カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Billa】 (09 : Telugu)

<<   作成日時 : 2009/04/23 21:24   >>

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 プラバス主演のテルグ映画。
 もはや、、、どの作品のリメイクと言うべきか分からないが、タイトルと時期からすると、アジット主演のタミル映画【Billa】(07)のリメイクということになるのだろう。
 ところが、そのアジット版【Billa】(07)はラジニカント主演のタミル映画【Billa】(80)のリメイクであり、これはそもそもアミタブ・バッチャン主演のヒンディー映画【Don】(78)のリメイクであり、これはまた周知の通り、シャールク・カーン主演の【Don】(06)としてリメイクされている。そして、ラジニカントの【Billa】(80)の前には、NTR主演のテルグ語版リメイク、すなわち【Yugandhar】(79)も作られており、さらにはモハンラル主演の【Sobharaj】(86)というマラヤラム語版もあるらしい。(ということは前の【Billa】(07)評でも書いておいた。)
 飽きもせずによく作ったものだが、作る方も作る方なら、観る方も観る方で、上の諸作はすべてヒットを記録している(モハンラル版だけ未確認)。
 このプラバス版【Billa】も、封切り以来、猛烈に客を集めているようだ。

【Billa】 (2009 : Telugu)
脚本・台詞・監督 : Meher Ramesh
出演 : Prabhas, Krishnam Raju, Anushka, Namitha, Rahman, Aditya, Ali, Kelly Dorjee, Supreeth, Subbaraju, Hansika, Jayasudha
音楽 : Mani Sharma
撮影 : Sounder Rajan
アクション : Stun Shiva
編集 : Marthand K.Venkatesh
制作 : Narendra, Prabodh

《あらすじ》
 ビッラ(Prabhas)はマレーシアを中心に暗躍するマフィアの大物で、その仲間にはランジット(Supreeth)、ヴィクラム(Subbaraju)、リーサ(Namitha)らがいた。彼は複数の国の警察から指名手配されていたが、決して捕まることはなかった。ビッラ逮捕に執念を燃やす警官クリシュナムルティ(Krishnam Raju)は、マレーシア警察のアーディティヤ(Aditya)らとクアラルンプールで捜査チームを結成する。また、国際警察のダルメーンドラ(Rahman)も同じくビッラを追っていた。彼らの狙いは、ビッラだけでなく、その取引相手のラシード・カーン(Kelly Dorjee)、並びに、彼らの黒幕とされる‘DEVIL’の逮捕にあった。
 ビッラはある時、裏切り者のヴィクラムを抹殺する。ヴィクラムの婚約者、プリヤ(Hansika)は警察に協力し、ビッラを誘惑し、罠にかけようとするが、あえなく殺される。しかし、ヴィクラムの妹、マーヤ(Anushka)は、ビッラの組織の一員になることに成功し、いつでもビッラの命を狙える位置にいた。
 ある日、クリシュナムルティはビッラを追い詰め、逮捕寸前まで行くが、ビッラは命を落としてしまう。クリシュナムルティはビッラを埋葬しようとするが、その時、タレコミ屋のシャンカル(Ali)から、ビッラそっくりの男がインドのAP州・ヴァイザーグにいるとの情報を得る。ビッラなくしてはマフィアの全貌解明も‘DEVIL’の逮捕も水泡に帰すと考えたクリシュナムルティは、ビッラの死を秘密にし、その瓜二つの男を替え玉に仕立てて、組織に送り込む秘策を練る。
 クリシュナムルティはその男に会いに行く。それはランガ(Prabhas)という名のケチなコソ泥だったが、善良な男で、2人の孤児を養っていた。クリシュナムルティの依頼に対してひるむランガだったが、孤児たちに教育を受けさせることを条件に、引き受ける。
 厳しい訓練の後、ランガはビッラとなり、組織に戻される、、、。

