カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Haage Summane】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/01/24 10:18   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 4 / コメント 2

画像

 【Mungaru Male】といえば2006年公開のカンナダ映画のブロックバスターで、カンナダ映画界を蘇生させた作品とも言われている。その裏方陣が再び手を組んだのが本作だ。【Mungaru Male】でストーリーを書いたプリータム・グッビが本作ではメガホンを取り(監督デビュー)、やはりストーリーと脚本も担当している。音楽や撮影など、その他のスタッフもほぼ同じ陣容。
 やはり【Mungaru Male】のような、ニートなソフトロマンスに仕上がっているようだ。
 「Haage Summane」は「何気なく」という意味。

【Haage Summane】 (2008 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Preetham Gubbi
出演 : Kiran, Suhasi, Chandrasekhar, K.S.L. Swamy, Sharat Babu, Yamuna, Pooja Gandhi, Satyajit, Manasi
音楽 : Mano Murthy
撮影 : Krishna
編集 : Deepu S.Kumar
制作 : Murali Mohan, Pramod, Santosh

《あらすじ》
 プリータム(Kiran)は大企業経営者、ガウタム・マッリャ(Chandrasekhar)の息子。母は他界しており、父とは友人のような関係。彼は大学の試験に合格できず、ぶらぶらと浪人生活を送っていたが、一本筋の通った考え方のできる青年でもあった。
 ある日、プリータムは病院に祖父(K.S.L. Swamy)を見舞いに行った帰りに、オートリクシャから出て来る美しい女性を見る。彼は彼女の忘れて行った日記帳を読み、彼女に強い好意を抱くようになる。
 プリータムは彼女の乗っていたリクシャの運転手を探し出し、彼女がギターを学ぶ学生で、クシという名前であることをつき止める。クシ(Suhasi)は音楽コンテストに参加するためにマンガロールにいたので、プリータムもマンガロールへ向かう。
 クシに再会したプリータムは、彼女と親しくなることに成功する。そしてとうとう彼女にプロポーズするが、拒否され、「Antony & Kushi」と書かれた結婚式の招待状を手渡される。
 ショックを受けたプリータムだが、クシの結婚式会場に乗り込む。そして驚いたことに、その花嫁はクシ本人ではなく、同じ名前の彼女の友達だということが分かる。花嫁(Manasi)はプリータムの強い気持ちを知り、彼に実家に帰省中のクシの住所を教える。
 クシの田舎で、プリータムは彼女の母(Yamuna)に会い、彼女の家に3日間滞在する許可をもらう。その家でプリータムは、晩になるとクシの父(Sharat Babu)と一緒にウイスキーを飲み、父に気に入られる。
 プリータムはいろいろ手を尽くしてクシに気持ちを伝えるが、彼女の態度は石のように固かった。しかし、3日目の晩、クシはプリータムと一緒にウイスキーを飲み、酔った勢いで自分の秘密を打ち明ける。彼女は病気のため子供が生めない体だったのである。そしてプリータムに「あなたが好きになったのは日記を書いた人だから、私との結婚は考えないで、その日記を書いた人と一緒になればいい」と告げる。実は、日記の主はクシではなく、彼女の友達のナンディニという女性だったのである。クシはプリータムにナンディニの住所を教える。
 翌日、クシはバンガロールに戻るためにバススタンドへ向かう。プリータムはナンディニ(Pooja Gandhi)の家に行き、彼女に日記帳を返す。だが、クシのことが忘れられないプリータムはバススタンドへと駆けて行く、、、。

   *    *    *    *

 ああ、私好みの、誠実でカワユい作品だったこと!
 これだからカンナダ映画、大好き。

 「ネタばらし」はほとんど犯罪だとは分かっていながら、今回はクライマックスの一歩手前、一番肝心な部分まで書いてやった。ハッハッハッ。
 というのも、ヒロインのクシが「産まず女」であることを書かないと、このレビューにも書くことがなくなってしまうからである。本作を観ようと思ってらっしゃった方、すんません(いないか、そんな人)。

 知ってのとおり、インド人の結婚観といっても千差万別あるとはいえ、概ねはコミュニティーを維持するための制度。そんな中で「女」に期待される役割といえば跡継ぎを生む機械であって、子供を生めない女はずいぶん価値のないものと見なされることもある。
 クシはそんな女として、一切のプロポーズを拒否する覚悟で生きている。
 だが、主人公のプリータムは大金持ちの息子で、資産を受け継ぎ、それを守る立場。そんな彼が、資産を受け継ぐ子を生めない女性を肯定し、受け入れるというのが、本作の提示したい「愛の形」だ。
 富豪の父も、本来はそんな結婚に強く反対するはずなのに、プリータムを応援する「理解者」の立場に回っている。父と子が対立しないというのも、ソフトロマンス物の特徴だ。

 プリータムはお金持ちの息子で、目的らしい目的もなくぶらぶらと生きているが、そんな男が人生に求心点を見出すという設定は目新しくはなく、すでに定式化されている人物像だ。
 一方、クシのほうは、妻や母になる道を捨てる代わりに、音楽(ギター)に専念し、自由闊達、酒も飲む。インド女性としては興味深い人物像で、本作の魅力の一つになっている。(父娘とも酒を飲むので、プリータムが「この家族の飲酒癖はなんとかならんかね」と嘆くシーンは面白い。)
 ちなみに、主人公の「プリータム」という名は、【Mungaru Male】の主人公も「プリータム」で、ストーリーを書いたプリータム・グッビの名前でもある。この辺、プリータム・グッビ自身の自伝的要素も織り込まれているのかしら。(ついでに、プージャ・ガンディーは【Mungaru Male】でも本作でも「ナンディニ」という役名になっている。)
 (写真下:Kiran@プリータムとSuhasi@クシ。こういうカワユいイメージがカンナダ・ソフトロマンスだ。)

