カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Madurai Sambavam】 (Tamil)

<<   作成日時 : 2009/10/02 22:08   >>

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 タミルナードゥ州のマドゥライといえば、タミル映画の中でも特異なイメージを提供しているようだ。そこを舞台とした映画はバイオレンス物が多く、泣く子も黙る親方がでんと居座り、荒っぽい男どもがナタを振り回し、「目には目を、血には血を」のドラマが展開される。この【Madurai Sambavam】もそうしたマドゥライ物に連なる作品だ。
 この分野の映画は日本人にはなかなか消化しにくいものがあるのだが、しかし、中には評価の高い作品も現れているので、時おり目を向ける必要もある。

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 とか何とか言いながら、私がこの映画を観に行った理由は、別に血しぶきが見たかったからではない。結局は「女」目当てだったと白状せねばならないが、本作には注目していた女優が2人も出ているのである。
 その1人はアヌヤー(上の写真の右。左は主役のHarikumar)。彼女は今年のタミル映画のヒット作【Siva Manasula Sakthi】(Jeeva主演)でヒロイン・デビューした女優。上のスチールを見て分かるとおり、オタマジャクシのような丸顔で、決して美人ではないのだが、表情の作り方が非常にうまく、演技派として注目したい女優だった。どうやら彼女はプネーにある有名な‘Film and Television Institute of India’をゴールド・メダリストとして終えた人のようで(こちらの記事)、才能はあると見ていいだろう。
 もう1人はカルティカ(Karthikaという名の女優は複数いるので、このKarthikaは‘Thoothukudi’Karthikaと呼ばれている)。彼女のことは【Raman Thediya Seethai】(08)の項目でもちらっと紹介しておいたが、インド映画界でも次第に希少種となりつつある田んぼ派の女優で、こういう田舎映画には使い勝手のいいキャラだ。

【Madurai Sambavam】 (2009 : Tamil)
物語・脚本・歌詞・監督 : Yurekha
出演 : Harikumar, Anuya, Radha Ravi, Karthika, Dhandapani, Raj Kapoor, Vinayagam, Santhana Bharathi
音楽 : John Peter
撮影 : Sukumar
制作 : Suresh Balaji, George Pios

《あらすじ》
 アーラマラム(Radha Ravi)はマドゥライ近郊の町、アートゥトッティを支配する豪族で、秩序を乱す者は私刑にかけるのも厭わない過酷な性格であったが、同時に非常な人格者でもあり、町人の尊敬も集めていた。彼は、年老いた母、血の気の多い息子のクッティ(Harikumar)、娘とその婿、孫娘、それに姪のゴーマティ(Karthika)らと一緒に暮らしていた。ゴーマティはクッティのことを愛していた。(写真下:アーラマラム)

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 アーラマラムにはカットアウト・ガネーシャン(Dhandapani)という敵対者がいた。カットアウトは地元の代議士で、やはり武装しており、警察署長(Raj Kapoor)とも結託していた。カットアウトはアーラマラムとクッティを始末したいと考えていたが、手が届かないでいた。
 クッティはある経緯からカットアウトの息子を刺し殺してしまう。激怒したカットアウトは警察にプレッシャーをかけ、その結果、現地に新たな警部補が送り込まれる。それはキャロリン・トーマス(Anuya)という名の婦人警官であった。
 キャロリンは早速クッティをしょっ引くが、すぐに釈放される。しかし、その過程で二人は意識し合う間柄になる。クッティがバーで酔いつぶれたキャロリンの父(Santhana Bharathi)を介抱したのがきっかけで、二人の仲は進展し、キャロリンはアーラマラムとも親しくなる。
 しかし、キャロリンには任務遂行のための計略があった。彼女はクッティに恨みを抱くチンピラを雇い、クッティの義兄を襲わせ、殺させる。激怒したアーラマラムは、これをカットアウトの仕業だと思い、彼とその妻を射殺する。この事件のせいで町には外出禁止令が敷かれる。事態を収拾するため、キャロリンはクッティに、アーラマラムに自首を勧めるよう説得する。息子の言葉に従い、アーラマラムは自首するが、これが罠で、彼は留置所に護送される途上、キャロリンに射殺される。彼女は正当防衛をでっち上げるために、自分の腕を撃ち抜き、病院に入院する。事の真相を知らないクッティは、入院中のキャロリンを援助する。
 だが、クッティのことを本当に愛し始めていたキャロリンは、激しく良心の呵責に苛まれる。彼女は上官に辞意を申し出るが、逆に義務を果たすよう説得される。
 あるお祭りの夜、キャロリンはクッティを自宅に呼び寄せる。酒に酔って現れたクッティは、キャロリンに誘われるまま、一夜を共にする。翌朝、キャロリンはクッティを射殺しようとするが、その銃からは弾が抜き取られていた。実は、この時までにすべての真相をつかんでいたクッティは、キャロリンに対する復讐の機会を窺っていた。逆に彼は隠し持っていた拳銃でキャロリンを撃ち殺す。

