カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Jaaji Mallige】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/05/19 02:58   >>

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 サンダルウッドの‘Royal Star’こと、アジャイ主演のカンナダ映画。
 去年の【Taj Mahal】(08)のヒットのおかげで、ようやくスターの仲間入りを果たした感のあるアジャイだが、その勢いを持続してか、本作は4月3日の公開以来6週間が過ぎ、「50日」が見えてきた。クレジットからすると、いかにも地味そうな映画なだけに、競合作品が少ない時期とはいえ、この数字は健闘と言えるだろう。

【Jaaji Mallige】 (2009 : Kannada)
脚本・監督 : Anantha Raju
出演 : Ajay, Gauri Munjal, Komal Kumar, Nagashekhar, Bullet Prakash, Nagakiran, Jayamala
音楽 : Sadhu Kokila
撮影 : M.R.Seenu
制作 : Anaji Nagaraj, Jayanna

《あらすじ》
 ラーム(Ajay)は自転車でチャイを売って歩く貧しい青年。両親も兄弟もいない。
 ある日、ラームはウマー(Gauri Munjal)というミドルクラスの女子大生に出会い、恋心を抱く。彼は彼女につい「自分は大学生だ」とウソをついてしまう。
 その後、ラームはウマーの大学にチャイを配達することになり、彼女と再会する。それでラームは、自分がしがないチャイ屋であることがバレてしまったのであるが、ごまかすことなく訳を説明したため、ウマーはかえってラームに好印象を持つ。それから二人は何度か会い、ウマーもラームの誠実な人柄に惚れてしまい、彼に生涯の伴侶となることを約束する。
 ある時、ウマーは病気になり、入院する。病院名を知らされなかったラームは、彼女の快気祈願も兼ねて、地方のお寺へプージャに行く。
 ウマーはすぐに良くなり、退院する。彼女の担当医はプラシャント(Nagakiran)という若い医者だったが、ウマーの両親は彼のことがすっかり気に入り、結婚相手としてウマーに勧める。ウマーの心に葛藤が生じる。彼女は結婚後の生活のことを考え、貧しいラームを捨てて、両親の希望どおりプラシャントと結婚することに決める。
 バンガロールに戻ったラームは、しかしウマーから手厳しく拒絶され、失恋者となってしまう。
 絶望したラームが友人のスッブ(Komal Kumar)と酒を飲んでいるとき、恋人に捨てられたある男が毒を飲んで自殺を図るという事件が起きる。これを見て、名状しがたい義憤を感じたラームは、ウマーに対して訴訟を起こすことを思い付き、警察署へ行く。警察はラームの申し立てを相手にしなかったが、彼の強い態度に動かされ、訴状が作られる。
 失恋した男が元の恋人に対して訴訟を起こすという事件はたちまちに話題となり、テレビや新聞でも報道される。やがて満員となった法廷の中で裁判が開始される、、、。

   *    *    *    *

 あまり期待せず、タイトルさえ「何だったかいな?」という感じで観に行ったのだが、なかなかどうして、良い映画だった。作りは安食堂のミニ・ミールスといった体裁で、豪華感はまったくないのだが、直截的なストーリーとメッセージは興味深い。しかし、実は本作はオリジナルではなく、ダヌシュ主演のタミル映画【Devathayai Kanden】(04)のリメイクだとのこと。しかも、かなり忠実なリメイクらしい。

 クライマックスの裁判のシーンと結末のヒネリを通して、本作が何を訴えようとしているかが重要なのだが、上のあらすじではそれは書かなかった。こういうメッセージ志向の作品についてきちんと語りたいなら、その核心部まで書くべきかもしれないが、やはりネタバレは避けたい。(実際に本作、または、タミル語版オリジナルを鑑賞いただければと思う。)

