カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Subramaniyapuram】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2008/09/18 00:06   >>

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 スワティ・追跡調査・第2弾!
 と、特に誰も期待していない企画ではあるが、、、このタミル映画は良さげな匂いがぷんぷん立ち込め、スワティはさておき、観たい1本だった。

【Subramaniyapuram】 (2008 : Tamil)
物語・監督 : M.Sasikumar
出演 : Jai, M.Sasikumar, Ganja Karuppu, Swathi, Samudhirakani, Vichithran, Mari
音楽 : James Vasanthan
撮影 : S.R.Kathiir
編集 : Rajamohamed
制作 : M.Sasikumar

《あらすじ》
 1980年、タミルナードゥ州マドゥライ郊外のスブラマニヤプラム村に、仕事はなく、無為に暮らす5人の若者がいた。中でもアラガル(Jai)とパラマン(Sasikumar)とカーシー(Ganja Karuppu)の3人は、酒を飲んでは悪戯、泥棒、喧嘩を繰り返し、しょっちゅうブタ箱にぶち込まれていたが、その度に村の政治家、ソムとその弟のカナガー(Samudhirakani)に釈放してもらっていた。
 そんな日々の中で、アラガルはソムの娘、トゥラシ(Swathi)と恋仲になる。冷静なパラマンは、ソムの娘に近付く危険性を説くが、アラガルは聞き入れない。
 ある時、ソムは村の要職の地位を反対派の男に奪われてしまう。弟のカナガーは、アラガル、パラマン、カーシーの3人に反対派の男を殺すよう懇願する。3人は殺害計画を立て、実行し、村から逃亡する。
 しかし、現場に残された自転車から犯人が割れ、アラガルとパラマンの2人は自首する。彼らは今回もカナガーが釈放してくれるだろうと期待したが、ソムが政治家としての地位を回復したため、カナガーは2人を見捨てる。
 だが、アラガルとパラマンは拘置所で知り合ったラヴィという男の援助を得て釈放される。アラガルとパラマンとカーシーは、行き掛かり上、ラヴィの復讐相手の男を殺す仕事を請け負うことになる。そんな中で、3人はカナガーに復讐する機会を窺うが、うまく行かず、逆に命を狙われる。
 しかし、ある日、アラガルはカナガーの兄を刺して負傷させる。自分の身が非常に危険な状態にあることを悟ったカナガーは、姪のトゥラシにひれ伏して、アラガルをおびき出すよう懇願する、、、。

   *    *    *    *

 物語のほぼ全体は1980年の出来事だが、映画の始まりと終わりは2008年になっていて、まず冒頭にある男が刑務所から出所したところを別の男にナイフで刺されるというシーンがある。刺したのは誰で、刺されたのは誰かは、映画の結末まで分からない。

 本作がどんなテイストの作品かは、Ameer Sultan監督の【Paruthiveeran】(07)を思い起こせばいい。(といって、【Paruthiveeran】を観た人も少ないと思うが。)時代も場所も空気も非常に似通っている。
 と思っていたら、監督のSasikumarは、そのAmeer Sultan監督やBala監督(【Sethu】や【Pithamagan】で有名)の下で助監督をやっていた人だということが分かった。道理で作風が似ているはずだ。

 厳しい日差し、砂ぼこり、酒とタバコと汗の匂い、騒々しい寺院の祭り、街角で鳴り響く映画音楽の割れた音。そうした道具立ての中で、毛むくじゃらな男たちが織りなす友情と裏切りと復讐の物語で、かなりズシっと来た。アート・フィルムではないが、ウソ臭さのないリアルなタッチは通常の娯楽映画とはずいぶん趣を異にしている。見応えはあった。

 にもかかわらず、私がイマイチ感動できなかったのは(置いてきぼりを食らった感じがしたのは)、やっぱりシビアすぎたのだろうと思う。
 一体、こんなに簡単に人を裏切れるものだろうか。復讐のために、こんなに執念深くなれるものだろうか。これがふた昔前のタミルの農村の現実だとしたら、なんとも過酷なことだなぁ、と思うと、作品との間に距離ができてしまった。
 それに、テーマとしても、はて?30年近く前の田舎のドラマを見せることにどんなメッセージが込められているのか、また、それを鑑賞している私は一体何者なのか、とか考えていると、だんだん居心地が悪くなってしまった。
 それは監督の意図したところではないだろうけど、私には消化のしにくい作品だった。

 しかし、スーパースターを見ながら踊り狂い、ほとんどディスコと化している映画館の様子や、寺院の祭礼に集まる芸人や観衆の熱狂など、タミルの田舎人のパワーにはまたまた感服してしまった。

◆ パフォーマンス面
 演技面では、3人の男たちはそれぞれ良かったと思う。
 メモ代わりに書いておくが、アラガル役のJaiは【Chennai 600028】(07:Venkat Prabhu監督)のヒットで注目を集めた人。
 パラマンの役は監督のSasikumar自身が演じている。なかなか渋い演技だった。ちなみに、制作もこの人。
 (写真下:JaiとSasikumar。)

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 カーシー役はGanja Karuppu。コメディー役ではなかったが、小汚く、掴みどころのない田舎男は彼らしかった。
 (写真下の左側。)

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 ヒロイン、トゥラシ役のスワティは、一定の評価は得ているようだが、私はどうかなぁと思う。私がスワティに注目するのはコメディエンヌとしての才能なのだが、本作では平凡な田舎娘という設定で、オトボケも勘違いもなく、物足りないものを感じた。前回紹介したテルグ映画【Ashta Chamma】のほうが彼女らしさが楽しめる。
 女優を続ける上ではこんな役をやる必要もあるだろうし、重要な役を無難にこなしてもいたが、ただ彼女の場合、ヒロインとして悲劇を誘発するムードに欠けるので、ドラマがドラマティックに盛り上がって行かず、求心力が弱くなった原因はここかなとも思える。(このことは、【Paruthiveeran】のプリヤマニと比較すれば、よく分かる。)
 ミス・キャストだったかもしれない。
 (写真トップ:JaiとSwathi。)

◆ テクニカル面
 この作品には当時を再現したレトロな小道具類、例えば、自転車、スクーター、白黒テレビ、レコード盤とプレーヤー、粗末な瓶に入ったソーダー水、店先に掲げられたスピーカー、手描きの映画ポスター、主人公たちの衣装・髪型、等々が用いられ、うまく雰囲気を作り出している。

◆ 結語
 そんな次第で、【Subramaniyapuram】は、ノスタルジックなインドの田舎の風情や、粗野だけど熱い村の男たちにシビレる人には、十分楽しめる作品だと思う。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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