カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Raman Thediya Seethai】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2008/10/22 20:00   >>

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【Raman Thediya Seethai】 (2008 : Tamil)
作・脚本・監督 : K.P.Jagannaath
出演 : Cheran, Pasupathy, Nithin Sathya, Vimala Raman, Ramya Nambeesan, Karthika, Navya Nair, Gajala, Manivannan, Karunas
音楽 : Vidyasagar
撮影 : Rajesh Yadav
編集 : Kola Bhaskar
制作 : K.Ramesh

《あらすじ》
 カードの印刷・販売会社を営むヴェーヌゴーパル(Cheran)は、ビジネスも軌道に乗り、そろそろ妻を娶る時期であった。
 ヴェーヌは母と共にナーガルコイルの町へ赴き、ランジータ(Vimala Raman)という女性と見合いをする。だが、ランジータは彼との結婚を拒否する。
 実は、ヴェーヌは青年期にあることが原因で心の病にかかり、精神病院に入院したことがあった。今ではその病は克服したものの、緊張した場面になると「どもり」が出ることがあった。誠実なヴェーヌはその過去をランジータに打ち明けたが、彼女はそれが受け入れられなかったのである。
 次にヴェーヌはヴィディヤ(Ramya Nambeesan)と見合いをし、結婚が決定する。しかし、ヴィディヤは結婚式の前日に恋人と駆け落ちしてしまう。
 すっかり絶望したヴェーヌは、ある日、交差点で車にはねられそうになったところを、盲目の男に救われる。
 その男はラジオジョッキーをやっているネドゥマラン(Pasupathy)で、非常にポジティブな人物だった。ネドゥはヴェーヌに、盲目の自分が妻のタミリサイ(Gajala)と出会い、結婚するまでの顛末を話して聞かせる。ヴェーヌはネドゥのおかげですっかり元気を取り戻す。
 ヴィディヤの父、マニッカヴェル(Manivannan)は娘の不祥事の責任を取って、ヴェーヌに新たな花嫁候補のガヤトリ(Karthika)を紹介するため、共に再びナーガルコイルへ行く。
 だが、そこでヴェーヌは偶然ヴィディヤを発見する。彼女は身籠っていたが、夫が殺人罪で服役中だったため、非常に苦しい境遇にあった。ヴェーヌはヴィディヤを病院に入院させる。しかし、驚いたことに、その病院にはランジータが受付係として働いていた。ヴェーヌはランジータとも再会することになる。
 ガヤトリは若いながら度量の広い女性で、ヴェーヌの過去にもこだわりを見せなかった。彼はすっかりその気になるが、ガヤトリにはグナシェーカラン(Nithin Sathya)という恋人がいることを知る。グナシェーカランは以前はコソ泥だったが、ガヤトリのためにオート運転手として必死に更生しようとしている若者だった。ヴェーヌはそんな彼の姿を見て、ガヤトリのことを諦める。
 ヴェーヌと再会したランジータは、彼の人柄を見直し、好意を抱くようになる。彼女はヴェーヌをもう一度母に会わせるため、昼食に誘おうと連絡を取る。だがヴェーヌは、ネドゥに紹介してもらったセンタマライ(Navya Nair)という婦人警官に会いに行くところだった、、、。

   *    *    *    *

 実にハートウォーミングな、美しい作品だった。
 物語は終盤にいくつかヒネリが用意されており、一体、ヴェーヌは誰と結婚するのか、いや、結婚自体を諦めてしまうのかと、最後まで目が離せない。

 タイトルの「Raman Thediya Seethai」は「ラーマのシータ探し」ぐらいの意味。1972年製作でMGRとジャヤラリタ主演の同名のタミル映画があるが、本作はそれとは内容的に関係がないようだ。

 タイトルからもあらすじからも分かるとおり、理想の妻を探すのに四苦八苦する男の話だが、古今東西、嫁/婿選びというのは場合によっては困難を伴うものらしく、こうした趣向の物語はたくさん作られて来ただろう。
 ただ、インド社会では、結婚というのは人生において絶対的な重要性を持つイベントで、それだけに当事者個人の自由意志よりも伝統的に一家眷属の意志が優先され、親の決定には「ノー」とは言い難いものがあり、それで、インドの縁組はたいていの場合、意外とあっさりした機械的なプロセスで進むはずのものだった。
 しかし、インドも今の若者の価値観ではそう簡単にも行かないらしい。近ごろの彼らのアイデアは「見合い恋愛結婚」、つまり「親が決めてもいいが、好きにならなければその人とは結婚しない」というもののようだ(これもずいぶん虫のいい考え方だが)。しかし、結婚当事者に自由の余地が与えられると、それだけ責任や苦労も負わねばならぬことになり、ただ軌道の上を進めばいいというわけにはいかなくなる。本作はそういう風潮の中にあって、素晴らしい人物でありながら相手選びに手間取るという、皮肉な現象が的確に捉えられている。

 ただ、本作は、伝統的な見合い婚か自由恋愛婚かという二者択一に傾かず、インドの伝統の枠組みを越えることなく、しかし個人としての幸せを手に入れるためにどんな苦労を覚悟しなければならないか、そして、苦労して得られた幸せは5分で決まる見合い結婚よりずっと素晴らしいものだというメッセージが込められているようで、これはもしかして、現代インドの若者にかなりアピールする中道路線の結婚観ではなかろうか。

 下手すりゃあ、もてない男の喜劇に陥ってしまいそうなストーリーだが、描き方はシリアスで、主要登場人物の感情や心理は非常に繊細に描かれている。インド的なテーマと内容でありながら、私がこの映画を観ていてほとんどインド映画らしさを感じなかったのは、つまりはそれだけ心理描写が普遍的なレベルにまで精錬されていた証だろう。

◆ パフォーマンス面
 本作の驚嘆すべき点は、主要登場人物が8人(男3人、女5人)もいながら、ムダ役なし、すべてが輝いていたことだろう。
 主人公のチェランは、まぁ、地味で不器用な男を淡々と演じていただけだが、しかし【Autograph】(04)同様、出汁の効いた演技はさずがだ。
 盲目のRJ、ネドゥマランを演じたパシュパティはウソのように輝いており(彼の肌の色からすると黒光りなのだが)、ラジニと組んだ【Kuselan】の低気圧を一気に吹き飛ばした感じだ。とにかく、そのカッコよさを見てほしい。
 オートドライバー役のニティン・サティヤも、いかにもインド人好みの「ダメ男」を愛すべきやり方で好演していた。
 (写真上段の男優陣:左よりNithin Sathya@グナシェーカラン、Cheran@ヴェーヌゴーパル、Pasupathy@ネドゥマラン。)

 ヒロインの5人は、揃いも揃って私好みの南インド美女で、もう嬉しくって嬉しくって、呼吸困難に陥るほどだった。
 まず、ピカイチの光り方だったのは、ランジータ役のウィマラ・ラーマン。彼女の落ち着いた色気と楚々とした美しさは、リピート客を集めるのに十分だろう。(ちょっと塗りすぎが気にかかるが。あと、彼女の低めの地声は役柄に合っているので、吹き替えを使わなくてもよかったのでは?)
 ヴィディヤ役のラミャ・ナンビーシャンは、前半の都会的なお元気娘役と後半のやつれ役との対比が良かった。もちろん、見せ場は後半だ。
 タミリサイ役のガジャラは相変わらず可愛らしい。盲人ネドゥマランとの恋の物語は実に爽やかだった。
 ガヤトリ役のカルティカは彼女のイメージにぴったりの田舎娘役で、これまた好演。実は、私は2年前から執拗に彼女に注目しているのだが、ヒロイン作の【Thoothukudi】(06)と【Pirappu】(07)はフロップに終わったものの、歌がヒットしたおかげで、小ブレイクぐらいはした。彼女の場合、「ネクスト・ドア・タイプ」というより、「隣の田んぼの娘さん」といった感じで、その土くさい素朴な魅力はまさに「あぜ道に降り立つ現代のラーダ」で、近ごろでは少数派になった田んぼでのダンスが似合う女優だ。素材としては面白いものがあるので、粘り強く頑張ってほしい。
 最後に、センタマライ役のナヴィヤ・ナーイルは、いかにも出番が少なく残念だったが、婦人警官の制服を着たナヴィヤというのも稀だと思うので、ちょっと得した気分。
 (写真下段の女優陣:左よりRamya Nambeesan@ヴィディヤ、Karthika@ガヤトリ、Vimala Raman@ランジータ、Gajala@タミリサイ、Navya Nair@センタマライ。)

◆ テクニカル面
 ヴィディヤサーガルの音楽も映画に合っており、良かったと思う。特にネドゥ&タミリサイ、それにランジータ&ヴェーヌの音楽シーンは印象に残るものだ。

◆ 総評
 本作のリリースは、タミルナードゥでは9月19日だったが、バンガロールでは10月17日と、1ヶ月も遅れた。こちらでの集客状況も気に掛かるところだが、タミルナードゥではヒットし、話題も集めている。
 痛快娯楽マサラというのとは一線を画する、どちらかというと地味な作品だが、こういう内容本位の映画もタミル映画の強みであるはずだ。恋愛映画はどうも、、、という人でない限り、強くオススメしたい。私見では、日本の映画祭でもシャールク・カーンの作品を何本もかけるぐらいなら、この【Raman Thediya Seethai】のために1枠設けたほうが賢明だと思う。

・満足度 : 4.0 / 5

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