カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Laadam】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2009/04/02 01:53   >>

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 プラブ・ソロモン監督のタミル映画。ヒロインは久々にタミル映画出演のチャルミ。
 実は、この日はこの作品を観る予定ではなく、【1977】という、ナミターとファルジャナが出ているおバカっぽいタミル映画を観るつもりで映画館へ行ったのだが、それはすでに終わっていて、この【Laadam】に変わっていた。一瞬、帰りかけたが、チャルミのタミル映画というのも珍しいし、プラブ・ソロモンも近ごろ評価を上げつつある監督なので、観ておくことにした。
 ちなみに本作は【16 Days】というタイトルでテルグ語ダビング版が作られており、1ヶ月前に、つまり、タミル語版オリジナルよりも先にAP州で公開され、フロップに終わっている。

【Laadam】 (2009 : Tamil)
物語・脚本・台詞・監督 : Prabu Solomon
出演 : Aravindhan, Charmy, Kota Srinivasa Rao, V.Jayaprakash, Dheeraj Kher, Babu Antony, Manorama
音楽 : Dharan
撮影 : Sukumar
編集 : J.N.Harsha
制作 : J.P.Kumar, D.Y.Chowdary

《あらすじ》
 チェンナイでパーワダイ(Kota Srinivasa Rao)率いるマフィアとウェンブリー(V.Jayaprakash)率いるマフィアが激しく対立抗争していた。ある日、パーワダイの息子がウェンブリーの息子に殺され、激怒したパーワダイは16日以内に復讐を遂げることを誓う。
 クンジダパダム(Aravindhan)は大学を優秀な成績で卒業し、職を求めてチェンナイに出て来ていた。彼は孤児だったが、遠い知人のスブラマニヤムを頼って、彼のアパートで起居していた。しかし、そのスブラマニヤムはパーワダイから借金をしており、返済できなくて姿をくらましていた。
 エンジェル(Charmy)は家庭用浄水器の販促会社に勤めていた。彼女も孤児で、自分の住まいには戻らず、留守宅に忍び込んでは朝まで過ごすという、風変わりな習性があった。そしてある時、クンジダパダムの部屋に忍び込み、二人は出会うことになる。
 パーワダイの組員たちは借金取立てのためにスブラマニヤムの部屋に来、間違えてクンジダパダムを脅す。パーワダイはクンジダパダムを刺客として使うことを思い付き、16日以内にウェンブリーの息子を殺したら、お前の命を助けてやる、と脅迫する。
 クンジダパダムはウェンブリーの事務所へ行くが、組員に荒野へ連れて行かれ、生き埋めにされる。だが、そこは運良く救い出される。
 懲りたクンジダパダムは、スブラマニヤムの借金を返済するために、エンジェルにお金を工面してもらい、パーワダイの事務所へ行く。ちょうどウェンブリーから送られて来たクンジダパダム生き埋めのビデオを見ていたパーワダイたちは、死んだはずの当人が現れたことに腰を抜かす。パーワダイはクンジダパダムをひとかどの人物だと思い、逆に借金の2倍の額のお金と拳銃を与え、重ねてウェンブリーの息子を殺すよう指示する。
 クンジダパダムはウェンブリーの組員に追いかけれら、かばんを取られる。それは彼の学位証明書が入っている大切なものだった。
 クンジダパダムはウェンブリーの息子がミニバスに乗って移動生活を送っていることを知り、そのバスを見つけ、乗り込む。だが、さんざん弄ばれ、脅されるだけで、命からがら逃れるのがやっとだった。
 エンジェルはクンジダパダムを連れて住処を点々とする。ある晩は大臣の家に忍び込むが、翌朝、見つかってしまい、警察に連行される。しかし、頭のおかしな警官の計らいで、二人は警察署内で結婚式を挙げることになる。互いに惹かれ合っていた二人は、その警官の家で初夜を迎えることになる。
 翌日、学位証明書を取り戻すために、クンジダパダムはウェンブリーの息子たちが集っているビーチへ赴く。だが、ウェンブリーの息子はその証明書を破り捨てるだけでなく、エンジェルのことも侮辱する。激昂したクンジダパダムは、彼らに向けて銃をぶっ放す、、、。

   *    *    *    *

 殺伐としたバイオレンスに、不思議と甘く、軽やかとまでは行かないが、解放感のあるロマンスが絡むという、風変わりなタッチの作品だった。
 私的には面白く拝見できたが、先行レビューでは、【Laadam】、【16 Days】とも、ボロクソに近い評価がなされている。
 確かに、ストーリーは単純で、ありふれたものだし、作りも荒削りなのだが、一番の問題は「テイスト」にあったのだろうと思う。どうやら、タミル人には【Laadam】はB級テルグ映画のように感じられ、テルグ人には【16 Days】はタミル臭く感じられたようなのだ。
 昔から、他言語へのダビング版が作られるのは普通のことだし、そもそも製作の段階から二言語版として同時製作される作品も珍しくない。だが、私の感覚では、例えばタミル映画とテルグ映画とではかなり「テイスト」が違うように感じられるし、それぞれの製作者も鑑賞者もそのことを強く自覚している。なので、安易にダビング版を作っても、一方でヒットしても他方ではフロップになったり、あるいは、どっち就かずで双方でそっぽを向かれたりする可能性も高い。【Laadam】と【16 Days】は後者の例だったのかなと思う。

