カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kotha Bangaru Lokam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2008/10/31 04:20   >>

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 ディル・ラージュ制作、ワルン・サンデーシュ主演の青春恋愛映画、、、と来れば、二重の意味で「二匹目のドジョウ」を予想してしまう。
 一つ目は「二匹目のHappy Days」。
 本作は去年のヒット作【Happy Days】と主演男優(ワルン・サンデーシュ)が同じであるだけでなく、音楽監督も同じMickey J. Meyer。
 二つ目は「二匹目のBommarillu」。
 【Happy Days】を観たとき、ワルン・サンデーシュはどことなくシッダールトの面影があると感じたが、本作は【Bommarillu】(06)とプロデューサー(ディル・ラージュ)が同じであるだけでなく、主人公の両親役も同じペア(プラカーシュ・ラージとジャヤスダー)が起用されている。
 これらの作品は私の琴線に触れるものだったので、本作も非常に楽しみだった。

【Kotha Bangaru Lokam】 (2008 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Srikanth Addala
出演 : Varun Sandesh, Shweta Prasad, Prakash Raj, Jayasudha, Ahuti Prasad, Rajitha, Rao Ramesh, Brahmanandam, Sushma
音楽 : Mickey J. Meyer
撮影 : Chota K. Naidu
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : ‘Dil’Raju

《あらすじ》
 バルー(Varun Sandesh)はミドルクラスの快活な若者。両親(Prakash Raj & Jayasudha)との仲も良く、お互いに強い愛情と信頼で結ばれていた。
 バルーはラージャムンドリにある全寮制のカレッジ(intermediate college)の生徒だった。そこへスワプナ(Shweta Prasad)という女子学生が転入して来る。スワプナは田舎の裕福な家庭の育ちで、しっかりとした女の子だった。
 二人は惹かれ合い、ほどなく恋仲となる。二人の関係を知った物理の教師(Rao Ramesh)は、「この年頃の若者が異性に対して抱く感情は『あこがれ』で、本当の『愛』ではない」と言う。バルーとスワプナは、自分たちの気持ちが「愛」かどうか確かめるために、学期休暇中、二人が実家にいるときに、一日に何度相手のことを思い出したか数を記録することにする。その結果、二人は自分たちが本当に愛し合っていることを確信する。
 バルーとスワプナはこっそり寮を抜け出し、デートをする。だが、何者かがその様子を写真に撮っており、それが新聞に載せられてしまう。これを知った校長(Brahmanandam)はバルーを自宅謹慎処分にし、激怒したスワプナの父(Ahuti Prasad)も娘を家に軟禁する。
 二人はお互いに電話番号さえ分からず、為すすべがなかったが、スワプナは一度だけバルーから手紙をもらったことを思い出し、住所を知る。彼女は早速バルーに手紙を書く。
 スワプナの家が分かったバルーは、女友達のラーガ(Sushma)を送り込み、定期試験の日に会う作戦を立てる。試験の日、特別に登校を許された二人は久々に再会を果たす。
 スワプナへの強い思いから、バルーは大胆にも彼女の家に乗り込み、父にスワプナとの交際を認めるよう訴える。スワプナの父はその場を取り繕うが、後で彼女を叱りつけ、縁談を取り決めようとする。それを知ったスワプナは家出を決意し、バルーに待ち合わせ場所を知らせる。
 バルーも約束の場所へ行こうとするが、折悪しく、彼の父が事故死してしまい、身動きが取れなくなる、、、。

   *    *    *    *

 上で「二匹目のドジョウ」という表現を用いたのが失礼なくらい、よくできた作品だった。

 【Happy Days】は大学生の物語だったが、本作はもう一つ世代が下がって、「Intermediate College」の学生に焦点を当てている。
 日本では大学の前に6・3・3年勉強するが、インドの教育制度では5・5・2年制となっている。この大学の前の2年間が「Intermediate College」とか「PUC (Pre University College)」と呼ばれるもので、だいたい日本の高校2,3年生に当たる。つまりはティーン・エージャーの物語というわけで、今までにもこの年代の恋愛を扱った作品がなかったわけではないが、比較的珍しく、新しい分野だ。(直近では、カンナダ映画の【Moggina Manasu】がぴったり同じ世代を扱っている。)

 そんな若い子たちの物語が清々しく描かれている。タイトルの「Kotha Bangaru Lokam」は「New Golden World」という意味らしいが、この命名からして作者の意気込みが感じられる。

