カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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help RSS 【Kerala Cafe】 (Malayalam)

<<   作成日時 : 2009/11/25 22:56   >>

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 またまたマラヤラム映画界が面白いことことをやってくれた!
 この【Kerala Cafe】は、単一のストーリーからなるものではなく、10本の短編を集めたオムニバス映画。オムニバスという形式自体は全然驚くべきことではなく、近ごろはインドでもぼつぼつ目に付くようになってきた。ただ本作の場合、その規模に気合いを感じる。10人の気鋭監督がそれぞれメガホンを取り、10人の撮影監督に10人の音楽監督、もちろん、演技陣も多数のマラヤラム・スターたちが結集し、昨年の【Twenty 20】並みの大企画だ。
 全体の企画と制作は映画監督のランジットが担当している。どういう経緯でこの映画を作ることになったかは知らないが、フランス映画【Paris, je t'aime】(06)の影響が一つにはあるらしい。

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【Kerala Cafe】 (2009 : Malayalam)
企画・制作 : Ranjith

 映画は、まず著名な映画監督であるサティヤン・アンティッカドが登場し、ぼそぼそと作品について語るところから始まる。そして、下記の10短編が続くのだが、映画全体の上映時間は2時間25分と、そう長いものでもなく、それぞれのエピソードは10分から15分ぐらいでまとめられている。
 10本のそれぞれはストーリー的に独立しているとはいえ、「旅」という一つのテーマで統一されている。ケーララ州のとある鉄道駅にある「ケーララ・カフェ」という食堂が扇の要となっている。各エピソードの登場人物は互いに他のエピソードのそれと交流することはないが、何らかの形で「ケーララ・カフェ」と関係している。
 以下に各エピソードのクレジットと簡単な内容、コメントを記しておく。

@ Nostalgia
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監督 : Padmakumar
出演 : Dileep, Navya Nair, Sudheesh
音楽 : Thej Mervin
撮影 : Anil Nair
編集 : Sreejith

 ドバイ在住の実業家・ジョニー(Dileep)が、郷愁と共に故郷のケーララに一時帰省するが、帰ったら帰ったで故郷に対して悪態をつき、古い人間関係も蔑ろにするという話。
 「ふるさとは遠きにありて思ふもの」というわけでもないだろうが、NRIのインドに対する複雑なスタンスが描かれている。Venugopalという人の‘Naatuvazhikal’という詩に想を得ているらしい。

A Island Express
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監督 : Shankar Ramakrishnan
出演 : Prithviraj, Rahman, Manianpillai Raju, Jayasurya, Sukumari, Geethu Christie
音楽 : Manu Ramesh
撮影 : S. Kumar
編集 : Mahesh Narayan

 思わせ振りに5人の登場人物が出て来るが、それぞれまったく絡み合うことなく、別個に出来事が進行する。だが、やがて彼らはある地点に集結する。そこは「ペルモン列車事故」が起きた場所であった。
 1988年に起きたケーララ史上最悪の鉄道事故と言われる‘The Peruman Train Tragedy’に材を取ったもの。
 監督のShankar Ramakrishnanは新人らしい。プリトヴィラージの人物デザインには違和感を感じたが、突然象を出すセンスは面白い。

B Lalitham Hiranmayam
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監督 : Shaji Kailas
出演 : Suresh Gopi, Jyothirmayi, Dhanya Mary George
音楽 : ?
撮影 : Sujith Vasudev
編集 : Samjith

 ラメーシュ(Suresh Gopi)は妻のラリタ(Jyothirmayi)と愛人のマイー(Dhanya)との板挟みに悩むが、ある雨の日、2人の女を残して事故死してしまう。
 アッパー・クラス家庭の夫の不貞を扱ったものだが、残された女2人の「したたかさ」に注目したい。


C Mrityunjayam
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監督 : Uday Ananthan
出演 : Thilakan, Fahad Fazil, Reema Kallingal, Meera Nandan, Anoop Menon
音楽 : Ouseppachan
撮影 : Hari Nair
編集 : Samjad

 とある村落部の不気味な出来事が起きる老屋敷に、若いジャーナリスト(Fahad Fazil)が取材に来るという話。
 マラヤラム映画界といえば、ホラー映画の産地としても知られているが、やはりそれらしくホラータッチの作品もエントリーということか。この短編が何を言いたいのかよく分からなかったが、ケーララの田舎の何か物の怪が出て来そうな空気は感じられた。
 ミーラ・ナンダンとアヌープ・メノンの名前もリストにあるが、ほとんど付け足し程度の出演で残念だった。

D Happy Journey
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監督 : Anjali Menon
出演 : Jagathy Sreekumar, Nithya Menon, Mukundan
音楽 : Harikumar Madhavan Nair
撮影 : M. J. Radhakrishnan
編集 : B. Lenin

 どこにでもいそうなスケベ親爺(Jagathy Sreekumar)が長距離バスで美少女(Nithya Menon)の隣に座る。親爺は例によって美少女にちょっかいをかけようとするが、彼女と話しているうちに、この少女が実はテロリストではないかとの疑念を抱き、すっかり怯えるという話。
 単純ながらヒネリの利いた、まさに掌編映画の見本ともいえる作品。俗物親爺を演じたジャガティの旦那はさすがに上手いが、そんな中年男をぶるぶる震え上がらせたニティヤも見事!

E Aviramam
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監督 : B. Unnikrishnan
出演 : Siddique, Shweta Menon
音楽 : M. Jayachandran
撮影 : Shamdat
編集 : Manoj

 ソフトウェア会社を営むラヴィ(Siddique)は、不景気の影響で多額の負債を抱え、自殺を考えていた。彼は旅行に出かける妻(Shweta Menon)と2人の子供を送り出した後、首を吊ろうとするが、まさにその瞬間に玄関のベルが鳴る、、、。
 経済発展を続けるインドをも襲った景気後退の問題を扱ったもの。アイデアも見せ方も単純すぎて、やや面白みに欠ける一編だが、夫に対する妻の愛情は美しかった。(というより、シュウェタ・メノンのヘソはもっと美しかった。)

F Off Season
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監督 : Shyamaprasad
出演 : Suraj Venjaramoodu, Frank Pietropinto, Marie Muscroft, Vindhyan
音楽 : Rahulraj
撮影 : Azhagappan
編集 : John Kutty

 シーズンオフのコヴァラム・ビーチ。暇を持て余すツアーガイドのクンジャーバイ(Suraj Venjaramoodu)は、西洋人のカップルを見つけ、カモとばかりにあれこれサービスを尽くす。しかし彼は、そのカップルが文無しのポルトガル人で、仕事を探しに来ていたことを知る、、、。
 10編中、唯一のコメディー。単純に笑えないペーソスなのだが、それを「まぁ、ええがな」と持っていくあたり、インド的でいい。サックスを使ったBGMも心地よい。


G Bridge
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物語 : Unni R
監督 : Anwar Rasheed
出演 : Salim Kumar, Kozhikode Shanthadevi, Kalpana
音楽 : Rex Vijayan
撮影 : Suresh Rajan
編集 : Vivek Harshan

 息子が可愛がっている子ネコを捨てる父と、痴呆が進む老母を捨てる息子(Salim Kumar)の、2つのエピソードが平行して描かれる。
 かなり沈痛な話だ。短いながら、これは泣ける。コメディアン、サリーム・クマールの超シリアス演技も見ものだ。
 なお、老母と子ネコの組み合わせは映画の一番最後にも登場し、切ない余韻を残してくれる。

H Makal
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物語・監督 : Revathy
脚本・台詞 : Deedi Damodaran
出演 : Sona Nair, Srinath, Augustin, Sreelakshmi
音楽 : Bombay Jaishree
撮影 : Madhu Ambat
編集 : Rajalakshmi

 村の極貧家族の子供たちがこっそり売られていくという、児童売買の問題を扱ったもの。レーヴァティの見せ方は単刀直入すぎる嫌いがあるが、扱われている問題があまりに深刻であるため、ショックを受けるに十分だ。ソーナ・ナーイルの微妙な表情に注目。

I Puram Kazhchakal
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物語 : C. V. Sriraman
脚本・台詞・監督 : Lal Jose
出演 : Mammootty, Sreenivasan, Sreelekha
音楽 : Bijibal
撮影 : Vijay Ullaganathan
編集 : Ranjan Abraham

 バスの中でかつての恋人との思い出を回想する中年男A(Sreenivasan)。そのバスに中年男B(Mammootty)が乗って来る。Bは妙に苛立ち、バスを急がせる。他の乗客はそんなBを不快な目で眺めるが、しかしBの目的地に到着したとき、真相が分かる。
 締めはマムーティとシュリーニワサンの出演とあって、大いに期待したが、ちょっと文学的すぎて期待はずれだった。しかし、ヒゲなしのマムーティもいいもんだ。


 【Kerala Cafe】の統一テーマは「旅」ということだが、上の内容を見て分かるとおり、「旅」の情緒そのものが描かれているわけでも、旅を通した人との出会いや旅する人の内面の変化が描かれているわけでもない。つまりは、本作が描いているのは、ある一点から眺められた雑多な人々の人間模様であり、彼らを通して窺い知れるインド(ケーララ州)の現状ということだろう。
 本作の10編の内容は、お気楽なインド人気質から悲痛な社会問題まで、バランスよく配分されており、現在のケーララを興味深く概観できる。私的には『Happy Journey』と『Off Season』と『Bridge』が気に入っているが、鑑賞者それぞれで受け止め方も違ってくることだろう。
 それぞれの監督のこれまでの作風と比較してみるのも面白いだろう。私はマラヤラム映画の過去作に疎いので、部分的にしか分からないが、例えば、痛快なアクション・コメディーを得意とするAnwar Rasheed監督が『Bridge』を、【Ore Kadal】(07)のShyamaprasad監督が『Off Season』を撮ったなんて、ちょっと想像しにくいことだ。
 内容も面白いが、技術面はもっと注目すべきだ。映像、音楽、演技(セリフの間etc.)は、失礼な言い方になるが、もはやインド映画とは言えないほど繊細なものだ。そういった意味で、【Kerala Cafe】は、1本の面白い映画ということ以上に、マラヤラム映画の将来の可能性を感じさせてくれる作品だった。
 強くオススメする。

・満足度 : 4.0 / 5
 

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内 容 ニックネーム/日時
最近マラヤラム映画について書いてある「アジアのハリウッド」という本を見つけた。マラヤラム映画の作られかたや特質が、隣のタミル映画と比べてあってとても面白い。ケララでの芸術映画と娯楽映画の関わりが、モハンラール等との会話から伝わってくる。マラヤラムの女優らについてはあまり書いてないが、一読の価値があると思う。
映画マニア
2010/05/15 19:46
コメント、ありがとうございます。

『アジアのハリウッド』は面白そうですね。
早く読みたいのですが、日本から送ってもらうのもなんなんで、次回の帰国時に1本手に入れようと思っています。
 
カーヴェリ
2010/05/17 17:28

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