カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Yaaradu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2009/11/15 14:10   >>

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 ウィノードラージ主演のカンナダ映画。
 ウィノードラージといえば、サンダルウッドの‘ダンス・キング’の異名をとるアクション系俳優だが、若き日の【Dance Raja Dance】(87)などで見せた活きの良いダンスは日本のマニアにも知られているところである。
 制作は彼のオカンのリーラヴァティ。つまり自家制作ということになるが、この母子による作品としては【Kannadada Kanda】(06)と【Shukra】(07)がある。前者はヒットしたが、後者はヒットしなかったらしい。本作ではこのリーラヴァティも重要な役で出演している。(写真上はLeelavathiとVinod Raj母子。本作のスチールより。)
 ところで、ウィノードラージというのは、何を隠そうカンナダ映画界の巨星・故ラージクマルの息子で、ラージクマルが女優リーラヴァティとの間に犯した「過ち」の産物であることはカンナダ人なら誰しも知っていることだが、このブログにはまだ書いていなかったので、ここに記しておく。シヴァラージクマルやプニート・ラージクマルが「表ラージ家」として華々しいスター街道を歩んでいるのに対し、ウィノードはいわば「裏ラージ家」として、たとえ面白い映画に出演しても御宗家の潰しに遭うなど、逆境を強いられているらしい。判官贔屓な私としてはちょっと応援したくなる。(この「潰し」云々については、現地人はまことしやかに語るが、私自身、裏を取っているわけではない。)
 なお、題名の「Yaaradu」は「それは誰だ」という意味。

【Yaaradu】 (2009 : Kannada)
脚本・台詞・監督 : Srinivas Kaushik
出演 : Vinod Raj, Leelavathi, Nihal, Suman Jadugar, Ashwini, Sadashiva Brahmavar, Vikram Udaykumar, Chetan Rama Rao
音楽 : Akil
撮影 : Nagesh Acharya
制作 : Leelavathi

《あらすじ》
 メアリー(Leelavathi)はカルナータカ州中部のシルシー近く、ビーマナクッペという村でゲストハウスを営んでいた。彼女は一人息子のジョン(Nihal)を溺愛していたが、ジョンも劣らず母を愛していた。メアリーは息子が立派な人間になることを願い、大学へ行かせることにする。ジョンは後ろ髪を引かれる思いで母と幼なじみの村の娘・ナイナーに別れを告げ、バンガロールの大学に入学する。
 だが、ほどなくしてメアリーのところにジョンから帰省するとの電話が入る。息子の到着を心待ちにするメアリーだが、ジョンは道中のバスの事故で死亡してしまい、彼のカバンだけが帰って来る。メアリーは悲しみのあまり自殺を図るが、ゲストハウスの従業員・ウータッパ(Sadashiva Brahmavar)が思い留まらせる。ナイナーもショックで精神に異常をきたす。
 そんな時に、バンガロールから5人の大学生、ウィジー(Suman Jadugar)、ガネーシャ、ラジュー、サティーシャ、アーナンダがやって来、ゲストハウスの客となる。ところが、初日の晩からおかしなことが起こり、ガネーシャとラジューが相次いで行方不明となる。残りの3人は車に乗ってバンガロールに帰ろうとするが、倒れた木で道が不通となっていた。森の中を歩くうちに、サティーシャの姿も消えてしまう。ウィジーとアーナンダの2人は、やむを得ず徒歩でゲストハウスに戻る。
 そこは携帯電話の電波が届かないエリアだったが、ウィジーは固定電話でなんとか父と連絡を取り、状況を説明する。父からの通報を受けて、警官のプラタップ(Vinod Raj)が捜査に当たることになる。
 プラタップはまず大学で聞き取り捜査をし、ビーマナクッペのゲストハウスのことも調べ上げる。そして現地に乗り込むが、すでに前の晩にアーナンダも消えた後だった。
 プラタップはウィジーら5人とジョンが同じ大学の学生であることを知る。そして、付近の森を捜索した結果、1台の携帯電話を発見する。彼は、後を追って来た恋人のサンジャナ(Ashwini)から充電器を借り、発見した携帯電話を充電する。しかし、シャワーを浴びている間に、携帯電話が忽然と消えてしまう。プラタップは、こっそりゲストハウスを抜け出そうとしたウィジーを捕え、痛めつける。その結果、ウィジーの口から、彼ら5人とジョンの関係が明かされる。
 その日の晩、ウィジーはプラタップの姿をした男に誘われ、森の中に入る。そこにはメアリーがいた。本物のプラタップもサンジャナと共に森に入り、ウィジーを探すが、ほどなくプラタップは信じがたい光景を目にすることになる、、、。

