カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Venkata In Sankata】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/03/09 02:08   >>

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 サンダルウッドのラメーシュといえば、シリアス・ドラマもコメディーもこなす実力俳優だが、本人はお笑いを好むのか、近ごろはコメディーを演じることが多い。彼は監督としても【Rama Shama Bhama】(05)、【Satyavan Savithri】(07)、【Accident】(08)の3本を撮っており、前2者はコメディー物。これからしても、彼がいかにお笑いにこだわっているかが分かる。
 ところが、私はラメーシュのコメディー作品を観て、あまり笑えたためしがない。上に挙げた監督作2本の他に【Joke Falls】(05)も観たが、気に入ったのは【Satyavan Savithri】だけで、あとの2つはなんで大ヒットしたのか分からないというのが率直な感想だ。
 だいたい、インドのコメディー映画を観る場合、そもそもお笑い感覚の違いという壁が立ちはだかっているし、言葉もよっぽど分からないと笑えるはずがない。その他、時事問題、ローカルネタ、楽屋ネタ、俳優のキャラクター(例えば、言葉の訛りetc.)等に通じていないと、現地人同様には楽しめないところがある。インドのコメディー映画がインド人並みに笑えるというのは、鑑賞者として上級に部類に入ると思う。
 さて、この【Venkata In Sankata】もラメーシュ監督・主演のコメディー映画で、評価は上々だ。今度こそ、私は笑えるだろうか。
 ちなみに、タイトルは「ウェンカットの災難」ぐらいの意味。

【Venkata In Sankata】 (2009 : Kannada)
物語 : Thotapalli Madhu
脚本 : Thotapalli Madhu, Ramesh Aravind
台詞 : Nanda Gopal
監督 : Ramesh Aravind
出演 : Ramesh Aravind, Sharmila Mandre, Devdas Kappikad, M.S.Umesh, Meghana, Anusha, Mukyamanthri Chandru, Umashri, Sanketh Kashi, Karibasavayya, Bank Janardhan, Dattatreya, Rajendra Karanth, Thotapalli Madhu
音楽 : Rickey Kej
撮影 : P.K.H.Das
制作 : Sinema House

《あらすじ》
 ウェンカット(Ramesh Aravind)は有能な警官。彼は警察本部長になることを夢見、職務精励、目覚しい働きで強盗もヤクの売人も捕らえるのだが、副本部長(Mukyamanthri Chandru)の勘違いで、手柄はいつも頓馬な同僚・ラッドゥー(Devdas Kappikad)に渡るのだった。ラッドゥーは一足お先に昇進し、ウェンカットは交通巡査に格下げになる。
 祖母のグンダンマ(M.S.Umesh)は、二度とこんな不運がないようにと、ウェンカットを手相占い師(Thotapalli Madhu)の所へ連れて行く。しかし、こいつがとんだイカサマ野郎で、ウェンカットの行く手には問題が絶えない。おまけに、ウェンカットに惚れてしまった占い師の娘・サンディヤ(Sharmila Mandre)も彼の周りにまとわりつく。
 投獄されているテロリストのリーダー・イクバール(Rajendra Karanth)は、密かに入手した携帯電話を使って、爆弾テロを起こすよう、部下に指示を与えていた。部下は時限爆弾を配置するが、グンダンマのおかげで、爆発は未然に防がれる。ウェンカットたちはテロリストを追跡するが、取り逃がしてしまう。しかし、その際に、テロリストが誘拐しようとした大学の化学教授の口から、どうやらテロリストたちは大学から化学薬品を盗み出そうとしているという情報を得る。
 ウェンカットは副本部長に、大学に潜入捜査官を入れるように提案するが、言い出しっぺとして、ウェンカット自身が行かされることになる。かくして彼は中年大学生としてキャンパスに潜り込むことになる。ここでもてんやわんやの騒ぎとなるが、彼はメーガナ(Meghana)という女子大生と仲良くなったりもする。
 捜査をするうちにウェンカットは、プラカシュという男とテロリストとの関係を掴む。彼はかつてこの大学の学生だったが、爆弾を製造したため放校処分になっていた。
 一方、イカサマ占い師は、道で拾ったSIMカードで携帯電話をかけたところ、それがテロ・グループが廃棄したSIMカードだったため、警察に逮捕されて、拷問を受ける。
 ウェンカットは占い師に会い、SIMカードから、この爆弾テロの黒幕はイクバールだということを知る。さらにウェンカットは、イクバールが大学の式典に主賓として呼ばれたインド首相を爆弾テロで暗殺する計画も立てていることを知る、、、。

