カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Minchina Ota】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2008/07/22 22:34   >>

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 AMRラメーシュ監督のカンナダ映画。
 AMRラメーシュといえば、2006年に【Cyanide】を発表した注目の若手監督だ。ラジヴ・ガンディー暗殺犯の最後の20日間を描いた【Cyanide】は、べらぼうに面白い作品というわけではなかったが、ドキュメンタリー・タッチの丹念な作風が評価され、同年のカルナータカ州映画賞でベスト映画賞の第3位に輝いている。
 私も彼のその後を楽しみにしていたが、やっとこさの新作の公開となった。今回はがらりと作風を変え、ヴィジャヤ・ラーガヴェンドラとムラリの兄弟スターを起用しての娯楽アクションということだ。しかもヒロインは、近ごろ私の夢にもちょくちょく登場するようになったラクシュミ・ラーイさんということで、爆発的なヒット作になるのではないかと、勝手に期待していた。
 (写真上:左からラクシュミ・ラーイ、ヴィジャヤ・ラーガヴェンドラ、ムラリ。)

 「Minchina Ota」は「Run Fast」という意味。これに「Live to Chase and Chase to Live」という英語の副題が付いている。

【Minchina Ota】 (2008 : Kannada)
物語・監督 : A.M.R. Ramesh
出演 : Vijaya Raghavendra, Sree Murali, Lakshmi Rai, Suman, Rahul Dev, Rangayana Raghu, Umashri, Tennis Krishna
音楽 : V. Manohar
撮影 : P. Rajan
制作 : Sa.Ra. Govindu

《あらすじ》
 ヴィジャイ(Vijaya Raghavendra)は美大で絵画を学ぶミドルクラスの若者で、両親と共にバンガロールの高級アパートに住んでいた。
 バードラ(Sree Murali)はそのアパートに隣接するスラムの若者で、父(Rangayana Raghu)はぐうたらだったが、バードラ自身は勤勉で正義感の強い男だった。
 ヴィジャイのグループとバードラのグループは仲が悪く、顔を合わせれば喧嘩となっていた。
 ヴィジャイのアパートにラクシュミ(Lakshmi Rai)というMBAを学ぶ女子学生が引っ越して来る。ラクシュミの実家はマンガロールにあったが、彼女の兄は泣く子も黙るマフィアのドン、ラマナ・ラーイ(Suman)だった。
 ヴィジャイはラクシュミに惚れてしまう。だが、スラムの人々に親近感を抱いていたラクシュミは、バードラを愛するようになる。
 嫉妬したヴィジャイはマンガロールのラマナ・ラーイに電話をかけ、妹がスラムの男と付き合っているとタレコミをする。ラマナ・ラーイはすぐさま手の者をバンガロールに差し向け、バードラに重傷を負わせた上、ラクシュミをマンガロールに連れ戻す。
 これを見たヴィジャイは深く罪の意識に苛まれ、自分の血を輸血してバードラを救う。
 一転してバードラとラクシュミのサポーターになる決意をしたヴィジャイは、しかし表向きは「マフィア相手じゃ、何もできないだろう」とバードラをバカにする。バードラは来たる日に備えて、怪我を押して筋トレに励む。
 ラクシュミの結婚が決まったことを知ったヴィジャイは、マンガロールまで彼女を迎えに行くようバードラをけしかける。彼は自分の車をバードラに貸し、自分も助手席に同乗する。
 二人の車は一路マンガロールを目指す。だがその行く手には、ラマナ・ラーイの手下(Rahul Dev)が運転する殺人トラックが待ち構えていた、、、。

   *    *    *    *

 いや、面白かったです。
 もともとこういう単純明快、激情突っ走り系ドラマは大好きなので、私的には楽しく鑑賞でき、クライマックスでは「男ムラリー!」とガッツポーズしていたほどだ。
 ところが、レヴューの評価は概ね悪く、「期待ハズレ作」の烙印を押され、客の入りもイマイチのようである。

 彼らの言い分もいちいち分からぬわけではない。
 最も大きな不満点はヴィジャヤ・ラーガヴェンドラの使われ方のようだ。
 ヴィジャヤといえば、田原俊彦のような熱血正義漢をやるものと決まっており、本作のように女がらみでヤクザにタレコミするような情けない男の役は「あってはならぬ」わけである。
 こうした意見には関心がないが、ただ、この映画のようなツイン・ヒーロー物は、どちらのヒーローにより焦点を当てるのか、二人の関係をどうするのかという点で、ストーリーを作るのが難しくなり、本作も純粋なヒーローといえるバードラ(Murali)はいいとして、ヴィジャヤ(Vijaya Raghavendra)の役柄は確かにうまく脚色されていたとは言い難く、なんとも収まりの悪さはあった。

