カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Accident】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2008/04/17 21:42   >>

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 ラメーシュ・アラウィンド監督・主演のカンナダ映画。
 ラメーシュといえば、カンナダ映画界の中核的な実力俳優だが、監督としてもすでに2作を世に送り出し、評価もされている。
 監督作の【Rama Shama Bhama】(05)と【Satyavan Savithri】(07)は共にコメディー映画。前者は観たものの、そんなに面白いとも思われなかったので(大ヒットしたが)、後者は見送ってしまった。
 今回は一転してサスペンス映画。
 しかも、カンナダ映画にしては気合いの入った宣伝の仕方で、新聞などを見ると、一瞬、ハリウッド映画の広告かと思ってしまう派手さだった。
 この頃元気なカンナダ映画、いよいよエースの登場か?

【Accident】 (2008 : Kannada)
監督 : Ramesh Aravind
出演 : Ramesh Aravind, Rekha, Pooja Gandhi, Mohan, Tilak, Balaji, Pathy Aiyar, Dinesh Babu, Rajendra Karanth, London Mahesh, Sudharani, Chaitanya, Roshan, Gym Bhaskar, H.G.Dattatreya
音楽 : Rickey Kej
撮影 : G.S.Bhaskar
編集 : P.R.Soundar Raj
制作 : G.Raghunath

《あらすじ》
 ラジオ・ジョッキーのサーワント(Ramesh)は2年前にヴァス(Rekha)と結婚し、仲睦まじく暮らしていた。2人には4人の親友がおり、家族以上に親しく交流していた。
 ヴァスは社会活動家で、不正は断固許さないといった態度で社会悪の摘発に臨んでいた。そのため、各方面から恨みを買うことも多かった。
 サーワントは研修のため3週間海外に出ていた。そして、バンガロールに戻ったとき、彼を待ち受けていたのはヴァスが事故死したという知らせだった。
 ヴァスの乗っていた車が踏み切りで列車と衝突。運転していたのはヴァスの活動の協力者で、ブーシャン(Pathy Aiyar)という男だった。警察は、ヴァスとブーシャンが不倫をしており、酒に酔ったブーシャンが誤って事故を起こしたと断定していた。
 だが、サーワントは信じなかった。彼は4人の友人たちと共に事実関係を調べ始める。
 サーワントはまずブーシャンの妻から、ブーシャンは車どころか自転車さえ乗れなかったことを聞き出す。また、事故現場の踏み切り近くからヴァスの車の輪止めを見つけ、これが事故に見せかけた殺人事件であることを確信する。
 彼は警察に協力を求める。警部補(Dinesh Babu)も協力に応じる。
 捜査線上にあるマフィアの男が浮かび上がる。それは映画などの海賊版を違法製造・販売している男で、ヴァスは以前に摘発したことがあり、マフィアは彼女に復讐を宣言していたからである。だが、その男は捜索時に警察に射殺されてしまう。
 サーワントは重要な証言を得る。サーワントのメイドが、サーワント宅でヴァスとブーシャンが覆面をした二人組みの男に殺されるのを目撃していたのである。メイドはそのとき愛人と逢い引き中だったため、サーワントにはそのことを隠していたのである。だが、その愛人はすでにビルから転落死しており、メイドもトラックにはねられて死亡する。
 粘り強く事実を追ううちに、サーワントは、ヴァスが医薬品会社をめぐる汚職事件を調査していたことを知る。サーワントの視線上に、ある大物政治家の姿が浮かび上がる、、、。

   *    *    *    *

 と、サスペンス・ドラマの性格上、これ以上は書けません。
 詳しく書きすぎたかなぁ、とも思うが、でも大丈夫、まだ山あり谷ありしますから。

 快調なテンポ、意外なストーリー展開、最後まで途切れない緊張感と、サスペンスとしてすごく楽しめるものだった。
 だが、どうしても映画という手段で完璧なサスペンス物を作るのは難しく、この作品も甘いところはあった。それで、この作品の性格も、どちらかというと、謎解きの知的な悦びを楽しむミステリー劇というより、殺された妻の敵を討つ復讐劇のほうに傾いていたように思う。

 しかし、それがこの作品の良いところだと思う。
 実際、監督のラメーシュがやりたかったのは、もちろんミステリーとして面白いストーリーを作ることだったに違いないが、それ以上に腐心したのは、夫と妻の愛情の強さとか、社会に巣食う悪の告発とか、物語を通して有意味なメッセージを浮かび上がらせることだったと思う。
 私自身の感想では、まぁ、政治家と大企業と警察の癒着というのはインド映画ではありふれたネタだが、海賊版CD・DVDのネタは面白かった。
 マフィアがあんな所であんなふうにパイレーツを製造していたとは驚きだが、私も度々海賊版にはお世話になっているだけに、あのお金もマフィアの活動資金に回っていたかと思うと、背筋に寒いものを感じる。(とはいえ、この【Accident】さえ、海賊版がすでに出回っているというのは皮肉なことだ。)

 監督としてのラメーシュは各分野で成功を収めていると思うが、まず配役が良かった。
 スターとしては、ラメーシュ自身とヒロインのレーカ、プージャ・ガンディーぐらいで、あとはほとんど無名か、俳優でない人を俳優として起用している。サスペンス劇としてのリアルさを出すために、あえて馴染みのない顔を揃えたようだ。
 例えば、警部補役のディネーシュ・バブーは監督や撮影監督として有名で、ラメーシュ主演の名作【Amruthavarshini】(96)を撮った人だ。俳優としてのキャリアは知らないが、ベテラン俳優ばりの落ち着いた演技をしていた。(ついでに、現在公開中の【Mr Garagasa】という作品もこの人の監督作品で、撮影日数が9日間という早撮りを披露している。)
 また、厚生大臣役のラジェンドラ・カラントは物書きが本業で、この作品でも台詞ライターとして参加している。演技はこれが初めてらしい。賛否両論はあるが、印象的な芝居をしており、あの下品でコミカルな大臣像は、そのままカルナータカ州政府の閣僚のパロディーではないかと邪推したくなるほどだった。
 (写真下:真ん中が警部補役のDinesh Babu、右が厚生大臣役のRajendra Karanth。)

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◆ パフォーマンス面
 もちろん、俳優としてのラメーシュも秀でていた。(もう、いちいち指摘しない。)  二人のヒロインのうち、同僚のラジオ・ジョッキーを演じたプージャ・ガンディーは、そういえば重要な役柄でもなかったが、作品に彩りを添え続ける役割を果たしていた。彼女の知的な雰囲気はこの役にぴったりとはまっている。
 褒めてやりたいのはヴァス役のレーカちゃん。
 【Chitra】(01)でデビュー以降、パッとしない時期が続き、名前もAksharaに変えたりと苦労した彼女だが、【Chellaata】(06)と【Hudugaata】(07)でガネーシュのお相手を務めてやっとスターの仲間入り。本作でも大きな期待を集めてのヒロインだが、、、とどのつまりは殺され役ということか、、、。
 しかも、こう言っちゃあなんだが、彼女のイメージにぴったりすぎるホラーな死に方で、こりゃ、この路線が後を引かなければいいのだが。
 しかし、捨て身の覚悟で作品を盛り上げた彼女の女優魂に拍手喝采である。
 (写真トップ:サーワント by Rameshと4人の友人。写真下:ヴァス by Rekha。)

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◆ 総評
 【Accident】は、ホームランと言うにはもうひと伸び足りないが、スリーベース・ヒットぐらいの効果はある。三塁まで必死に走り込んだかのような努力には好感が持てた。
 宣伝の派手さから、変にハリウッドやボリウッドを真似たような映画だったら嫌だなぁと思っていたが、まぎれもないカンナダ・テイストの作品だったので、ほっとした。やはりラメーシュはカンナディガである。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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