   *    *    *    *

 傑作・佳作とは呼べないにせよ、田舎のバイオレンス物らしいスパイシーな作品で、思いのほか楽しめた。
 父と義兄の敵を討つために女警官を撃ち殺すマドゥライ・ギャングスターの話だが、あくまでも大衆アクション映画の路線を狙ってか、脚本があっさりしたもので、衝撃を受ける展開にはならなかった。しかし、このB級作品も、義務と恋情に揺れ動くキャロリンの心理をもっと丁寧に描き、ヒーローにアジットあたりを持って来れば、ドラマティックなA級映画になった可能性はある。
 
 こんなふうに女警官を撃ってしまっていいの?という感じの結末だったが、実は、本作は実際にマドゥライで起きた出来事を基にした物語らしい。(題名の「Madurai Sambavam」は「マドゥライの出来事」という意味。)
 映画のストーリーとして、勧善懲悪という観点からは違反とも思われるが、アーラマラムやクッティがあくまでもスジを通していたのに対し、邪まな計略を用いた警察のほうが悪い。しかも、キャロリンのように、ミイラになったミイラ捕りのように揺れてしまっては、マドゥライのラウディーに叩き潰されたとしても仕方がない。この顛末は塩味が効いていて良かった。
 さらに言うと、クライマックスのベッド・シーンに臨むヒロインとヒーローの温度差が面白い。任務からクッティを射殺しなければならないキャロリンは、せめて一夜だけでも愛を確かめたいと、悲痛な想いであるのに対して、復讐心を秘めたクッティは、飛んで火に入る夏の虫を演じ、しかし、ぶち殺す前に、することだけはさせてもらうぜと、ちゃっかりキャロリンの純潔を掠め取る。警察もなめられたものだが、ここはマドゥライ・ラウディーのしたたかさのほうが一枚上手だったということだろう。
 映画としてどこまで脚色されているかは分からないが、こうした事件が実際に起きるマドゥライという町は、やはり刺激的な映画ネタ供給地のようだ。

◆ パフォーマンス面
 主演のハリクマールは、私は【Thoothukudi】(06)しか観たことがないが、ご覧のとおりのブサイク男だ。しかし、この人は振付師兼俳優で、ダンスは上手い。しかも、アクション・ヒーローとしては申し分のない体格で、立ち回りも様になっている。これで肩から上が男前だったら完璧なのだが、残念ながら現実的には、田舎ヒーローの役しか回って来なさそうだ。
 (写真下:「オレっち、男前だろ? だって、こんなにナタが似合うんだぜ」とポーズを決めるハリクマール。)

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 アヌヤーはまずまず期待どおりだった。この人は想像していたより小柄で、女警官役にしては、制服姿も拳銃を構える所作もてんで様になっていなかった。その点では失格だが、映画終盤以降の感情的な演技はうまくいっていた。
 次はどんな作品でどんな役をやるのか知らないが、もう1つは見てみたい。
 (写真下:AnuyaとHarikumar。このせいでA指定が付いてしまった問題のベッド・シーン。)

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 セカンド・ヒロインのカルティカは、要するに前半のムード作りに出てきただけで、特に語るべきことはない。残念だが、ないものねだりはできない。この人も【Pirappu】(07)ではヒロインとして印象的な役をもらっていたが、器からいくと、本作のような使われ方でも仕方がないだろう。
 実は、主演のハリクマールとは【Thoothukudi】(06)でも共演しており、この二人が組むと、下のスチールみたいに、やはり行き着くところは田んぼダンスになるようだ。

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 脇役陣はなかなか良い味を出している。特にアーラマラム役のラーダー・ラヴィが渋かった。
 総じて、脇役も含めた主要登場人物が意外としっかり芝居をしており、それが本作が駄作に転落するのを防いでいたように思う。

◆ 結語
 【Subramaniyapuram】(08)や【Naadodigal】(09)あたりなら、まだ日本人にもオススメできるが、本作のような平凡なアクション映画となると、タミル人か、マドゥライの地誌を研究している人以外に用はなさそうだ。
 しかし、日本のヤクザ映画が日本文化の一つとして海外から注目されたように、南インドのラウディー映画もどこでどんな形で注目を浴びないとも限らない。そんなふうに考えると、本作も一顧の価値ぐらいはあるかもしれない。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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