 とは言いながら、もごもごと語ると、本作で扱われているのは、やはりインドにおける「恋愛」の位置だ。
 大雑把に言って、インドでは男女間の関係で一等なのが「結婚」、しかも「親が決めた結婚」で、「恋愛」は、誰も恋愛をするなとまで言わないにせよ、結婚に対しては道を譲るべきものである。それで、その価値観を逆手にとって、非常に無責任な(と私には思える)異性との付き合い方をする者も多く、まぁ、単純化して言うと、「きみは花だ、太陽だ」、「死ぬまで一緒だ」とか言い、時には肉体関係まで持ちながら、いざ縁談が持ち上がると、なんの良心の呵責を感じることもなく(と私には観察される)、相手を捨て、「お父さんが決めたことだから」とか「だってママが言うんだもん」で片付けてしまう輩が多いのである。それで、泣きを見たり、毒を飲んだり、飲まされたり(!)した人の具体例を私もいくつか見てきた。
 もちろん、失恋者が自殺を図るというのは世界のどこでも見られることだが、インドのケースが際立っているのは、失恋した側がいかに不幸に苛まれようとも、結婚のために恋人を捨てた側の行為は一種の「親孝行」として正当化される場合も多い、ということだ。その価値観の是非は私には決められないが、それでも、直感的に「どこかおかしいぞ」と、憤りを感じたり恨みを抱いたりする者がいるのも当然で、本作はそんな感情を通して、インドの結婚観・恋愛観の矛盾(と言い切る自信はないが)をうまく突いていると思う。

 本作で槍玉に上がっているのはヒロイン、つまり女性のほうだが、無責任な恋愛という点では非難されるのは男も女も同じで、特に女性だけに問題があるわけではない。しかし、本作では、コメディー・シーンではあるが、若い女性がぼこぼこに殴るは蹴るはされるシーンがあったりして、かなりはっきりと「近ごろの若い女」に対する敵意(という言葉が強すぎれば、批判)が見て取れ、興味深かった。(【Naan Avanillai】(07)なんかもそうだが、インド映画には時おり、私の感覚からするとどうかなぁと思えるほど、女性に対して敵意・嫌悪感を差し向けたような作品や場面が見られ、それもインド映画の特徴の一つなのかなぁ、と憶測している。)

 ちなみに、タイトルの「Jaaji Mallige」はジャスミンの花の一種のはずだが、なんでこの花が作品のモチーフとして使われているのかは分からない。(もしかしたら、言い伝えとか「花言葉」とかがあるのかもしれない。)

◆ パフォーマンス面
 本作の見どころは、やはりアジャイのパフォーマンスだろう。【Taj Mahal】に続いて、またもや「深刻な失恋者」という似たような役柄になってしまったが、演技者としてなかなか能力の高いものを見せている。
 今回はアクションもそつなくこなしていたが、なんと言っても特筆すべきはコメディー面での成長だろう。コメディーができる、コメディアンと上手く絡めるというのは、ヒーローとして大きな強みなので、この面で成長したということは、使いやすい俳優になったということを意味する。彼の場合、地味で線の細いイメージは払拭しきれないだろうが、こつこつとした努力が開花しつつあるようで、これから渋い俳優になって行くのではないかと思う。
 (写真下:チェックのシャツにコットンパンツ、それにビーチサンダルと、庶民のアイテムに身を包んでのAjay氏(右)。コメディアン、Komal(左)との相性もよろしいようで。)

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 ヒロイン、ウマー役はGauri Munjalという女優。ほとんど無名だが、いくつかのカンナダ映画に出演している。(後日付記:テルグ映画の【Bunny】等、ヒット作もあり。)
 私がこれまで出会ったインド女優の中でも、間違いなく「萌えないヒロイン・ベスト5」入りしそうな人で、本作でも目を惹くものはなかったが、この役はヒロインというよりネガティブ・ロールに近かったので、良しとしよう。
 (写真トップ:AjayとGauri Munjal。)

 脇役陣では、‘Karnataka Film Chamber of Commerce’のジャヤマーラー委員長が「女弁護士役」で貫禄を見せつけている。

◆ テクニカル面
 サードゥ・コーキラの音楽はまずまずだが、2曲はタミル語版オリジナルのものを使っているらしい。(もちろん、私にはどれがそうだかは分からない。)
 音楽シーンは、1曲目のヒーロー導入のものはなんとか楽しめたが(写真下)、あとは面白みがなかったと記憶している。

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◆ 結語
 【Jaaji Mallige】は、予算や人材などの条件が限られている中で、精一杯良い仕事をしたような好感の持てるリメイク作品だ。こういう「恋愛とは何ぞや?」を問うたような映画はカンナダ人の好むところなのか、近ごろよく作られており、本作が堅調に客を集めたのもそういう流れに乗ってのことなのかもしれない。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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