カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Ashta Chamma】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2008/09/15 23:05   >>

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 スワーティ主演のテルグ映画。
 スワーティといっても、誰ですか、それ?という感じだろうけれど、【Aadavari Matalaku Ardhale Verule】(07)でトリシャーの妹、プージャーを演じていた天然ボケ系の女優。私は一応(否、かなり)注目している。
 そのスワーティの新作が本作とタミル映画の【Subramaniyapuram】と相次いで公開されたのだが、バンガロールではやってくれず、憤慨していたら、神様に私の声が届いたのか、それとも単に公開スケジュールがそうなっていただけなのか、揃って公開になった。
 もちろん、一気に2本鑑賞した。

 題名の「Ashta Chamma」は、インドで古くから楽しまれている双六ゲームの名前。

【Ashta Chamma】 (2008 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Mohan Krishna Indraganti
出演 : Swathi, Nani, Srinivas Avasarala, Bhargavi, Jhansi, Tanikella Bharani, Hema, その他
音楽 : Kalyani Malik
撮影 : P.G. Vinda
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Ram Mohan

《あらすじ》
 ラヴァンニャ(Swathi)はトリウッドの大スター、マヘーシュ・バーブの熱狂的なファン。彼女の叔母で、後見人でもあるマンディラ・デーヴィ(Jhansi)は、ラヴァンニャをNRIと結婚させたいと考えていたが、彼女はマヘーシュ以外とは結婚しないと宣言していた。ところが、当のマヘーシュ・バーブは女優のナムラタと結婚してしまう。ショックを受けたラヴァンニャは叔母に譲歩し、「マヘーシュ」という名の男となら結婚してもいいと言う。
 隣家に住む青年、アーナンド(Srinivas Avasarala)は、朝な夕な大音量で鳴り響く映画‘Pokiri’の音楽に悩まされ、さっさとラヴァンニャを片付けてしまおうと、彼女のために「マヘーシュ」を探すことにする。苦労の末、彼はパブでマヘーシュという名の、しかもちょいとハンサムな青年(Nani)を発見する。この餌食を逃してなるのもかと、彼はマヘーシュと友達になり、ラヴァンニャに紹介する。
 幸い、マヘーシュとラヴァンニャは惹かれ合い、デートを重ねる。その一方で、厳しい叔母はマヘーシュの身元をチェックし、腑に落ちないものを感じる。
 ある時、マヘーシュは、ラヴァンニャが自分を愛しているのは「マヘーシュ」という名前のためだと気付き、ショックを受ける。彼はアーナンドに、自分の本当の名前はマヘーシュではなく、「ランバブ」だと告白する。
 ランバブは実はゴーダーワリ地方のラッカヴァラム村の名士で、両親は他界し、莫大な遺産を受け継いでいた。彼は村人たちの相談役として非常な尊敬を集めていたが、保守的な村で常に「善き人」であらねばならぬ生活に嫌気がさし、「マヘーシュ」という友人に会いに行くという口実でハイダラーバードに出、パブなどで遊び呆けていた。そして、妹のヴァーララクシュミ(Bhargavi)には「マヘーシュ」という架空の人物について克明に報告し、ヴァーララクシュミもいつしかこの「マヘーシュ」に恋するようになっていた。
 ランバブの妹の写真を見たアーナンドは、彼女にひと目惚れしてしまい、「マヘーシュ」のふりをしてラッカヴァラム村へ行く。ヴァーララクシュミはアーナンドを見た途端、彼こそが「マヘーシュ」だと信じ込み、惚れる。それを知ったランバブは急遽田舎へ戻る。また、マヘーシュ(ランバブ)が田舎へ帰ったことを知ったラヴァンニャもラッカヴァラム村へと乗り込む。
 ここで「マヘーシュ」を巡って混乱が起き、二人の本名がばれてしまう。さらに悪いことに、ラヴァンニャの叔母、マンディラ・デーヴィも村にやって来、てんやわんやとなる。しかし、その結果、ランバブについて思いがけない事実が明らかになる、、、。

