カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kannadada Kiran Bedi】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/04/12 01:57   >>

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 マーラシュリー主演のカンナダ映画。監督はN.オームプラカシュ・ラオ。制作はマーラシュリーの夫のラムーで、本作は‘Ramu Enterprises’の第25作目になるらしい。
 このオームプラカシュ・ラオとラムーのコンビは、メインストリームとも言えるアクション映画の数々のヒット作を生み出している。(私は【A.K.47】(99)と【Kalasipalya】(04)しか観ていない。)本作もインドでは珍しい(もしや、インドに現存する唯一の?)女アクション・スター、マーラシュリーを擁してのフル・アクション映画だ。

 ちなみに、本作は当初【Kiran Bedi】というタイトルで公開予定だったが、実在するKiran Bedi自身からの抗議があって、【Kannadada Kiran Bedi】(カンナダのキラン・べディ)に変更している。
 Kiran Bediというのは、女性ながら初めてインド警察(IPS:Indian Police Service)の警官(officer)になった人物のことだが、本作のストーリーはそのキラン・べディの生涯とは何の関係もなく、オマージュとして名前を借りただけのようだ。
 キラン・べディがどんなに偉い人かは、次を参照。
  http://en.wikipedia.org/wiki/Kiran_Bedi
  http://www.kiranbedi.com/
 下の写真は実在のKiran Bedi。なかなかカッコいいオバサンだ。(上のオフィシャル・サイトより借用。)

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【Kannadada Kiran Bedi】 (2009 : Kannada)
監督 : N.Omprakash Rao
台詞 : Ranganath
出演 : Malashree, Srinivasa Murthy, Ashish Vidyarthi, Rangayana Raghu, Suchendra Prasad, Sadhu Kokila, Bullet Prakash, Telangana Sakuntala, Dharma, Baby Ananya
音楽 : Hamsalekha
撮影 : K.M.Vishnuvardhana
アクション : Palani Raj
制作 : Ramu

《あらすじ》
 実直な警察官、ウェンカタッパ(Srinivasa Murthy)には一人娘がいたが、インド警察初の女性警察官の名にちなんで、「キラン・べディ」と名付けていた。キラン・べディ(Malashree)は長じて、父の期待どおりに優秀な婦人警官になる。
 バンガロールの街はブーパティ(Ashish Vidyarthi)を中心に、ナーガ、デ・ソーザ、モバイル・ナッチャッパ(Rangayana Raghu)、ムニらのギャング団が巣食っていた。キラン・べディはそのギャング団一掃の任務を託される。
 この女警官の存在を疎ましく感じたギャング団は、彼女を陥れるために汚職事件をでっち上げようとするが、あっさりばれてしまう。キラン・べディはブーパティの屋敷に乗り込み、啖呵を切る。
 その頃、ある女子寮で女子大生が自殺するという事件が起きていた。彼女の死に不審を抱いたキラン・べディは、捜査の結果、自殺ではなく、ブーパティの息子、ヴィッキーによる殺害だと知る。キラン・べディはマドゥライに潜伏中のヴィッキーを追い詰める。その過程で、ヴィッキーは死んでしまう。
 キラン・べディは任務のため、父と一緒にベッラーリへ行くことになる。息子の死に逆上したブーパティは一味を大量動員し、ベッラーリの手前でキラン・べディを殺害し、遺体を焼いてしまう。悲嘆にくれる父のウェンカタッパであるが、ベッラーリの町で娘とそっくりの女性を目撃する。
 彼女の名前はバーギャラクシュミ(Malashree)で、スリや詐欺をして生計を立てている女だった。ウェンカタッパは彼女の知恵と体力を見込んで、娘の「キラン・べディ」のふりをしてくれるよう依頼する。
 ウェンカタッパと共にバンガロールに来たバーギャラクシュミは、キラン・べディとして警察署に現れる。だが、自分の使命を理解しない彼女は、警官の地位を利用してチンピラから小金をせびり始め、ウェンカタッパを怒らせる。しかしある時、彼女は「キラン・べディ」が下町の人々から神のように尊敬されているのを知り、すっかり心を入れ替え、キラン・べディの遺志を継ぐ決心をする。
 キラン・べディは生きている、との情報はギャング団を慄かせる。バーギャラクシュミはブーパティらの前に姿を現す。だが彼女は、あっさりと「自分はキラン・べディではなく、ベッラーリのバーギャラクシュミだ」と正体を明かす。
 ブーパティたちは下町の住民から土地を騙し取り、高級ホテルを建設しようとしていた。しかし、これはバーギャラクシュミらの知恵で阻まれる。
 憤ったブーパティは、総選挙に立候補し、政治家の立場から警察に圧力をかける作戦を立てる。これを知ったバーギャラクシュミは、乞食の男(Sadhu Kokila)を対立候補に立て、結果的にブーパティは選挙に負ける。
 苛立ちの募るギャング団は、キラン・べディの母を脅迫する。だが、母は毅然とした態度を取り、ガス・シリンダーに火をつけ、自分もろとも悪漢を爆死させる。
 それを知ったバーギャラクシュミは、復讐のため、ブーパティらを追い詰める。だが、その途中で彼女は逮捕されてしまう。
 ほどなく、バーギャラクシュミとウェンカタッパは、キラン・べディを騙る詐欺容疑で裁判にかけられる、、、。

