カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aakaasha Gange】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2008/06/25 23:58   >>

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 ディネーシュ・バブ監督のカンナダ映画。
 映画について語るのにわざわざ料理に譬える必要もないのだが、、、高級レストランの豪華な料理を味わうだけが食の楽しみではなく、駅前の小汚い中華屋で抜群に美味いチャーハンに出会ったときなども、幸福感に浸れる瞬間だ。
 ディネーシュ・バブ監督については、私は常々こういう中華屋の腕のいいコックをイメージしている。なにせ彼の作品は、低予算で早撮り、それでいながら質的に高く、ヒット作も生み出している。まさに「安い」「早い」「旨い」の仕事人だ。
 美味いチャーハンと同様、こういう人の映画作品に出会うと、この世もまだまだ捨てたもんじゃないなぁと思ってしまう。(写真下:ディネーシュ・バブ氏近影)

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 彼の作品はDVDで【Amruthavarshini】(96)と【Suprabhata】(88)を観ただけだが、あんまり過去作品のディスクも出ていないようで、残念だなぁと思っていたら、良さ気な新作が公開された。

【Aakaasha Gange】 (2008 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Dinesh Babu
出演 : Mithun Tejaswi, Chaya Singh, Jayanthi, Dharma, Smitha, Vanitha Vasu, Komal Kumar, Doddanna
歌詞 : Kalyan
音楽 : Deva
撮影 : Ravi Suvarna
制作 : S.S.Srinath, S.B.Sudhakar

《あらすじ》
 サクレシュプルのとある大家族の家にラクシュミ(Chaya Singh)という音楽教師が赴任して来る。この家族はガウランマ(Jayanthi)という保守的で厳格なマダムが取り仕切っており、息子や娘たちも彼女に逆らうことはなかった。甥のソヌ(Mithun Tejaswi)もそうだった。
 ラクシュミには大きな使命があった。実は、ラクシュミというのは偽名で、本名はビーナ。彼女は災害孤児で、クリスチャンの養母(Vanitha Vasu)に育てられていた。
 ビーナ(ラクシュミ)はこの家のソヌと同じ大学の出身で、二人は深く愛し合っていたが、宗教の違いから厳格なガウランマは結婚を認めてくれそうにない。そこで、まずガウランマの心を掴むために、身分を偽って、この家にやって来たわけである。
 ビーナは持ち前の美しい歌声と誠実な性格から、家族の心を掴み、ガウランマにも一目置かれるようになる。ソヌは安堵するが、ある日、親類のマヤ(Smitha)という女性が屋敷にやって来る。彼女はソヌに惚れており、彼にいちゃいちゃと纏わりつく。
 ある時、とうとうマヤはラクシュミ(ビーナ)の正体を知ってしまう。ビーナはマヤに自分の生い立ちとソヌとの関係を打ち明ける。事情を知ったマヤはソヌとの関係を諦め、そのことを彼に告げる。
 ビーナはソヌと肉体関係を持つ。そして、ほどなく妊娠してしまう。ソヌや友人たちは中絶を勧めるが、ビーナは拒否する。しかし、事が発覚して家族内が大混乱するのを恐れたビーナは、密かに家を出ようとするが、ソヌに引き留められる。
 ガウランマはソヌとマヤを結婚させたいと思っていたが、マヤはオーストラリアで勉強したいと言って、断る。そして、ガウランマはビーナをソヌの結婚相手として認めるようになる。
 しかし、そんなある日、ガウランマが留守にしているときに、ビーナの妊娠が発覚してしまう。この家の長男(Dharma)は激怒し、ガウランマが戻る前にビーナを家から追い出そうとする、、、。

   *    *    *    *

 いや、良かったです。中華屋のオヤジも大したもんだ。
 本作はすでに2年前にできていたらしいが、こういう佳作がしばらくお蔵に入っていたとは、一体どういうわけだろう?

