カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Mathad Mathadu Mallige】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2007/09/24 23:07   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 5 / コメント 2

画像

 久々に4つ星レベルのカンナダ映画が現れた。別段、カンナダ映画に肩入れするわけではないが、やはり地元ということもあって、秀作の出現はうれしいものだ。
 主演はヴィシュヌヴァルダン。ヴィシュヌヴァルダンといえば、カリスマ俳優だったラージクマール亡き後、カンナダ映画界の良心を一身に背負ったかのような存在で、その人情味あふれる芸風と面長な顔立ちから、私などは密かに「南インドの藤田まこと」と呼んでいる。【Aaptha Mithra】(04)などではまだまだアクションなんかもこなしていたが、やはりお年に合わせて、心に染み入る人間ドラマで彼を見たい。
 お相手はあのマニ・ラトナム監督の奥方、シュリー・スハーシニ・マニラトナム。(「シュリー」は私の付け加え。)私はこの人が大好きで、「インドのお気に入りオバサマ女優・その1」に挙げている。(ちなみに、その2はレーヴァティで、その3はキロン・ケール。シャバーナー・アーズミーもレーカーも好きであるが、ちょっと怖いので、敬遠。)
 題名の「Mathad Mathadu Mallige」は「語れ、語れよ、ジャスミンの花」という意味。

【Mathad Mathadu Mallige】 (2007 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Nagathihalli Chandrashekhar
出演 : Vishnuvardhan, Suhasini Maniratnam, Sudeep, Smitha, Rashmi, Tejaswini, Doddanna, Tara, Rangayana Raghu, Mandya Ramesh
音楽 : Mano Murthy
撮影 : Krishna Kumar
美術 : Arun Sagar
編集 : Basavaraj Urs
制作 : Gandugali K. Manju

《あらすじ》
 カルナータカ州の豊かな水をたたえた川のほとりの村に、フーワイヤ(Vishnuvardhan)という農民が住んでいた。彼には妻のカナカー(Suhasini Maniratnam)と3人の娘、サンピゲ、ジャージ、マッリゲがおり、ジャスミンなどの花を育てていた。フーワイヤは農民だが学問を積んでおり、ガーンディー主義者として他の村人たちから大変な尊敬を受けていた。
 ある日、この村に、鉱物資源採掘を目当てとした多国籍大企業がやって来る。この企業は州大臣と地方の代議士を買収し、彼らを利用して農民たちを立ち退かせようと画策していた。無知な農民たちは企業側の甘い汁に乗るところだったが、フーワイヤは村を捨てることの弊害を力説する。
 しかし、長女のサンピゲ(Rashmi)は企業に同行していた地方長官の若者と恋に落ちてしまい、父を裏切り、その男と共に村を去って行く。また、次女のジャージ(Tejaswini)も、この問題を取材に来たテレビ局のスタッフと共に村を出て行ってしまう。
 村人の中にも企業側に協力する者が現れ、次第次第に村を捨てる者が増えてきた。もはやフーワイヤもこの動きを止められなかった。
 彼は弁護士と協力してこの問題を裁判所に提訴する。また、企業側の代表者と直接話し合う場を設けるが、この会談は不調に終わる。
 会談を終えて村に戻ると、フーワイヤの妻・カナカーが死んでいた。土地買収に反対する農民と警察の間で衝突が起こり、その煽りで警官に殺されてしまったのである。
 ちょうどその頃、ナクサライト(極左過激派)の若者たちがこの村に入り込んでいた。彼らは武力闘争で多国籍大企業を追い出すことを標榜していた。
 三女のマッリゲ(Smitha)は母を亡くした絶望感から、このナクサライトの闘争に身を投じる。しかし、ほどなく自分の過ちに気付き、彼らの下から逃れ去る。
 たった一人になったフーワイヤは一大決心をする。彼はナクサライトのリーダー(Sudeep)と対面し、武力闘争からは革命は生まれないと諭す。そして、川のそばに陣取って、ハンガーストライキに入る、、、。

