カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Kanthaswamy】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2009/09/07 03:02   >>

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 ヴィクラム主演のタミル映画。
 南インド映画ファンならこの作品のことはかなり前から知っていただろうし、事実、去年の今ごろには公開されるようなニュースも流れていた。ところが、種々の理由(主にラグヴァランの急死)により製作が遅れに遅れ、やっと日の目を見た。
 注目はなんといっても、ヴィクラムがバットマンやスパイダーマンばりのスーパーヒーローを演じることで、公開されたスチールを見るといささか不安にもなるのだが、製作費も大きく(2億5千万ルピーとも4億ルピーとも言われている)、一昨年の【Sivaji - The Boss】、去年の【Dasavathaaram】と肩を並べるほどの話題作であるには違いない。

【Kanthaswamy】 (2009 : Tamil)
物語・脚本・台詞・監督 : Susi Ganesan
出演 : Vikram, Shriya Saran, Prabhu Ganesan, Krishna, Ashish Vidyarthi, Mukesh Tiwari, Vadivelu, Alex, Mansoor Ali Khan, Y.G.Mahendran, Charlie, Mayilsamy, Vinod Raj, Susi Ganesan, Mumaith Khan
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : N.K.Ekambaram
アクション : Kanal Kannan, ‘Chatrapathi’Shakthi
美術 : Thotta Tharani
衣装 : Chaitanya Rao
編集 : Praveen K.L.
制作 : Kalaipuli S.Dhanu

《あらすじ》
 中央捜査局(CBI)局員のカンダスワミ(Vikram)には秘めたる顔があった。彼は11人の仲間と義賊を組み、貧者のために暗躍していたのである。チェンナイ郊外にあるムルガン(カンダスワミ)寺院の境内に一本の木があり、貧しい人々が窮状を記した紙をその枝に結び付けていた。カンダスワミはその紙に書かれた願いを見て、阿漕な富豪から掬い上げた金をその嘆願者に配分していた。信者たちはカンダスワミ神が現れて願いを叶えてくれたと信じていた。だが、警察官のパランダマン(Prabhu Ganesan)はこれを不審に思い、捜査に乗り出す。
 一方、CBI局員としてのカンダスワミは悪徳実業家のブラックマネーの摘発に当たっており、PPP(Ashish Vidyarthi)やその協力者のラージモハン(Mukesh Tiwari)らが捜査の対象となっていた。ある日、カンダスワミはPPPの住居を強制捜査し、100億ルピー以上の隠し所得を発見する。PPPは逮捕を逃れるために、半身麻痺になったふりをする。
 PPPの一人娘、スッバラクシュミ(Shriya Saran)は、父の有様を見て、カンダスワミに復讐する決意をする。彼女はカンダスワミに惚れているふりをして接近するが、軽くかわされる。
 ある時、カンダスワミは警察に連行され、拷問される。同じくスッバラクシュミも拷問を受けており、いたたまれなくなった彼は、自分が「義賊のカンダスワミ」であることを白状してしまう。だが、それはPPPとスッバラクシュミの仕組んだ罠で、カンダスワミが連行されたのは警察署ではなく、彼の告白はすべてビデオに録画されていた。PPPはカンダスワミを脅迫し、押収したブラックマネーの半分をよこすよう要求する。
 カンダスワミはやむを得ずこの要求を呑み、PPPのブラックマネーの確保のためメキシコに飛ぶ。この旅にはスッバラクシュミも同行していた。実は彼女は、父が演技をして自分を騙していたことを知り、カンダスワミの味方をするつもりであった。カンダスワミは密かに部下のガネーシャン(Susi Ganesan)も同行させており、現地でのブラックマネー捜査に当たらせていた。カンダスワミはPPPとの取り引きを果たすが、案の定、命を狙われる。だが、その場はガネーシャンの働きで難を逃れ、逆に現地でブラックマネーを管理していたインド人(Alex)を逮捕して、チェンナイに戻る。その前に彼はPPPの金をすべて掠め取ることにも成功していた。
 激怒したPPPは、部下にカンダスワミの告白ビデオを持ってCBIオフィスへ行かせる。だが、カンダスワミの上司、クリシュナ(Krishna)はビデオテープをすり替え、それを隠滅する。
 警察のパランダマンは捜査の結果、CBI局員のカンダスワミこそが義賊のカンダスワミであることを確信し、CBIオフィスに出向く。だが、クリシュナは逆にパランダマンを諭す。
 メキシコで逮捕されたブラックマネーの管理人は何者かによって殺害されていた。カンダスワミは最後の砦を崩すために、悪徳実業家ラージモハンの摘発に乗り出す、、、。