画像

◆ パフォーマンス面
 ベテラン俳優を除き、スターらしいスターはいない。
 プリータム役のキランはこれがデビュー作とも2作目とも伝えられている。ルックス的にも演技的にも悪くはないのだが、大きく足りないものも感じる。頑張ってはいるが、本作のウィークポイントでもあるだろう。

 むしろ、クシ役のスハーシのほうが一枚上手を行っている。すごい美人というわけではないが、色白のムンバイ娘で、聡明そうな笑顔が印象的だった。(写真下)

画像

 脇役陣では、クシの父役のシャラット・バーブが上手さを見せていた。
 コメディアンでは、オートリクシャにカンナダ映画スターのシールを貼りまくっている、カンナダ映画狂のリクシャ・ドライバーが面白かった。(彼の最大の崇拝者がラージクマールでもシャンカル・ナーグでもウペンドラでもなく、スリナートだというのは意表だ。)

◆ テクニカル面
 【Mungaru Male】と同じく、歌と映像はこの作品の強みだ。
 マノ・ムルティの音楽は本作でも「らしさ」が出ていて、良い。いつもと同様、ポップなダンス・ミュージックとド演歌の二本立てだが、ソヌ・ニガムの歌うテーマ曲にはじ〜んとくる。(ソヌ・ニガムについては、ルックスも甘いし、日本で演歌歌手デビューしたら、たちまちトップに出るだろうね。)

 クリシュナのカメラワークも美しい。
 トレンドの外国ロケは行わず、インド国内(しかも、たぶんカルナータカ州とその周辺のみ)を攻めているが、こうやって見ると、インド国内にもきれいな所がたくさんあるんだなぁ、と再認識した。
 丘の上に巨大な木の切り株があって、その上に乗ってヒーローとヒロインが話すシーンは印象的。(あの切り株、どこにあるんだろう。)

◆ 総評
 【Haage Summane】はダイナミックな印象には欠けるものの、取り上げたテーマもストーリーのまとめ方も良く、誠実なスタンスが好感の持てる佳作だ。
 カンナダ・ソフトロマンスの一つの流れの中で、私は興味深く鑑賞した。

・満足度 : 3.0 / 5

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Maleyali Jotheyali】 (Kannada)
 ガネーシュ主演、プリータム・グッビ監督のカンナダ映画。  サンダルウッドの‘ゴールデン・スター’とも呼ばれるガネーシュだが、昨年初頭の【Gaalipata】のヒット以来、【Aramane】、【Bombaat】、【Sangama】、【Circus】(09)とヒット作から見放され、黄金は実は金メッキだったかと冷ややかな視線を投げかけられつつある。そこで、‘Golden Movies’なるホーム・プロダクションを立ち上げ、嫁はんのシルパにプロデュースをさせて、出直しを図ったのが本作だ。 ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/12/23 01:15
【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】 (Kannada)
 大ヒット・カンナダ映画【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして有名なプリータム・グッビは、監督としても【Haage Summane】(08)と【Maleyali Jotheyali】(09)を発表し、まずまずの結果を残している。そのプリータム・グッビの監督第3作がこの【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】で、主役にはサンダルウッドの‘ブラック・コブラ’ことヴィジャイ、ヒロインには女優として今最も脂の乗っているラミャを起用... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/06/08 21:04
【Jaanu】 (Kannada)
 【Mungaru Male】(06)のストーリー・ライターとして世に出たプリータム・グッビは、その後監督として【Haage Summane】(08)、【Maleyali Jotheyali】(09)、【Johnny Mera Naam... Preethi Mera Kaam】(11)と3作発表し、後の2作はヒットを記録している(ただ、私はヒットしなかった【Haage Summane】が一番好きだ)。そんな彼の4作目ということで、ひと通りの注目を集めていたのがこの【Jaanu】。 ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2012/06/08 21:32
【Raja Nanna Raja】 (Kannada)
 この週末はタミル映画の【Theri】とヒンディー映画の【Fan】が公開され、映画ファンの間で大騒ぎだった。私も素直に【Theri】を観に行くつもりだったが、ラージクマールの40年前のヒット作【Raja Nanna Raja】がひっそりとリバイバル公開されたので、急遽予定を変更した。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2016/04/19 21:21

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
”ソフトロマンス”ってなんか某日本映画会社の
”日○ロマン○○ノ”みたいな感じが、、、、、

>あの切り株、どこにあるんだろう。
カーヴェリさん、切り株とデートですか?
麦藁帽子落としてきてくださいね。

>誠実でカワユい作品だったこと!、、、、、
乙女チック路線のカーヴェリさん
、、、、怖いものを想像してしまった、、、、、


Piyo
2009/01/25 02:00
>”日○ロマン○○ノ”みたいな感じが、、、、、

そんなこと考えるの、Piyoさんだけですわ。

>カーヴェリさん、切り株とデートですか?

いえいえ、切り株の上でデートするんです、、、
某女優と。

>乙女チック路線のカーヴェリさん

今年の私のインド映画におけるキーワードは「カワユい」ですよ。
一般の使用法とは異なり、「純情」、「素朴」、「誠実」ぐらいの意味で使っています。
カーヴェリ
2009/01/25 12:00

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Haage Summane】 (Kannada) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる