カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Nachavule】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/01/29 01:53   >>

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 2008年のテルグ映画界は、大スターを擁したメジャー作品が振るわず、【Gamyam】【Ashta Chamma】【Kotha Bangaru Lokam】、【Vinayakudu】など、低予算・大スター不在・新人タレント系の、しかもソフトな内容の若者向け映画が大当たりした。(いわゆるメジャー級でヒットしたのは【Jalsa】と【Krishna】と【Ready】ぐらいか?)こうした傾向はそれ以前からも見られたが、2008年は顕著にトレンドの変化を実感させられる年だった。去年からテルグ映画を観始めた人なら、よもや「アーンドラには血の雨が降る」という言葉は実感できないだろう。
 だが、テルグの大衆がいつまでもそうしたライトな映画に満足しているはずがない。2009年は大物たちの巻き返しになるか?、、、と思っていたら、今、最も客を集めているのはこの【Nachavule】らしい。
 監督のラヴィ・バブからして異色なようだが、キャストは見事にスター不在。タイトルの意味は「好きになった」で、やはりティーンエイジャーの恋愛を扱った作品のようだ。
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【Nachavule】 (2008 : Telugu)
物語・台詞・監督 : Ravi Babu
脚本 : Satyanand
出演 : Tanish, Madhavi Latha, Kasi Vishwanath, Raksha, Narasimha, Naveen, Kamesh, Narayana Reddy, Prasad
音楽 : Sekhar Chandra
撮影 : Sudhakar Reddy
編集 : Marthand K.Venkatesh
制作 : Ramoji Rao

《あらすじ》
 ラヴ・クマール(Tanish)は中産階級の青年。母(Raksha)は優しかったが、父(Kasi Vishwanath)は口うるさい割には無神経で、妻や子の気持ちなど顧みないような男だった。
 ラヴは6歳のときに、隣の少女にふられた教訓から、「女なんて真面目に相手にするものではない」と思うようになっていた。それで、PUCを卒業し、大学入試も終えた彼は、悪友のスィーヌ(Narasimha)と組んで、軽い気持ちで女の尻を追い回しては、ひっぱたかれる日々を送っていた。
 しかし、ある時、彼はマンゴーの木の下で悟りを開く。「そうだ、一度に多くの女にアタックするより、一人の女に集中したほうが上手くいくはずだ」と。
 ちょうどそんな折に、彼はアヌー(Madhavi Latha)という女性を目撃する。彼女は父(Kamesh)と二人暮しだったが、父が病気で働けないため、喫茶店でアルバイトをしていた。ラヴとは同い年で、やはりPUCを終えたばかりだった。
 ラヴはアヌーを誘惑しようとするが、彼女は応えない。しかも、ナウィーン(Naveen)という不良もアヌーを狙っており、ラヴはナウィーンと喧嘩を繰り返すことになる。
 しかしある時、心臓発作になったアヌーの父をラヴが助ける。お礼をしたいと言うアヌーに対して、ラヴは「15日間だけオレの恋人になってくれ」と頼む。アヌーは「私の体に触らないこと」を条件に、受け入れる。
 しかし、その期間中にアヌーのほうがラヴに一途になり、本当の恋人関係に発展する。彼女の献身で見る見るハンサム・ボーイなったラヴに、以前彼をひっぱたいた女たちが寄って来る。いい気になったラヴは彼女たちとデートするようになり、アヌーは深く傷つく。
 そんな折に、悪いことが起きる。ラヴの弟がラヴの携帯電話を盗み、売り飛ばしてしまう。しかし、その携帯には偶然ラヴとアヌーがキスしている映像が入っており、電話屋のオヤジはその動画を携帯ネットを通して流布させてしまう。街では二人の悪い噂が立ち、アヌーは「中古品」と呼ばれ、ラヴのガールフレンドたちは彼から離れていく。
 アヌーと父は他の街へ引っ越すことに決めるが、そんな時に、ラヴの母が脳腫瘍で死んでしまう。妻を失ったラヴの父は自分の愚かさを悔い、ラヴも自分が本当にアヌーを愛していたことに気付く。
 ラヴはアヌーを追って駅まで行こうとするが、以前、ラヴに火傷を負わされたナウィーンが、復讐のためにナイフを持って現れる、、、。

   *    *    *    *

 こりゃ、また、とてつもなく活きの良い映画が現れたもんだ。
 映画の前半はコメディー、後半に入ってセンチメンタルの度合いが増し、最後はけっこうマジな展開になる。特に「快速コメディー」とも言える前半が秀逸で、ラヴィ・バブ監督の奇抜なセンスが炸裂している。

 主人公たちの年齢は18歳ぐらい。PUC(Pre University College)を終えて大学入学待ちしている期間だから、日本的には高校を卒業したばかりの頃。ビミョーに開放的で背伸びしたくなる時期だ。
 昔、シャンカル監督のタミル映画、その名もずばり【Boys】(03)を観て、「おお、インドにもboysと呼べる層が誕生したんだ」と目からウロコだったが、この【Nachavule】が描くアホな若者像も新鮮で、またまた青春映画の傑作が登場したと言ってもいいだろう。