   *    *    *    *

 2年の歳月と巨大な資金を投入した割にはなぁ、、、という物足りなさはあるが、まずまず楽しめる映画だった。
 評価は分かれているが、どちらかというと、ボロクソにこき下ろす意見のほうが目立つ。しかし、客の入りは良いようで、公開2週間の興行成績は記録的な数字となっている。(後日付記:入ったのは最初の2週間だけで、興行成績としては結局はアベレージに留まった模様。)

 あらすじを読んで気付くとおり(また、ほとんどの先行レビューが指摘しているとおり)、プロットとしては【Gentleman】(93)や【Sivaji - The Boss】(07)、【Ramana】(02)、【Anniyan】(05)などと非常に似通っていて、それがこの作品とスシー・ガネーシャン監督の評価を落とす理由となっている。確かに、ガネーシャン監督はストーリーを作る手間を節約したのかな、と疑いたくなるほど、見事に先行作品を踏んでいるようなところがあるのだが、しかし、監督の情熱はあくまでもハリウッドふうのスーパーヒーロー物をインド映画の道具立ての中で作ることのようなので、ストーリーは方便と考えたのかもしれない。

 スーパーヒーローのイメージとして採られたのが「雄鶏」。なので、アメリカ式に名付けると「ルースターマン」になろうか。それにカンダスワミ(ムルガン)という南インドの土着神の名前を付して、なんとも土くさい香りのする、南インド映画らしいスーパーヒーローを作り上げている。

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 私は楽しく拝見したが、見て腹を立てる人もいるかもしれない。ただ、ヴィクラムは非常に上手く演じているので、この「雄鶏マン」そのものに対する批判はあまりないようだ。
 なお、この「謎のカンダスワミ」の顕現について、映画ではユニークな仕掛けが施されていたが、それは観てのお楽しみとしたい。

 私が本作で評価したい点は、内容的には典型的な娯楽タミル映画のプロットを用いながら、外見的にはずいぶん違った見せ方をしていることだ。アクション・シーンや音楽シーン、衣装、演技、編集などに、従来のタミル映画から意図的に離れたような野心的なアイデアが見られ、ガネーシャン監督自身のコンセプトで作品全体がよくコントロールされていると思う。
 特に編集は、短いカットをさくさくと繋ぐ方法で、軽快なリズム感を生み出している。ただ、このテンポはインド人には馴染みにくいものなのか、「イライラする」という否定的な意見も多い。

 他方、本作の最大の難点として異口同音に挙げられているのが、ストーリーと脚本の悪さで、ごもっともかなぁ、とも思う。
 ストーリーは「CBIカンダスワミvs悪徳実業家」と「義賊カンダスワミvs警察」という2本の軸がより合った構成になっているが、このどちらもが映画1本作れるような大きなものだ。それで、両者ともふくらませていったら非常に重い作品になってしまうので、それぞれバッサリと枝葉末節を落としたような脚本となっていて、結果的に妙に急いだ感じで、物語に厚みがなくなってしまっている。
 悪役の配し方も上手くないと思う。ストーリー展開上重要なのはPPP(Ashish Vidyarthi)のほうだが、実はカンダスワミのグループが本当に叩き潰したかったのはラージモハン(Mukesh Tiwari)のほうで、観客には真の敵がどちらなのか分かりにくい。こういう勧善懲悪物の場合、どうせ善が勝つに決まっているのだから、勝負は、映画を観ている間にいかに観客の心の中にじわじわっと「悪への憎悪、正義への待望」の感情を醸成させるか、という点にかかってくるのだが、本作のように懲罰の対象が曖昧だったら、そのメカニズムがうまく機能しないはずだ。

 なお、本作の公開当初の上映時間は3時間12分もあり、観客から「長すぎる」と文句が出ていた。それで、公開後になって監督自身がカットを指示したという情報もある。私が観たのは幸か不幸か2時間50分を切る短縮版で、長すぎるという印象はなかった。(ただし、これが監督の指示どおりに短縮したものか、映画館のオペレーターが勝手にカットしたものかは、分からない。)

◆ パフォーマンス面
 本作のヴィクラムについては文句は言えないだろう。
 毎度毎度、彼の人間離れしたパフォーマンスには驚くばかりで、同じ人類とは思えないほどだ。本作のヒーローもヴィクラムがやらなければ、荒唐無稽なコメディーに落ちていたに違いない。
 今回は様々な姿に変装し、「雄鶏」の他に注目だったのは「美女」の扮装だ。(一応、「アイシュワリヤ」という設定だったのだが、、、。)

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 しかし、やっぱり一番ヴィクラムらしかったのは、下の「大ハンマーを持つ怒れる男」の役だ。

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 シュリヤー・サランのヒロイン像については、私は非常に気に入っているのだが、残念ながら否定的な意見のほうが多い。「アンジェリーナ・ジョリーの真似だ」、「肌を露出しすぎ」、「吹き替えの声が合っていない」、等々。
 しかし、シュリヤーがハリウッド女優ばりのセクシーな女性像を見せたからといって、それがなんで批判の理由になるのか、私にはまったく分からない。中には「次はソフトポルノにでも出ろ」みたいなコメントもあって、そりゃあ、シュリヤーのポルノ作品なら私もぜひ拝みたいものだが、残念ながら本作の彼女のセクシーさというのはそんな卑猥なものではなく、子供が見てもまず問題がないと思われるような健康的なものだ。(その証拠に、検閲は制限なしの「U」でパスしている。)
 吹き替えは歌手・ラジオジョッキーのスチトラが担当しているが、低く抑えた声がむしろ役柄にはぴったり合っていたと私には思えるのだが、、、。
 まぁ、ボサボサ髪で、胸の谷間を見せ、低い声でしゃべる女というのは、タミル人には受け入れ難いヒロイン像なのかもしれないが、これもガネーシャン監督の野心が現れている点だと思う。

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 脇役陣では、警官役のプラブ・ガネーシャン、悪役のアシシュ・ヴィディヤルティとムケーシュ・ティワリ、コメディーのヴァディヴェールらは特記すべきことはない。ムマイト・カーンは無駄遣い。
 注目は、マヘーシュ・バブの父のクリシュナが出ていることで、さすがに良い役回りだったが、これでAP州の観客のご機嫌を取れると思ったら大間違いだ。(ちなみに、本作は【Mallana】という題名でテルグ語版も公開されている。)

◆ テクニカル面
 本作は内容面ではあまり褒められていないのに対して、技術面、特に音楽、撮影、美術、衣装では評価が高い。
 デヴィ・シュリー・プラサドの音楽は非常に楽しくて、良い。ヴィクラム自身が4曲で歌っていて、なかなかのもの。音楽シーンは、力動的なダンスはないのだが、一定のコンセプトによって、コミカルにうまくまとめられている。
 対して、アクションは非常にクールなものだ。
 豪華な衣装には3千万ルピーも使われているという情報もあるが、世界経済が不況であえぐ中、贅沢な話だ。

◆ 結語
 【Kanthaswamy】は、南インド製の本格的スーパーヒーロー映画として、大人も子供も楽しめる線を狙った作品。その成否については疑問もあるが、難しいことは言わず、座席にふんぞり返って気楽に観るつもりならOKだろう。ツッコミどころは多い!

・満足度 : 3.0 / 5
 

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コメント(2件)

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ヴィクラムもシュリヤもかっこよかったですよ。特にシュリヤがショートヘアだったのには驚きました。インド女性というと腰まで垂れた黒髪命と思っていたので。でもコケティシュな魅力にショートがあっていたと思います。新発見でした。
tuji
2013/07/31 03:23
>特にシュリヤがショートヘアだったのには驚きました。

この映画はシュリヤーが最もセクシーに撮られているものの一つですね。
ラジニカーントの「Sivaji」では、伝統的な「腰まで垂れた黒髪」娘の役でしたが、ショートヘアを見せるソングシーンもあったと思います。
 
カーヴェリ
2013/08/01 02:49

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