   *    *    *    *

 偽りの名を騙ることが混乱を惹き起こすというコメディーだが、その名前がテルグ映画界の大スター「マヘーシュ・バーブ」に結び付けられていて、映画的に非常に面白いネタが炸裂する作品だった。
 しかも、フレッシュなタッチで、インドのコメディー映画にありがちな「さあ、笑え!」といった押し付けがましさはなく、かと言って、高級シネコンのミドルクラス層を当て込んだ知的コメディーとも違うようだった。
 映画の前半は都会的なライト・タッチ、後半は田舎的なドタバタ・タッチと、雰囲気をがらりと変えていたのも成功の秘訣かもしれない。

 インド映画らしい荒唐無稽な筋運びに思えるが、実は、あのオスカー・ワイルドの喜劇『The Importance of Being Earnest(邦題:真面目が肝心)』(1895)が元ネタとなっている。
 原作では、憧れの名前は「アーネスト」だが、本作では「マヘーシュ」。対して、主人公が隠していた本名は「ランバブ(Rambabu)」。インド人の説明では、「ランバブ」というのは古くて田舎臭い名前で、女の子にとって彼氏がこんな名前だったら恥ずかしいという類のものらしい。映画の中でラヴァンニャが必死に嫌がっていたのも、割と頷けることらしい。
 まぁ、「Mahesh」というのはシヴァ神のことだから、そんなにオシャレな名前とも思えないのだが、やはり「プリンス」こと、マヘーシュ・バーブのイメージは絶大ということだろう。(ちなみに、この映画を見ると、マヘーシュの結婚はテルグ女性にとって大事件だったことが分かる。)
 それにしても、一見、不自然だとも思われる名前に対するこのこだわりの強さも、コメディーだと言ってしまえばそれまでだが、しかし、インド人(ヒンドゥー教徒)を観察してみると、結構自然なことだとも思われる。彼らにとって、名前は何か実体性を持つもので、名前がその人の人物を形作り、将来を決定する、ぐらいに考えている節がある。「名前負け」という考え方はないし、赤ん坊の名付けの際にはかなり大規模な儀式を行う。
 そういった意味では、本作はイギリス喜劇の翻案だとはいえ、すごくインド的な映画だと言える。

 監督のMohan Krishna Indragantiについてはよく知らないが、【Grahanam】(05)という作品でデビューし、いきなり国家映画賞を獲得した人らしい。
 本作でも、新人かほぼ新人に近い俳優を使い、コメディアンを一人も使わずしてユニークなコメディーを作り上げた手腕など、かなりセンスの良い人だと思われる。
 ついでに書いておくと、この映画の結末はご都合主義丸出しの強引なものだったが、これはオリジナルの戯曲でもそうなっているから、Mohan Krishna Indraganti監督が悪いわけではないだろう。

◆ パフォーマンス面
 めでたく初ヒロインのスワーティは、腕に「Mahesh」と刺青を入れるほど思い込みの強い女の役で、まさに彼女にとってお誂え向きだった。田舎娘と都会娘の違いはあるが、基本的に【Aadavari Matalaku Ardhale Verule】のプージャーと同じ、勘違い・天然ボケ・ワガママな娘で、彼女らしさが生きていた。

 ヒーローということになるランバブ役のNaniはラジオ・ジョッキーをやっていた人らしく、本作が俳優デビュー。彼の中途半端にハンサムなところが本作の笑いのツボでもあった。
 (写真トップ:Swathi@ラヴァンニャとNani@ランバブ。)

 同じくデビューとなるアーナンド役のSrinivas Avasaralaは、これがまた飄々とした個性の強い男で、シネコン向けコメディーにはいいキャラだろう。
 ヴァーララクシュミ役のBhargaviはTVドラマの女優らしいが、映画は初出演のようだ。
 (写真下:Srinivas Avasarala@アーナンドとBhargavi@ヴァーララクシュミ。)

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 このように、主要登場人物はほとんどニューカマーたちだが、ベテランではタニケッラ・バラニとヘーマーも重要な役どころだった。
 しかし、何と言っても迫力があったのはマンディラ・デーヴィ叔母様役のジャーンシーだろう。私は本作で初めて彼女の顔と名前が一致した。(下)

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◆ 結語
 【Ashta Chamma】はコメディー映画ということで、やはり言葉の壁が立ちはだかり、現地人のようには笑えなかった。しかし、それでもそのセンスの良さに私は笑うことができた。
 もちろん誰が見ても楽しめると思うが、テルグ映画に引っ掛けた小ネタやパロディーに満ちているので、特にテルグ映画ファンにオススメしたい。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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