カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Raksha】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2008/10/01 20:00   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 2 / コメント 0

 先日紹介したラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督の【Phoonk】と同時製作された作品で、やはりYendamuri Veerendranath作のテルグ語小説『Tulasidalam』を映画化したもの。
 RGV監督は初めからヒンディー語版【Phoonk】以外にテルグ語版も作るつもりだったらしく、この【Raksha】は弟子のVamsi Krishna Akellaに監督を任せ、自身はPresentsとしてクレジットに名前を連ねている。ちなみにVamsi Krishna Akellaは監督デビューらしい。
 RGV監督は【Phoonk】で主演を務めたスディープにこのテルグ語版にも出るようオファーしたようだが、スディープは丁重にお断りしている。

 同じネタで、似たような雰囲気のホラー映画を、わずか1ヶ月の時差で観ることに意味があるのかなぁ、などと自分でも懐疑的だったが、やはり気にかかる点もあったので、観に行くことにした。

画像

【Raksha】 (2008 : Telugu)
脚本・監督 : Vamsi Krishna Akella
出演 : Jagapathi Babu, Kalyani, Baby Neha, Master Atulith, Radhakumari, Bhargavi, Subbaraju, Chandrasekhar, Rajeev Kanakala, Sathya Krishnan, Narsing Yadav, Jeeva, Jayasudha, Melkote, Pradeep Rawat, Veerendra Chauhan
音楽 : Amar Mohile
撮影 : Surjodeep Ghosh
編集 : Bhanodaya
制作 : Chandrasekhar、Vijayalakshmi、Suryavathi

 あらすじは【Phoonk】の時に書いたので、詳述しないが、、、建築技師のラジーヴ(Jagapathi Babu)は無神論者で、神も悪魔も信じない男だったが、ある人物から怨みを買い、愛娘のラクシャ(Baby Neha)に黒魔術がかけられる、というもの。ラジーヴが何を見、どう信念を変え、どうやって娘を救うかが物語の骨子となっている。

 映画の前半は【Phoonk】と大きく変わらず、こりゃ、お金と時間を無駄にしてしまったか、とも思ったが、後半はかなり違っており、これなら両方とも観ても十分楽しめるような作りだった。
 しかも、【Phoonk】よりこの【Raksha】のほうがよくできているというのが私の評価だ。
 【Phoonk】はそれなりに面白かったが、例によってRGV監督独特の実験精神、といえば聞こえが良いが、要するにお遊び、悪ノリが勝ちすぎて、一体、何らかのメッセージを伝えたいのか、技術を見せたいだけなのか、判然としないものがあった。(そういう珍奇なところがRGV作品の面白さでもあるのだが。)
 対して、【Raksha】はかなり正統的な仕立てで、ホラー映画というには全然怖くなく、むしろ、科学と宗教、信仰と迷信の問題にまともに向き合った作品、という印象を受けた。
 特にクライマックスでは、精神科医によるラクシャの治療シーンと、ラジーヴが黒魔術師たちと闘うシーンと、土中から出土したガネーシャ神像を供養するシーンが同時進行(画面三分割)で描かれ、ラクシャの快癒も、それが現代医療技術によるものか、黒魔術を遮断したことによるものか、神の恩寵によるものか、曖昧なままに残されており、結果的に科学と信仰は排他的でなく、両立し得るというメッセージが浮かび上がっていたように思う。
 おそらく、原作の『Tulasidalam』もこんな内容の作品なのだろう。【Phoonk】の前衛性に対して、【Raksha】は中庸を狙った感じで、インド人にはこちらのほうが受け入れやすいのではないだろうか。

◆ パフォーマンス面
 上で「気にかかる点」と書いたが、それは「配役」と「ダンス・シーン」の2点だ。
 ホラー映画では生々しさを出すため、あまり有名俳優を使わない傾向があり、実際、【Phoonk】でも、ごく一部を除いてほとんど知られていない俳優たちだった。だが、この【Raksha】では、大スターと言わないまでも、テルグ映画でお馴染みの面々が揃っており、それが観客にどういう印象をもたらすか?
 これが結構当たりで、テルグ映画ファンなら、このキャスティングに笑えるだろう。ネタバレ防止のため、詳述しないが、SubbarajuやNarsing Yadav、Jeeva、Pradeep Rawatなど、たいてい悪役をやっている連中が本作ではどんな役回りをしているか、また、【Bommarillu】でシッダの義姉役をやっていたSathya Krishnanがどんな一面を見せているか、等々、注目ポイントは多い。

 「ダンス・シーン」については、テルグ映画では例えば【Mantra】(07)のように、ホラー映画といってもきっちりセクシー系のダンスがあったりするが、さて、【Raksha】ではどうか?
 答えを言ってしまうと、幸か不幸か、ダンス・シーンはなかった。まぁ、ダンスの華となるべきヒロインが不在だから、無理のないことではあるが。

 ついでに言うと、通常のコメディー・シーンもない。
 ただし、小児科医をやっていたMelkoteがコメディーとも言える役回りをし、また、Jeevaは大真面目でお笑い度ゼロの精神科医のはずなのに、彼が白衣を着て難しい医学用語を発する度に、客席から失笑が漏れていた。

画像

◆ テクニカル面
 撮影について言うと、【Phoonk】は舐めるような接写を多用し、一点凝縮型カメラワークだったが、【Raksha】は移動カメラによる長回し撮影が多かった。こんなことも両者の雰囲気を変える要因になっていたと思う。
 ちなみに、音楽(音響)はどちらもAmar Mohileが担当し、似たような効果だった。

◆ 総評
 【Raksha】は、【Phoonk】がヒットした後の後発同類映画ということで、さぞや旗色が悪いだろうと思っていたが、なかなかよくできた作品で、興行的にもうまく行っているようだ。
 どちらを観てもいいと思うし、酔狂なお方は両方とも観てもいいが、どちらか一つを選ぶとすると、私なら【Raksha】をオススメしたい。
 (写真:「【Raksha】のほうがおもろかったなぁ」と、バツの悪そうなRGV氏。右から2人目。‘Raksha Succsss Meet’より。)

画像

・満足度 : 3.0 / 5

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【KSD: Appalraju】 (Telugu)
 ボリウッド映画しか観ていない人でも、ラーム・ゴーパール・ヴァルマ監督がアーンドラ・プラデーシュ州の出身で、デビュー(1989年公開の【Shiva】)以来90年代終盤までテルグ映画界で活躍していたということは知っているだろう。その後、活動の場をボリウッドに移し、それっきりだったのだが、なぜか2,3年前よりテルグ映画界を意識した言動が目立つようになり、【Phoonk】(08)のテルグ語同時制作版である【Raksha】では制作に深く関与し、監督作品である【Rakta Charitra】(1... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/02/26 12:03
【Mangala】 (Telugu)
 チャルミ主演のテルグ映画。  チャルミといえば、数年前までは非常に人気の高かったテルグ女優であるが、ヒロインとして出演した作品は【Mantra】(07)を最後にヒット作がない。理由は分からないが、ヒロインのサイズ・ゼロ化の時代にチャルミの肉感的容姿が合わなくなってきているのか、または、彼女が【Anukokunda Oka Roju】(05)以降、ヒロイン中心の作品に傾斜し始めたことも関係しているのかもしれない。  しかし、知ってのとおり、チャルミの高い演技力とダンス・スキルを考え... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/03/09 20:28

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Raksha】 (Telugu) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる