カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Love Guru】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/07/29 22:35   >>

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 カンナダ映画界が、未完熟ながら興味深い視点を持った恋愛映画を発表し続けていることは、このブログでも折に触れ指摘してきた。タイトルとキャストから、この【Love Guru】もそんな系列に連なる作品だろうとの予想が立つ。ただ、「ラブ・グル」(愛の導師)というタイトルからすると、赤面必至の稚拙なラブ・コメが出て来る不安もあったのだが、我がお気に入りのカンナダ女優、ラディカ・パンディトが出ていることだし、ここは押さえておくことにした。

【Love Guru】 (2009 : Kannada)
物語・監督 : Prashanth Raj
出演 : Tarun, Radhika Pandit, Dilip Raj, Yagna Shetty, Sharan, Srinivasa Murthy, Ramesh Bhat, Jai Jagadish, Chitra Shenoy, Harish Raj
音楽 : Joshua Sridhar
撮影 : Gnanamurthy
編集 : Suresh Urs
制作 : Naveen

《あらすじ》
 舞台はバンガロール。プラタム(Tarun)とクシ(Radhika Pandit)は同じ日に同じソフトウェア会社に採用され、同じプロジェクト・チームに入る。二人の上司はアビ(Dilip Raj)。この会社にはたまたまプラタムの従妹プリヤ(Yagna Shetty)も勤めており、4人は息の合った仲間として親しい間柄になる。
 プラタムは地味で大人しい青年。対して、クシは都会的で活発な女性だった。プラタムはクシの生き生きとした性格に憧れ、愛情を抱く。彼は友人のラッキー(Harish Raj)に励まされ、会社の中でクシに「アイ・ラブ・ユー」と告白する。しかし、その日はたまたま4月1日だったため、彼の告白は同僚たちにジョークとして扱われてしまう。プラタムはさらに電話を通してクシに告白するが、その時もたまたま彼女の母(Chitra Shenoy)がゴキブリ退治で大騒ぎしていたため、クシは肝心のところを聞いていなかった。そんなすれ違いの中、クシもプラタムに恋心を寄せるようになるが、彼女はプラタムが好きなのはプリヤではないかと疑う。
 一方、アビもクシに惚れており、彼は自分の誕生パーティーに彼女を招待し、求婚する。クシは返事できないでいたが、アビは強引に自分の両親を彼女の家に連れて行く。すると、アビの父(Ramesh Bhat)とクシの父(Jai Jagadish)は旧知の間柄だったため、すっかり意気投合し、結婚話に拍車がかかる。プラタムのことが気にかかるクシは、彼に電話をするが、その会話を通してプラタムが愛しているのはプリヤだと確信してしまい、絶望した彼女はアビとの結婚を受諾する。
 アビの婚約は社内でも公表されたが、サプライズにするため、相手の名前は秘密にされていた。結婚式の当日、式場に来たプラタムは、アビの結婚相手がクシだと知って衝撃を受ける。焦った彼は、その場で、衆人環視の中でクシに「アイ・ラブ・ユー」と告げる。しかし、その時もジョークとして片付けられる。
 落ち込むプラタムに対して、叔父とプリヤが励まし、彼はプリヤの家で起居することになる。
 プラタムとクシとアビはプラタムの実家へ遊びに行く。ここでクシはプラタムの父(Srinivasa Murthy)と話し、プラタムの本心を知る。プラタムとクシはお互いに惹かれ合っていたにもかかわらず、すれ違いがあったことを悟るが、もはやどうにもならない。
 アビのチームのプロジェクトが社内で賞を取り、メンバーはパーティーを行う。酒をしこたま飲んで酔っぱらったプラタムは、友人のマデーシャ(Sharan)相手に自分の失恋話を語るが、それはアビとクシにも聞かれてしまい、気まずい展開となる。
 翌朝、プラタムはクシに謝るが、それが口論にまで発展してしまう。逆上したプラタムは会社を辞める決意をし、車に乗って会社を飛び出す。だが、その車は郊外で故障し、立ち往生する。たまたまそこは四つ角で、プラタムはどちらへ向かって歩いて行くべきか分からなかった。ちょうどその時、彼の横に1台の白い車が止まる、、、。

   *    *    *    *

 またまた評価の難しい映画だ。
 確かに新しい感覚・視点が見られ、私は興味深いと思ったが、違った角度から見ると失敗作だとも言えるだろう。事実、先行レビューでも評価が分かれている。
 ただ、否定派の批判点は、ストーリーがありふれている、スタイルだけで内容がない、ということで、片や肯定派は、ありふれた物語にもかかわらず、バンガロールのソフトウェア企業で働く若者たちの姿が等身大で描かれていて、フレッシュだ、という論調だ。どちらも「ストーリーが陳腐」という点では一致しており、スタイル面を肯定的に捉えるかどうかが評価の分かれ目となっているようだ。

 しかし、私はそれらとは違った観方で本作を捉えるべきではないかと思っている(奇を衒った解釈をするつもりはないが)。「陳腐なストーリー」というのは監督があえてそうしたのであり、それをラストでひっくり返したのが本作の核心だと思えるからだ。その「ひっくり返し」を成就させるために用意されたのが、映画終盤の、四つ角で佇むプラタムの前に現れた「白い車の人物」のエピソードだ。
 本作の前半は、都会のコンピューター会社で働く若者たちのちょいとオシャレなラブ・コメで、これは近ごろのインド映画でトレンドを作っているものだ。対して、クシが結婚してからの後半は感情的なメロドラマで、これもインドで伝統的に作られてきた恋愛映画の形だ。しかし、これらに対して、「な〜んちゃって、愛についてこんなふうにインド映画で語られてきたけど、オレたちはこれだぜ!」とひっくり返してしまって、自分たちの恋愛の形を提示したのが本作だったのではないかと私には思われるのである。その見せ方と主張は非常に軽いもので、そこにはインドの伝統とか家族の紐帯とか、インド映画がつい絡み込まれてしまいがちなモラル的要素はほぼ見られない。そのあまりにもあっけらかんとした調子に、私は思わず椅子からずり落ちてしまったほどだ。
 ただ、この「ひっくり返し」を納得して受け止めるためには、「白い車の人物」とは誰で、最近のカンナダ映画界で何を象徴しているかが分かっていないとダメだろう。この人物が出て来た意義が実感されないと、「ひっくり返し」が「ぶち壊し」になってしまうはずだ。私は非常に面白いと感じたが、近ごろのカンナダ映画やバンガロールという街に通じていない人なら、理解・共感は難しいかもしれない。(そういった意味では、本作は「カンナダ映画」というより「バンガロール映画」と呼ぶべきかもしれない。)

 監督のPrashanth Rajも新人監督らしい。
 デビュー作ということで、本作のアイデアは評価しておくが、これからもこういう「発想だけで勝負」の作品を撮ろうとするなら、本人のためにもカンナダ映画界のためにもならないだろう。

◆ パフォーマンス面
 主役のタルンは、お人好しで気の弱そうな優男というイメージがプラタム役にぴったりだった。大スターとして君臨できる器ではないが、腕の良い俳優で、本作での感情表現も十分に評価できるものだ。(写真下)
 参考に書いておくと、彼の出世作は【Kushi】(03)。

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 ラディカ・パンディトも好演と言っていいだろう。ちょっとオーバー・アクトなのと、相変わらずの「厚メイク」が気にかかるけれど。
 【Olave Jeevana Lekkachara】の項目でも書いたとおり、彼女は秀でて美人というわけでも、強いお色気があるわけでもないが、女優としてはなかなか旨味がある。逆に言うと、ゴージャス美女じゃなくても、普通の(と私には思える)女の子がヒロインとして活躍でき、評価され、支持されるというのが地方映画の良いところだろう。
 (写真下:Radhika Pandit@クシ。首からぶら下げたIDカードに注目。)

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 アビ役のディリープ・ラージは、もともとは声優だったと聞いているが、近ごろは俳優としても目立ち始めている。【Milana】(07)、【Neene Neene】(08)とクセのある脇役をやった後、本作では堂々と重要な役どころを務めている。善玉も悪玉もできる性格俳優として、これからも重要度が増しそうだ。
 (写真トップ:左よりTarun、Dilip Raj、Radhika Pandit。)

 プリヤ役のヤグナ・シェッティは大柄な女優だが、情のある女性の役に合いそうで、本作のように恋愛物のセカンド・ヒロインか家族物で重宝されそうだ。

◆ テクニカル面
 音楽はJoshua Sridharの担当。この人の過去作品としては、タミル映画の秀作【Kaadhal】(04)が思い浮かぶ。タミルでの仕事が多いが、カンナダ映画でも【Arrasu】(07)を担当している。
 曲的にはなかなか良かった。
 絵的にもうまく撮れているのだが、例によって、ダンスという点では見るところなし。また、海外ロケ地としてタイが選ばれているが、同じ場所の映像を3曲ぐらいで繰り返し使ってしまったのは、趣向としていただけない。

◆ 結語
 難しい映画でもクセのある映画でもないのだが、やはり観客を選ぶ作品かもしれない。しかし、「白い車の人物」が誰なのか、気になってしようがないお方は、もう本作を観るしかない!

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Krishnan Love Story】 (Kannada)
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