   *    *    *    *

 上で「メインストリームのアクション映画」という書き方をしたが、カンナダ映画でメインストリームと言えば、実は「すでに時代遅れ」を意味していることが多い。本作もAP州などで公開したら、「10年遅れ」と評されるだろう。
 だが、それだけに、古き良き時代(?)のマサラ映画を観るようで、安心して鑑賞できた。

 作品の出来としてはムラがあり、特にアクション・シーンとコメディー・シーンがそうだった。冴えないアクションと古くさいコメディがあったかと思うと、べらぼうに痛快なアクションも監督の腕と経験を実感させる旨いコメディーの入れ方もあった。
 同じ1本の映画で、どうしてこんなに上下のムラができてしまうのか、不思議だ。

 しかし、私が面白いと感じたそのアクションとコメディーの部分も、カンナダ映画に馴染んでいない人にはまったくアピールしないかもしれない。
 いくつか例を挙げておくと、キラン・べディがヴィッキー逮捕のためにマドゥライに乗り込んだシーンでは、彼女の前にテランガナ・シャクンタラ演じる極道の女将が立ちはだかる。この「マーラシュリー対テランガナ・シャクンタラ」の対決がなんとも凄まじく、人の闘いと言うより、ほとんど「闘牛」だった。
 ギャング団が企てた高級ホテル建設計画がポシャる下りも、悪漢たちが地鎮祭をやっていると、土中からシヴァリンガが出土してしまい(実は、バーギャラクシュミの策)、霊験あらたかな場所としてプージャが始まり、あれよあれよと言う間に信者や怪しげな行者がぞろぞろ集まり、なし崩し的にホテル建設ができなくなるという、「なんでこうなるの?」的な力の抜ける展開だった。
 選挙のシーンはもっとハチャメチャ度が増している。「Kalasipalya選挙区」から出馬するブーパティは、カラシパルヤは庶民の町だから、彼らにアピールするために自分を「犬」のイメージで売り込み、「ブーパティに1票を、犬に1票を!」と演説する。それに対してバーギャラクシュミは、カラシパルヤの実態に精通しているという理由で本当の乞食の男を擁立し、かくして「犬対乞食」の選挙戦が始まり、乞食が勝ってしまうのである。この2陣営の舌戦は、カルナータカ州の政治に対する風刺が込められているようだ。(ちなみに、今年はインドで総選挙が行われるので、実際の候補者に配慮してか、映画では「Kalasipalya選挙区」という架空の選挙区が設定されていた。)
 クライマックスのアクション・シーンではカー・チェイスが用意されていたが、迫力ある展開にランガーヤナ・ラグ演ずるモバイル・ナッチャッパのボケが絶妙の間合いで絡み、旨いなぁ、と思った。(大体、「モバイル・ナッチャッパ」という役名からして、私のツボにはまるものだが。)

 ストーリー全体としてもなかなか面白いのだが、しかし創造的とは言えず、ラヴィ・テジャ主演のテルグ映画【Vikramarkudu】(06)から骨子を借りている。(と言うより、こういう筋書きは全然珍しくないのだが。)
 実は、本作公開の1週間前にスディープ監督・主演の【Veera Madakari】というカンナダ映画が公開されており(未見)、これがまさに【Vikramarkudu】のリメイクらしい。ということは、同じプロットの映画が同時期に並んだわけで、これは興行面で互いに足を引っ張ることになるだろうと思う。