 作品としてのメッセージはシンプルなものだ。女を粗末に扱うと罰が当たるぞ、母であれ妻であれガールフレンドであれ、女神様だと思って大切にしろ、という、すごくインド伝統の観念だ。しかし、この作品全体が発している率直な力強さに説教くささは全然なく、ラヴとその父に託されたアホさ加減は愛すべきもので、多くのインド男にとって苦笑混じりに受け入れられる反面教師となるだろう。

 興味深いエピソードは二つあった。
 一つは、携帯電話のネットワークを通じてプライベートな映像が流出してしまうエピソードで、モバイル大国となったインドでも無視できない問題だ。
 もう一つは、アヌーがラヴに出した「恋人になってあげるための条件」。これは「ルール1、私の体に触らない。ルール2、抱きしめない。ルール3、キスしない」というのもだったが(結局、ルール1だけでこと足りるのだが!)、インドの女の子がどんなところで線引きしたがるかの一例が分かって、面白い。

◆ パフォーマンス面
 とにかく本作のユニークな点は、有名スターを一人も使っていないという思い切りの良さだ。
 ヒーローとヒロインの二人も新人。
 ヒーロー、ラヴ役のTanishは面白い。アイドル系でも行けそうなカワユさとやんちゃっぽさをミックスしたような風貌で、まだ10代だということだが、期待してみたい。
 (写真下:偉そうに腕組みしているのがTanish。隣はヒロインのMadhavi Latha。Press Meetの写真より。)

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 アヌー役のMadhavi Lathaは完璧に「ネクスト・ドア」タイプで、どちらかというと地味なタイプだ。しかし、雰囲気はあり、アヌーのキャラには合っていた。(写真下)
 学資を稼ぐために喫茶店でアルバイトをし、好きな男に尽くし、挙句に泣き崩れるというアヌーのキャラは、私の琴線に触れまくった。

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◆ テクニカル面
 音楽はSekhar Chandraという人で、たぶんデビューだと思う。
 音楽シーンはちょっと生硬なところもあったが、まずまず楽しめる。

 それより立派なのは撮影と編集で、忙しすぎる映像感覚が若者の落ち着きのなさをよく表していた。この辺はラヴィ・バブ監督の演出力の勝利だろう。

 制作はラモジ・ラーオで、撮影はほとんど‘Ramoji Film City’で行われたらしい。

 本作はどういう趣向か、情宣用ポスターに俳優たちの写っているものがなく、代わりにサルや犬の写真が使われている(トップの写真)。なんか不思議なイメージで、かえって好奇心を駆り立てられた。

◆ 総評
 ヤングスターを当て込んだ映画は、南印ではカンナダとテルグが一歩先んじているというのが私の見方だが、【Nachavule】はこの分野でもテルグが冴えていることを示した作品だ。描かれている人物像はばりばりにインド的なのだが、まったく違った感覚で見せているのが新鮮だ。
 「そんなん、ガキが女のケツ追い回してる映画見て、なにがオモロイねん」という方にまで無理強いはしないが、そうでない方にはオススメ作品としたい。

・満足度 : 3.5 / 5

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【Yavarum Nalam】
 この【Yavarum Nalam】という作品はタミル語の映画だが、実はバイリンガル作品としてヒンディー語版も同時制作されており、そちらのタイトルは【13B】。両言語版とも3月6日に公開されたはずだが、バンガロールでは【13B】のみで、【Yavarum Nalam】は上映されていなかった。私はちょっとした理由があってタミル語版のほうを観たかったので、辛抱強く本作の公開を待ち、1ヶ月以上遅れた今になってやっと鑑賞することができた。 ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2009/04/20 03:18

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
どうもめぼしいスチール写真があがってないなと思ったら、こちら、前評判の無い大穴的な映画なんですね。

ヒロイン、マダーヴィ ラタさんのギャラリーがありましたぜ
http://searchandhra.com/gallery/madhavi-latha-photo-gallery

>低予算・大スター不在・新人タレント系の、しかもソフトな内容の若者向け映画が大当たりした。

こういう最近の風潮、80年代に日本で、歌の下手な隣のねぇチャン的普通の女の子アイドルのおニャン子が台頭してきたのを思い出しますねぇ。
さてさて、何人生き残れるでしょうかねぇ。
Piyo
2009/01/29 04:18
>こういう最近の風潮、80年代に日本で、歌の下手な隣のねぇチャン的普通の女の子アイドルのおニャン子が台頭してきたのを思い出しますねぇ。

ちょっと違うと思うなぁ、現象的に。

>さてさて、何人生き残れるでしょうかねぇ。

いやぁ、ほとんど残らないと思いますよ。
 
カーヴェリ
2009/01/30 00:55

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