カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Oy!】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/07/21 02:24   >>

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 シッダルタ主演のテルグ映画。
 ハズレなしとも言えるシッダのフィルモ・グラフィーからすると、彼の出演作ということだけですでに話題作なのだが、今回はそれにかつての子役スター「シャミリ」のヒロイン・デビュー作という大きな話題がくっ付いている。
 シャミリといっても、タミル映画の【Anjali】(90)と【Kandukondain Kandukondain】(00)ぐらいしか思い浮かばない私だが、当地での「Baby Shamili」に対する記憶は今なお鮮烈なようだ。加えて、本作は成人したシャミリのスチールもトレイラーも映画公開直前まで封印するという戦略により、ファンの期待は大きく膨れ上がっていた。
 (写真トップ:Siddharthとヴェールを脱いだShamili嬢。)

【Oy!】 (2009 : Telugu)
物語・脚本・監督 : Anand Ranga
出演 : Siddharth, Shamili, Krishnudu, Napoleon, Sunil, Surekhavani, Pradeep Rawat, Tanikella Bharani, Ali, Master Bharat, Radha Kumari, Ravi Kondala Rao
音楽 : Yuvan Shankar Raja
撮影 : Vijay Chakravarthy
編集 : Marthand K.Venkatesh
制作 : Danayya DVV

《あらすじ》
 ウデイ(Siddharth)は大富豪の息子で、人生に刹那的な楽しみを求める若者。彼は世界のあちこちを転々としていたが、2006年の年の暮れ、ハイデラバードに戻って来る。彼の誕生日は1月1日だったため、毎年、年越しの晩には新年と誕生祝いを兼ねたパーティーを盛大に開いていたからである。
 今年もパブでバカ騒ぎをしていたウデイだが、そこに一人、パーティーに交わることなく、黙々と書き物をしている女性がいた。彼女はサンディヤ(Shamili)という名で、ウデイはつれなくあしらわれるが、彼女に対して今まで体験したことのない感覚を味わい、これが初恋だと悟る。
 サンディヤはヴァイザーグでゲストハウスを営んでおり、数秘学などインドの伝統文化を重んじる保守的な女性だった。両親とは死別しており、父の残したゲストハウスを一人で守って、隠居のように暮らしていた。
 ウデイは早速ヴァイザーグに赴き、サンディヤに接近するが、冷たくあしらわれる。だが彼は、彼女がゲストハウスのローン返済の件で窮地に立っていることを知る。そのローンを扱っていたのが他ならぬウデイの父の会社だった。父は少し前に他界していたが、会社を継ぐことに大して関心のなかったウデイも、この一件で代表取締役に就任することにする。そしてサンディヤのローン返済期限を延期する。
 ウデイはサンディヤをうまく言いくるめて、自分の身分を明かさずに、ゲストハウスに入居することに成功する。そして、友人のファッツォ(Krishnudu)の助けも借りて、サンディヤの理想の男性像を演出し、その甲斐あってか、サンディヤの態度も軟化する。彼は、サンディヤの友達(Surekhavani)の三人娘の意見を取り入れて、ストレートにプロポーズすることに決める。そして彼女の誕生日に12のプレゼントを用意し、12番目の贈り物として、プロポーズの言葉を伝える。
 ここに、アビシェク(Sunil)という保険外交員がおり、かねてよりサンディヤに生命保険の加入を迫っていた。身寄りのいない彼女は断り続けていたが、とうとうウデイを受取人に指名した保険を申請する。アビシェクよりこれを知らされたウデイは大喜びするが、この保険申請はサンディヤの健康上の理由で却下される。病院で理由を尋ねたウデイは、サンディヤが癌に侵され、余命いくばくもないことを知らされる。落ち込むウデイに対して、叔父(Napoleon)は最期の最期までサンディヤを楽しませてやるべきだと助言する。
 ウデイはサンディヤに、やりたいと思いながら実現できていないことを聞く。彼女はいろいろな事柄を挙げるが、その中に両親の遺灰をガンジス川に流すというのがあった。ウデイはサンディヤから聞いた希望をすべて叶える決意で、自身の病気のことは何も知らない彼女を連れて、バナラスへ向けて出発する、、、。

   *    *    *    *

 タイトルの「Oy!」は、日本人なら人を呼ぶときの「おーい!」を連想するだろうが、いや、まったくそのとおり、人を呼ぶ「おーい!」だった。インドでも人を「おーい!」と呼ぶケースがあるとは知らなかった。日本語の場合と同様、丁寧な言葉遣いではなく、映画ではサンディヤがウデイを半ばぞんざいに、半ば親しみを込めて呼ぶ呼び方として、非常に効果的に使われていた。

 愛する人を不治の病で失うというラブ・ストーリーだが、まさに映画の冒頭で、本作が有名なアメリカ映画【Love Story】(70:Erich Segal監督,邦題【ある愛の詩】)から着想を得ていることが言明されている。
 だが、他のレビューでは、本作の先行類似作品、コピー元として、テルグ映画の【Geethanjali】(89)、【Johnny】(03)、カンナダ映画の【Amrithadhare】(05)、韓国映画の【A Millionaire's First Love】(06:邦題【百万長者の初恋】)、その他ハリウッド作品などの名が挙げられている。そうすると、本作はいかにもパクリの結合体とも思われるが、愛する人の不治の病というストーリーを採る限り、どうしても似てしまうのは仕方がないだろう。むしろ本作は、純愛物の王道とも言えるこのストーリーに、南インド映画界随一の二枚目俳優シッダルタが正面きって取り組もうとした意欲作だと捉えておきたい。
 監督のAnand Rangaは【Bommarillu】(06)でバスカル監督のアシスタントをやっていた人だそうで、近ごろのシッダ作品の常として、やはりデビュー監督だ。傀儡とまではいかないにせよ、本作にシッダの意見が大きく反映されている可能性は高いと見ていいだろう。

 さて、この定番恋愛映画を作る場合、ストーリーも結末も分かっているのに、いかに観客を騙し、酔わせ、泣かせるかが成否の分かれ目になる。その点では、本作は道具立てがうまく機能し、爽やかで切ない情緒を生み出すことに成功している。
 まず、ウデイとサンディヤの性格付けが良い。二人は全く正反対の人格なのだが、そのコントラストが随所でうまく活かされており、特にクライマックスではそれが感動的な意味合いを持ってくる。
 小道具の使い方もうまい。例えば、ウデイはサングラスを愛用しているが、それがクライマックスで効果的に使われる。また、12の誕生プレゼントのエピソードも巧みだ。
 サンディヤの変貌も見逃せない。上のあらすじでは後半開始直後までしか書かなかったが、この後、二人が船と鉄道とトラックとヘリコプターを使って、コルカタ、ブッダ・ガヤ、バナラスを訪れ、ヴァイザーグに戻るという、ロード・ムービーのノリになる。主目的は遺灰をガンガーに流すということだが、道中でウデイは、サンディヤの願い、例えば、泥棒をしたいとか、パワン・カリヤンの新作映画を初日に観たいとか、同時に2地点に立ちたいとかを順々に叶えてやり、彼女はそれまで抑圧していたものを一気にふっきり、人生を楽しみ始める。ところが、観客にはこの後サンディヤが死ぬことが分かっているので、彼女の無邪気な表情が切なくて切なくて、この辺りから涙腺が緩んでくる仕掛けになっている。

 私的には非常によくできた映画に思えるのだが、現地人の評価は特に芳しいというものでもない。きっとインド人にとっては、こういう恋愛物は退屈なのか、純愛物を純愛物として楽しむのに照れがあるのか、または、恋愛という行為そのものに大きな価値を与えるのに躊躇しているか、なのだろう。
 確かにこの映画は、インド人の好むモラル的側面や家族愛、友情といった要素に乏しい(ヒーローとヒロインのどちらにも両親がいないというのは注目に値する)。特にメッセージらしいものはなく、愛という現象そのものに焦点を当てた本作は、インド映画としての具材が揃っていないと感じられたのかもしれない。ただ、それだけに、新しいインド映画の形というものを私は感じた。
 メッセージらしいものはないと書いたが、本作ではウデイの魂の成長を通して、愛の価値が語られている。それは、サンディヤ亡きあと、悲しみも後悔もせず、風呂上りのようにサバサバとしたウデイの表情によく表れている。

◆ パフォーマンス面
 シッダルタは期待どおりのパフォーマンスだ。
 一見、毎回同じような役柄をやっているようなシッダだが、演技の内容や質は作品ごとに微妙に変えている。前作の【Konchem Istam Konchem Kastam】でもそう感じたが、最近のシッダは天然の爽やかさや勢いを超えて、演技者として非常に丹念に感情表現するようになっている。
 本作ですごいと思ったのは、サンディヤの誕生日にシッダ(ウデイ)がストレートに‘I love you’と言う場面で、これがクサくもなく、カッコよすぎもせず、見事に説得力があったことだ。こういう単純なセリフが自然に言えるというのは、俳優としての天賦の才だろう。これからも楽しみだ。
 (写真下:SiddharthとShamili。)

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 注目のシャミリだが、私は良かったと思っている。少なくとも、サンディヤの役にはぴったり合っていた。
 かつての子役時代の可愛らしさを知っているなら、公開されたスチールを見て「あれれ?」と思った方もいるかもしれないが、まぁ、【Kandukondain Kandukondain】のカマラがそのまま大きくなったと想像すればいい。
 今後、彼女がトリシャやイリアナのようなタイプの女優としてやっていくとは考えられないが、演技的にしっかりしたものがあるので、使い勝手は悪くないだろうと思う。(下)

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 ところで、ちょっとはシャミリ嬢についてネタを仕入れておこうと思い、本作鑑賞に先立ち、カンナダ映画の【Makkala Sakshi】(94:Kishore Sarja監督)という作品を観たのだが、これがまたびっくり仰天ものだった。もう、7歳にして大人の顔立ち!
 映画そのものは荒唐無稽な復讐物といった感じだが、シャミリの禁断の映像もあったりして、これはオススメかも。(下:VCDのカバー。)

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 脇役陣では、ウデイの友人、ファッツォ役のKrishnuduが見かけの割には器用なところを見せていた。(下)

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 叔父役のナポレオンも良い役だったし、プラディープ・ラーワトもなぜか【Chatrapati】(05)と同じキャラクターで登場し、ビハールの場面で印象的なひと山を作っていた。
 スレーカーワニは、サリー姿の若妻役が多いのだが、本作では洋服を着、髪も束ねておらず、まったく違った一面を見せている。彼女はキャラクター女優として存在感を増しつつあり、近々大きな仕事をしそうな予感がする。

 コメディー陣ではスニルとアリーがエントリーしている。
 スニルはOKだが、客船の乗客役のアリーは良い使われ方とは言えない。というより、マスター・バーラトと組んだのが間違いで、明らかに本作の不要シーンとなっている。(しかし、アリーは客船の乗客に扮しても顔が大きいことが分かり、私的には良い勉強になった。)

◆ その他の注目点
 ユワン・シャンカル・ラージャの音楽はOK。

 ウデイが、サンディヤにテルグ語の雅語について無知なのを茶化され、勉強しようと使った教材がNTRの神様映画のDVD。そのセリフを聞くなり、「こりゃ、外国語じゃないか!」と驚くシーンが興味深い。
 また、二人が公開初日にパワン・カリヤンの映画の観るシーンも面白い。映画館内には紙吹雪が舞い、観客は総立ちで、とても映画鑑賞どころではないのだが、テルグ人の証言によると、本当にパワン・カリヤンの初日はあのようらしい。

◆ 結語
 他愛のないラブ・ストーリーとして退ける人もいるかもしれないが、インド人がインド人のために作った純愛物として、存在意義は大きい。シッダの好演とシャミリのヒロイン・デビュー作というだけでも、見る価値ありだろう。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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