 また、クライマックスのヒーローたちが乗った車と殺人トラックのチェイスがあまり盛り上がっていないという批判もある。
 実は、このシーンはスピルバーグ監督の【激突!(原題:Duel)】(71)からパクったものであるが、あれほどの恐怖感を作り出していないというのである。
 まぁ、そうだとは思うが、しかし、スピルバーグの【激突!】は特異な作品であり、今さらあれと同じものを再現したからといって、特に褒められるわけではない。むしろここは、あのネタをインドのアクション・ロマンス映画に捩じ込んだ強引さを評価したい。
 しかも、【激突!】ではトラックの運転手は全く顔を見せないが、本作では悪役のラーフル・デーヴがニヤニヤ笑いながら殺人トラックを運転するという趣向になっており、私は面白く鑑賞できた。

 このカー・チェイス・シーンが盛り上がらなかった理由として、チャイ屋にバードラとヴィジャイの家族や友人たちが集い、不安げに状況を見守るという場面が何度か挿入され、それが盛り上がりを邪魔していたという意見もある。
 それも正解で、確かにシーンのさばき方はまずかった。しかし、この映画の狙いは、バードラとラクシュミのラブストーリーだけでなく、バンガロールの高級アパートとスラムに住む、通常は交わることなく生活している人々が、あるきっかけで肩を叩き合い、握手する情景を見せる目的もあるので、このチャイ屋のシーンは外せないはずだ。

◆ パフォーマンス面
 ヴィジャヤ・ラーガヴェンドラとムラリについては、本作では弟のムラリに軍配が上がる。先日、結婚したばかりのムラリだが、本作は結婚祝いとも呼べるような、おいしい役柄となった。(なお、彼は結婚を機にシュリー・ムラリと名前を変えている。)
 ヴィジャヤの熱演も悪くはないが、上に書いたとおり脚色に難があって、損をしている。

 ラクシュミ・ラーイは、ゴテゴテ、ギラギラとは一線を画した軽めのメイクで、まさに素材の旨味が生きた自然な味わいだった。
 見るたびに良くなっている感じで、もっと早く彼女の存在に気付きたかったものだ。

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 ちなみに現在、彼女はサラヴァナ・ストアー(主にTN州で展開しているサリー・シルク製品・アクセサリーのチェーン店)のCMモデルを務めており、タマンナ、サンジャナ、プーナム・バジュワとの4人組のダンスが毎日テレビで見られる。サラヴァナ・ストアーのCMには、以前はスネーハ、シュリヤー・サラン、ゴーピカ、ジェネリア、プリヤマニらも出ており、つまりは、このCMを見れば旬のサウス女優がだいたい分かる仕掛けになっている。

 悪役は、主にトリウッドで活躍するスマンとラーフル・デーヴのセット。
 スマンはあまり出番はなかったが、マフィアのドンを紳士的に演じていた。他方、ラーフル・デーヴは結構笑えて、殺人トラックの運転手だけでなく、長さが1メートル以上もある巨大スパナを振り回す、とんでもない悪漢だった。
 彼らは2月に公開された【Bindaas】にも出ており、今年2度目のカンナダ映画出演。どうして2人が小まめにサンダルウッドに顔を出すようになったかは不明だが、もしかしたらバンガロールに素敵なキャバレーでも見つけたのかもしれない。

◆ テクニカル面
 V. Manoharの音楽とダンスシーンはまずまずの出来だと思う。特にテーマ曲ともいえる、二人が車で疾走するシーンに流れる曲は、体温が2度ぐらい上がりそうなスポ根的曲調で、思わず口ずさんでしまう。
 ラクシュミ・ラーイが登場する冒頭の音楽シーンも、彼女が非常に可愛くてOK。また、ヤクシャガーナ(南カルナータカに伝わる伝統芸能)をモチーフにしたダンスシーンもあり、なんとラクシュミ自身がメイクしてヤクシャガーナを演ずるという趣向もあり、楽しいものだった。

◆ 結語
 【Minchina Ota】はベタなストーリーと脚本・演出上のいくつかの不手際が災いして、悪評を蒙っているが、私としてはこの作品の馬鹿げた熱さは評価したい。
 AMRラメーシュ監督の将来についても、私は楽観している。

・満足度 : 3.0 / 5

2008年07月23日02:04
 

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【AMR's Game】 (Kannada)
 私が初めて観たインド映画は(サタジット・レイの作品は除いて)、初インド旅行の際にムンバイで観た【Agni Sakshi】(96)だが、そのヒロインがマニーシャー・コイララだった。その後、バンガロールに赴任直前に日本で観た【Bombay】(95)も彼女だったし、こちらへ着いたときには【Dil Se..】(98)が公開中だった。つまり、私がインドと絡み始めたころに、アイシュワリヤー・ラーイやタッブーと並んで、私に夢を与えてくれた女優がマニーシャーだったわけだ。 ...続きを見る
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