カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Prem Kahani】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/09/22 02:41   >>

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 カンナダ映画の去年のヒット作に【Taj Mahal】があるが、その監督のR.チャンドルーと主演のアジャイが再びコンビを組むとあって、この【Prem Kahani】も期待作の一つに挙げられていた。【Taj Mahal】で良いデビューを飾ったチャンドルー監督だが、ビギナーズ・ラックということもあるし、真価が問われるのはこの2作目だ。
 話題はいくつかあるが、私としては、ヒロインに「国民的美少女」と呼びたいシーラが就いている点に注目したい。
 なお、題名の「Prem Kahani」は「Love Story」という意味のヒンディー語だが、カンナダ映画に非カンナダ語の題名をつけるのけしからんということで、KFCC(Karnataka Film Chamber and Commerce)から待ったがかかったという曰く付きの作品でもある(こちらの記事)。

【Prem Kahani】 (2009 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : R.Chandru
出演 : Ajay, Sheela, Rangayana Raghu, Sudha Belawadi, Rajesh, Ne.La.Narendra Babu, Lokanath, Mico Nagaraj, Bullet Prakash
音楽 : Illayaraja
撮影 : K.S.Chandrashekhar
編集 : K.M.Prakash
制作 : K.M.Vishwanath, G.Ravikumar

《あらすじ》
 ムーテ・マンジャ(Ajay)はバンガロールのスラムに暮らす若者。荷物運びをして日銭を稼いでいた。彼は同じスラムの仲間や金持ちの息子ラージャらと5人のグループで、近所の大学に出かけて行っては、女子大生を冷やかしていた。
 サンディヤ(Sheela)は裕福な家庭の長女で、大学に入学したばかりだった。彼女はある日、例によってキャンパスに遊びに来ていたマンジャを見、胸ときめくものを感じるが、友達のギータに「あれはスラムのバカよ」とたしなめられる。だが、乞食娘に対するマンジャの行為を通して、サンディヤは彼に対する気持ちが強くなるのを感じる。
 マンジャたちはサンディヤを金持ちのラージャと結び付けようとするが、サンディヤはマンジャをお寺に呼び出し、愛の告白をする。マンジャはびっくり仰天する。
 サンディヤは何度かマンジャとデートを重ね、また、スラムのマンジャの家をも訪れる。そして、とうとう彼と結婚する決意をする。
 しかし、サンディヤの父(Rangayana Raghu)は娘を取り引き先の建築家ラジェシュ(Rajesh)と結婚させる話を進めていた。それを知らされたサンディヤは、父にきっぱりとスラムのマンジャと結婚したい意志を告げる。だが、ショックを受けた母(Sudha Belawadi)が一家心中を図ろうとしたため、サンディヤはやむなくこの縁談を受け入れる。
 サンディヤとラジェシュの結婚式が行われるが、その晩に、彼女はラジェシュにマンジャのことを打ち明ける。翌日、ラジェシュはサンディヤをスラムまで連れて行き、自分は身を引くことにする。
 マンジャとサンディヤは別のスラムの一角に部屋を借り、結婚生活を始める。マンジャはオートリクシャの運転手として働くが、収入は知れており、二人は食うや食わずの生活を強いられる。しかし、そんな中で男の子も生まれ、たちまちに5年が過ぎる。
 マンジャは妻と子供のためにお金を使おうと、オート運賃の上がりを収めるのを怠っていた。それが元締めにばれて、彼は解雇される。また、大家からも家賃の催促が厳しくなった上、子供も病気がちになる。
 家計のために、サンディヤはパートタイマーとしてコンピューター会社で働き始める。マンジャはそんな妻を見送り、子供の世話をし、日がなタバコを吸うしかなかった。
 サンディヤが初めてもらった給料は思いがけない額だった。喜んだ彼女は、それでマンジャのシャツやビールを買って家路に急ぐ。だが、彼女が見たものは、絶望から服毒自殺し、路上に横たわるマンジャだった。一瞬にしてサンディヤの心が変容する。彼女はマンジャの遺体に唾を吐きかけ、「寡婦になっても、この子をアインシュタインかウィシュウェシュワラヤに育ててみせる」と、子供の手を引きスラムを去る。