   *    *    *    *

 もちろん、インドにもグローバル化の波は押し寄せていて、アメリカを中心とした外来文化とインド固有の文化との衝突、外国企業を受け入れるか現地の産業を守るか、開発か自然の保護か、という問題はあちこちで起きており、映画でもしばしば取り上げられる。しかし、この問題に真正面から向き合った商業映画となるとそう多くはなく、本作はかなり野心的な作品と言える。
 監督のナーガティハッリ・チャンドラシェーカルは、自身が反グローバル化の運動に身を投じている人だそうだ。彼は10年前にすでに【America! America!!】(96)という作品を撮っており、インドのアイデンティティというものについて強い問題意識を持っている人のようだ。
 ちなみにこのチャンドラシェーカル監督は、私はウペンドラ主演の【Super Star】(02)しか観ていないが、カンナダ映画では初のアミタブ・バッチャンを起用した【Amrithadhaare】(05)なども撮っており、押さえておきたい監督の一人だ。
 (写真下:Nagathihalli Chandrashekhar監督。)

画像

 フーワイヤが取った闘争の手段はガーンディーの「アヒンサー」。
 ラストに近いシーンで、彼は暴力を否定し、ナクサライトのリーダーに一輪の花を手渡す。この辺は去年大ヒットしたヒンディー映画【Lage Raho Munnabhai】を連想させる。おそらくチャンドラシェーカル監督は、この映画とこの映画から始まった一種のガーンディー・ブームをかなり意識していると思われる。
 このシーンだけでなく、この作品は全体的に花のイメージで統一されている。「フーワイヤ」は「花屋」という意味だし、妻と三人の娘の名前もすべて花の名が当てられている。ガーンディーの非暴力主義と花とは特に関係がないと思うのだが、本作といい【Lage Raho Munnabhai】といい、一体、この花のイメージはどこから由来しているのだろう。私などは、ベトナム戦争当時に「花はどこへ行った?」の歌と共に、「武器より花を」と街頭で花を手渡していた出来事を想起するが、こんなこととも関係があるのだろうか。ちょっと気になるところだ。

 このように、インドのグローバル化の問題に、ナクサライトの問題も視野に入れ、それらにガーンディーの平和主義を対置するという構えの大きな作品で、意図は評価できるが、難を言うとすれば、見せ方に工夫が足りなかったかな、と。思惑が見え見えで、特に仕掛けもひねりもなくエピソードが連なって行くという感じで、映画的な面白さには欠けていたと思う。
 ガーンディーの非暴力主義にしても、最高裁判所がフーワイヤの訴えを支持したとすれば、それは彼がハンガーストライキをしたからではなく、まさに多国籍企業側に違法行為があったからという理由でしかありえないだろう。断食をして得られるのは、たぶん村人の信頼とマスコミを含めた世論の共感までが限度で、この点、ガーンディー主義の実効性について過信しすぎているようにも思う。

◆ パフォーマンス面
 ヴィシュヌヴァルダンは文句なしのはまり役で、これも彼の代表作の一つになるだろう。
 対して、妻役のスハーシニは悪くなかったが、私の期待が大きすぎたせいか、ちょっと物足りなかった。この程度のキャラクターなら、特にスハーシニがやらずとも、という気がする。
 (写真トップ:VishnuvardhanとSuhasini。)

 ナクサライトのリーダー役を演じたスディープは、出演時間は短かったがかなり印象的で、おいしい役柄だった。この人は近ごろ俳優としてオーラが漂い始め(というか、意図的に漂わせている感がある)、不気味な存在である。若手世代の男優陣の中でも、頭一つ抜け出した感があり、注目株だ。

