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1年ほど前にテルグ映画の【Vinayakudu】が公開され、ヒット作となった。この映画はお洒落なモダンガールと「デブ男」のラブ・ストーリーということで話題を呼び、Nandi Awardsでは銀賞に輝き、監督のSaikiran Adiviは最優秀新人監督賞を獲得した。 この【Villagelo Vinayakudu】は、タイトルから推測されるとおり、Saikiran Adivi監督の第2作で、【Vinayakudu】の続編とも考えられる。しかし、主人公の俳優(Krishnudu)と役名(Karthik)とキャラクター(デブ)が同じというだけで、ストーリー的には両者に関連はない。 題名の「Villagelo Vinayakudu」は「ヴィナーヤカ、村にて」という意味。ヴィナーヤカというのはガネーシャ神のことだが、なんでここでガネーシャが出て来るかは不明。(きっと主人公のでっぷり太ったキャラを象徴したものだろう。) 私は【Vinayakudu】は映画館で見損ねたので、DVD鑑賞となったが、これがまた泣かせる良い映画だった。【Villagelo Vinayakudu】ではヒロインがシャランニャ・モハンということもあって、楽しみの1本となっていた。 (写真上は主演のKrishnuduとSaranya Mohan。) 【Villagelo Vinayakudu】 (2009 : Telugu) 物語 : Mahi 台詞 : Ramana Salwa, Saikiran Adivi 脚本・監督 : Saikiran Adivi 出演 : Krishnudu, Saranya Mohan, Rao Ramesh, Yandamoori Veerendranath, Dr. Bharath Reddy, その他 音楽 : Manikanth Kadri 撮影 : Ramana Salwa 編集 : Marthand K. Venkatesh 制作 : Mahi, Saikiran Adivi 《あらすじ》 東ゴダワリのラジョールに暮らすラクシュミパティ(Rao Ramesh)は退役軍人。彼は大家族の長として、軍人らしい厳格さで家族を取り仕切っていた。彼には一人娘のカヴィヤ(Saranya Mohan)がいたが、医学の勉強のためにハイダラーバードに滞在していた。 カヴィヤにはカルティク(Krishnudu)という恋人がいた。カルティクは優秀な理工系の学生だったが、あえてエンジニアにはならず、幼稚園の先生をしていた。二人は結婚するつもりでいたが、もちろんカヴィヤはそのことを厳しい父に報告できないでいた。そうこうしているうちに学業も終わり、また、従妹のプリヤンカの婚約も決まったということで、カヴィヤは田舎に帰省することにする。 父のラクシュミパティはさっそくカヴィヤの結婚相手を決めようとし、友人のバスカラム(Yandamoori Veerendranath)に相談する。バスカラムは軍人のバーラト(Dr. Bharath Reddy)の写真を持って来る。その若者は容姿といい人物といい申し分のないものだったが、完璧主義者のラクシュミパティは、たった一点、靴が汚れているという理由で、却下する。 父に結婚相手を決められては大変と焦るカヴィヤだが、彼女はまず父以外の家族に恋人のことを紹介する作戦に出る。彼女はカルティクのことを誇張して吹聴したため、家族の面々はラーム・チャラン・テージャかNTRジュニアかマヘーシュ・バブのような男を想像する。ところが、実際に目の前に登場した男は、とんだ百貫デブだった。 ラクシュミパティは、こんな間抜けそうなデブが義理の息子になることが赦せず、バスカラムに相談する。バスカラムはいろいろと対策を授けるが、それがことごとく不発に終わる。家族の面々もカルティクの人柄を理解し始める。 ラクシュミパティは、最後の切り札として、バーラトを結婚相手に指定し、家に呼び寄せる。ぴかぴかに靴を磨いて来たバーラトだが、しかし、あろうことか、彼はすっかりカルティクと意気投合してしまう。