カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aa Dinagalu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2007/12/12 22:00   >>

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 前回の【Geleya】に続いて、この【Aa Dinagalu】も新感覚のカンナダ暗黒街映画だと思う。
 ただし、虚構性の強いおとぎ話のような【Geleya】に対して、こちらは実話に基づいた写実的なタッチの作品。
 「Aa Dinagalu」は「Those Days」という意味。
 原作はAgni Shridharという人の「Daadaagiriya Dinagalu」(「暴力の日々」とでも訳そうか)。著者が実際に体験した出来事を綴った本だが、彼はこの映画でも脚本を担当しており、劇中ではシュリーダルという役名(実名)でAtul Kulkarniが演じている人物がそれに当たる。

【Aa Dinagalu】 (2007 : Kannada)
監督 : K.M. Chaitanya
脚本 : Agni Shridhar, Girish Karnad
出演 : Chetan, Archana, Sharath Lohitashwa, Ashish Vidyarthi, Atul Kulkarni, Girish Karnad, Vinaya Prakash, Dharma, Achyutan, Dinesh Mangalore, Samyuktha Belawadi
音楽 : Illayaraja
撮影 : H.C. Venu
編集 : P. Haridas
制作 : Syed Aman, M.S. Ravindra

《あらすじ》
 1985年のバンガロール。マフィアのドン、ジャヤラージ(Ashish Vidyarthi)が10年の刑期を終えて出所した。彼の服役中に、コートワール(Sharath Lohitashwa)というドンがバンガロールを牛耳っていたが、ジャヤラージは速やかに失地回復に取りかかる。
 チェータン(Chetan)とマッリカー(Archana)は結婚を前提に交際していた。
 チェータンは大手食品会社の御曹司で、ブラーミンの家系だったが、マッリカーはダンス教師をしており、家系はウォッカリガだった。この交際を快く思わないチェータンの父(Girish Karnad)は、マフィアのドン、コートワールに二人の仲を裂くよう依頼する。
 コートワールの組員は二人に嫌がらせを始める。チェータンはこの脅迫が父の依頼によるものだと知り、抗議するが、父は強硬な態度を崩さない。
 憤ったチェータンは、コートワールと敵対するジャヤラージ側に援助を求めるが、取り合ってもらえない。しかし、組員の一人から、連絡先として電話番号を教えてもらう。
 チェータンにはサーダールという自動車修理工の友人がいたが、その友人にシュリーダル(Atul Kulkarni)とバッチャンがいた。シュリーダルは弟がコートワールに重傷を負わされた経緯からコートワールを憎んでいた。バッチャンはチンピラで、行き掛かり上、コートワールの組に追随していたが、内心ではコートワールを嫌っていた。チェータンはサーダールを通してこの二人と親しくなる。
 ここに悪徳オイル商・クマール(Achyutan)がいた。彼はコートワールに上納金を払っていたが、ジャヤラージからも要求されるようになる。それを不快に感じたオイル商は、談合にかこつけてジャヤラージをカニシカ・ホテルに呼び出す計画を立て、その情報をコートワールに伝える。同時にオイル商は警察にも通報する。
 オイル商から情報を得たコートワールは、カニシカ・ホテルでジャヤラージを暗殺する計画を立て、行動を開始する。
 バッチャンらはこの計画をコートワールの筋から知らされ、それをチェータンに知らせる。チェータンはとっさの機転で、以前に教えてもらった電話番号に連絡し、ジャヤラージの組員に暗殺計画を伝える。
 ジャヤラージ襲撃事件は、間一髪で失敗に終わる。だが、その様子を見届けに行ったチェータンは、詰めていた警官・シヴァラージ(Dharma)に車のナンバーを覚えられ、後日逮捕される。
 チェータンは釈放されるが、マフィアとの関係を知ったマッリカーはチェータンから遠ざかる。
 チェータン、シュリーダル、バッチャンの三人はコートワール殺害を決意をする。三人は、サーダールの知人で、コートワールとも親しいスィーラージというヤクザの大物を介して、コートワールに接近する。カニシカ・ホテルの一件で苦境に陥っていたコートワールはこの三人を受け入れ、共にトゥムクルの農家に避難する。
 チェータンら三人は、コートワール暗殺後の安全確保のため、ジャヤラージの援助を仰ぐことにする。チェータンとシュリーダルはジャヤラージの事務所を訪れ、暗殺計画を知らせたのは自分たちだと告げる。ジャヤラージは彼らを信頼し、庇護を約束する。
 虎視眈々と殺害の機会を窺がう三人だったが、コートワールのそばには常に片腕のシェッティという男がいたので、果たせない。
 そんな時、チェータンの意図を知るコートワールの組員が、彼らは危険だとスィーラージに知らせる。その知らせを受けて、スィーラージはシェッティに電話で伝える。
 シェッティは三人に化けの皮がはがれていることを伝える。肝を冷やす三人だったが、しかし意外なことに、シェッティ自身もコートワールの命を狙っていたのである。その晩、四人はコートワールを切りつける。
 コートワール殺害を受けて、チェータンら三人とジャヤラージらは一斉に逮捕される。
 絶望して拘置所にいるチェータンの下に、マッリカーがチェータンの家族とともに面会にやって来る。

