カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Moggina Manasu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2008/07/29 22:26   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 13 / コメント 0

画像

 この映画については、音楽CDはもう2月頃にはリリースされ、街頭に映画ポスターも張り出されていた。
 そのポスターは見たこともない4人の女性だけが写っているもので、たいていアクの強い男優の顔が並んでいるインド映画の標準からすると、異色作の匂いが漂い、作品の出来がどうであれ観るつもりでいた。
 ところが、その後ぱったりとこの映画に関する消息が途絶え、私もすっかり忘れてしまっていた。
 どうやら検閲問題で公開が遅れたようである。‘Karnataka Censor Board’はこの作品に「A」(禁18歳未満)を指定したが、プロデューサーのクリシュナッパはそれを不服として裁判を起こし、晴れて「U/A」指定(親同伴なら18歳未満も鑑賞可)での公開となった。

 本作には困ったことに、“Film for Girls”とか“Watching this film may be injurious to boys' hearts.”とかいうキャッチ・コピーが付いており、いささか怯まないでもなかったが、まぁ、私も「boys」や「girls」を遠く超越した存在であることだし、ここは余裕で観に行くことにした。

【Moggina Manasu】 (2008 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Shashank
出演 : Radhika Pandit, Shubha Poonja, Manasi, Sangeetha Shetty, Yash, JD Nagaraj, Skandha, Manoj, Harsha, Achyuth Rao, Sudha Belawadi, Jai Jagdish, Rajesh, Sharan, Master Kishen
音楽 : Mano Murthy
撮影 : Chandrashekhar
編集 : Suresh Urs
制作 : E.Krishnappa

《あらすじ》
 マンガロールにある‘Queen's College’というPUC(Pre University College)にチャンチャラ(Radhika Pandit)とレヌカ・デーヴィ(Shubha Poonja)が入学してくる。彼女たちは1年先輩のディークシャ(Manasi)とサンジャナ(Sangeetha Shetty)のイジメに遭うが、4人はすぐに仲良しグループとなる。おぼこ娘だったチャンチャラとレヌカも見る見るうちにモダンな娘へと変身する。
 ディークシャとサンジャナにはボーイフレンドがいたが、チャンチャラとレヌカにはもちろんいない。そこで、二人の関心事はボーイフレンドを作ることに向かう。
 先にボーイフレンドができたのはレヌカのほうだった。彼女はサンジャナを通してアーカーシュを紹介してもらい、相思相愛になる。
 一方、チャンチャラは英語教師のラメーシュ(Rajesh)に恋心を抱く。彼女はラブレターをラメーシュに渡そうとするが、彼の人柄に感銘を受けることになり、恋心は尊敬の念に変わる。
 チャンチャラはその後スニルという青年と出会い、カップルになる。しかし、スニルの嫉妬深く、自己中心的な性格に嫌気がさした彼女は、彼と別れる。
 ディークシャは、厳しい父親(Jai Jagdish)に男と交際していることを知られ、強く叱られる。彼女は家出をし、恋人ラージの部屋に転がり込む。
 チャンチャラはラーフル(Yash)という音楽家の青年に出会う。ラーフルはチャンチャラに惚れており、積極的にアタックする。彼女もラーフルに好意を示す。
 ディークシャの母が死んでしまい、彼女と父との関係は最悪になる。また、ラージは仕事上でうまく行かず、イライラが募り、結局ディークシャとラージは別れてしまう。
 レヌカの所に父がやって来、彼女の学費を捻出するために土地を売ったと告げる。そんな父の気持ちを裏切るかのように、彼女はアーカーシュとの交際を続け、とうとう妊娠までしてしまう。先輩のサンジャナはレヌカを叱り飛ばし、中絶を勧める。しかし、彼女は拒否する。
 レヌカやディークシャの件で深く思い悩んだチャンチャラは、学業に集中するために、ラーフルの愛を拒絶する決意をする、、、。
 それから数年後、クイーンズ・カレッジで同窓会が行われ、チャンチャラも再び母校を訪れる、、、。

   *    *    *    *

 ここ2年ほど真面目に(?)カンナダ映画を観ていると、何か予感を感じることがしばしばあった。何かが蠢いている感じで、私は男だし、もちろん子供も生んだことがないので、こんな喩えは変だが、お腹の赤ちゃんが大きくなって動いたり蹴ったりし、そろそろ出る頃かな、という感覚だ。
 で、そろそろこんなカンナダ映画が現れるだろう、いや、こんなカンナダ映画が観たい!と思い描いていたのとドンピシャのイメージの作品が遂に出て来た。
 いやぁ、まさに「遂にやってくれた!」という感じで、私はこの日ほどカンナダ映画を観ていて感激したことはない。

 タイトルの「moggina manasu」は「蕾の心」という意味。
 インドの10代の若者が経験する恋愛の光と影をリアルに描いたもの、と言えば簡単にまとまってしまうが、彼ら・彼女らの恋愛に対する憧れや絶望がかなり実相に近い形で描かれ、美化するでも批判するでもなく、お茶らけたコメディー映画や小洒落たファッション映画に流れるでもなく、ひたすら真摯な態度で映像化されている。
 私が感激した理由というのはまさにそこで、やっとインド映画も若者たちを若者たちとして描いてくれたか、というのがあった。しかも、本作が深いのは、実際に恋愛に浮き沈みする若者たちの気持ちにデリケートに即しているだけでなく、彼らに一定の回答・教訓みたいなものも提示しているということだ。
 私もインド映画を観始めて10年が経ち、ラブストーリーも秀作・駄作を含めてずいぶん観たような気がするが、本作の先駆けとなる作品は、、、と探してみても思い浮かぶものがない。つまりは、この映画の登場は、カンナダ映画の枠を越えて、インド映画全体からしても快挙なのではないかと思う。(こんな持ち上げ方をするのは私だけだろうけど。)
 そんな作品が若者たちにアピールしないわけがなく、映画館内はメインキャラクターが登場すると沸きに沸き、台詞の一つ一つに観客(もちろん学生たち)の声援が飛んでいた。スターが1人もいないという映画では、これは異例のことだろう。

 ただ、本作にも不満点がないわけではない。
 女性の立場に立った映画で、そういう触れ込みもしているが、どこまで女性の視点で見られているかというと、かなり詰めの甘いところがあると思う。
 また、ヒロインたちはPUCの学生という設定なので、日本でいうと高校2,3年生に当たるが、インドの実情を考えると、ちょっと若すぎたかな、と。(だいたい、ヒロインたちは16,7歳には見えんかったぞ!)
 ここは、やはり大学生の物語にし、しかも舞台をマンガロールではなくバンガロールにし、携帯電話やコンピュータを小道具に活用したら、もっと作品のテーマに合致したものとなったと思う。

 参考に書いておくと、プロデューサーのE.Krishnappaは【Mungaru Male】(06)で大ヒットを飛ばした人で、監督のShashankは【Sixer】(07)でデビューし、これが2作目のほぼ新人。この人たちもカンナダ・ヌーヴェルヴァーグのキー・パーソンということになるのだろう。

◆ パフォーマンス面
 ヒロイン、チャンチャラ役のラディカ・パンディットは、これがまた素晴らしく、毎度毎度女優を持ち上げて申し訳ないが、本当にこの人が映画初出演とは信じられない。
 レヌカ役のシュバ・プーンジャはマンガロール出身らしく、カンナダ映画とタミル映画に1本ずつ出演しているはず。本作での人気度はラディカ・パンディットより高いかもしれない。
 先輩の2人、ディークシャ役のマナシ、サンジャナ役のサンギータ・シェッティもきちんと仕事をしている。
 (写真トップ:左よりRadhika Pandit@チャンチャラ、Shubha Poonja@レヌカ、Sangeetha Shetty@サンジャナ、Manasi@ディークシャ。これを見て、げっ、イモ臭い!と思わないでください。青春というのは、どこの国でも、いつの時代でも、イモ臭く不細工なものなのです。)

 一応のヒーロー、ラーフル役のヤシュも初めて見た顔だ。あまりカッコいいとも思わなかったが、彼の初登場シーンとクライマックス・シーンでは大歓声が起き、ミック・ジャガーが出て来たかと思ったほどだった。
 (写真下:Radhika PanditとYash@ラーフル。この三日月顔の男が場内を沸かせていたとは、あなたは信じることができるか?)