   *    *    *    *

 思いのほか楽しめるホラー・サスペンスだった。
 最近のインド映画界を見渡すと、ホラー作品が増えたなぁという実感があり、しかも質的に申し分のない作品も現れている。これはボリウッドでも南インド映画界でも同じような傾向で、インド映画がこの分野で成長しつつある証しだが、さて、南印の中でもカンナダ映画界はどうか?というと、まだ大きな動きにはなっていないらしく、2006年の【Mohini 9886788888】以来、本格的なホラー物はなかったのではないだろうか。しかし、今年に入ってから【Anu】(テルグ映画【Anasuya】のリメイク)や【Hushaar】、そしてこの【Yaaradu】が公開され、また、現在製作中の作品の中にもホラー物と思しきものがあり、じわじわとブームにはなりつつあるようだ。

 本作の出来については、わたしはまずまずだと思っているのだが、テルグやヒンディーなどのホラー物に慣れている人には見劣りして映るだろう。幼稚な印象を受けるに違いない。
 それでも私がまずまずというのは、単純さが持つ味わいとでも言おうか、本作がからっからのシンプルな作品でありながら、限られたソース(予算、技術)をうまく使って、ホラー映画としての最低限の条件をクリアしているからだ。
 人里はなれた所にある1軒のゲストハウスとその背後に控える深々とした森、そこで起きる連続失踪事件と、設定も展開も定番なのだが、脚本が気が利いていて、最後までサスペンスが持続する。監督・脚本・台詞担当のSrinivas Kaushikは、本作が監督デビューということだが、これまでは台詞ライターをやっていた人らしい。本作を見る限り、サスペンス・スリラーの研究はきちんとやっているようだ。
 ホラー・サスペンスでありながら、怖がらせに徹する以上に心情的な部分(母子の情愛や道徳感)が強調され、その辺はカンナダ映画らしいところかもしれない。クライマックスのオチは笑えるものだが、この笑いを以って、私は本作をB級ホラーの佳作としたい。

◆ パフォーマンス面
 私はウィノードラージのパフォーマンスを楽しみに映画館まで足を運んだのだが、実は本作の主人公は彼ではなく、オカンのリーラヴァティだった。
 ウィノードの演じた警官・プラタップは前半終了間際からの登場だし、捜査といっても大したことはせず、森の中で携帯電話を発見したことぐらいだ。得意のダンスとアクションは、意地で無理から挿入しているのだが、やはり限定的だった。その点では当てが外れてしまったが、しかし、40歳を過ぎても相変わらず忍者のような足さばきのダンスは健在で、それがちらっと見られただけでもうれしかった。

 代わりにリーラヴァティは、堂々たる主役、ヒロインで、思いがけない活躍だった。
 インド映画ヒロイン・フェチの私としても、さすがに70歳のお婆さまに萌えるわけにはいかず、この点、まだ艶めかしいオバサマ女優を使ってほしかったなぁ、という恨みがないわけではないが、今回の熱演(もしかしたら、これが最後の大芝居になるかもしれない)に対しては、素直に賛辞を捧げておく。大学生の母にしてはちょっと老けすぎた感はあるが。
 (写真下:メアリー役のLeelavathiとジョン役のNihal。こちらはドラマ上の母子。)

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 それで、通常の意味でのヒロインはプラタップの恋人役のアシュウィニということになるはずだが、ストーリー上の重要度が低すぎて(つまり、携帯の充電器を貸したぐらい)、まぁ、アイテム出演と見なしたほうがいいだろう。
 強引に挿入された音楽シーンも特に見ものというわけではないのだが、これがなければラーム・ゴーパール・ヴァルマーの映画になってしまうので、カンナダ映画のアイデンティティを保つためには必須だったとも言えるだろう。(下)

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◆ テクニカル面
 そんな次第で、音楽についてはまったく印象に残っていないのだが、その代わり音響効果は悪くなかった。
 映像処理も素朴で基本的なものだが、一定の効果は上げている。

◆ 結語
 南インド映画らしさ、カンナダ映画らしさが表れたサスペンス・ホラーということで、世界のB級ホラーを愛するお方にはオススメしたい。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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