 ただ、私はタミル人でもテルグ人でもなく、どちらに肩入れしたいわけでもないので、そんな「テイスト」問題とは無縁で鑑賞できた。
 また、本作はストーリーの面白さ云々というより、作品全体としてもっと大切なものを表現していたように思う。それは、上に書いたとおり、「解放感」なのだ。
 本作の映像は一貫して青っぽくカラー処理されており、薄暗い雰囲気の中で奇妙なバイオレンス劇が展開される。そのどんよりとした重苦しさは、つまりはインド人の心の中に潜む鬱屈感の象徴のように思われるのだ。
 インド人は楽天的に生きているようでも、実際には様々な問題(社会的因習、貧困、失業、テロ、等々)の中で、多方面からプレッシャーを受けながら生きている。それで、内面に鬱屈感をため込んでいる者も多いわけで、そんな連中が、現実世界であれ、映画の世界であれ、心に風穴が開くような機会を望んでいたとしても不思議ではない。
 本作の主人公、クンジダパダムはまさにそんな閉塞感漂うインド人の代表のようなもので、バブリーなインドとはいえ負け組みに入ってしまった彼が、エンジェルという名の女性と出会い、心に風穴を開けることができたクライマックスとエンディングは、私的には気持ちの良いものだった。

 ちなみに、本作のストーリー、キャラクター設定は、ハリウッド映画の【Lucky Number Slevin】(06:邦題【ラッキナンバー7】)とキム・ギドク監督の韓国映画【3-Iron (Bin-Jip)】(04:邦題【うつせみ】)から着想を得ているらしい。
 監督のプラブ・ソロモンは、タミル映画の【Kokki】(06)と【Lee】(07)で評価されている。前者はラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督ばりのギャング映画のようだ。【Usire】(01)という、ラヴィチャンドラン主演のカンナダ映画も撮っているとは意外だ。

◆ パフォーマンス面
 主人公、クンジダパダム役のAravindhanはやはり新人らしい。ウーティの出身で、マニ・ラトナムらの助監督をやっていた、という記事もあるが、真偽のほどは分からない。
 スチールを見て分かるとおり、俳優としてはまったく冴えないタイプなので、本作限定かな、とも思う。ただ、この役柄にはぴったり嵌っていた。
 (写真トップ&下:AravindhanとCharmy。)

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 エンジェル役のチャルミは、おそらくこの映画の目玉だと思うのだが、期待どおりの面白い演技をしている。ただし、ダンス・シーンは彼女の能力を十分生かしきったものとは言えない。

 タミル語版【Laadam】とテルグ語版【16 Days】の間にどんな変更があるのか、気にかかるところだが、【16 Days】のクレジットにはDharmavarapu Subrahmanyamの名前があるところから、きっとコメディーの一部が違うのだろう。(たぶん、おかしな警官のエピソード。)
 テルグ語版では、チャルミはテルグ映画スターたちの物真似をやっているらしいのだが、それはタミル語版ではどうだったのか、まったく分からなかった。ただ、エンジェルとクンジダパダムがタミルの喜劇王、ヴァディヴェールの家に侵入し、彼の物真似をするというシーンはあった。(あの邸宅が実際にヴァディヴェールのものかどうかは不明。)
 (写真下:ヴァディヴェールの小道具を使って遊ぶ二人。)

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◆ テクニカル面
 音楽はDharanという新進の作曲家が担当している。
 サントラのうち2曲はラップ・ミュージックで、マレーシアで活動する‘Yogi B & Natchatra’というグループのラッパーが歌っている。
 好き嫌いは別として、非常に興味深いので、YouTubeの動画を紹介しておく。
  http://www.youtube.com/watch?v=PRNpwRMRhDw

 片や、こんなロマンティックなソング・シーンもある。
  http://www.youtube.com/watch?v=I1WvDNdN6tk

◆ 総評
 【Laadam】は、私はDVDを買ってもう一度鑑賞してみてもいいと思っているが、さて、オススメかどうかとなると、ちょっと自信がない。オフビートなバイオレンス物が好きな人なら、感じるかもしれない。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ちょいと面白そうですね。

>自分の住まいには戻らず、留守宅に忍び込んでは朝まで過ごすという、風変わりな習性があった。

>頭のおかしな警官の計らいで、二人は警察署内で結婚式を挙げることになる。

シノプシスだけ読むと「そんなアホな!」と叫びたくなりますが、そういう疑惑をねじふせて無理からストーリーを展開してゆくところがインド映画の醍醐味。

チャルミをはじめとして、テルグでお馴染みの面々が随分出てるようですが、こんななら最初からテルグ語映画として作ればよかったのにと思わないではありません。

でも、「ナミターとファルジャナが出ているおバカっぽいタミル映画」の方に惹かれるなあ、基本的にjavascript:putEmoji2(%22目覚まし時計webry%22,%20object_id%20)


メタ坊
2009/04/02 06:46
【1977】見そびれちゃいましたか。残念ですねー。
これお馬鹿っぽさにも惹かれるけど、スチールにある日本っぽい場所は本当に日本ロケだったのかも知りたいです。

【16 Days】じゃなくて【Laadam】の方が一応オリジナルなんですね。
ちょいと心に留め置いてましょう。
Piyo
2009/04/02 15:49
>ちょいと面白そうですね。

私的にはちょいと面白かったです。

>シノプシスだけ読むと「そんなアホな!」と叫びたくなりますが、そういう疑惑をねじふせて無理からストーリーを展開してゆくところがインド映画の醍醐味。

イロジカルにも面白いのと頭に来るのがあるのですが、本作のはすんなりと来ました。

>チャルミをはじめとして、テルグでお馴染みの面々が随分出てるようですが、こんななら最初からテルグ語映画として作ればよかったのにと思わないではありません。

よく分からないのですが、テルグ系の人はコタとチャルミぐらいじゃないでしょうか。
映画製作の早い段階で、プロデューサーがChozha CreationsからCosmos Entertainmentに移って、テルグ語版製作の話が出たんじゃないかと思います。
 
カーヴェリ
2009/04/03 00:33

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