画像

 脇役陣では、英語教師役のラジェシュ、チャンチャラの両親役のAchyuth RaoとSudha Belawadiも良く、この映画に落ち着いた視座を提供している。

◆ テクニカル面
 マノ・ムルティの音楽も大当り。1曲、【Taal】をパクったダンス・シーンあり。
 なお、こちらのカンナダ語のテレビ番組では、レヌカがビールをラッパ飲みして踊る音楽シーンが流れていたが、映画本編には出て来なかった。これはもしや上述の検閲の問題で、お蔵入りになったものか?

◆ 余談
 最後に、映画に1カットだけウペンドラの映像が挿入されるシーンがあり、やはり場内を沸かせていた。(作品名は分からなかった。)学園ラブストーリーにウペンドラ?と思うなかれ。観客のリアクションを見ても分かるとおり、やはりウッピーは若きカンナディガにとってのグルなのである。

・満足度 : 4.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(13件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Jhossh】
 本作は公開のずっと前からかなり話題になっており、トレイラーも面白そうだった。そして、公開されてからのレビューでもほぼ高評価で、こりゃ、もしやシャンカル監督のタミル映画【Boys】(03)に匹敵する若者映画の傑作か!と、期待に胸膨らませながら観に行った。  (「Jhossh(Josh)」は「Spirit」という意味。) ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/05/04 14:25
【Olave Jeevana Lekkachara】
 ナーガティハッリ・チャンドラシェーカル監督のカンナダ映画。  ナーガティハッリ・チャンドラシェーカルは映画監督であると同時に、テレビドラマ監督、作家、社会活動家としても活躍しており、カルナータカ州では著名なオピニオン・リーダーの一人と目されている。  私は彼の作品では映画を5本観ただけなので、はっきりしたことは言えないが、彼の主な関心事は「インド対西洋」ということのようで、インド社会が西洋化の波に曝されるにつれて生じる問題点をタイムリーに作品化したものが多い。かといって、彼の作品... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/06/25 23:05
【Kotha Bangaru Lokam】 (Telugu)
 ディル・ラジュー制作、ワルン・サンデーシュ主演の青春恋愛映画、、、と来れば、二重の意味で「二匹目のドジョウ」を予想してしまう。  一つ目は「二匹目のHappy Days」。  本作は去年のヒット作【Happy Days】と主演男優(ワルン・サンデーシュ)が同じであるだけでなく、音楽監督も同じMickey J.Meyer。  二つ目は「二匹目のBommarillu」。  【Happy Days】を観たとき、ワルン・サンデーシュはどことなくシッダールトの面影があると感じたが、本作... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/07/31 10:51
【Gokula】 (Kannada)
 プラカシュ監督のカンナダ映画。  プラカシュは【Kushi】(03)、【Rishi】(05)、【Milana】(07)、【Vamshi】(08)と堅実にヒット作を連ねている若手(そろそろ中堅か)監督だが、際立ってすごい作品を撮っているわけではないものの、カンナダ人の情を狙って外さない上手さがある。たぶん、ヨガラージ・バット監督と並んで、今のカンナダ映画界を代表する人情映画の作り手と言えるだろう。  ヒーローはウィジャヤ・ラーガヴェンドラ。プラカシュ監督とは【Kushi】、【Ris... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/12/11 22:24
【Krishnan Love Story】 (Kannada)
 シャシャンク監督のカンナダ映画【Moggina Manasu】(08)は、非常に良い映画であるにもかかわらず、公開後2年経っても未だ字幕付きDVDがリリースされていない。VCDは出ているのだが、版元のAnand Videoは、このフィルムフェアー賞(カンナダ・カテゴリー)5部門受賞の秀作を、カンナダ人以外にも見せようという気前の良さはないのかね?  もっとも、仮に日本の若者に【Moggina Manasu】を観せたとしても、ウケないこと確実なので、日本市場は無視しても構わないと思う... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/07/04 21:41
【Mathe Mungaru】 (Kannada)
 地方映画はその地方ならではのトピックを扱うのが一つの攻め手だと思うが、このカンナダ映画【Mathe Mungaru】もそういった作品だ。  物語は事実に基づいたもので、カンナダ人の漁師グループがパキスタンで21年間もの捕虜収容所生活を余儀なくされた出来事を描いている。映画の主人公はその漁師グループの1人、カルナータカ州シモガ県出身の「Narayan Mandagadde」という人をモデルとしており、監督のドゥワルキ・ラーガヴは彼の証言を基に脚本を書いている。  制作は【Munga... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/08/27 02:27
