カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Yuvah】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/06/17 22:20   >>

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 カンナダ映画を観てはぶつぶつ文句を言うのが常態化してしまった私だが、別にカンナダ映画が嫌いなわけでも、見下しているわけでもない。これも、縁あってカルナータカ州に在住する者として、なんとか地元映画産業には頑張ってもらいたいという愛着心のゆえである。
 歴史的に見て、カンナダ映画がずっとつまらなかったわけではなく、ふた昔ほど前までは他州映画産業に比べても見劣りするものではなかったはずだ。それが今では、南印4州の中でも創造性や技術力に落ちる地域となっている。
 そうなった理由はいろいろあるだろうが、現地映画ファンを白けさせている現象に、リメイク作品の多さがある。確かに、テレビやDVDで過去作品を繰り返し見ることができる時代に、ちょっと前のテルグ映画やタミル映画のリメイクを持って来られても、興味が湧かないのが普通だ。にもかかわらず、リメイク作品は盛んに作られ、Dinesh Gandhiというプロデューサーなどは「リメイクしか作らない」と公言している。その理由というのが、「オリジナル作品だと配給会社が付いてくれない」ということなのであるが、この発言から察するに、サンダルウッドの病弊は相当根が深そうだ。

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 そんな状況の中、この【Yuvah】は明るい光明かもしれない。前評判では、アクション・シーンとダンス・シーンの製作にボリウッドから人材を招き、それなりにお金もかけているようで、やる気を感じさせてくれるオリジナル作品だからだ。
 「yuvah」は英語の「youth」という意味で(マニ・ラトナム監督の【Yuva】と同じ言葉)、タイトルのとおり若々しい勢いのある映画を期待したいところだ。

【Yuvah】 (2009 : Kannada)
物語・脚本・監督 : K.Narendra Babu
出演 : Karthik Shetty, Madhu Sharma, Gulshan Grover, Lal, Shobharaj, Chandrashekhar, Ramesh Bhat, Sudha, Jai Jagdish, Bullet Prakash
音楽 : Guru Kiran
撮影 : Santanio Tarzio
アクション : Cheetah Yagnesh Shetty, Thriller Manju
制作 : Manish Bansal, Shetty Manju

《あらすじ》
 大学生のジーワ(Karthik Shetty)は両親と妹の4人暮らし。父(Ramesh Bhat)はギャンブル好きの甲斐性なしだったが、ジーワ自身は正義感の強い若者で、空手の黒帯保持者だった。
 ジーワは武術大会に出場し、優勝するが、その会場にはシュリー(Madhu Sharma)もいた。ジーワはクリシュナ神の祭礼のときにもシュリーを目撃し、惚れる。ほどなく二人は親しい間柄になる。
 ある日、二人が映画を見ていたとき、後ろの席で携帯電話を使って騒いでいるヤクザがいたので、ジーワは注意を与える。休憩時間のときに、そのヤクザはジーワに絡むが、ジーワの強烈な一撃はヤクザを死亡させてしまう。そのヤクザは実はマフィアのドン、ドニ(Lal)の弟だった。仲間のヤクザたちは犯人を探すが、たまたま映画館内に敵方のヤクザたちがいたので、彼らの仕業だと誤解し、両者の間で大乱闘が起きる。
 この事件を担当した警部(Shobharaj)はジーワを容疑者として逮捕するが、この若者をマフィア殲滅に利用できると見て取った警部は彼を釈放し、泳がせることにする。
 大学教授(Jai Jagdish)の娘が麻薬に汚染され、彼はそのことでヤクザから脅されていた。それを知ったジーワはキャンパスでヤクザたちを叩きのめす。だが、この学内での暴力事件のせいで、彼は転校処分になる。
 シュリーは絶望しているジーワを自分の家に連れて行き、父のアンナ(Gulshan Grover)に会わせる。驚いたことに、アンナはマフィアのドンで、しかもドニと敵対していた。アンナはジーワに護身用にピストルを手渡す。これを不快に感じたジーワはシュリーを責めるが、彼女は父の稼業のせいで母を亡くしたことを打ち明け、暴力を嫌っていることを告げる。
 学内にヴェンキー(Chandrashekhar)という不良がおり、ジーワのクラスメイトの女子学生をレイプする。憤ったジーワはヴェンキーを叩きのめす。ヴェンキーはマフィアのドン、ドニの許に走る。
 ヴェンキーの情報から、ドニは弟殺しの真犯人がジーワだと悟る。また、ジーワとシュリーが付き合っているのを知り、アンナを呼び出し、弟の復讐を遂げることを宣言する。アンナはジーワの存在にジレンマを抱くようになる。
 ここに内務大臣が介入し、ジーワにヤクザとの揉め事から手を引くよう忠告する。これに失望したジーワはかえって大臣を非難する。大臣はドニとアンナに電話をかけ、ジーワを始末するよう指示する。
 ジーワとシュリーはドニの手の者に追われることになる。また、アンナも銃を持って動き出す、、、。

   *    *    *    *

 残念ながら、期待を下回る作品だった。
 確かにアクション・シーンとダンス・シーンはこれまでのカンナダ映画とは毛色を異にし、リッチに作られている。この娯楽的部分に力を入れることにより、しょぼいカンナダ映画の系譜から飛び出そうという意図は評価できるし、好感も持てる。しかし、肝心のストーリー・ラインが弱くて、これは従来のカンナダ映画と比べても相当平凡な部類で、結果的にアクション&ダンス・シーンが浮いてしまっているのである。

 勧善懲悪のアクション映画の場合、ヒーローが悪役を倒さなければならない動機の設定と、それをどうストーリー展開の中でふくらませて行くかが成功のカギだと思われるが、本作の場合、その動機となるのが、結局ヒーローの「正義感」ぐらいしか見当たらないのである。それで、ドラマとしてのダイナミズムが生まれて来ず、スカッとした娯楽アクションにならなかったのだと思う。
 大体、本作の悪役は誰なのかよく分からない。一応、マフィアのドン、ドニ(Lal)ということになるのだが、実はドニはジーワに対して何も悪いことをしていないのである。むしろ悪いことをしたのはドニの弟を殺したジーワのほうで、そりゃあ、いくらヤクザだといっても、人の子である以上、弟が殺されたら報復したくなるのは当然だ。しかも、ドニの弟が殺されることになるきっかけというのが、映画館で携帯電話を使っていただけのことなのだが、映画上映中に携帯を使うインド人など五万といるわけで、そんなことをいちいち咎め立てしていたらインドで映画は見られない、、、等々、監督は何を意図してストーリーを作ったのか、疑問がいろいと思い浮かぶ。
 で、何が言いたいかというと、本作のヒーローの「戦い」には具体性がなく、なにか「マフィア」や「腐敗政治家」といった社会悪一般に対して腕力を振るっている感じで、非常に抽象的だった。それで、映画の中で「暴力(rowdyism)はダメだ」と何度も繰り返される主張も説教くさく響いてしまった。

 監督はK.Narendra Babuという若手で、私は今回が初鑑賞。これまで【Oh, Gulabiye】(05)と【Pallakki】(07)という低予算のラブ・ストーリーを撮り、まずまずの評価を得ている人のようだが、こういう娯楽本位の本格アクション物を撮るには不向きな人かもしれない。

◆ テクニカル面
 まずアクション・シーンから書くと、冒頭の武術大会の場面とクライマックスのバイク・チェイスが面白い。アクション監督はThriller Manjuとボリウッドから招かれたCheetah Yagnesh Shettyという人が担当している。
 武術大会は一応空手の大会のようだが、主人公がひらひらと宙を舞う様は、コンピューター・ゲームのキャラクターのように軽い。それはイマイチなのだが、この屋外競技場のセットが作られた場所は【Sholay】(75)のロケ地として有名なRamnagarで、殺伐とした荒野の風景は印象に残る。
 バイク・チェイスのシーンは、アクロバティックなあり得ない動きの連発で、これは笑えた。

 ダンス・シーンでは、数曲ある音楽シーンのうち、2曲はボリウッドの超有名な振付師、Saroj Khanが振り付けを担当している。彼女が振り付けたボリウッド作品をいくつか見たことのある人なら、明らかにそれと認識できるだろう。ちなみに、クリシュナ神の祭礼での舞踊シーンでは彼女自身も姿を見せている。

 音楽を担当したのはグル・キランで、良い曲を作っている。ただ、ボリウッド仕様を意識してか、軽めの曲が多く、いつもの彼らしさは薄い。

◆ パフォーマンス面
 主要登場人物はあまり馴染みのない顔ぶれだ。
 主役のジーワを演じたKarthik Shettyは新人。アクションもセリフも上手く、才能を感じるが、やや間抜けな馬ヅラはヒーローとしてマイナス・ポイントかもしれない。

 ヒロイン、シュリー役のMadhu Sharmaは、私は初めて見たが、ある程度経験を積んだ女優のようで、安定したパフォーマンスをしている。アクション・シーンでも頑張っているのが嬉しい。
 ムンバイ出身の女優らしいが、いかにもカンナダ人が好みそうなぽっちゃりした外見で、また、本作のような単純なテイストの作品にはピッタリ合うキャラクターだ。
 (写真下:Karthik ShettyとMadhu Sharma。)

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 脇役陣では、警官役のショバラージが渋かった。
 2人のドンは、ボリウッド俳優のGulshan Groverとマラヤラム俳優のLalが演じているが、これはあえてサンダルウッドで馴染みのない役者を起用したものか?

◆ 結語
 【Yuvah】は、若さ弾ける娯楽活劇になるべしだったが、オーソドックスなモラル劇に終わってしまった。この内容でこのキャストなら、ヒットは難しいだろう。しかし、本作に込められた野心は評価したいし、こういう試行錯誤の中からカンナダ映画の突然変異も起きるのではないかと、サンダルウッドの将来に淡い期待を抱かせてくれる作品でもあった。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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