◆ パフォーマンス面
 さて、そのマーラシュリーであるが、【Durgi】(04)以来、久々の映画出演のようだ。
 本作のクレジットでは‘Action Queen’という肩書きが付いていた。だが、実際は太りすぎで動きが鈍くなっており、アクションはそんなに上手いとは見えない。
 しかし、彼女の場合は、動きの鋭さというより力強さが本領で、悪漢を殴ったり蹴ったりすると、例によって20メートルぐらいぶっ飛ぶ絵になるのだが、それも彼女なら本当に飛ばしそうな気がするのが面白い。
 こういう厚ぼったくて押し出しの強い女優というのは日本人には好まれないかもしれないが、男優でも「目ヂカラ」一発で悪漢を震え上がらせられる俳優が少なくなった今日、女ながらそれができる彼女は貴重な存在だ。

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 ところで、このマーラシュリーという人が何者かは、あまりよく分かっていない。
 AP州出身であるとか、タミル映画界でRasikaという名前で活躍後、カンナダに移って来たとかいう情報もあるが、私はまだ裏が取れていない。
 最近、Wikipediaにも「Malashri」の項目が上げられているが、そこには出身地は触れられておらず、タミル時代の記述もまったくない。
 なので、ここでは今のところ確かなこととして、彼女は【Nanjundi Kalyana】(89)でカンナダ映画デビューし、90年代前半はカンナダのトップ女優として人気を誇り、今も多くの支持を集めている、ぐらいのことを記しておこう。
 今では太ってしまい、映画の中でも怖い顔をしているが、若い頃はスレンダーな派手顔美人だったことを付け加えておく。

 ちなみに、本作にはマーラシュリーの実の娘、Ananyaがキラン・べディの少女時代役でちらっと出ている。(似ている。)

◆ 結語
 このブログは日本語で書かれたものとして、日本人読者を想定しているが、さて、本作を日本人の誰にオススメするかとなると、困ってしまう。強いて言えば、誰にもオススメしない。私は面白く拝見したが、オームプラカシュ・ラオ監督が本作で見せたネタの多く、また、全体として表現している素朴なモラルは「カンナダ節」とも言えるもので、カルナータカの空気に浸った人でない限り、分かってもらえないような気がするからである。
 観るな、という意味ではないが、マーラシュリーに関心がある人でない限り、一瞥すらする必要はないだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
>本作を日本人の誰にオススメするかとなると、困ってしまう。強いて言えば、誰にもオススメしない。

あたしは日本人ですが、マーラシュリーが活躍してるなら見ますよ。たぶん"Durgi"を見た唯一の在留邦人(笑)でしょうから。
メタ坊
2009/04/12 10:12
はい、ご覧になってください。
上で「マーラシュリーに関心がある人でない限り」と留保をつけたのは、まさにメタ坊さんを念頭に置いてのことでした。(というより、私にマーラシュリーを紹介したのがメタ坊さんなのでした。)
 
カーヴェリ
2009/04/12 10:55
そうは言いながらも、カーヴェリさん、読めば見たくなるようなレビューを書きますからねぇ。

スネーハさんが女IPS物の新作を撮ってるようですね。
http://www.bharatstudent.com/cafebharat/photo_gallery_2-Telugu-Movies-Bhavani_IPS-photo-galleries-2,4,1461.php
流行(はやり)なのかなと思っちゃいました。

Piyo
2009/04/14 00:27
上のスチールを見ましたが、スネーハさん、IPSオフィサーをやるには華奢な感じがしますね。(サリーを着ると、むっちりしているのですが。)
スネーハの女IPSも見てみたいのですが、バンガロールで公開されるかどうか、微妙なとこです。
 
カーヴェリ
2009/04/14 15:35
私はこの映画外れそうな気がするんですが、、、

そういえばジュニア君の【Rakhi】ではスハシニさんが警官姿ですよ。
Piyo
2009/04/14 22:38
まぁ、こけるでしょう。

>【Rakhi】ではスハシニさんが警官姿ですよ。

これがまた色っぽかったりするから、いいですよね。
 
カーヴェリ
2009/04/15 03:57

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