   *    *    *    *

 間違いなく面白かったのだが、私的には「曇り、時々、晴れ」ぐらいの笑いで、抱腹絶倒とまでは行かなかった。
 やっぱり、言葉の壁が大きかったようだ。ラメーシュのコメディーは「ラメーシュ・タッチ」と言われるが、どうやらそれは「言葉遊び」を多用したセリフにあるようだ。(大体、言葉遊びはインド・コメディの基本だが。)それで、言葉を解さない私はあちこちで置いてきぼりを食らった。
 ただ、言葉の問題だけではなく、どうも本作の笑いはチープだったように思う。【Rama Shama Bhama】や【Satyavan Savithri】に比べると、本作はお笑いの密度が高く、隙間なくびっちりネタが詰まっている。そのため、無理して小ネタを入れ込んだ感じもあり、結果的に「このネタで笑ったら、私が今まで培ってきた人間としての誇りはどうなるんだ」と、素直に笑えないところがあった。

 本作の評価は高く、ラメーシュの撮ったコメディー3作の中では最高作とする声も多い。しかし、それもどうかなぁ?
 私の感想では、亭主の浮気(火遊び)を扱った【Rama Shama Bhama】や、気の利いたラブコメの味わいもある【Satyavan Savithri】のほうがちょっぴり都会的で、センスの良さを感じたのだが。

 風刺の対象として槍玉にあがっているのは「警察」と「テロ」。
 実際にテロ事件が頻発し、多くの犠牲者も出ている近ごろのインドにあって、パロディーとして笑い飛ばしてしまう姿勢はどうかなぁとも思うが、まぁ、あまり深刻になって、重苦しい映画ばかり見せられるのもつまらないので、こういう喜劇でパーッと笑うのもいいだろう。
 サスペンス物の【Accident】でもそうだったが、社会問題に対するラメーシュの目はなかなか敏感だった。(例えば、テロリストたちによる携帯電話の使われ方など。)

◆ パフォーマンス面
 役者としてのラメーシュは抜群で、愛すべき演技をしている。
 本作では、活躍すれど芽の出ない二枚目半な警官と、成り行きで大学に舞い戻ることになったオヤジ学生の二面が楽しめる。どちらも面白いが、個人的には、今どきの若者ファッションに身を包み、おずおずとキャンパスを歩く後者のほうが気に入っている。
 (写真下:お巡りさんに扮して嬉しそうなラメーシュ氏。)

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 脇役陣はどれも旨味を出している。中でも目を惹いたのが、ウェンカットの祖母役のウメーシュだ。実は男なのだが、お婆さん役に挑戦し、これがまた飄々として面白かった。

 ヒロインとして、Sharmila Mandre、Meghana、Anushaの3人がいるが、どれも彩り添えぐらいの役回りだった。
 占い師の娘役を演じたシャルミラは相変わらずの元気娘だった。(写真トップ:ラメーシュと。)
 女子大生役のメーガナとアヌーシャはどちらも新人らしい。
 このうち掘り出し物はメーガナのほうだ。とにかく、あり得ないぐらい色が白い。おっとりとしたお嬢様タイプの美人で、演技とダンスがそこそこならば、テルグ映画でも使えそうだ。(写真下)

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◆ テクニカル面
 音楽はリッキー・ケージで、かなり良い。
 この人はやはりラメーシュ監督作品の【Accident】で映画音楽デビューした人で、まだキャリアは浅いが、もしかしてテルグ映画界のマニ・シャルマやデヴィ・シュリー・プラサドほどのセンスの持ち主ではないかと私は思っている。(いや、そうあってほしいなぁ、という私の願望にすぎないのですけど。)

◆ 総評
 上に書いたとおり、日本人がこれを観てどこまで笑えるのかなぁ、という疑問もあり、オススメ作とはしない。しかし、この映画の笑いの質はイヤミもアクもないカワユいもので、やはりカンナディガの優等生、ラメーシュ印の映画だ。カンナダ映画のコメディーとはどんなものかを窺い知るにはいい作品かもしれない。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
外国にいると、お笑い/コメディーに言葉と文化のギャップを一番感じられますねぇ。
Piyo
2009/03/09 08:14
ドイツ・コメディーというのはいかがなもんですか?
ドイツに来た当初、笑えましたか、今、笑えますか。
やっぱり、ベルリンとフランクフルトでお笑いの質が違う、とかあるんでしょうかね、、、。

まぁ、ここで展開するネタでもないので、お暇なときにでもご教示ください。
 
カーヴェリ
2009/03/09 18:10
笑えん。
ドイツのお笑いで笑うようになったら人間終わりでしょう。
センス以前の問題です。
地域差はあるようですね。私かつてドイツ人に”君の笑いのセンスってベルリン人に似てるね”って言われたことがあります。
フランクでは私の独自路線でドイツ人相手にまだ笑いが取れます。
デュッセルではノーチャンスでした。
Piyo
2009/03/09 22:37
なるほど、ベルリンは首都だとはいえ、お笑い的には関西なんですね。
いい勉強になりました。

デュッセルドルフ人って、よく知らないんですが、そもそも笑わないんじゃないですか。
 
カーヴェリ
2009/03/10 00:08
>お笑い的には関西なんですね

私も当時そう思って、もう少し突っ込んで聞いたら、
”きつい冗談をしゃらっと言う”ということだった。

デュッセル人ですか?
金持ちです。
でも彼らの着ている高級ブランド物がユニクロに見えるというところがみそです。
Piyo
2009/03/10 00:15

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