   *    *    *    *

 気合いを感じる作品だった。
 気合というのは、監督をはじめ裏方陣が、どうあっても面白い映画を作ろうと一心不乱に努力・工夫をしている跡が随所に窺えるという意味で、スクリーンを見ていると、カメラの向こうで大声で怒鳴っているメハル・ラメーシュ監督の姿が目に浮かぶようだった。その甲斐あってか、本作は非常にスリリング、スリーク、スタイリッシュな作品に仕上がっている。先行の一連の作品と並べても、決して恥ずかしくない出来だ。
 特にアクション・シーンが素晴らしく、ビッラが命を落とすきっかけとなるカー・チェイス・シーンなどは度肝を抜かれる迫力だった。

 作品のムードやストーリーなどは、やはり基本的にアジット版【Billa】(07)を下敷きにしており、ヒンディー映画の2つの【Don】との関係は薄そう。(もしかすると、【Yugandhar】へのオマージュもあるかもしれないが、未見なので分からない。)配役も、ビッラの情婦(Namitha)、マレーシア警察(Aditya)、国際警察(Rahman)の役は同じ俳優だった。
 しかし、ストーリーはクライマックスの手前までほぼアジット版のとおりに進むのであるが、細部で微妙に工夫が加えられている。また、終盤では驚きのヒネリもあり、アジット版を観た人でも面白く観られると思う。

 監督のメハル・ラメーシュは、去年、NTRジュニア主演でテルグ映画【Kantri】を撮った人だが、私はどうもこの【Kantri】が好きになれず、その原因はメハル・ラメーシュの演出のまずさにあると思っている。彼は実はカンナダ人で、【Veera Kannadiga】(04)と【Ajay】(06)という2本のカンナダ映画(それぞれ、テルグ映画【Andhrawala】(04)と【Okkadu】(03)のリメイク)を撮っているのだが、【Veera Kannadiga】もイマイチで(【Ajay】は未見)、私はメハル・ラメーシュ監督のことを下手くそだと見ていた。しかし、今回の【Billa】ではずいぶんと腕を上げているようだ。

 ただ、この【Billa】は、映画館で3時間座って観ている分には退屈しないものであるが、一歩映画館を出ると、はて、この映画のどこに味わいがあって、どこに感動ポイントがあるんだろうと、一気に冷めてしまう作品でもあった。いろいろあっても、観点を変えれば、何もないという、揮発性の映画だ。別に娯楽アクション映画に「メッセージ」や「感動の涙」を期待しているわけではないが、私は自動車レースや格闘技、ファッション・ショーを見に映画館へ出かけるわけでもないので、そこはきちんと「ドラマ」も見せてほしかった。
 それはつまり、監督が「ドラマ」よりも「映像」を作ることに躍起になり、個々の俳優の良さを十分に活かし切っていないからだと思う。(後述)

 また、内容面でも、一つ不満点がある。それは本作の敵役がランガの養っていた子供たちを誘拐しないことだ。
 一体、これまでの【Don】でも【Billa】でも、主人公のコソ泥の男がマフィアに潜入するという危険な任務を引き受けるのも、ひとえに子供たちの教育のためだった。なので、その後見人の警官が殺され、さらには子供たち自身にまで危害が加えられそうになったとき、コソ泥もジャスジートも真剣に悪に立ち向かうことになるのである(アミタブ・バッチャン版、ラジニ版、シャールク版では、その子供たちはジャスジート(JJ)という金庫破りの名人の子とされている)。ところが、本作のようにその下りをカットしてしまうと、ランガは何のために、誰のために闘っているのか分からなくなってしまうのである。
 毎度毎度、悪漢が子供に銃を突きつけて「ヒヒヒ!」とやるのもアホくさく思われて、メハル・ラメーシュ監督はあえてこの筋書きを捨てたのかもしれないが、私の【Don】&【Billa】の作品観からすると致命的な過ちを犯しているような気がするし、クライマックスもなんとなくスカッとしなかった。