 映画の幕開けは、屋敷へと向かうオート三輪からヒロインが歌う【Amruthavarshini】の歌声が聞こえてくるというもので、同映画を観た人なら、ツカミはOKだろう。
 タイトルの「Aakaasha Gange」というのは「天の水」という意味で、シヴァ神の頭から出ているガンガーのことだ。このタイトルのイメージはどことなく【Amruthavarshini】(アムリタの雨)と似た感じだし、また、監督のDinesh Babu、音楽のDeva、歌詞のKalyanといえば、【Amruthavarshini】と同じチームなので、これは同作品の姉妹編かなとも思ったが、内容は全然違うものだった。
 ただ、歌に関しては、本作も【Amruthavarshini】と同じくクラシック調のもので、特に最初の2曲の音楽シーンの美しさには思わず感涙してしまった。

 ストーリー展開としては、コマルとドッダンナのコメディーが古めかしくてイライラするし、ビーナとソヌが結ばれるシーンと、ガウランマがビーナの養母に会いに行くシーンも唐突かなぁと思うが、全体的にうまくまとまっている。
 あらすじを読んで分かるとおり、異宗教間の恋愛と婚前交渉が扱われている。どちらもインドでは重たいテーマだが、描き方としてはさらりとしており、結末も支持できるものだ。
 この作品が感動できる理由は、インド人の好む「モラル」の感覚をうまく掴んでいるからだろう。モラルというのは、この場合、人がかくかくしかじかの状況に立たされたとき、こういう行動をとるのが正しい、というものだ。確かに異宗教間結婚も婚前妊娠も多くのインド人にとっては受け入れがたいことだが、そうした信条に相反するものであっても、そうすることが正しいと信じられる行為はあるはずで、観客も登場人物にそれを期待するようになる。そして、危うい状況を経ながらも、登場人物たちが期待通りの行動を取ってくれたとき、観客は「よし!」という満足感を得ることができる。ディネーシュ・バブ監督はそういう観客の率直な心理をうまく刺激していたと思う。

◆ パフォーマンス面
 演技陣で特筆すべきは、ヒロイン、ビーナ役のチャヤー・シンだ。
 毎度毎度、ヒロイン女優を取り上げては、「かわいい」だの「きれい」だのと大騒ぎしていて、またか、お前!と言われそうだが、そうせざるを得ないほど印象的なので仕方がない。
 美人タイプではないが、少女マンガばりの、キラ星が五つぐらい描けそうな大きな目は一見に値する。
 バンガロール出身で、カンナダ映画にも出演していながら、カルナータカではぱっとせず。演技的にはしっかりしたものを持っているのに、そんな彼女がタミル映画界でアイテム・ガールをやっていたとは、、、。胸がでかいということが彼女の場合あだになったのかもしれない。
 マサラ娯楽でも見てみたいが、彼女は本作のようなパラレル・シネマっぽい作品のほうが似合うだろう。この映画はすでに2年前のものなので、今現在、彼女がどこで何をしているのか分からないが、もうひと頑張りしてほしい。

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 反対に、主人公ソヌ役のミトゥンというのはまるで冴えない俳優だった。この作品の泣きどころだろう。(役柄には合っていたが。)
 (写真トップ:Mithun TejaswiとChaya Singh。)

 他に、実は本作がデビュー作だったスミタと、ガウランマ役の貫禄たっぷりのジャヤンティも良かったし、ビーナの養母を演じたワニタワースの看護婦姿も個人的には好きだ。

◆ テクニカル面
 ディネーシュ・バブ監督は撮影監督としてのほうが有名だが、本作ではRavi Suvarnaという新人がカメラを担当している。しかし、ディネーシュ・バブー自身が撮ったのではと思えるほど、きれいな映像だった。

◆ 結語
 【Aakaasha Gange】は、ディネーシュ・バブ監督作品ということから来る期待を裏切らない佳作だった。金はかけなくとも、頭と技術で良い映画が撮れるという一例だが、これもやっぱり、ディネーシュ・バブのケーララ人の血がなせる業なのだろうか。

・満足度 : 3.5 / 5

¶参考
Dinesh Babuについては
http://en.wikipedia.org/wiki/Dinesh_Baboo
http://www.ourkarnataka.com/Articles/sreesha/dineshbaboo.htm
Chaya Singhについては
http://en.wikipedia.org/wiki/Chaya_Singh
 

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