◆ テクニカル面
 音楽は【Mungaru Male】で大ヒットを飛ばしたマノー・ムールティ。【Mungaru Male】とはずいぶん変わって、田舎の風景に合ったおおらかな曲でまとめている。
 クリシュナ・クマールの撮影も素晴らしく、この美しい村が採掘現場として切り崩されたらどうする?と問題提起するには十分だった。

・満足度 : 3.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(5件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Olave Jeevana Lekkachara】
 ナーガティハッリ・チャンドラシェーカル監督のカンナダ映画。  ナーガティハッリ・チャンドラシェーカルは映画監督であると同時に、テレビドラマ監督、作家、社会活動家としても活躍しており、カルナータカ州では著名なオピニオン・リーダーの一人と目されている。  私は彼の作品では映画を5本観ただけなので、はっきりしたことは言えないが、彼の主な関心事は「インド対西洋」ということのようで、インド社会が西洋化の波に曝されるにつれて生じる問題点をタイムリーに作品化したものが多い。かといって、彼の作品... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/06/26 10:30
【Avva】 (Kannada)
 この頃カンナダ映画をよく観ていて、私のこの日記もカンナダ映画のページと化しつつある。  私自身、今年はカンナダ映画強化年間と定めているので、そうなるのも当然のことだが、しかし、もしそうじゃなくても、やっぱりカンナダ映画の方に足が向いたかもしれない。それぐらいこの頃のカンナダ映画には勢いが感じられるのである。  バロメーターの一つが新聞(Times of India誌)の映画欄の星印。ここ1,2年のカンナダ映画といえば星2つ、3つが当たり前で、なかなかそれ以上は出て来なかったが、今年は... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/11/21 13:03
【Nooru Janmaku】 (Kannada)
 ナーガティハッリ・チャンドラシェーカル監督のカンナダ映画。  ナーガティハッリ監督は、カンナダ映画界では「先生」の異名をとる高名な監督で、娯楽映画に社会問題を組み込んだ知的な映画の作り手として知られている。本作でも、リーマン・ショック以降、インド経済にも大きな打撃を与えた世界不況の問題が取り上げられているとの触れ込みだった。  ところで、ナーガティハッリ監督は、知名度と話題性の割には【Amrithadhare】(05)以降ヒット作が出ておらず、過去の人になってしまったか、との観測... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/06/01 00:51
ジャスミンの香りがしてきそう/Maathaad Maathaadu Mallige
たしか、これはスディープ様はちょこっとだけのご出演だったはずなので、若い頃のかなあと思ったら、2007年。 ...続きを見る
んさいげん!
2013/10/14 21:14
【December-1】 (Kannada)
 カンナダのP・シェーシャードリ監督といえば、ギリーシュ・カーサラワッリ監督に並ぶカンナダ・アートフィルムの作り手だが、とにかくこれまで発表した作品(7作)がすべて国家映画賞の何らかの賞を獲得している。アートフィルムといっても、彼の場合、退屈ということもなく、ユーモアと風刺感覚に冴えがあり、私はけっこう好きである(本ブログでは【Bettada Jeeva】(11)を紹介した)。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/05/01 09:24

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
これもスディープ目当てで見始めたのですが、お話自体が面白く、引き込まれました。
父親役のヴィシュヌヴァルダンという役者さん、なかなか素敵な父親を演じていたと思います。
たしかにちょっと藤田まことでしたね。

見ててもジャスミンの香りがしてきそうで、後半の荒らされていく畑がなおのこと印象に残りました。

やっほー
2013/10/14 21:12
この映画は環境問題がテーマで、日本人にも理解しやすいせいか、他にも「好きだ」と言っていた日本人の方がいます。

>たしかにちょっと藤田まことでしたね。

お若い頃はかなり男前でした。ちなみに、もう死んじゃいましたが。

話変わって、やっほーさんのブログをこちらのリンク集に入れました。事後報告ですが、悪しからず。
 
カーヴェリ
2013/10/15 23:01

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Mathad Mathadu Mallige】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる