カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Male Barali Manju Irali】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/08/20 02:21   >>

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 ウィジャヤラクシュミ・シン監督、パールヴァティ・メノン主演のカンナダ映画。
 ウィジャヤラクシュミ・シンはS.V.ラジェンドラ・シン・バブ監督の妹で、元女優。監督としては去年のデビュー作【E Bandana】(08)で好成績を上げ、2作目が期待されていた女流監督だ。
 対して、ケーララ娘のパールヴァティ・メノンは、【Milana】(07)の大ヒットのおかげでカルナータカ州でも人気が高い。しかも彼女は、タイミングの良いことに、先日発表されたフィルムフェアー賞・タミル映画カテゴリーで、【Poo】(08)で主演女優賞を獲得し、一気に注目度が上昇した。
 それにしても、【Poo】はバンガロールで公開してくれなかったので、先日DVDを購入して鑑賞したが、パールヴァティは従兄を一途に愛する田舎娘を熱演しており、その狂おしい姿は直視するのも酷なくらい、痛々しかった。
 そんな彼女が女流監督と組んで、どんなヒロイン像を提供してくれるだろうか。

【Male Barali Manju Irali】 (2009 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Vijayalakshmi Singh
台詞 : B.A.Madhu
出演 : Parvathi Menon, Srinagara Kitty, Nagakiran, Jai Jagadish, Mukyamantri Chandru, Hema Chaudhary, Haripriya, Sharan, Sadhu Kokila, Umashri, Meghasri
音楽 : Mano Murthy
撮影 : Ajay Vincent
編集 : B.S.Kemparaju
制作 : Jai Jagadish

《あらすじ》
 バンガロールでMBAを修了したスネーハ(Parvathi Menon)はモダンな女性。彼女は友達のインドゥがモデルのオーディションを受けるのに付き添うが、広告写真家のプレム(Nagakiran)はスネーハのほうに目を留め、彼女をモデルに選択する。プレムに呼ばれたスネーハは彼の事務所を訪れるが、そこで少年時代のプレムの写真を見、彼が同郷の幼なじみであることに気付き、逃げるようにその場を去る。
 スネーハは14年ぶりに故郷、マディケリに帰省する。それを知ったプレムもスネーハを追ってマディケリの実家へ帰る。
 プレムは「プシュパワナ茶農園」のオーナー(Mukyamantri Chandru)の次男坊で、ヴィシュワス(Srinagara Kitty)という兄が当地にいた。スネーハの父、シヴァッパ(Jai Jagadish)はこのオーナーの下で働いており、スネーハは子供のころ、ヴィシュワス、プレム兄弟と仲良く遊んでいた。だが、この兄弟の母、プシュパ(Hema Chaudhary)は自分の息子たちが使用人の娘と親しくするのを喜ばず、シヴァッパに圧力をかけて、スネーハを都会の学校へと追いやっていたのである。
 ヴィシュワスは子供のころより寡黙で善良な人柄だった。対してプレムは活発な性格だった。スネーハはヴィシュワスに愛着を抱いていたが、プレムはスネーハの後を追い回していた。その関係は大人になっても再現され、プレムはスネーハを愛するが、スネーハはヴィシュワスに恋慕を寄せ、ヴィシュワスも都会育ちのスネーハに意外と純朴な一面を見出し、彼女に好意を抱くようになる。
 ある時、スネーハは、ナヤナ(Haripriya)という女性とヴィシュワスとの過去の経緯を知る。ナヤナは地方政治家の娘で、ヴィシュワスとは恋仲だったが、外国で勉強したいナヤナと田舎に留まりたいヴィシュワスの間に溝ができ、二人は別れ、ナヤナは現在海外留学中であった。
 ある事件がきっかけで、ヴィシュワスを強く愛していることを自覚したスネーハは、プレムに兄との仲を取り持ってくれるよう相談する。プレムはショックを受ける。
 他方、いくつかの出来事を経て、スネーハへの愛を確信したヴィシュワスは、彼女にプロポーズする機会を窺っていた。プレムは、ヴィシュワスがスネーハのために買った婚約指輪を見て、兄の気持ちを悟る。
 ここに、一時帰国したナヤナが突然現れる。彼女はヴィシュワスに未練を残しており、彼に再び交際を迫る。悪いことに、端からスネーハのことを疎ましく思っていたヴィシュワスの母は、息子とナヤナの縁談をまとめようとする。
 絶望したスネーハはバンガロールに戻ることにする。プレムがスネーハをバス・スタンドまで送るが、複雑な立場の彼は結局兄の本心を伝えることができないまま、彼女をバスに乗せる。
 だが、ヴィシュワスの気持ちに揺らぎはなかった。彼はスネーハを留めるため、ジープに乗ってバスを追いかける、、、。

