カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kuselan】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2008/08/25 22:00   >>

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 P.ヴァース監督、ラジニカント「特別出演」のタミル映画。
 今年上半期の南インド映画界の意外な(?)出来事といえば、マラヤラム映画【Kadha Parayumbol】の大ヒットだろう。【Kadha Parayumbol】は娯楽作品とはいえ地味な内容で、にもかかわらずヒットし、評価され、リメイク話も次々浮上し、あれよあれよと言っている間にP.ヴァース監督のこのタミル語版リメイク【Kuselan】と、同じくテルグ語版【Kathanayakudu】が出来上がってしまった。(10月にはプリヤダルシャン監督のヒンディー語版【Billoo Barber】も登場するだろう。)
 この降って涌いたようなラジニ作品の登場に、うれしい反面、なんだかやっつけ仕事っぽく、こんなに急いで作らなくてもなぁという気もする。

 もっと早く鑑賞してこの日記にアップしてもよかったのだが、どうせならテルグ版も観て、観比べ鑑賞記に仕立てるつもりだった。しかし、待てども【Kathanayakudu】がバンガロールで公開される気配がなく、やむを得ず海賊版DVDで観ようと思ったら、いつもの海賊版屋もなぜか閉鎖状態。仕方がないので、まずは【Kuselan】だけ書いておくことにした。

 ちなみに、この【Kuselan】は、タミルナードゥ州とカルナータカ州間でもめているホゲナッカル・ダム建設問題に関して、ラジニカントの発言に問題があったとしてカンナダ・アクティヴィストたちが抗議し、あわや上映禁止になりかけた経緯がある。事態はラジニが遺憾の意を表明するという形で収拾し、めでたく公開となった。

【Kuselan】 (2008 : Tamil)
脚本・監督 : P.Vasu
出演 : Pasupathy, Rajinikanth, Meena, Nayantara, Vadivelu, Livingston, Geetha, Santhanam, M.S.Bhaskar, Prabhu Ganesan, Vijayakumar, Brahmanandam, Tanikella Bharani, R.Sundararajan, Sona, Mamta Mohandas, その他カメオ出演多数
音楽 : G.V.Prakash Kumar
撮影 : Arvind Krishna
制作 : Pushpa Kandaswamy, G.P.Vijayakumar

《あらすじ》
 タミルナードゥ州の小さな村に時代遅れの床屋を営むバーラ(バーラクリシュナン:Pasupathy)という男がいた。彼は妻のシュリーデーヴィ(Meena)や3人の子供たちと幸せに暮らしていたが、向かいにモダンな床屋ができたせいで、商売は上がったりで、生活は苦しく、子供の学費も払えないほどだった。彼は村人たちの嘲笑の的だった。
 そんなバーラを取り巻く状況が一変したのは、スーパースターのアショーク・クマール(Rajinikanth)が映画撮影のためにこの村にやって来たときだった。実はバーラはアショーク・クマールと幼なじみだった。この事実を知った村人たちは、手のひらを返したようにバーラに接し始める。
 校長先生(Geetha)は学校の創立25周年記念式典の主賓としてアショーク・クマールを呼ぼうと思い、バーラに仲介してくれるよう頼む。映画製作に関心のある金貸し屋のクップサミ(Livingston)はスーパースターと懇意になろうと思い、便宜を図ってもらうために、バーラに床屋の回転椅子と最新式の道具をプレゼントする。
 だが、バーラは乗り気ではなかった。いくら幼なじみだといっても、あのスーパースターはもはや自分のことなど覚えていないだろうという不安があったからである。彼は渋々撮影現場を訪れるが、アショーク・クマールに会えないばかりか、けがまでしてしまう。そんなバーラの様子を見て、村人たちは疑い始め、彼のことを嘘つき扱いする。
 校長先生はPTA会長(Tanikella Bharani)らを伴ってアショーク・クマールに直接交渉に行く。彼は記念式典に出席することに同意する。
 式典の日、お祭り騒ぎの中で、アショーク・クマールは学校に現れる。そこには他の村人たちに混じってバーラも出席していた。
 やがてアショーク・クマールが壇上に上がり、スピーチを始める。しかしその内容は、バーラにとっても村人たちにとっても思いもかけないものだった、、、。

   *    *    *    *

 私的には結構楽しめ、感動さえした。【Kadha Parayumbol】では泣かなかったが、こちらではじわっと涙が出てきた。まずまずの出来のリメイクだと思う。
 ただ、公開後3週間が過ぎて、結果を見てみると、本作はあまり高く評価されておらず、また興行的にも芳しくないようだ。