【Jaanu】 (Kannada)
 【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして世に出たプリータム・グッビは、その後監督として【Haage Summane】(08)、【Maleyali Jotheyali】(09)、【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】(11)と3作発表し、後の2作はヒットを記録している(ただ、私はヒットしなかった【Haage Summane】が一番好きだ)。そんな彼の4作目ということで、ひと通りの注目を集めていたのがこの【Jaanu】。 ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/06/08 21:32
【Addhuri】 (Kannada)
 先週末は世も末かと思われるほど碌な新作映画が公開されず、甚だ弱った。選択基準を下げて、とりあえずはS・V・ランガー・ラーウの孫がデビューしたというテルグ映画【Mr 7】でも観ておこうかと思ったが、それを祝福するほどトリウッドに対して思い入れのない私としては、迷った挙句、前から観たいと思いつつも後回しになっていたカンナダ映画【Addhuri】を観ることにした。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/08/11 01:47
【Life is Beautiful】 (Telugu)
 シェーカル・カンムラ監督といえば、作品の性質から言えば典型的なテルグ映画の作り手とは見なされないはずなのに、非常に印象深い過去のヒット作のおかげで、テルグ映画界を代表する監督の1人となっている。むしろ、シェーカル・カンムラ自身がトリウッドの領域を押し広げたと言うべきか。  内容的には、趣を異にする【Leader】(10)を除いて、どこにでもいそうな若者の感覚が素直に、特にカッコつけることなく描かれたものが主で、それが私の心を捉えた。インド映画を観始めて以来、かなり長期間に亘って私の... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/10/04 20:56
【Bachchan】 (Kannada)
 サンダルウッドで集客の期待できるスターといえば、今ではプニート、ダルシャン、スディープということになるが、なかんずくスディープはテルグ映画【Eega】(12)での成功により、スターとして、演技者として、一段厚みを増したかのようである。  そんな彼の気になる新作が本作【Bachchan】。題名は明らかにアミターブ・バッチャンを意識したもので、スディープが若き日のアミターブが体現していたような「Angry Young Man」を演じるとの噂だった。果たしてスディープはビッグBと肩を並べ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2013/04/21 14:52
【Ohm Shanthi Oshaana】 (Malayalam)
 この週末はマンムーティ主演の【Praise The Lord】を観るつもりだったが、隣のホールではナスリヤ・ナシーム&ニヴィン・ポーリ主演の【Ohm Shanthi Oshaana】もやっており、結局後者にした。というのも、先日の【1983】鑑賞記の中で、マラヤーラム映画界もヤング層をターゲットにした映画を作り始めている、といったことを書いたが、なるほど若者の描き方にはリアルなものが見られ、現実の若者たちの共感を得ているであろうことは観察できたが、この世代にとっては肝心のテーマ、すな... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2014/03/26 23:31
【Mr & Mrs Ramachari】 (Kannada)
 今やプニート、スディープ、ダルシャンに次ぐサンダルウッドのヒット請負人となった「ロッキング・スター」ヤシュの新作。ヒロインはラーディカー・パンディトで、ヤシュとは【Moggina Manasu】(08)、【Drama】(12)に続く3度目の共演。(ちなみに、二人は実生活でも交際しているらしい。)  監督はサントーシュ・アーナンダラームという新人。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/01/12 20:07
【Krishna Leela】 (Kannada)
 さぁ、ハッピー・ユガーディ、「隣の女の子」に愛を注ぐ企画・第2弾は、【Krishna Leela】のマユーリちゃん。私は早くも「神田まゆり」という日本名まで用意して本作の公開を待ちわびていた(この「神田」は微妙に「かんなだ」と発音してください)。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2015/03/25 21:23

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Moggina Manasu】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる