カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Vaayu Puthra】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/09/09 23:10   >>

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 チランジーヴィ・サルジャ主演のカンナダ映画。
 上のスチールの男優がチランジーヴィ・サルジャで、この風貌と名前からピンと来た人は南インド映画通だろう。【Gentleman】(93)や【Mudhalvan】(99)でお馴染みの「アクション・キング」こと、アルジュン・サルジャの甥っ子で、本作が晴れのデビュー作となる。
 制作はアルジュン自身が務め、監督はアルジュンの兄で、今年6月に急死してしまったキショールの担当。チランジーヴィにとっては、二人のおじにサポートされての心強いデビューだ。(キショールの死については、こちら。)
 ヒロインは、この1年でたちどころにサンダルウッドのトップ女優に躍り出たアインドリタ・レイ。これも本作の注目点だ。

 題名の「Vaayu Puthra」は「ヴァーユ(風神)の息子」という意味のサンスクリット語で、ビーマやハヌマーンを指すこともある言葉。

【Vaayu Puthra】 (2009 : Kannada)
脚本・監督 : Kishore Sarja
出演 : Chiranjeevi Sarja, Aindrita Ray, Ambarish, Ajay, Mukyamantri Chandru, Padmaja Rao, Ramesh Bhat, Narsing Yadav, Sadhu Kokila
音楽 : V.Harikrishna
撮影 : Sundaranath Suvarna
制作 : Arjun Sarja

《あらすじ》
 大学生のバルー(Chiranjeevi Sarja)は試験も終わり、ルームメイトのカルティクに誘われるまま、マンガロールの彼の実家に遊びに行くことにする。ここでバルーは、カルティクの元気すぎる妹、ディヴィヤ(Aindrita Ray)に出会い、惹かれるものを感じる。
 マンガロールのこの町はプーンジャ(Ajay)というヤクザが仕切っており、やりたい放題を尽くしていた。バルーが実家に帰省しようとバススタンドへ行ったときも、プーンジャの一味が騒動を起こしていたため、バスが出発せず、仕方なしに彼はカルティクの家に戻る。しかし、この足止めのおかげで、バルーとディヴィヤの仲は進展する。
 いよいよバルーが帰省しようと乗っていたバスの中にプーンジャが乗り込んで来て、人を殺そうとする。それを見かねたバルーは、反撃のすきも与えないほどの勢いでプーンジャを叩きのめす。バルーはそのままマンディヤの実家に戻る。
 プーンジャはバルーに対する激しい復讐心に燃える。彼の部下はバルーがマンディヤ出身だということを突き止める。だが、マンディヤ地方のヤクザたちは、バルーに手を出さないよう忠告する。実は、バルーの父は、その地方で強大な勢力を誇る豪族、チャウディ・ゴゥダ(Ambarish)だったからである。
 プーンジャはそんなことお構いなしに、手下を連れてマンディヤに乗り込む。彼はここで、チャウディ・ゴゥダに恨みを抱く男(Ramesh Bhat)の手引きで、バルーに接近するが、命は取れない。
 バルーは地元のお寺で、偶然ディヴィヤとその家族たちに再会する。ディヴィヤの家族は、バルーが惹き起こしたマンガロールでの騒動のせいで、引越しせざるを得なくなっていたのである。バルーは一家を自分の家に滞在させることにする。ほどなく、バルーとディヴィヤの仲はバルーの父、チャウディ・ゴゥダにも発覚するが、彼は二人の仲を認め、祝福する。
 プーンジャは、チャウディ・ゴゥダの家族がお祭りのためお寺に集合しているところを襲撃する。彼はバルーを背後から切りつけようとするが、誤ってチャウディ・ゴゥダに傷を負わせてしまう。
 翌日、バルーから事情を聞いた父は、事の犯人がプーンジャで、狙いはバルーだということを知る。ほどなく、チャウディ・ゴゥダの手の者はプーンジャの一味を掃討する。チャウディ・ゴゥダはプーンジャに対して、「バルーの命が欲しいのなら、正々堂々と正面から闘うことだ」と言って、その場を去る。バルーとプーンジャの間で一騎打ちが始まる、、、。

   *    *    *    *

 実は、本作はタミル映画のヒット作【Sandakozhi】(05:ヴィシャール主演)のリメイクで、しかも、ぴったりオリジナルをなぞったコピー映画だ。残念ながら、リメイクとしての出来は良くない。【Sandakozhi】は、タミルナードゥ州の地方の暴力的実情をリアルに踏まえた、緊張感のあるアクション映画だったが、この【Vaayu Puthra】は、器は同じなのに、作品の魂とも言える力感と荒っぽさが抜け落ちたような中身になっている。