 主な批判点は、本来主役ではないラジニカントに重心が移りすぎ、オリジナル【Kadha Parayumbol】の持つ良さが失われている、というもので、奇しくもP.ヴァース監督とは【Chandramukhi】対【Bhool Bhulaiyaa】に続き、再びリメイク対決をすることになったプリヤダルシャン監督も同様の批判をしている。
 しかし、私が観た限り、確かにラジニのプレゼンスは異様に大きかったが(大体、主役でもないのに、‘Super Star’のロゴはいつもの通りビカビカ輝いていた)、ラジニが作品そのもののバランスや良さを崩していた印象はない。
 むしろ、P.ヴァース監督はそういう批判を先取りしてか、主人公のパシュパティにはかなりデリケートに気配りした描き方をし、それに応えるかのようにラジニもいつになく繊細な演技をしており、この二人が形作る主軸はうまく機能していたと思う。
 そもそも、ラジニを使って【Kadha Parayumbol】をリメイクすると発表された時点で、どんな映画になるかは想像がつきそうなもので、それをわざわざ「ラジニに重点が置かれすぎ」と言うのは、言わずもがなの批判だと思う。もちろん、そこでP.ヴァース監督が非常に抑制した形でラジニを使うと、「おおっ!」ということにもなったかもしれないが、そういうことが起こらないのがラジニ出演作の常識でもある。
 ただ、バランスが崩れてしまっているのは確かで、それはライバルの床屋を演じたヴァディヴェールのコメディーがくどかったことと、ストーリーとはほぼ関係なく、ナヤンタラのプロモーション・ビデオになってしまったソング・シーンが2つほどあったことだろう。この2点に関してはP.ヴァース監督も悪ノリしてしまったようだ。

 しかし、私自身も【Kuselan】はオリジナル・マラヤラム版の良さが薄れているとは思う。
 【Kadha Parayumbol】のテーマは、私の見るところ、@友情、A村の近代化の問題、B村落共同体の豊かさ、の3点があったと思う。(AとBは背中合わせ。)
 【Kuselan】は、@はOKだけれども、AとBの視点がはっきり意識されていなかったように思う。しかし、【Kadha Parayumbol】の面白さと鋭さは実はこちらの方で、おかしな連中が形作る小宇宙のような村社会と、そこから脱落しかかった床屋のオヤジが再び村人たちに受け入れられるというのが感動ポイントだったと思う。それが弱められてしまったとは残念なことだ。批判するとしたら、ラジニ云々ではなく、この点だろう。(その代わり、【Kuselan】では友情と共に家族の情愛が強調され、より大衆受けする内容となっている。)

◆ パフォーマンス面
 というわけで、貧乏な床屋役のパシュパティは期待に応えるパフォーマンスだったと思う。その妻役のミーナ、それに子供たちもOKだった。
 (写真トップ:金はないけど、幸せ一杯なバーラクリシュナン家の様子。)

 ラジニカントは常とは異なるラジニ像で、こういう彼を見るのも悪くはない。
 この作品には日本人エキストラが出るとの前情報があったが、果たして出ていた。そこで、彼らに対してラジニが日本語でセリフを言うのだが、何と言ったかは見てのお楽しみ。
 (写真下:くつろぎモードで読書するラジニ氏。その手にはOSHOの本が!)

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 ヒロインになるナヤンタラは、上に書いたとおり、使い方としては徒だった。
 【Kuselan】の中で撮影していたのは「Annamalai: Part 2」と「Chandramukhi: Part 2」という設定だったが、後者でのナヤンタラとラジニの絡みはけっこう面白かった。
 (雨中でのナヤンちゃんの恍惚ダンス。)

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 マムタ・モハンダースも出るということで、個人的に期待していたが、出番というほどの出番もなく、かなりがっかり。(テルグ版ではもしや、という期待はあるのだが。)

 コメディー陣では、ヴァディヴェールは頑張りすぎたが、笑えないことはない。しかし、金貸し屋のリヴィングストンのほうが良かった。サンタナムは沈没。

◆ テクニカル面
 音楽はA.R.ラフマーンの甥っ子、G.V.Prakash Kumarによるもの。悪くなかったと思う。
 ‘Cinema, Cinema’は南インド映画75周年記念を祝う楽しいミュージカルで、シヴァジ・ガネーシャンやMGR、NTRにラージクマルの映像も使われていた。現役のスターもいろいろカメオ出演していたが、勢揃いというにはほど遠く、【Om Shanti Om】(07)に比べても、しょぼいものだった。いろいろ制約があるのだろうけれど、どうせ悪ノリするなら、こんなところでやってほしかった。(ラジニカントの娘、サウンダリヤも出ていたらしいのだが、認識できず。)

◆ 総評
 以上、【Kuselan】はオリジナルとは大きく趣を異にするリメイク作品で、私は好意的に受け止めているが、一般的な反応は鈍く、もしかしたら失敗作ということになるのかもしれない。「帯に短し、たすきに長し」といったラジニの使い方は、やはりご法度なのだろう。
 そうなると、早々にP.ヴァース批判を展開したプリヤダルシャン監督の【Billoo Barber】がどんな仕上がりになるのか、関心が高まる。前回対決の【Bhool Bhulaiyaa】では、オリジナル【Manichitrathazhu】(93)のエッセンスがそれほど生きていたとは思えない、リメイク作品としては並の出来だったので、【Billoo Barber】ではよもやそんなことはあるまいと期待している。
 また、カンナダ語版リメイクが作られるという話もあり、それが実現するなら、当分は【Kadha Parayumbol】現象で楽しめそうだ。

・満足度 : 3.0 / 5

¶参考
【Kuselan】のカルナータカ州での上映禁止危機については、
http://www.indiaglitz.com/channels/tamil/article/40422.html
プリヤダルシャン監督の【Kuselan】批判については、
http://timesofindia.indiatimes.com/India_Buzz/Priyadarshan_lashes_out_at_P_Vasu/articleshow/3342767.cms
 

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