カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Arya-2】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2009/12/06 22:47   >>

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 偶然だが、前回紹介した【Naan Avan Illai 2】に続いて、今回も【○○2】物。
 パート1の【Arya】(04)は、‘スタイリッシュ・スター’アッル・アルジュンの出世作として知られているが、私がこれを観たときは、こんな面白い映画をインド人は撮るんだと、作品にもアッル・アルジュンにも感服し、テルグ映画にはまるきっかけとなった1本だ。
 【Arya-2】は、主演はもちろん同じアッル・アルジュンだが、監督も同じスクマール。ただ、プロデューサーはディル・ラージュからアーディティヤ・バーブに変わっている。
 アーディティヤ・バーブはまだ20代前半の若いプロデューサーで、スクマール監督とは【Jagadam】(07)で共同している。彼は俳優業にも色気があるらしく、カンナダ映画の【Anthu Inthu Preethi Banthu】(08)では制作兼主演をこなしている。

【Arya-2】 (2009 : Telugu)
監督 : Sukumar
出演 : Allu Arjun, Kajal Aggarwal, Navadeep, Shraddha Das, Brahmanandam, Mukesh Rishi, Sayaji Shinde, Ajay, Srinivas Reddy, Radha Kumari
音楽 : Devi Sri Prasad
撮影 : R.D. Rajasekhar
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : Aditya Babu, Bhogavally Prasad

《あらすじ》
 孤児のアーリヤ少年は、同じ孤児院にいるアジャイ少年のことが大好き。だが、アジャイは風変わりなアーリヤのことをウザいと思っていた。あるお金持ちが孤児の一人を養子として引き受けに来たとき、どちらが行くか、二人はコインを投げて決める。結果はアーリアが勝つのだが、彼は友情の印としてアジャイに行かせる。
 長じて、アジャイ(Navadeep)は裕福なソフトウェア会社経営者となるが、アーリヤ(Allu Arjun)は貧しいままだった。やっぱりアジャイが大好きなアーリヤは、強引なやり方でアジャイの会社の社員となる。しかし、相変わらずアジャイは変わり者のアーリヤをウザいと思っていた。アーリヤはそんなアジャイに気を遣い、社内では優等生を演じる。結果、彼は最優秀社員に選ばれ、同僚から「ミスター・パーフェクト」と呼ばれる。
 そんな時に、ギータ(Kajal Aggarwal)が入社してくる。アーリヤもアジャイも彼女に一目惚れしてしまう。アーリヤはギータには自分の本当の側面を見せ、ちょっかいをかける。ギータは同僚たちにアーリヤの奇行を訴えるが、彼らは「ミスター・パーフェクト」がそんなことをするはずがないと取り合わず、却ってギータが変人扱いされる。しかし、ある悶着がきっかけで、アーリヤは社員たちの前でギータに愛の告白をせねばならなくなる。だが、ギータはそれを無視し、アジャイに“I love you”と告げる。
 もちろん、ギータのこの告白は本心ではなく、彼女がアーリヤに対して関心を持っていることを感知したアジャイは、策を練り、自分がアーリヤに殺されそうになった芝居を打つ。これは功を奏し、ギータはアーリヤを嫌悪し、アジャイに近づく。アジャイのギータに対する本心を知ったアーリヤは、友情のため自分を犠牲にして、二人を結び付けようとする。
 アジャイとギータは仲間内だけの結婚式を挙げることにする。しかし、指定された寺院にギータは現れなかった。実は彼女は、他の男との結婚のため、強制的に故郷に連れ戻されていたのである。
 ギータの父、ラージャ・レッディ(Mukesh Rishi)はカルヌールの豪族だった。彼はカーシ・レッディ(Sayaji Shinde)という豪族と激しい敵対関係にあったが、カーシ・レッディの弟・スッビ・レッディ(Ajay)がギータに強く惚れていたため、二人を結婚させて、両家の対立を終焉させようという思惑があったのである。
 事情を知ったアーリヤは、この結婚を解消し、ギータを連れ戻すことをアジャイに約束し、カルヌールに乗り込む、、、。

   *    *    *    *

 非常に厄介な映画だ。
 ストーリー展開もそうだが、アーリヤ(Allu Arjun)の人物造形が複雑すぎて、多くのインド人は困惑するだろう。私もしんどかった。映画全体を見終えると、まずまず納得できるし、部分的に非常に面白い場面もあるのだが、スカっとした明快さに欠け、消化の悪い料理をどっさり食べさせられたような気分だ。

 本作の問題点の一つは、ネタの詰め込みすぎだろう。
 実は、上のあらすじでは前半までしか書かなかったが、後半はラーヤラシーマのカルヌールを舞台とした上下左右に揺れるストーリー展開があり、ハイダラーバードのソフトウェア会社を舞台にした前半とはがらりと雰囲気を変えている。
 後半のカルヌールの段はファンタスティックだった。過去のテルグ映画のラーヤラシーマ物のパロディーとも見え、テルグ映画ウォッチャーならにんまり笑える。
 問題は前半で、登場人物導入とストーリー組み立てに即して、コメディー的ネタを連発しているのだが、詰め込みすぎたせいでメリハリがない。内容的にも、今どきのお若い方が集まってあれこれヒネリ出したようなアイデアのオンパレードで、いくつかは新鮮なのだが、多くはわざとらしく、鼻に付くものだった。インド映画(テルグ映画)もここまでやるようになったか、と感嘆しなくもないが、もっと正直に言うと、イライラした。

 ストーリーとテーマについては、評価は難しく、賛否が分かれるところだろう。
 まず、パート1の【Arya】との関係を書いておくと、【Arya】も【Arya-2】も三角関係(男2女1)を扱っており、面白いことに主要登場人物の名前(アーリヤ、アジャイ、ギータ)も同じなのだが、ストーリー的に両者に繋がりはなく、本作が【Arya】の続編というわけではない。どちらかというと、本作はスクマール監督自身による【Arya】のリメイク(むしろ、アップデート)と見なしたほうがよさそうだ。
 【Arya】も風変わりな三角関係の話だったが、【Arya-2】はもっと複雑さを増し、知恵熱が出そうな困難なストーリー展開を作っている。
 ギータ(Kajal Aggarwal)を巡るアーリヤとアジャイ(Navadeep)の関係が基本なのだが、困ったことに、アーリヤはギータもアジャイも大好き。その愛情と友情の度合いがアーリアの場合は極端なので、三角関係も単純なものではなくなる。それに加えて、強力なファクショナリストの父(Mukesh Rishi)が3人の関係にかぶさり、さらに敵方のスッビ・レッディ(Ajay)も絡んできて、アーリヤはそれらにも配慮せねばならなくなる。
 結局はヒーローとヒロインが結ばれるというオチは分かっているのだが、本作の特異な点は、ヒーローとヒロイン以外の関係を叩き潰したり、単純に否定したりしないで、四方八方を積極的に円満に収めようとしていることだ。そのためにかなり難しい弁証法を用いざるをえず、その役目を一身に背負ったアーリヤの人物像が奇天烈なものになったとしても不思議ではない。
 ところが、驚いたことに、本作はこの困難な課題に大筋において成功しており、クライマックスでは様々な愛の形がまるで傘のようにぱっと開き、立体的な愛の曼荼羅を形作っているのである(分かりにくい表現をしてしまったが)。
 インド映画のラブストーリーというのは、恋愛を友情、家族愛、祖国愛などと調停・綜合する努力だと私は見ているが、本作はそのユニークな成功例と言えるだろう。その点ではスクマール監督を評価できるのだが、ただ、それに至るためにこんなややこしいことをする必要があったのかなぁ、という素朴な疑問もある。

◆ パフォーマンス面
 本作の面白さ、凄さ、ユニークさは、アーリヤ役のアッル・アルジュンに尽きる。ダンスやアクションも瞠目すべきだが、なんと言っても心理面の演技が優れている。友情のためには自分を犠牲にしてもかまわないという気持ちも真なら、友を裏切ってでもギータを手に入れたいという気持ちも真という、誠実と欺瞞が交錯した人物像をうまく(と言うより、ほとんど気味悪く)演じている。
 劇中では「ミスター・パーフェクト」の振りをしていたが、本作のアルジュンは本当にパーフェクトだ。
 (写真下:ソフトウェア・ガイになってしまったアッル・アルジュン。)

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 アルジュンにさえ注目していれば、あとはどうでもいいのだが、スッビ・レッディ役のアジャイは面白かった。アーリヤとスッビの絡みは奇妙に印象に残る一場面だ。

 ヒロイン、ギータ役のカージャル・アガルワールは、やはり面白味がない。容姿は可愛いのだが、どうもドラマにならないタイプの女優で、困る。【Magadheera】の成功のおかげでトップに躍り出、アシンやトリシャに続いてボリウッド進出か?というニュースもあるのだが、私的には「どうぞ、どうぞ」といった感じだ。(一応、スチルを載せておくが。)

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◆ テクニカル面
 デーヴィ・シュリー・プラサードの音楽はキャッチーだ。
 音楽シーンは凝ったハイレベルな作り。安易に海外ロケに流れずに、アイデアと技術(もちろん、アルジュンのダンスを含む)で勝負している点は好感が持てる。

◆ 結語
 【Arya-2】は、テルグの若い映画作家が従来のインド映画大気圏を突破しようとした力作だが、内蔵する装置が重すぎて、うまく軌道に乗れなかったような作品だ。今のところ客を集めているが、テルグの一般大衆が諸手を挙げて本作を受け入れているとはどうも考えにくい。ただ、面白いアイデアはたくさんあるので、日本のテルグ映画ウォッチャーなら、一度丹念に鑑賞する価値はあるだろう。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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