 コピー作品として、単純に設定を置き換えただけなのがいけないのかもしれない。
 例えば、【Sandakozhi】の舞台はチダンバラムとマドゥライだったが、ここなら通用するドラマが、【Vaayu Puthra】のマンガロールとマンディヤという土地にも通用するのか? マンディヤのチャウディ・ゴゥダ(Ambarish)の人物像はリアリティーがあったが、マンガロールのプーンジャ(Ajay)は安易な置き換えだった。「Poonja」という名前から、たぶんバント族を想定したのだと思うが、ここはマンガロールの成り上がりマフィアという設定にして、「新興都市型マフィア」と「守旧的地方豪族」の拮抗という形にドラマを持っていけば、カンナダ・バイオレンス映画として説得力が出たのでは、と思う。
 また、【Sandakozhi】でヒロイン(ミーラ・ジャスミンが演じている)が映画館でラジニカントを見て大騒ぎするシーンがあるが、【Vaayu Puthra】ではラージクマルだった。これも解せない。チダンバラムの田舎娘が【Chandramukhi】のラジニカントに熱狂するというのはあり得そうだが、今どきのマンガロールの女子学生がラージクマルの映画でダンスができるとは思えない。(ちなみに、マンガロールは国際空港もモダンな大学もある、ハイカラな港街と考えるべきだ。)
 【Savari】を観たときにも感じたが、コピー作品を作るにしても、最低限その土地柄に合った変更は加えてほしい。

 キショール・サルジャは名の通った監督だけに、もう少し良い作品にできたはずだが、もしかして彼の急死が製作の「詰め」に影響したのかもしれない。
 ただ、この作品の目的はあくまでも「チランジーヴィ・サルジャの紹介」ということにあるのだろう。その点で見れば、勇気ある若者が正々堂々と悪と闘うという物語は、「アクション・キング」の甥っ子のデビュー作にはうってつけだったと思う。

◆ パフォーマンス面
 そのチランジーヴィであるが、まだまだ未熟としか言いようがない。
 アクションとダンスはまずまずだが、演技(特にセリフ)は苦労しそうだ。
 しかし、この男の体格と男くささにはヒーローとしての可能性は感じる。サンダルウッドには肩で風を切れるようなヒーローが少ない。ダルシャンとプニートは出来上がったスターだが、すでに30歳を越えているし、若手で目ぼしいといえばプラジワル・デーヴァラージぐらいしか思い浮かばないだけに(まぁ、ヴィジャイもいるんですけどね)、この男には私は非常に期待している。

 アインドリタは可愛らしかったが、なにせ彼女の個性と役柄がまったく合っていなかった。彼女はやっぱり都会のタカピー娘がお似合いで、田舎娘役にはきれいすぎる。それはもう、オリジナルのミーラ・ジャスミンの野暮ったさと比較すればよく分かるのだが、まぁ、この役で見る限り、ミーラ・ジャスミンの完勝だろう。
 デビュー作の【Meravanige】(08)でアインドリタを見たときは、あまり印象的でもなかったのだが、前作の【Junglee】では格段に進化していて、今やアイドル女優として完成しつつあるようだ。【Neene Neene】(08)の項目で「ポスト・ラミャは誰か?」みたいなことを書いたが、ここ1、2年にデビューした女優の中ではどうやら彼女がぶっちぎりのポジションに就きそうだ。
 (写真下:Chiranjeevi SarjaとAindrita Ray。)

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 おかげさまで、そんな彼女は日本人の目にも留まったようで、私の美意識に多大な影響を与えた『渡る南インドは萌えばかり』に早くもエントリーされている。「テルグやタミル映画で頑張って欲しいですけどね」というコメントは余計だが、確かにサンダルウッドに閉じ込めておくにはもったいない素材ではある。
 ついでに、彼女の名前は、以前はAndritaという英語綴りと共に「アンドリタ」と呼ばれていたが、それは間違いで、「アインドリタ」が正しい、と彼女自身がインタビュー番組で宣言していた。

 脇役陣では、チャウディ・ゴゥダ役のアンバリーシュが堂々たる貫禄だった。往年の「レベル・スター」らしく、ちらっと見せたアクションでは腰が入っていて、様になっている。この登場人物だけはオリジナルよりリメイクのほうが良かったと思う(オリジナルのラージキランが悪いわけではないが)。
 アンバリーシュといえば、マンモハン・シン内閣で大臣まで務めた大物政治家だが、今年の総選挙で敗北したので、これからは映画にも出てくれることだろう。(写真下)

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 悪役は、テルグ映画界のアジャイがプーンジャの役をやっていたが、頭の血管が切れそうな怒りの演技で、お疲れ様と言ってやりたい。(この役はあまりやりたくなかっただろうなぁ。)

◆ テクニカル面
 ハリクリシュナの音楽は平均的。
 ダンス・シーンの一つにアルジュンがカメオ出演している。デビューの甥っ子と並ぶと、やっぱりアルジュンのオーラが実感できた。

◆ 結語
 【Vaayu Puthra】は作品としては凡作だが、ちょいと有望なヒーロー俳優のデビュー作として記憶したい。
 次はもっと頑張れよ!
 (写真下:左より在りし日のKishore、Arjun、Chiranjeevi。)

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・満足度 : 2.0 / 5
 

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