 映画の序盤は学生たちのキャンパスや寮での様子をコミカルに描いたもので、ネタ的に面白いものもあるが、どうってことはない。だが、物語が進み、主人公たちのセンティメントの度合いが増すにつれ、この作品の美しさと重さも尻上がりに増してくる。そして、クライマックスには素敵なヒネリが用意されている。
 監督のSrikanth Addalaはこれが監督デビューということらしいが、また一人、有能な映画作家が現れたという感じだ。

 上で【Happy Days】や【Bommarillu】との関連を指摘したが、内容的には後者とかぶるところが多い。
 【Bommarillu】は子を愛する余り超過保護になった父と息子の話だったが、本作では、バルーの両親は子供の良き理解者で、親子が友達のような関係となっている。一方、スワプナの両親は「子供の気持ちなど忖度せず、彼らに自由を与えない親」で、こちらのほうが「Bommarillu」的なのだが、本作では物語を動かすための役回りでしかなく、あくまでも主眼はバルーの親子関係だ。つまり、【Kotha Bangaru Lokam】は【Bommarillu】を裏返したような設定となっているのだが、しかし、どちらも理想的な親子のあり方を追求しているという点で、テーマ的には重なっている。(【Parugu】(08)も含めて、これがディル・ラージュ作品の一つの路線なのだろうか?)
 ただ、親子の関係という縦軸と、ヒーローとヒロインの恋愛という横軸が、【Bommarillu】では有機的に作用し合って面白いドラマを構成していたが、本作ではそれほどの鮮やかさはなかったように思う。

◆ パフォーマンス面
 良い演技陣なくして秀作もないと思うが、本作の主要登場人物も上出来だ。
 バルー役のワルン・サンデーシュは、要求されるレベルは越えていたものの、まだまだという印象を受ける。だが、デビュー以来、出演作が2本とも大ヒットということで、シッダールトの地位を脅かしかねない勢いは感じる。(もっとも、シッダのほうがそろそろアイドル系から足を洗うべき時期なのだが。)

 ひとまとめにして申し訳ないが、親役の4人(Prakash Raj、Jayasudha、Ahuti Prasad、Rajitha)はパーフェクト。彼らの好演あってこそ、若い子たちも映えるというものだ。

 だが、何と言っても本作で金メダルをあげたいのは、ヒロイン、スワプナ役のシュウェータ・プラサードだ。
 きれいだとか可愛いとか言うより、この瑞々しい笑顔は【ロミオとジュリエット】(68)のオリヴィア・ハッセーを思い出した。しかも演技がやたらと上手い。
 で、調べてみたら、彼女、ナーゲーシュ・ククヌール監督の【Iqbal】(05)で主人公の妹役をやっていた人だということが分かった。あのブッサイクな「メガネちゃん」がこんな素敵な娘さんに成長していたとは! これだから女は怖い、もとい、偉大だ。

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 シュウェータはすでに子役として【Makdee】(03)で国家映画賞も獲得している。道理で芝居が上手いわけだ。
 本作の中で、よくクリケットがモチーフに使われ、しかもワルンとシュウェータが声を出さずに手振りだけで会話するシーンが何度かあり、どうしてか分からなかったが、あれはたぶん【Iqbal】へのオマージュなのだろう。
 言葉が分からないのでお手上げだが、劇中でスワプナが使うスラングはかなり面白いものらしい。
 彼女のイメージからして、例えばテルグ映画でNTRジュニアやマヘーシュ・バーブなどの相手を張るような看板女優になるとは考えにくい。ただ、演技派女優としてならかなりいい仕事をしてくれそうなので、これからも楽しみだ。

 もう一人、主人公たちのメンターとなる物理教師を演じたラーウ・ラメーシュも【Gamyam】(08)に続く雰囲気のある役柄だった。

◆ テクニカル面
 注目のMickey J. Meyerの音楽について言えば、【Happy Days】のほうが良かったかなという印象を受ける。だが、悪くはない。私的には、前半のポップな曲より後半のセンティメンタルな曲のほうが好きだ。

 音楽よりもっと効果的なのはChota K. Naiduのカメラだろう。
 シュウェータ・プラサードの笑顔に加えて、月夜の海辺など、息を呑む美しいシーンは何度もあった。
 ときどき出てくる味のある橋は「Godavari Bridge」らしい。

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◆ 総評
 【Kotha Bangaru Lokam】は、山からさわさわと湧き出る清流のような作品。
 南印映画界ではこのところ、大スターを配したハイ・バジェットの娯楽作品がぱっとせず、ロー・バジェットでスター不在の若者映画が評価も高く、客もわんさか集めるという傾向が続いている。本作は間違いなくその流れの浮標となる1本だろう。
 若造の映画はどうも、、、という人でない限り、強くオススメする。

・満足度 : 4.0 / 5

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