カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Parugu】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2008/05/16 22:16   >>

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 バスカル監督の第2作。
 「2年目のジンクス」ならぬ「2作目のジンクス」というのはインド映画界にもあるらしく、素晴らしいデビューを飾った新人監督も2作目では苦労するものらしい。
 【Bommarillu】(06)で鮮烈にデビューしたバスカル監督。彼の2作目を待ちわびていたのは私だけではないだろう。今回もプロデューサーは【Bommarillu】と同じ‘ディル’ラージュ。ヒーローにアッル・アルジュンを迎え、脇役やスタッフを見ても、期待できそうな布陣である。
 ところで、私の関心事は、バスカル監督に2作目のジンクスはあるか?ということなのだが、テルグの観衆はまったく違った目でこの作品を見ているようだ。
 (写真下:バスカル監督。)

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【Parugu】 (2008 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Bhaskar
出演 : Allu Arjun, Prakash Raj, Sheela, Poonam Bajwa, Sunil, Srinivasa Reddy, Pruthviraj, Chitram Sreenu, Dhanraj, Subbaraju, Jayaprakash Reddy, Raju, Jeeva, Jayasudha, Ali, Kalpana, Rajitha
音楽 : Mani Sharma
撮影 : Vijay K.Chakravarthy
編集 : Marthand K.Venkatesh
制作 : Dil Raju

《あらすじ》
 ニーラカンタ(Prakash Raj)はAP州のとある田舎町の豪族。彼の長女、スッバラクシュミ(Poonam Bajwa)の結婚式が今まさに盛大に行われようとしていた時に、彼女は恋人のバブーという男と駆け落ちしてしまう。
 激怒したニーラカンタは、一族郎党を駆ってバブーの友人たち5人を探し出す。ハイデラバード在住のクリシュナ(Allu Arjun)もその1人だった。彼らは駆け落ち事件について白を切ったため、ニーラカンタ家の納屋に監禁される。
 5人の男たちは脱出に成功するが、クリシュナは逃走中の森の中で美しい女性を目撃し、躊躇してしまう。その隙に彼らは追っ手に捕らえられ、再び監禁される。
 その女性はニーラカンタの次女、ミーナクシ(Sheela)だった。彼女は姉の一件以来、同じことを仕出かさないよう家族から厳しく監視されていた。
 新たにバブーの友人が捕らえられ、彼の証言でスッバラクシュミとバブーがウィシャカパトナムにいることが分かる。ニーラカンタは一族とクリシュナたちを連れ、現地に赴く。しかし、クリシュナの援助で、スッバラクシュミたちは再び逃げ延びることに成功する。一同は田舎へ戻る。
 ひょんなことからミーナクシは、クリシュナがスッバラクシュミを逃がす手助けをしたことを知る。その事実はニーラカンタ側にも知れ、クリシュナは拷問にかけられる。その結果、スッバラクシュミはハイデラバードにいることが分かる。
 一同はハイデラバードへ捜索に行く。今回は、家が留守の間に次女も逃げてしまうことを恐れた父は、ミーナクシも同行させる。
 クリシュナはミーナクシに惚れていたが、ハイデラバードでの出来事を通して、彼女もクリシュナを愛するようになる。クリシュナはミーナクシとの駆け落ちも考える。しかしある晩、酒に酔ったニーラカンタがクリシュナに、娘に背かれた父の辛さを切々と訴える。それを聞いたクリシュナは動揺する。
 ニーラカンタは遂に長女を発見する。しかし、スッバラクシュミは父に対して、バブーとの生活が自分の幸せだと毅然と言い放つ。ニーラカンタは娘の気持ちに理解を示し、田舎へ戻ることにする。ミーナクシもクリシュナに未練を残しながら、ハイデラバードを後にする。
 ほどなく、ミーナクシの縁談がまとまり、結婚式の日となる。しかし、ミーナクシはクリシュナと駆け落ちする覚悟だった。クリシュナは友人たちと共にミーナクシの結婚式に姿を現す、、、。

   *    *    *    *

 【Bommarillu】が親子の関係、特に結婚を巡っての父子の対立を子の立場から捉えたものとすれば、この【Parugu】は父の立場に重点が置かれていて、2作の背中合わせな関係が興味深かった。
 【Bommarillu】の都会的で爽やかなタッチに比べて、本作は地方のラウディーが登場する荒っぽいものだったが、乱闘シーンも追跡シーンもバスカル監督はそつなくこなしている。監督としていろいろできるということが分かった。

 娘の駆け落ちから、荒くれ男どもが四駆に乗って走り出す冒頭シーンを見たときは、ああ、またあのパターンか、と思ったが、後半はかなり違った空気とコンセプトになっている。
 大方のレヴューではその後半の評価が低く、失敗作みたいな言われ方もしているが、私はそうは思わない。たぶん、主張に「揺れ」が見られ、父親側が正しいのか子供側が正しいのか、結論がはっきりしないというのが問題なのだろう。しかし、私が見た限り、バスカル監督はきちんと結論を出している。
 そもそも、親の意思による取り決め結婚か、子の意思による恋愛結婚かは、インド(ヒンドゥー社会に限らず)が今の社会形態と習慣を持っている以上、こちらにすべきとは決められない事柄だ。【Bommarillu】でもバスカル監督は、親と子に双方的な気配りを見せており、この【Parugu】でも基本的に同じスタンスに立っているわけで、特にバスカル監督が揺れているとも思われない。つまりは、彼ははっきりこんな映画が撮りたかったのだと思う。
 インドでは結婚を巡って親子が激烈に対立する映画が多く作られ、映画の真似をする若者たちも現実に現れている中、「軟着陸点」を探ろうとする作品があってしかるべきで、本作はそういった試みの一つとして評価すべきだと思う。

 ところで、テルグ映画ファン、メガ・スター・ファンなら誰しも知っている「シュリージャ駆け落ち事件」。去年の10月に起きた、チランジーヴィの次女、シュリージャが駆け落ちをし、さっさと結婚式を挙げてしまった(しかも、TV中継付きで)という事件だが、この【Parugu】はこの一件に関して、チル家の行動を弁護しようとしたものだ、という風評がある。
 私は上に書いた解釈から、そんなことではないと思うのだが、テルグ人の誰に聞いても、「ああ、あれはシュリージャの映画だよ」と言っている。
 去年の10月なら、この映画の企画や脚本もできており、一部は撮影にも入っていたはずなので、どうかなぁ?と思うのだが、しかし、あの一件でこの映画の内容もいくらか変容を受けた可能性はあるだろう。特に、映画の1エピソードとして、「Arya Samaj」に駆け落ちしてきた男(アリー演ずる)がニーラカンタに叱り飛ばされるシーンがあったが、あれなどは完璧に事件を受けたものだろう。
 ただ、もし本当にバスカル監督がチル家の御用聞きみたいな働きをしたとしたなら、悲しいことだなぁ。

◆ パフォーマンス面
 ヒーローのアッル・アルジュンは相変わらずのキャラ。飄々ととぼけているが、ここ一番で見せる機転と機動力が面白い。
 そして、プラカシュ・ラージ。上のあらすじを読んで分かるとおり、ほとんど主役だ。
 タイトルの「parugu」は「run」という意味で、もちろん、「駆け落ち(run away)」という意味も込められているだろうし、ヒーローのアッル・アルジュンも快走していた。だが、ここにはもっと凄い含みがある。「プラカシュ・ラージが走った!」ということだ。
 バスに乗っている娘を見つけ、父の執念とばかりに、そのバスを追いかけて全力疾走するシーンがある。あんなに必死に走っているプラカシュ・ラージは初めて見た。バスカル監督はよくぞあのオヤジを走らせたものだ。あれでギャラが2割はアップしただろう。

 女優については、ヒロイン、ミーナクシを演じたシーラの美しいこと!
 正統的インド美人ですね。まるでインド人形の可愛らしさです。ガラスケースに入れて観賞したいです。
 (写真下:Allu ArjunとSheela。)

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 他方、スッバラクシュミのPoonam Bajwaは、あまり出番がなくてコメントができない。だが彼女は、注目の若手女優として評価する声もよく聞く。そんなことなら私も手帳に名前を書いておこう。(おっと、その前に、名前の読み方を覚えなくっちゃ。)

◆ テクニカル面
 音楽シーンは、マニ・シャルマの音楽もアッル・アルジュンのダンスもOK。見どころだ。

◆ 結語
 さて、バスカル監督に2作目のジンクスはあったか、という問いであるが、作品そのものの出来は彼の力量を証明するものだったと思う。
 ただ、この内容の微妙さは、理屈抜きの娯楽映画を目当てとする観衆には敬遠され、興行的には成功しないかもしれない。
 しかし、テルグ映画ファンで、テルグ映画を観続けてきた日本の鑑賞者なら、いろいろな意味で観ておくべき作品だと思う。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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内 容 ニックネーム/日時
アッルアルジュンさんの二作目です。キレのあるダンスとてもいいですね〜。敵を睨みつけ上目遣いになる時、かっこいいですね。普段は眠たそうな感じなのですがw。
プラカシュラージさんのスーパーダッシュ!堪能しましたw。本気で走ってましたね〜。カーヴェリさんの見所の紹介に嘘はありませんね。必死なプラカシュラージさんかっこよく見えました。サンダルが凄いことになってましたしね。
結婚式の白い装束(インドの正装なのですか?)、一番似合う人ではないかしら?ASHOKでも、BRINDAAVANAMでもいろんな映画でお召しになっていますが、本当似合いますね。
チランジービさんの映画はまだ見たことないんですよねf^_^;。駆け落ちとかのニュースも知りませんでした。ていうか、この映画がリリースされた頃はまだインド映画のイの字も知りませんでした。そんななので私はまだマニアではなく、間違いなくインド映画初心者ですf^_^;。
シーラさんて、ADHURSのナーラシムハの彼女役でしたよね。同じ頃の作品ですが、演出が変わるとイメージがガラッと変わってサリーを可愛く着こなしてソフトな感じになっていましたね。
映画自体は歌の部分が工夫されてて面白かったですね。チェーンを使ったダンスの部分が特に印象的でしたね。

ナン
2013/09/07 21:44
>普段は眠たそうな感じなのですがw。

アホ顔とシビア顔をうまく使い分けていますね。

>結婚式の白い装束(インドの正装なのですか?)、一番似合う人ではないかしら?

はい、南インドの正装です。これが似合わない南インド俳優は、トップとは言われません。

>演出が変わるとイメージがガラッと変わってサリーを可愛く着こなしてソフトな感じになっていましたね。

田舎娘な感じが良かったですね。
シーラちゃん、私は好きなんですが、結局ブレイクしませんでした。
 
カーヴェリ
2013/09/10 00:42

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