   *    *    *    *

 とにかくシンプルな三角関係(ダブル三角関係と言うべきか)の物語で、驚くような仕掛けは全くない、極めて正統的なラブ・ストーリーだ。タイトルの「Male Barali Manju Irali」は「雨が降ろうと、雪があろうと」という意味で、これからして、本作が端正な恋愛物であることが予想できるだろう。かといって、陳腐だとか、退屈だとかいうことも全然なく、非常に語り口の上手い、質感のある作品だ。
 おそらく、登場人物の性格付け、演技、テンポが良かったのだろう。舞台を風光明媚なマディケリのティー・エステートとしたのも成功の一因だと思う。雨季の雨が降り注ぐ茶園の緑が非常に清々しい。(実際にマディケリでロケされたかどうかは知らないが、南インドの高原であることは確か。)ウィジャヤラクシュミ監督はさすが映画産業界に生まれ育った人物だけあって、映画のことによく通じているようだ。
 後半の途中までは完成度が高く、これだけありふれたストーリー・ラインを持ちながら、大きく感動できたなら、これは傑作と呼べるものに違いない、と思いながら観続けていたら、残念ながら、物語の山場から(ナヤナが登場してから)過度にセンチメンタルになってしまい、いささか引いてしまった。悪くはないのだが、あそこまで涙を見せたり、BGMを感動的に流さなくてもよかったろうに。(泣くのは登場人物でなく、観客のほうであるべきだ。)
 監督が女性だからこういう展開になったのかな、と言っては単純すぎるが、全編を通したきめ細やかな演出やセンチメンタリズムは、通常の(つまり、男が作った)インド映画とはかなり趣を異にしているのも確かだ。

 上で「三角関係」の物語と書いたが、これは本作の内容を正確に言い表したものではない。実は、ヴィシュワスとプレム、スネーハとナヤナの間にはほとんど葛藤らしい葛藤はなく、プレムもナヤナも物語を動かすための道具としてしか登場していないからである。
 では、本作の眼目は何だったのかと言うと、それは朴訥な田舎男のヴィシュワスをして都会娘のスネーハに対して“I love you”と言わせることだったのではないかと思う。実際、ラストでヴィシュワスがスネーハに「ア、ア、ア、アイ、、アイ、、アイ、ラブ、ユー!」とどもりながらプロポーズする場面では、劇場内で拍手喝采が沸き起こっていた。
 石のように固い田舎男の口がついに割れて、モダンガールに愛の言葉を伝える、これが本作のフレッシュな感動ポイントだったのではないかと思う。と同時に、これが象徴しているのは、単なるプロポーズの言葉というだけでなく、実は、何かと対立的に捉えられがちなインドの都市部と村落部の価値観も、決して融合できないものではないという、ウィジャヤラクシュミ監督の信念なのではないかと私は考える。
 その狙いが効果を上げるためには、スネーハのキャラクターが重要になるが、田舎生まれの都会育ちで、MBAを学んでキャリア・ガールを目指しながらも、田舎人の素朴さも忘れないという彼女の性格付けは正解だ。(この、「田舎性」をうちに宿した都会娘というヒロイン像は興味深い。)また、それを演じたパールヴァティ・メノンもぴったりの配役だ。パールヴァティは【Milana】では進歩的な女性、【Poo】ではド田舎娘、【Flash】(07)ではまさに都会娘と田舎娘の両面と、どちらの面も演じ分けられるからである。(この辺がパールヴァティ・メノンという女優の面白さだろう。)