そして、カルティクのカヴィヤに対する気持ちを知ったバーラトは、爽やかに家を去って行く。 ラクシュミパティは、甥が理工系大学に進学せず、料理人の修行をしたいと言い出したとき、強く反対する。しかし、カルティクが甥を擁護したため、ラクシュミパティは激怒する。カルティクは、結局はカヴィヤの父に気に入られなかったことを悟り、ハイダラーバードに戻る。 カヴィヤは父にカルティクに対する気持ちを切々と訴えるが、しかし、娘として、父の意思に従うと伝える。だが、ラクシュミパティの胸にも迷いが生じる、、、。 * * * * 実に爽やかで気持ちの良い、コメディー・タッチの家族ドラマだったが、作品全体のインパクトという点では【Vinayakudu】に劣るか、といったところ。 本作についてコメントする前に、【Vinayakudu】のほうを概観しておくと、、、 田舎から出て来たカルティク(Krishnudu)という、デブで素朴な若者が広告代理店に就職する。そこで彼は同僚のキャリア・ガール、カルパナー(Sonia)に一目惚れするが、カルパナーのほうは彼を毛嫌いし、罵りさえする。しかし、結局は彼女もカルティクの人柄を愛するようになり、最良のパートナーとして受け入れる、というストーリー。 一見、デブでも性格がよければ良いのさ、みたいな単純なことを言っているだけのようだが、本作はそんな次元に留まらない。この作品が美しいのは、恋人であれ夫婦であれ親子兄弟であれ、ベスト・パートナーとはこういうものだという感覚をはっきり描き出している点だろう。 一体、人は自分の家柄やステータス、能力などを通して「理想の相手」というものを作り出し、それを追い求め、または他人(子供)に押し付ける。で、その理想に合わない人間はダメなものとして排除する。しかし、その思い描かれた「理想の人」というのはえてして幻想であることが多く、自分自身がそれに騙されていることに気付かない。ところが、人と人の結びつきというのは不思議なもので、それまで罵り、排除していた相手こそが実は「ベスト・パートナー」であり、幸せの源だという確信を持つこともある。そんな時に、それまでの非を悟り、まっさらな気持ちで相手を受け入れる人間の見せる無垢な姿が、【Vinayakudu】の主眼だったのではないだろうかと私は解釈している。 この主眼は【Villagelo Vinayakudu】でもぴったり踏襲されている。 もちろん、【Villagelo Vinayakudu】では、カルティクとカヴィヤ(Saranya Mohan)はすでに確立した恋人同士として登場するので、二人の間でドラマを動かすような葛藤はない。その代わり、カヴィヤの父・ラクシュミパティ(Rao Ramesh)とカルティクの関係が、【Vinayakudu】のカルパナーとカルティクの関係に当たる。ラクシュミパティは、高位の軍人としてのプライドから、娘の婿には完璧な人間を望み、カルティクのような間抜けそうなデブの幼稚園教師を受け入れられない。しかし、紆余曲折の末、カルティクのことを娘の最良の相手と認め、息子として受け入れる。この過程はコミカルで面白いものだったが、【Vinayakudu】のヒーローとヒロインの展開ほどドラマティックなものにはなり得ないので、そこが本作の泣きどころか。 テルグ映画ウォッチャーなら気付いていると思うが、本作は主題や物語の構成が【Bommarillu】(06)によく似ている。しかし、【Bommarillu】ほどの仕掛けがないことも、本作の印象を弱くしている理由だと思う。 監督のSaikiran Adiviは、【Happy Days】(07)でシェーカル・カンムラ監督のアシスタントやっていた人らしい(と言えば大体の作風が分かるだろう)。 非常に新しい視点の持ち主のようで、それは主要登場人物に設定された職業を見ても分かる。例えば、【Vinayakudu】の二人は広告クリエーターで、本作のカップルは幼稚園の先生と医者。特に【Vinayakudu】では、親が選んだカルパナーの花婿候補として「ソフトウェア・エンジニア」が登場するが、それがまったく「陳腐」、「月並み」な人物としてあしらわれている。