   *    *    *    *

 バンガロールで猛威を振るった2大マフィアが、オヤジに結婚を反対されたたった一人の青年の行動により呆気なく崩れ去るという、一見フィクションのようでありながら、まったくの実話だというところにこの映画の面白さがあるのだろう。
 しかもこの男が、ラジニカーントやチランジーヴィのような神がかりなヒーロー像ではなく、平凡な若者として描かれているところも新鮮だ。

 非常に抑制の効いたタッチで、リアルさにこだわり、大げさなアクション・シーンも血みどろの暴力シーンもない。やはり感覚としては新しいものがある。
 その淡々とした描き方は、近いといえばラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督のムンバイ・ノワール物に近いが、RGV監督作品の魂が凍りついてしまったような感触ではなく、これにはどことなく人間味が感じられるところに美しさを感じる。

 と、褒め言葉を並べたが、娯楽としてみた場合、けっこう退屈で、睡魔と闘いながら観た、ということを付け加えておこう。

 内容的には、人物関係が複雑で、カンナダ語が分からないとかなり苦しい。だが、言葉が分かったとしても、事件の背景をよく知らないとやはり苦戦するだろう。
 また、シェッティがボスのコートワールを裏切る理由もはっきりしなくて、もやもやが残るところだ。

◆ パフォーマンス面
 主役を演じたChetanはたぶん新人だと思うが、はっきり言ってこいつは使えます。

 ヒロイン、マッリカー役のArchanaも新人だと思ってたら、実はずいぶんとキャリアが長いことが分かった。【Sri Ramadaasu】(06)でシータの役をやっているというので、早速DVDをチェックしたら、いました(当たり前か)。おまけに、去年の【Yamadonga】でも冥界の天女役でダンス・シーンに出ていたらしいのだが、記憶にございません。なんだか人間離れした役が続いているようだが、この映画ではちゃんと地に足着いたダンス教師役をうまく演じていた。
 (上の写真:ChetanとArchana)

 しかし、この二人よりも光っていたのは、シュリーダル役のAtul Kulkarniと二人のドン、Sharath LohitashwaとAshish Vidyarthiだ。
 脇役だが重要なシュリーダル役に実力者のAtul Kulkarniを持ってきたのは正解だろう。北から彼を呼んで来た甲斐があったというものだ。(写真:Atul Kulkarni)

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 Sharath Lohitashwaのコートワールは人間くさい等身大のドン像が印象的だったし、怖がらせるよりは笑わせる悪役になってしまった感があるAshish Vidyarthiも本作では渋く、彼も俳優だということを再認識した。(写真:Ashish Vidyarthi)

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◆ テクニカル面
 監督のK.M. Chaitanyaは、やはりこれがデビュー作で、ギリーシュ・カールナードの助監督をやったり、ニュースフィルムを撮ったりしていたようだ。
 写実的なタッチの作品を撮る新進監督といえば、【Cyanide】(06)のA.M.R. Ramesh監督が印象的だが、この二人を「カンナダ・ヌーヴェルヴァーグのセーヌ左岸派」と呼んでおこう。(「カーヴェリ左岸派」のほうが適当かな。)

 音楽はIllayaraja。ダンス・シーンはなかったのだが、いわゆる音楽シーンは2場面用意されており、その曲はIllayarajaらしいきれいなメロディーだった。

・満足度 : 3.5 / 5

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