   *    *    *    *

 【Taj Mahal】もそうだったが、この【Prem Kahani】も変則的なラブ・ストーリーで、なんとも評価がしにくい。
 【Taj Mahal】同様、本作も実話に基づいたものらしい。前半は貧しい青年と富豪の娘のロマンスという、ありがちな設定の物語が小気味よく展開し、音楽シーンもよくできていて、楽しめるものだったが、後半に入ってずぶずぶと貧乏物語に沈み、それが大きな感動として跳ね返って来ないまま終わってしまった。【Taj Mahal】も暗いトーンの作品だったが、あちらはインド人(カンナダ人)の泣きのツボを押さえていたようで、ヒットに結び付いたが、こちらはそうは行かないだろう。特に主人公のマンジャ(Ajay)の描き方が良くない。いくら実話に基づいているとはいえ、この夢も希望もないヒーロー像にはインド人の共感も同情も得にくいだろう。

 しかし、失敗したのは物語の語り方だけで(もっとも、それが肝心なのだが)、アイデアや扱われているテーマは非常に興味深い。 
 【Taj Mahal】を観てもそう思ったが、チャンドルー監督が問題としているのは、最近の若者の軽率な恋愛観・結婚観に対する戒め、ということのようだ。【Taj Mahal】では、好人物でありながら恋愛の落とし穴にはまってしまい、悲劇的な運命を辿った主人公の否定的な姿を通して、反面教師としてメッセージを伝えていた。この【Prem Kahani】も、親の意志に反して恋愛結婚した二人の困窮生活が反面教師になるのかな、と予測しながら観ていたのだが、さすがに今の時代のインドでは「恋愛結婚はいかん」と単純に処理できるものでもなく、本作では虚無的な結末を避けて、ヒロインのサンディヤ(Sheela)に「されど人生は諦めない」といった力強い決意を取らせている。これは注目すべきことだと思う。
 ただ、この前向きな主張も最後の1シーンで唐突に、ヒネリみたいな形でやって来たので、「ありゃ?」という感じで、大きな感動に結び付かなかったのが残念だ。内容面でも、本作をヒロインを中心とするフェミニズムの映画と見なすなら論理的にすっきりするのだが、そうするとヒーローのマンジャがまったく捨て駒になってしまい、それなら結末に至るまでのドラマ全体は何だったんだ、という疑問は残る。

 導入部でも触れたとおり、本作の題名は「ラブ・ストーリー」という意味のヒンディー語で、内容的に「ラブ・ストーリー」というのは問題ないと思うが、それをどうしてヒンディー語にしなければならなかったのかは疑問だ。KFCCのように、カンナダ映画にヒンディー語の題名を付けるべきではないと言うつもりはないが、チャンドルー監督がどんな意図でヒンディー語を選んだのかは気にかかる。

◆ パフォーマンス面
 ストーリーという点では失敗した感のある本作だが、チャンドルー監督をなんとしても褒めてやりたいのは、役者の演技スキルをうまく引き出している点だ。俳優たちの芝居という点では、標準的なカンナダ映画とは一線を画している。
 例えば、腕の良いサイド・キッカーなのに、陳腐な役柄で終わってしまうことの多いランガーヤナ・ラグ(サンディヤの父役)だが、今回は一味違う。スダー・ベラワディ(同、母役)もうまさを見せている。

 もちろん、‘ロイヤル・スター’アジャイも、役回りの点で損してしまったが、演技としては申し分ない。そもそも、アジャイが役者として格上げされたのは【Taj Mahal】からだったと思うが、やはり彼とチャンドルー監督は相性が良いようだ。

 そして、山ほどの賛辞を贈ってやりたいのは、ヒロインのシーラだ。
 私は彼女のことを、大好きなのだが、成長過程のアイドル女優ぐらいにしか思っていなかったので、本作での真の強い演技を見て、頭の下がる思いだった。ちょっと太ったようで、美少女度は落ちた感じだが、女優としては進歩している。少なくとも、去年のテルグ映画【Parugu】で見たときよりも格段に良い。そろそろテルグかタミルで大きな仕事をしてくれるんじゃないだろうか。
 (写真トップ&下:AjayとSheela。)

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◆ テクニカル面
 音楽と映像が優れているのも本作の評価点だ。
 音楽はイライヤラージャの担当だが、近ごろでは珍しく、音楽シーンが8曲もあった(実は9曲あるらしいが)。歌も映像も良くできている。
 撮影面での特記事項は、カンナダ映画で初めてスーパー35ミリ・カメラを使ったことだ。
 制作費が5千万ルピーで、他映画産業からすると小さな額だが、カンナダ映画界では大予算の部類に入る。技術面では予算に見合った結果を出しているようだ。

◆ 結語
 毎度、カンナダ映画について似たようなコメントになって申し訳ないが、この【Prem Kahani】も失敗作、ただし、内容的には興味深い、ということになる。カンナダ人以外の多くの人に注目されることはないと思うが、シーラが気にかかる人なら、本作も観ておくべきだろう。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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