:40   >>

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 「Sivaji」フィーバーはひとまず収まった気配だが、相変らずチケット入手は困難で、まだ観ていない。もう海賊版DVDも出ているらしく、完璧にブームに乗り遅れたかも。しかし、ここは慌てず、今週もアナ狙いで、我が道を行くことにした。

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 本作はカンナダ映画界の人気俳優、スディープが監督した家族映画。もちろん、彼自身が主演。
 スディープといえばカンナダ映画界にあって珍しくアクが強くなく、近ごろは知的な雰囲気さえ漂わせており、個人的には注目している。去年、【My Autograph】という作品で初監督(&主演)し、ヒットさせた。これはタミル映画の【Autograph】のリメイクだが、オリジナルと比べても出来が良く、昨年度の印象に残る1本となった。
 本作はそのスディープの監督第2作である。

【No.73 Shanthi Nivasa】 (2007 : Kannada)
監督 : Sudeep
出演 : Sudeep, Deepu, Master Hirannaiah, Srinivasa Murthy, Ramesh Bhat, Vaishali Kasaravalli, Chitra Shenoy, Komal, Anu Prabhakar, Deepak, Arun Sagar, Vishnuvardhan(ゲスト出演), Shivarajkumar(ゲスト出演)
音楽 : Ramani Bharadwaj
撮影 : Sri Venkat
制作 : Sarovar Sanjeev

《あらすじ》
 マンガロールに近い田舎町に「シャンティ・ニワーサ」という名の家があり、ある大家族が住んでいた。
 お祖父さんのカイラースナート(Master Hirannaiah)には3人の息子−−−会社で係長をしているラーマナート(Srinivasa Murthy)、大学講師のカシ(Ramesh Bhat)、映画音楽家志望のヴィシュワナート(Komal)−−−がいた。ラーマナートとカシにはそれぞれシータ(Vaishali Kasaravalli)とショバ(Chitra Shenoy)という妻がおり、ラーマナートとシータの間にはニータ(Anu Prabhakar)とラダ(Deepu)という2人の娘と1人の男の子がいた。
 彼らはすべて同居していたが、家の名前(平和の家)とは裏腹に、親子、兄弟、姉妹、夫婦はいがみ合い、いざこざが絶えなかった。お祖父さんもベッドの脇にしまってある「宝物」のことが心配で、なかなか部屋から出て来なかった。
 そんな家族の所へ、ある日、ラグ(Sudeep)という男が料理人としてやって来た。彼は料理の腕も一流だったが、それだけでなく、歌やダンス、アーユルヴェーダ、サンスクリット文学、果ては数学にまで通じた万能人間だった。そして、なによりも人々の間に幸福をもたらすのが趣味の、風変わりな男だった。
 ラグの人間的魅力と考え方に影響された家族の人々は、次第に明るさと笑いを取り戻す。ばらばらだった家族はお互いに信頼感と愛情を抱き始め、一つにまとまるようになる。

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 ラダにはアルン(Deepak)という家庭教師が付いていたが、二人は互いに惹かれあっていた。ある日、二人が親しげにドラマの練習をしているところを母親たちに見つかってしまい、アルンは追い出され、ラダはこっぴどく叱られる。これが原因で家族は一時険悪な状況になるが、これもラグの取り成しでなんとか収まる。
 しかし、ある晩、ラグはお祖父さんが大切にしていた宝物を盗み出し、忽然と姿を消してしまう。
 翌朝、ラグの犯行に気付いた家族のみんなはショックを受け、彼に対して失望する。そんなところへ、家庭教師のアルンがその宝物を持ってひょっこりと現れる、、、。

   *    *    *    *

 外部から「異人」がやって来て、内部の問題を片付けて去って行く、というタイプの物語。
 劇中ではラグはコックとして現れるが、本職は「大学教授」という設定で、そうであるにもかかわらず、どこかの家庭に問題があるのを聞きつけると、素性を隠して、それを解決しに行くのが自分の本務だと考える「お助けマン」として描かれている。悪漢や悪徳政治家をやっつける派手なヒーローではないが、ラグのようなタイプもインド人が望むヒーロー像の一つなのだろう。

 ラグの出現によってばらばらだった家族が一つにまとまる。劇中には、ラグの言動を通して、家族が和合して生きていくためのヒントが散りばめられている。これは、核家族化が進み、今やその核さえ分裂の危機にある日本社会にとっても、耳を傾ける部分が多いだろう。
 インドのような共同体を重視する社会では当たり前のことだが、インドの人々は家族や血縁間に断絶が生じるのを非常に嫌う。だが、現実には何かしら問題はあるもので、インド人はその解決に腐心することになり、映画でもこうしたことが主題として取り上げられることが多い。実際、この【No.73 Shanthi Nivasa】も【Bawarchi】という古いヒンディー映画のリメイクで、またカンナダ映画としても2度目のリメイクらしい。それほどこのトピックはインド人の関心が高い。
 ところが、そのインドの家族映画というのが、陳腐で説教臭かったり、単に「ラーマーヤナ」などの説話の焼き直しだったり、べたべたの家族愛に彩られたものだったりして、私の目から見て、当惑するものも多い。しかしこの映画の場合は、家族のメンバーや家庭内の問題の描かれ方がナチュラルで、押し付けがましいところもなく、受け入れやすかった。
 特に興味深いのはお祖父さんの「宝物」だ。これが何を象徴しており、それを盗み出すことにどんな意味があるのか? 映画の中では一応それが語られているのだが、表向きに語られた事柄より、実はそこにどんな寓意が込められているのかを各自で解釈する方が楽しいだろう。

◆ パフォーマンス面
 スディープの演出は二重丸。
 上にも触れたとおり、俳優たちの演技は自然で、スディープ自身はもちろん、脇役陣も芝居をさせてもらっていた。
 特に私が注目したいのは、ラダ役を演じたディープ。彼女は【My Autograph】でも主人公の初恋の相手役で出ており、印象的だった。丸顔で田舎顔で、全く美人とは呼べないのだが、その親しみやすいキャラはカンナダ人の琴線に触れるであろう。(写真下の右)

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◆ テクニカル面
 撮影と照明も良かった。カンナダ映画もこの頃は映像の質がずいぶん向上したものだが、この作品ぐらいのレベルは常に保ってほしい。

◆ 結語
 【No.73 Shanthi Nivasa】はけれんみのない家族映画だが、退屈な芸術映画というわけではない。保守的な層を中心にじわじわと支持を集め、地味にヒットするかもしれない。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この作品、好きです。
スディープというとどちらかというとアクション系がお馴染みなのですが、このようなほのぼのとした役もいいですね。

姉妹のダンスシーンも好きです。
お姉さんの踊っていたのはカタックというのでしょうか。

カンナダ映画のダンスはボリウッドのダンスともまた違っているようで、それもいいなあ、と思いました。
やっほー
2013/08/14 23:10
Gooliもそうでしたが、この映画も日本人の方がご覧になるとは思いませんでした。よくぞDVDが残っていたものです。
この映画、結局ヒットしませんでしたが、良いですよね。

>お姉さんの踊っていたのはカタックというのでしょうか。

すっかり忘れてしまいました(汗

ブログのほうも拝見しましたが、あのトラックのソングシーンもすっかり忘れていました。しかし、味わいのある良いものですね。

それと、上で紛らわしい書き方をしてしまったんですが、タミル映画【Autograph】のリメイクはスディープの【My Autograph】で、この【No.73 Shanthi Nivasa】は古いヒンディー映画【Bawarchi】のリメイクだそうですよ。

あと、カンナダ屋さんってあるんですね。知りませんでした。
 
カーヴェリ
2013/08/15 23:16
連投、失礼します。
ご指摘ありがとうございます。
私が読み違えいてしまいました。
自分のところ、さっそく直しておきます。

実は、今日、その「My Autograph」という作品も見ました。
こちらも秀作でした。

残念ながら、字幕がついてなくて、スディープ版とタミル版のWikiに助けてもらいました確。
オリジナルのCharanという方の作品も見てみたく、南インドの作品たちにずるずると惹きこまれていくのを感じる今日この頃です。

それから、カンナダ屋さんというのは、私が勝手に命名した店名で、正式には「Kannada Store」というところです。
私の稚拙な英語でのよくばりな注文に丁寧に応えてくださったお店です。
(バンガロールにあるようです。)
http://www.kannadastore.com/index.php?osCsid=1931f251bd322df8c51b536ae1cbae2d
やっほー
2013/08/16 14:53
>実は、今日、その「My Autograph」という作品も見ました。
こちらも秀作でした。

はい、よくできていますよね。ヒットしました。
リメイクですが、スディープのお勧め作品ですね。
オリジナルのタミル語版のDVDには英語字幕があります。現地では70ルピーぐらいで買えます。

>正式には「Kannada Store」というところです。

それで分かりました。(そりゃあ、まさかカンナダ・グッズの店が日本にあるわけないですよね。)
 
カーヴェリ
2013/08/17 10:05

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