カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kireedam】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2007/08/03 22:10   >>

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 アジット主演のタミル映画。
 アジットと言えば、「Ultimate Star」の称号を持つタミル映画界の看板俳優であるが、私は大昔の【Kandukondain Kandukondain】(00)とヒンディー映画の【Asoka】(01)しか観ていない。最近作の【Varalaru】と【Aalwar】も観る機会に恵まれなかった。
 しかし、男っぽい風貌と確かな存在感で、ぜひとも押さえておきたい一人である。今回は相手役がトリシャとあって、期待は高まる。

【Kireedam】 (2007 : Tamil)
監督 : A.L. Vijay
出演 : Ajith, Raj Kiran, Trisha, Vivek, Saranya, Ajay Kumar, Cochin Haneefa, Ravi Kale, M.S. Baskar, KPAC Lalitha, Santhanam
音楽 : G.V. Prakash Kumar
撮影 : Tirru, Nirav Shah
制作 : S. Balaje

《あらすじ》
 ラージャラージャン(Raj Kiran)は正直がモットーの警察官。妻と二人の息子、二人の娘、それにお調子者で役立たずの娘婿(Vivek)と共に平和に暮らしていた。
 ラージャラージャンの夢は、長男のシャクティウェル(Ajith)も自分と同じように警察官になってくれることだった。シャクティウェルも父の意を汲んで、警官になるべく試験を受け、訓練に励んでいるところだった。
 ある時、シャクティウェルは友人たちと共に、プージャで使うために近所のガネーシャ像を一時的に拝借しようとしていた。そこを、近くに住んでいるディヴィヤ(Trisha)という女子大生に見つかってしまい、泥棒として追われる。
 ディヴィヤは、始めはシャクティウェルのことを泥棒扱いしていたが、誤解が解け、次第に彼の人柄に惹かれ始める。シャクティウェルも同様にディヴィヤを愛し始める。二人の関係を知ったラージャラージャンは、ディヴィヤの父に掛け合い、二人の婚約が認められることになる。
 ある日、ラージャラージャンは路上で警官を侮辱していた男をしょっ引く。だが、その男は有力な代議士の息子だったため、彼は田舎町へと左遷されてしまう。
 ラージャラージャン一家が移り住んだ田舎町は、ヤクザが暴れまわる無法地帯だった。町の人は見て見ぬふり、警察さえ取り締まれない有様だった。
 赴任早々、ラージャラージャンはヤクザたちにからまれる。それを知ったシャクティウェルは、父を救援するためにヤクザと乱闘を起こし、ボス(Ajay Kumar)に大怪我を負わせる。
 この一件に驚いた町の人はシャクティウェルのことを英雄扱いする。それだけならまだしも、それまでヤクザに押さえつけられていた輩が彼の名前を悪用して乱暴を働くようになり、彼を新たなボスとして担ぎ始める。しかし、これはシャクティウェルにとっては不本意なことであった。
 ある日、再びヤクザたちの挑発に乗ってしまったシャクティウェルは、彼らと大乱闘を起こしてしまう。ちょうどその折、シャクティウェルの警察官としての合格を知ったラージャラージャンは、急いで知らせに行くが、彼が見たのは牢獄にいる息子の姿であった。
 すぐにシャクティウェルは釈放され、以前に住んでいた街へと避難する。しかし、ディヴィヤの父からは婚約破棄を申し渡される。
 退院したヤクザのボスは、シャクティウェルに復讐するために、ラージャラージャンの家族を襲撃する。その知らせを聞いたシャクティウェルは、再び無法地帯へと舞い戻る、、、。

   *    *    *    *

 珍しく、ハッピーエンドではない物語だった。
 テーマは父と子の絆。シャクティウェルは父を非常に敬愛し、ラージャラージャンも息子のためには労力を惜しまないという、理想的な親子の関係があった。家族の愛情が強調されていることから、映画はハッピーエンドで終わるものと期待したが、この愛情の強さが却って悲劇を招くという皮肉な筋立てになっていた。
 ラージャラージャンもシャクティウェルも非常に正義感の強い人物で、正しいことを行っていながらも、事態は最悪な方向へ向かう。その背景には政治家や警察の腐敗、なくならないラウディーなどの社会悪があるわけで、こういう善意の人の上にも悲劇は起こりうるということを示すことによって、間接的にインドの社会批判がなされていたと思う。
 スーパーヒーローが社会悪を暴き、びしびし懲らしめる映画も面白いが、この作品のような形もありだと思う。とは言うものの、これがデビュー作のA.L. Vijay監督はデビュー作とは思えない良い仕事をしているが、私がハッピーエンドの映画に慣れてしまったせいか、ちょっと後味の悪さが残る作品だった。
 (後日付記:本作は1989年制作のマラヤラム映画【Kireedam】のリメイク作品。)

◆ パフォーマンス面
 アジットの演技は申し分なかったと思う。
 それ以上に印象的なのは、父役を演じたラージ・キランだろう。今回の主役はまさにこの人だ。(写真下の右)

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 問題はトリシャ。と言っても、彼女自身には問題はなく、問題は彼女の使われ方だ。
 トリシャは南インドを代表する女優であるに違いないのだが、私が観た作品のほとんどでヒーローの添え物的な使われ方をしており、物足りなさを感じる。南インド映画では(南インド映画に限らないと思うが)どうしても男優中心となり、ヒロインは幕間のリフレッシュメント的な位置に甘んじることが多い。
 この作品でも、トリシャの存在はストーリーの展開上重要ではなかったし、特に後半ではまったく見せ場がなかった。
 そんな中でも、彼女が限られた範囲内で陽気で華やかな雰囲気を完璧に作り出していたのはさすがだが、彼女の経験と実力、それにギャラの高さからすると、ずいぶん無駄遣いしているような気がする。
 炸裂するトリシャを見てみたいのだが、、、。

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◆ テクニカル面
 特記すべきは、音楽担当のG.V. Prakash Kumar。
 A.R. Rahmanの甥っ子だそうだ。
 まだ20歳そこそこの若者だが、非常に良い曲を書いている。作品がオーソドックスな構えを持つタミル映画だったせいか、90年代後半のRahmanを髣髴とさせる曲風で、私などは懐かしかった。
 彼の曲に支えられて、ダンス・シーンも良かった。特にトリシャとアジットの絡みは上出来で、かなりロマンティックだった。
 しかし、それも困りもので、あのミュージカル・シーンから全体をイメージしてこの作品を観ると、違った映画を観たような気がするだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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