◆ パフォーマンス面
 身も蓋もない言い方だが、プラバスという俳優がこの【Billa】に適役かどうかは疑問が残った。
 コソ泥・ランガの役は非常に個性が出ていて面白かったのだが、ビッラ役のほうは、プラバスのキャラクターからして、どう見ても世界11カ国から指名手配されている極悪非道のマフィアには見えなかった。
 もちろん、俳優が役を作るわけで、過去のビッラ(ドン)像を引きずるのはよくないかもしれないが、アミタブ・バッチャン、ラジニカント、シャールク・カーン、アジットと見てきた私の眼には、いかにも風格が足りないように思えた。
 ただ、それはいいとして、どうもビッラ&ランガという紋切り型の役柄に押し込められて、プラバスが本来の演技スキルを出させてもらえなかったのは残念なことだ。
 (写真下:Prabhas@ビッラとNamitha@リーサ。ナミターは先日のテレビ・インタビューで、ダイエットをして9キロ痩せたと喜んでいたが、、、。)

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 ヒロインのアヌーシュカ(マーヤ役)とナミター(リーサ役)は無駄遣いだった。二人して、ビキニを着てうろうろしているだけだったような気がする。
 特にアヌーシュカは、前半後半とも重要な役柄になるはずなのに、何をしに来たのかよく分からなかった。これはアジット版でも感じた疑問で、私は【Don】(78)のズィーナト・アマンや【Billa】(80)のシュリープリヤに思い入れがあるだけに、本作のマーヤは納得できない。
 (下:PrabhasとAnushka。)

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 瞬間的だが、ハンシカは面白かった。期待どおりの登場、そして退場だった。
 (下:一瞬、ナミターだと思ってしまったハンシカ嬢。)

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 クリシュナムルティ役はプラバスの叔父、クリシュナムラジューがやっている。本作の仕掛け人はこのオジサマだが、往年の‘Rebel Star’もさすがに威力が衰えたか、私の周りのテルグ人は本作のミスキャストの第1位にこの人を挙げている。(彼らは口を揃えて、この役はプラカシュ・ラージがやるべきだったと言っている。)

 特にコメディー・パートはなかった。アリーが出ていたが、コメディーはせず、筋に絡む重要な役割を演じていた。(それでも、顔は不自然に大きかったが。)

◆ 余談
 私が観たとき、映画館は満員だったが、観客はすべて男。映画館がむくつけき野郎どもで占拠されるというのは、カンナダのウペンドラ、タミルのヴィジャイなら普通のことだが、プラバスもそうだったとは!

◆ 結語
 プラバス版【Billa】はスリリング&スタイリッシュな、技術的にはよくできた娯楽作品。【Don】シリーズに強いこだわりのある人でない限り、先行作品を観た人も観ていない人も、十分に楽しめるだろう。

・満足度 : 3.0 / 5

¶参考
プラバスの作品リスト
http://domidomipiyoman.at.webry.info/theme/e66e4f4813.html
 

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
なんか予想通りのレビューですね。
思ってたんですよねぇ、【Don】リメイク物中で多分一番弱い作品になるだろうって。あと、ビッラ役よりもチンピラ役のランガの方がプラバース君にははまってるんだろうなっつうのも。

このレビューで私的にクリヤーなったところがあるので、近いうちに自分のブログの方でほざこうと思います。
ま、とにかくこの【Billa】、私は一応プラバースファンなので、少なくともビッグバジェットを回収できるぐらいにヒットはしては欲しいと思いますが、彼の作品の中でもっとも高額で華麗で、最も中身の無い作品になるかもしれないですねぇ。
Piyo
2009/04/23 23:13
そうだ、今アジットの【Billa】取り寄せ中です。

Piyo
2009/04/23 23:18
>思ってたんですよねぇ、【Don】リメイク物中で多分一番弱い作品になるだろうって。

そんなことでもないですよ。

>あと、ビッラ役よりもチンピラ役のランガの方がプラバース君にははまってるんだろうなっつうのも。

ただ、ランガ役はシャイニングですよ。

>近いうちに自分のブログの方でほざこうと思います。

楽しみにしています。

いろんな見方があるはずなので、私のコメントもすっかり忘れてくださいな。
 
カーヴェリ
2009/04/24 12:30

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