カーヴェリ川長治の南インド映画日記

アクセスカウンタ

zoom RSS 【Josh】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/09/17 19:47   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 3 / コメント 0

画像

 チランジーヴィの御曹子、チャランが【Magadheera】で快進撃を続ける中、やはりこの男、ナーガ・チャイタニヤのデビューも忘れてはならない(写真上)。‘キング’ナーガールジュナの長男として、はたまた‘ヴィクトリー’ウェンカテーシュの甥っ子として、大注目を集めての華々しいデビュー、、、となるはずだったが、AP州首相、Y.S. Rajasekhara Reddyの不慮の死により、映画公開が2日間延期されるという、いささか湿っぽい門出となってしまった。しかし、彼の若い力はそんなハンデも跳ね返すことだろう。
 監督のヴァース・ヴァルマも新人なら、ヒロインのカールティカも新人という、フレッシュな顔ぶれで、勢いのある若者映画を期待したいところだ。
 なお、【Josh】という題名のインド映画は、2000年制作のヒンディー映画と今年制作のカンナダ映画があるが、それぞれの間に関係はない。

【Josh】 (2009 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Vasu Varma
出演 : Naga Chaitanya, Karthika, J.D. Chakravarthi, Prakash Raj, Sunil, Brahmanandam, Surya, Hema, Harshavardhan, Sithara, Shreya Dhanwantari
音楽 : Sandeep Chowta
撮影 : Sameer Reddy
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Dil Raju

《あらすじ》
 ヴァイザーグに暮らすサティヤ(Naga Chaitanya)は、地元の大学を中退し、職を求めてハイダラーバードへ出る。ハイダラーバードでは叔父(Sunil)の家に寄宿する。
 この家の近所に‘MGMカレッジ’という大学があったが、そこは学内暴力、いじめ、過激な政治運動、薬物汚染などが蔓延する、悪名高い所だった。サティヤはこの大学の学生たちの不品行になんとか我慢する日々だった。彼はまたニティヤ(Karthika)という小学校教師と出会い、次第に仲を深める。
 MGMカレッジには2派の不良グループがあったが、JD(J.D. Chakravarthi)という政治家が彼らを巧みに操り、自分の勢力拡大のために利用していた。ある時、JDは学生たちを扇動して、街で暴動を惹き起こす。学生やチンピラたちは警察に連行されるが、その中には偶然その場にいたサティヤも含まれていた。彼は目撃者として、この事件を告訴することを宣言する。
 これがJDと不良学生たちの気に障り、サティヤは彼らから再三脅迫を受ける。そして、叔父が襲撃されるに及んで、サティヤは告訴を取り下げることにする。JDたちは喜ぶが、しかし、サティヤはMGMカレッジの学生となり、キャンパス内で悪に挑む手段を取る。
 サティヤと不良グループの諍いはなおも続くが、それでも彼の努力で、キャンパス内の状況は次第に改善される。
 この大学にはスレーシュ・クマールという大学院生がいた。彼はバスケットボール選手として3度全国チャンピオンになったほどの優秀な学生だったが、今やすっかり堕落し、薬漬けの日々だった。サティヤはこの男の存在を利用することを思いつく。学生たちはスレーシュをPD(Physical Director)のポストに就かせようと学内でデモを行う。
 サティヤは不良グループに襲われ、怪我をして入院する。叔父や友人たちはサティヤの行動を戒めるが、彼には学内の悪が見逃せない動機があった。
 ・・・
 実は、サティヤ自身がヴァイザーグの大学にいた頃、やりたい放題をやるワルだった。サティヤの能力を見抜いていた学長(Prakash Raj)は、あり余るエネルギーを真面目な目的に使うよう諭すが、彼は聞き入れない。だが、バイク・レースをしていたときに、サティヤは学長の息子を事故死させてしまう。罪の意識に駆られたサティヤは、更正するために大学を辞め、ハイダラーバードへ来ていたのであった。
 ・・・
 JDは上級の政治家に自分の力を示すため、学生たちをデモに動員しようとする。怪我の癒えたサティヤは、学生たちをその現場に行かせないように、一計を案じる。彼は学生たちに、スレーシュ・クマールをPDに任命するか否かを、バスケットボールの試合で決着しようと持ちかける、、、。

   *    *    *    *

 メッセージ志向の、気合いを感じるキャンパス物だった。
 取り上げられているのはインドの教育と学園荒廃の問題で、それは主人公のサティヤ(Naga Chaitanya)という人物を通して描かれる。
 サティヤは大学に入るまでは勤勉な学生だったが、大学に入るや否や、「自由」に感染してしまい、それまで学業のために犠牲にしてきたものを挽回すべく、好き放題を始める。彼の口から、インドの教育制度は厳しすぎてゆとりがなく、プレッシャーを感じて自殺する子供たちが増えている、という問題点が語られる。(これは何か具体的な事例を基にしているのかもしれない。)
 しかし、サティヤの行為は友人(学長の息子)の死を招き、彼は罪の償いのために、今度は誤った道を歩む学生たちを更正させる側に回る。この‘MGMカレッジ’に巣食う学生と悪徳政治家との結び付きや麻薬汚染などの問題は、どこまでリアリティーがあるのか、大学を表面から見ているだけでは分からないが、インド映画ではよく取り上げられるネタで、それからすると、ある程度事実を反映していると見ていいのだろう。
 ただ、サティヤは友人の死がきっかけとなって立ち直れたが、すべての不良学生がこうしたきっかけをつかめるわけではないので、本作が学園荒廃を解決するための具体的な方策を示しているとも言いにくい。しかし、それでも、南インド娯楽映画のフォーミュラから少し離れて、この問題をメッセージとしてアクセントをつけて提示した姿勢には好感が持てる。

 映画の完成度としては、なるほどデビュー監督が物語を作り、脚本を書き、演出したんだなぁと思えるような、あまりうまくない作りだった。プロットは単純なのに、展開はごちゃごちゃとして分かりにくく、要らないエピソードが多すぎる(それで、上映時間が2時間45分は長すぎる)。ヒーローとヒロインのロマンスの展開は主筋とまったく絡まず、たんにムード転換と音楽シーンを入れるきっかけでしかない(しかし、これがないと、退屈極まりないものになっただろう)。
 とは言うものの、スニールとブラフマーナンダムを使っていながらコメディー・シーンを廃した点や(むしろ、ヒーローとヒロインの絡みがコメディーに近かった)、大規模なアクション・シーンを抑えた点など(後半になって、やっと2回ほど派手なシーンがある)、監督の意図はよく窺え、表現スタイルが作品のテーマに合っている点は評価したい。

◆ パフォーマンス面
 主演のナーガ・チャイタニヤについては、かなりカッコよかったと言っておこう。
 デビュー作ということで、落ち着かない部分や不器用な部分もあったのだが、経験を積めば良い俳優になることは間違いない。やはり若い頃のナグさんを思わせる雰囲気を持っているのが強みだ。(この映画自体が【Shiva】(89)を連想させたりするのだが。)
 デビューとしては上出来だったと思う。
 同世代のチャランとの比較では、何とも言えないのだが、声とセリフ回しはこのチャイタニヤのほうが良いようだ。
 (写真左部:ワル時代のサティヤ。右部:更正したサティヤ。)

画像

 それにしても、チャランといい、チャイタニヤといい、こんな有望な二世、三世俳優がぽこぽこ誕生するとは、トリウッドは今後も大安泰と言えるだろう。インド映画の神様はテルグ映画界に良い風を吹かせているようだ。

 ヒロインのカールティカは、この人も有名女優ラーダーの娘で、そのデビューとあって早くから話題となっていた。しかし、ナーガ・チャイタニヤが好意的に受け入れられているのに対して、こちらは「お母さんに比べると、、、」と、気の毒な語られ方が多いようだ。

画像

 このスチールでは分からないが、顔が小さい割りに背がやたらと高いので、プロポーションとしては8頭身だ。しかし、その体格にしてこの攻撃的な顔立ち、しかも今回の役柄が元気すぎる娘役とあって、色気はほぼゼロ。さすがのテルグ男たちもドン引きしてしまったようだ。
 だが、個性は強烈なので、コメディー映画などではまり役があれば、大当たりするかもしれない。
 ちなみに、今回の吹き替えはサヴィタ・レッディ。

 脇役陣では、J・D・チャクラヴァルティはまずまずといった感じだが、プラカーシュ・ラージは良かった。出番は最後の30分のみだが、見事においしいとこ取りしている。

◆ テクニカル面
 サンディープ・チョータの曲は、私が聴いた限り、1曲のみ良かった(ヴァイザーグの大学での荒れるサティヤを導入する音楽シーン)。むしろ、BGMのほうが良い出来だったと思う。

◆ 結語
 【Josh】は、生真面目なスタンスが勝ちすぎて、娯楽映画としてのリッチな面白さは落ちてしまったが、インドの新世代の若者が直面する問題を扱った作品として、興味深いものがある。テルグ映画ファンなら、ナーガ・チャイタニヤのデビュー作として、観ないわけにはいかないだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
【Ye Maaya Chesave】 (Telugu)
 さて、今回紹介する【Ye Maaya Chesave】は、前回紹介したガウタム・メノン監督のタミル映画【Vinnaithaandi Varuvaayaa】のテルグ語版・同時制作作品である。裏方陣はほぼ同じだが、キャストは総入れ替えとなっている。  特記すべきは、タミル版【Vinnaithaandi Varuvaayaa】とテルグ版【Ye Maaya Chesave】では、クライマックスまでストーリーはほぼ同じなのに、エンディングが正反対、すなわち、前者では主役ペアのカルティクとジェ... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2010/03/09 02:20
【Ko】 (Tamil)
 K・V・アーナンド監督、ジーヴァ主演のタミル映画。  K・V・アーナンド監督は、そもそも撮影監督として名を馳せていた人だが、監督としてもこれまで【Kana Kandaen】(05)と【Ayan】(09)を発表し、高い評価を得ている(特に【Ayan】はブロックバスターとなった)。比較的リアルなタッチの社会派娯楽映画を作りたい人のようで、ガウタム・メノン監督などとの同時代性が感じられる。  他方、主演のジーヴァは、有名な映画プロデューサー、R.B. Choudryの息子ということで、... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/04/27 21:22
【100% Love】 (Telugu)
 スクマール監督、ナーガ・チャイタニヤとタマンナー主演のテルグ映画。  スクマール監督については、【Arya-2】(09)を観て複雑な気持ちになったが、やはり【Arya】(04)を撮った人、注目したいものがある。  ナーガ・チャイタニヤは、前作【Ye Maaya Chesave】(10)が当たったので、御曹司俳優としての格好は付いた感じだが、私はまだまだだと見ている。大体、【Ye Maaya Chesave】がヒットしたのは、1にARラフマーンの音楽、2にサマンタの可愛らしさとチン... ...続きを見る
カーヴェリ川長治の南インド映画日記
2011/05/13 21:50

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
【Josh】 (Telugu) カーヴェリ川長治の南インド映画日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる