カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Prayanam】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/06/22 00:48   >>

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 テルグ映画界が新しい感覚の映画、殊に高級シネコンに集う富裕層の若者をターゲットにした映画を一定数作り、成功させていることはこのブログでも何度か触れてきた。この【Prayanam】もそんな映画のようで、フレッシュな気配が漂ってくる。
 第一、クレジットを見ても、スタッフもキャストもほとんど知らない人たちだ。これでブラフマナンダムとマノージ・クマル(モハン・バブの次男坊)がいなければ、テルグ映画かどうかさえ分からなかっただろう。
 監督のChandra Sekhar Yeletiも私は知らなかったが、過去3作撮り、評価は得ている人のようだ。本作も評判は良く、観て損はないだろうという読みだ。

【Prayanam】 (2009 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Chandra Sekhar Yeleti
出演 : Manchu Manoj Kumar, Harika, Brahmanandam, Janardhan, Tamim, Kalpika, Daniel
音楽 : Mahesh Shankar
撮影 : Sarvesh Murari
編集 : Mohan Rama Rao
制作 : Seeta Yeleti

《あらすじ》
 MBAを終えたばかりのドゥルー(Manchu Manoj Kumar)は人生を賭け事のように楽しんでいた。彼は友人のカイラーシュ(Janardhan)とラーマン(Tamim)の3人でマレーシアに遊びに来ており、次なる目的地シンガポールへ向かうためにクアラルンプール国際空港へ来る。
 ハリカ(Harika)はクアラルンプールの大学院でヘア・デザインの勉強をしていたが、お見合いのためにハイデラバードへ帰省することになる。彼女は友達(Kalpika)と共に空港までやって来る。
 この男3人と女2人は奇妙な出会い方をするが、ドゥルーはハリカに一目ぼれしてしまう。彼はなんとかハリカにプロポーズし、自分のことを愛してもらいたいと望むが、飛行機出発までの時間は2時間しかない。そこで友人のラーマンは15分ごとの8つのステージに分けた口説きの計画を考え、ドゥルーはその通りに行動する。
 もとより見合い相手のいるハリカのこと、ドゥルーのことを相手にしないが、それでも彼は諦めず、2人で出国手続きを済ませる。
 ところがちょうどその頃、友人のカイラーシュたちがひょんな誤解からテロリストの嫌疑をかけられ、空港警察に身柄を拘束されていた。それで、ドゥルーも警察に制止される。彼は手押し車の背板にプロポーズの言葉を書いてハリカに見せようとするが、うまくいかず、そのまま連行されてしまう。
 ドゥルーたちはなんとか釈放されるが、ハリカとの関係がおじゃんになったドゥルーはお冠。しかし、彼らの前にハリカが現れる。彼女のフライトが2時間遅れになったのである。
 希望を取り戻したドゥルーは、一緒に食事をしたり、ゲームをやったりと、あの手この手でハリカの気を惹こうとする。そして遂にプロポーズの言葉を伝えるが、ハリカは「今日、あたしにそんなこと言っても、明日、違う女の子に同じことを言うでしょう?」と切り返す。ドゥルーは言葉を返せない。
 ハリカは素っ気なくドゥルーを突き放し、搭乗ゲートへと向かう。しかし、たまたま以前にドゥルーが言葉を書いた手押し車を見つける。その文を読んだハリカは、心を翻し、彼にチャンスを与えることにする。彼女は見合い相手を試すために質問リストを用意していたが、それをドゥルーにさせてみようと、彼に質問票を手渡す。ドゥルーと友人たちは必死に解答を考えるが、残り時間はあとわずかしかない、、、。

   *    *    *    *

 映画の舞台は、冒頭の15分を除いて、クアラルンプール国際空港の内部のみ。
 上映時間は約2時間の短いものだが、ドラマの時間と現実の時間の流れが一致するという、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の【終着駅】のようなスタイルを取っている(実際には、ドラマの出来事の長さは3時間強だと思われる)。
 条件的に制約されるせいで、こういう作品は単調なものになりがちだが、コメディー的要素がうまく配置されているおかげで、最後まで退屈せずに見通せる。
 「Prayanam」は「旅」という意味だが、「旅」という未知の「時間」と「空間」の中で、未知の「人」に出会い、「一目ぼれ」するという、ワクワクするような感覚が本作の下支えになっている。しかも本作の場合、その恋を成就させるための時間に限りがあり、待ったなしの制限時間内で、果たして主人公はヒロインを口説き落とすことができるのか、また、できるとしたら、それはどんなプロセスによってか、という、一種のサスペンスのような感覚が映画のクライマックスまで持続することが、本作の成功の秘訣だろう。

 主人公のドゥルー(Manoj)はお気楽で刺激好き、友人といつも賭けをやっているような青年で、これはインド映画で珍しいキャラクターではない。ヒロインとの関係も、ぶつかった一撃で一目ぼれし、それからは押しの一手、というのもインド映画で普通の展開なのだが、本作の場合、その口説きのプロセスが「戦略」として自覚化され、比較的丁寧に提出されているところが新しいのかなぁ、と思える。
 一方、ヒロインのハリカ(Harika)のほうは、スペシャリストになるために留学している「自立を目指す女性」なのだが、これも近ごろのインド映画では珍しいヒロイン像ではない。しかし、彼女の場合は一段徹底していて、何事も秩序立てて計画し、常に最善の行動パターンを選択をするというふうな、非常に理性的な女性として描かれている。これは高級シネコンに集まるような女性たちにはアピールする女性像かもしれない。
 そんな理性的な女性の心の中に、どうしてドゥルーのような行き当たりばったりの男が入り込むことができるのか、一体どんな神慮が働くのかが、本作の面白いところかもしれない。

 あと、舞台が外国のピカピカした空港ビルだというのも、本作の独特の雰囲気作りに役立っていると思われる。(確か、この空港は黒川紀章の設計だったように記憶しているが。)

◆ パフォーマンス面
 マノージ・クマルはなかなか良い演技をしている。
 私は今回が初見で、これまでどんな実績を残してきたのかは知らないが、モハン・バブの息子でありながら、事実として「トリウッドにこの人あり」というまでには至っていないだろう。だが本作を見る限り、演技もスクリーン上のプレゼンスも申し分なく、どうしてこの人がこのポジションなのかと不思議なくらいだ(やはり、テルグの若手ヒーローの層は厚かったということか)。今回はお誂え向きの役が当たったという感じだが、今後どんな活躍を見せるか注目だ。
 (写真下:質問票を見て張り切るManoj@ドゥルー。)

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 ハリカについては、私は十分お綺麗だと思ったのだが、女優美に厳しい現地人の目にはあまり美しく映らないらしい。だが、はっきりしたきれいな目は印象に残るはずで、全体の雰囲気もハリカの役柄には合っていたと思う。
 (写真下:Harikaさん。本名はPayal Ghoshらしい。)

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 ベテラン俳優では唯一ブラフマナンダムが出演し、プライドの高いインテリ農民の役を演じている。もう、本作はこの人さまさまといった感じの技ありコメディーで笑わせてくれたが、しかし、主人公の友人たち(Janardhan、Tamim、Kalpika)が提供したマルチプレックス的お笑いにも注目すべきだろう。
 (写真下:またまたこんな目に遭ってしまったブラフマナンダム氏。)

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◆ テクニカル面
 音楽はMahesh Shankarという人の担当。
 音的には良いのだが、音楽シーンの位置は本作では小さく、3曲しかない。しかも、うち2曲は長さが2分30秒を切る曲で、ほとんどBGMに近い扱いだ。
 ダンスが入るのは1曲目の歌だけだが(これだけ5分を越える)、これも特殊な構成で、前半は3Dアニメ、後半から実写になるというものだ。意図については不明。(ちなみに、映画冒頭のクレジットでは2Dアニメが使われている。)
 本作のような単調な展開の作品こそ積極的に音楽シーンを入れてほしいと思うのだが、あえてその選択肢は取らなかったようだ。それなら不可解な1曲目も不要なのではと思われ、どうも本作の音楽の扱いには腑に落ちないものを感じる。

◆ 結語
 【Prayanam】は典型的なマルチプレックス・シネマ。賛否の分かれる作品かもしれないが、テルグ映画ではこうした映画のトレンドは、大スターを配した大衆的娯楽映画と並走してまだまだ続き、それがまた新しい展開を生むとも考えられるので、末永くテルグ映画を楽しみたい人なら、押さえておいてもいい1作だと思う。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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