時代の寵児ともてはやされたソフトウェア・エンジニアももはや特別とは言えない、という視点には、インド都市部のミドル・アッパークラス社会の成熟が反映されていると見るべきだろう。 ◆ パフォーマンス面 主演のクリシュヌドゥは、その体型から脇役かコメディアンの道を歩むはずだったのだが、シネコン時代の賜物とでも言おうか、ヒーローとして当たり役を得てしまった。(私は【Happy Days】でこの人を見たとき、まさかヒット作のヒーローになるとは思わなかった。) 容姿から想像されるとおりののんびり屋さんで、当たり前のことを当たり前のように言う率直さが周りを苛立たせることもあるが、結局は愛さずにはいられない、という人物設定は【Vinayakudu】と同じ。クリシュヌドゥの素のイメージからして、そう難しい役でもないだろう。このキャラであと1本は映画が撮れそうだ。 (写真下:おっ、こうやって改めて見ると、けっこう男前じゃないか!) カヴィヤ役のシャランニャ・モハンは、ヒロインとしての彼女を見たのは【Vennila Kabaddi Kuzhu】(09:Tamil)以来、2本目。本当に可愛い。私はこういう、いかにも「可愛いです」といった感じのアイドル顔は支持しないことにしているのだが、なぜか彼女は特別だ。 なにかと【Vinayakudu】のソニアと比較されてしまい、確かに役柄としてはソニアほどの衝撃はないのだが、まぁ、いいんです、可愛いんだから。 ところで、【Vennila Kabaddi Kuzhu】の項目で私は彼女のことを、Wikipediaの記述に即して、ケーララ州のPalakkad出身と書いたが、今再びWikipediaをチェックしてみたら、Alappuzha生まれとなっているではないか。どちらが正しいかは分からないが、ケーララのアイヤル・ブラーミンというのは確かなようだ。(とにかく、Wikipediaのこの手の記述は二転三転するので、お手上げだ。) 本作で最も重要なのは、ラクシュミパティ役のラオ・ラメーシュ。【Gamyam】(08)あたりから個性的な脇役として頭角を現わし、【Kotha Bangaru Lokam】と【Magadheera】での印象的な役を経て、本作の父親役は決定的だ。プラカシュ・ラージが偉くなる中、新たに良い実年俳優が登場したという感じだ。 微妙にとんちんかんな相談役・バスカラムを演じたのはYandamoori Veerendranathという人。この人は実は有名なテルグ文学の作家で、【Phoonk】(08)の原作‘Tulasidalam’等を書いた人。本格的な映画出演は初めてのはずだが、なんだか面白かった。 (下:Yandamoori Veerendranath(左)とRao Ramesh。) もう一人、バーラト役を演じたバーラト・レッディーは、そもそもはハイダラーバードで心臓外科医をやっていた人らしい(名前の始めに「ドクター」が付くのはそのせい)。【Unnaipol Oruvan】でモハンラルの部下を演じて注目を集めたが、本作でも好印象だ。 ◆ テクニカル面 音楽を担当したのはManikanth Kadriという人。どこかで目にした名前だなぁと思って調べてみたら、カンナダ映画の【Savari】(09)を担当した人で、有名なカルナーティック音楽のサックス奏者・Kadri Gopalnathの息子だった。【Savari】の音楽も良かったが、本作も素晴らしく、注目の音楽監督と見ていいだろう。 東ゴダワリの田舎を捉えた映像も美しい。この田舎風景の美しさが本作の魅力の一つでもある。ストーリー的には特に田舎を舞台にしなくとも成り立つのだが、景色の美しさとそれにマッチした音楽にはうっとりすること請け合いだ。 ◆ 結語 【Villagelo Vinayakudu】は、主人公カルティクの純なキャラクター、シャランニャ・モハンの可愛らしさ、ゴダワリ地方の風景の美しさ、クリーンでコミカルなドラマ構成と、フレッシュな気分になれる作品だ。オススメしたい。もちろん、この際【Vinayakudu】と併せて鑑賞しよう。 ・満足度 : 3.5 / 5 |
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