◆ パフォーマンス面
 上述したとおり、パールヴァティの役柄と演技については申し分ない。またまた良い仕事をしている。繰り返して申し訳ないが、彼女は美貌と色気という点では人並なのに、芝居では非凡な味を出す。
 しかも、本作の彼女のパフォーマンスで特記すべきは、ケーララ人の彼女はカンナダ語を母語としないにもかかわらず、カンナダ語を猛勉強して、今回はセルフ・ダビングに挑戦していることだ。映画中の彼女のカンナダ語はかなり流暢だったので、本当にセルフ・ダビングなのか半信半疑だったが、先日、カンナダ語のテレビ番組に出演していて、司会者とも視聴者ともばっちりのカンナダ語で受け答えしており、間違いなく自身によるアフレコだということが分かった。その番組の中で、セルフ・ダビングにこだわった理由について説明しており、「声優には敬意を払うが、やはり自分のセリフは自分で言いたい」ということだった。前向きな姿勢だ。(ちなみに、【Milana】ではまだ吹き替えだった。)

 ヴィシュワス役のキッティは、私が「低気圧男」と呼ぶのももっともな、曇りがちだが嵐を呼ぶパワーを秘めた人物を好演している。今年は【Savari】【Olave Jeevana Lekkachara】と、印象に残る役が続いているようだ。
 (写真トップ:Srinagara KittyとParvathi Menon。)

 プレム役のナーガキランについては何も知らない。映画では見かけたことはないが、落ち着いた良い演技をしているところからすると、テレビ・ドラマの俳優か?
 (写真下:NagakiranとParvathi Menon。)

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 脇役陣では、スネーハの父役のジャイ・ジャガディーシュの好演が光る。何を隠そう、彼はウィジャヤラクシュミ・シン監督の夫で、本作のプロデューサーでもある。
 シャランとサドゥ・コキラのコメディーは、なんてことはない古めかしいものだが、私は非常に気に入った。

 さて、上でパールヴァティ・メノンをさんざ褒め上げておきながら、あっさり浮気するようだが、私の本作の真の目当てはセカンド・ヒロイン、ナヤナ役のハリプリヤだったのだ。ハリプリヤといっても、ほとんど知られていないと思うが、カンナダの新進女優で、今年は【E Sambhashne】という作品に出ていた(未見)。で、なかなかの別嬪さんなので秘かに注目していたわけなのだが、残念ながら本作での役は小さすぎた。
 (写真下:HaripriyaとSrinagara Kitty。)

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 上のスチールでは分からないが、脚なんかもすらっと細くて、こんな脚だったら踏まれても痛くないだろうなぁ、、、いや、むしろ、踏んで!とお願いしたくなるような、注目の美人女優なのである。(ええいっ、もう1枚おまけ!)

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◆ テクニカル面
 アジャイ・ヴィンセントの撮影はベリー・グッド。
 マノ・ムルティの音楽も、今ふうのカッコいいものではないが、愛すべき曲だった。音楽シーンは大したことないが、カンナダ映画らしいカワユいもので、悪くはない。

◆ 結語
 センチメンタルに流れすぎた嫌いもあるが、まずまず良質のラブ・ストーリーと評価していいだろう。オーソドックスなカンナダ映画にさっと新味を練り込んだ感じで、カンナダ映画ウォッチャーには非常に参考になる1本だ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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