カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Leader】 (Telugu)

<<   作成日時 : 2010/02/24 01:00   >>

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 シェーカル・カンムラ監督のテルグ映画。
 本作は、シェーカル・カンムラの監督作品としては2007年の【Happy Days】以来ということで、超待望作の一つに数えられていた。
 もちろん、デビュー以来高い評価を維持している監督の新作というだけで話題になるには十分なのだが、監督が本作で取り上げたテーマが「政治」ということで、さらに話題が高まっていた。それまではどちらかというと私小説風のロマンス作品を作り、新世代の若者層の強い支持を集めている監督だけに、一体どんな「政治ドラマ」を作ったのか、注目される。
 加えて、本作はラナ(ラーマ・ナイードゥ)・ダグバーティが俳優デビューするというのも話題の一つだった。(彼は有名な映画プロデューサー、D.ラーマ・ナイードゥの孫で、‘Victory’ウェンカテーシュの甥っ子である。)

【Leader】 (2010 : Telugu)
物語・脚本・台詞・監督 : Sekhar Kammula
出演 : Rana Daggubati, Richa Gangopadhyay, Priya Anand, Kota Srinivasa Rao, Subbaraju, Suman, Suhasini, Harsha Vardhan, Tanikella Bharani, Ahuti Prasad, Rao Ramesh, Narsing Yadav, Udaya Bhanu
音楽 : Mickey J. Meyer
撮影 : Vijay C. Kumar
編集 : Marthand K. Venkatesh
制作 : M. Saravanan, M.S. Guhan, Aruna Guhan, Aparna Guhan

《あらすじ》
 アーンドラ・プラデーシュ州首相のサンジーワイヤ(Suman)が地雷テロの標的となり、重傷を負って入院する。一人息子のアルジュン・プラサド(Rana Daggubati)は急遽アメリカから帰国する。アルジュンはハーバード大学で博士号を取り、実業家としても成功している男だった。サンジーワイヤはアルジュンに、自分の後継として州首相になるようにとの遺志を伝えて、息を引きとる。
 サンジーワイヤ家は政治家の一族だった。兄のペッダイナー(Kota Srinivasa Rao)は新州首相も当家から出すために、甥のダナンジャイ(Subbaraju)を推していた。野心家のダナンジャイもやる気満々だった。だが、サンジーワイヤの妻(Suhasini)はアルジュンに父の遺志を継ぐよう促す。父の日記を読んだアルジュンも、政界に蔓延する腐敗を根絶するため、州首相候補に立つ決意をする。彼はアリー(Harsha Vardhan)という元不動産屋の男とラトナ・プラバ(Priya Anand)という駆け出しのジャーナリストを片腕に付ける。
 アルジュンは、実は父のサンジーワイヤ自身が巨額のブラックマネーを保有していた事実を知る。彼はその金を使って所属政党の州会議員たちを買収し、ダナンジャイを出し抜いて、首相候補指名を勝ち取り、そのまま州首相に当選する。
 州首相としてのアルジュンは、早速行政官のシャルマ(Tanikella Bharani)らに命じて、有力者のブラックマネー押収に当たらせる。その過程でアルジュンは何者かに銃で撃たれるが、それはダナンジャイの陰謀だった。内務大臣のポストに就いていたダナンジャイは辞職を余儀なくされる。
 だが、ブラックマネーの摘発が政治家周辺にも及んだため、州会議員たちがアルジュンから離反し、ダナンジャイを州首相に擁立する動きが起きる。苦境に立たされたアルジュンは、アルチャナ(Richa Gangopadhyay)という女性の存在に目を留める。
 アルチャナは有力政治家、ムニ・スワミ(Ahuti Prasad)の娘だった。ジャーナリストの彼女はレイプ殺人事件の容疑者ラームの告訴を求めていたが、ラームはムニ・スワミの政党の有力議員の息子だったため、もみ消されるところだった。それで彼女はアルジュンに協力を要請していたのである。
 ムニ・スワミは、アルジュンの政党と連立を組む党の党首で、非常に有力な政治家だった。アルジュンはムニ・スワミの支持を獲得するため、「ロマンス作戦」でアルチャナに接近し、ラームの件でも動く。二人は仲は急速に進展し、アルジュンはアルチャナにプロポーズする。
 ムニ・スワミはアルジュン支持を確約し、またもやダナンジャイは出し抜かれた形になる。だが、その過程で、アルジュンはムニ・スワミの要求を受け入れ、ラームを釈放せざるを得なくなる。また、ダナンジャイがアルチャナに、アルジュンのプロポーズはムニ・スワミの支持を得るためのドラマだと暴露したため、失望した彼女はアルジュンの許を去る。
 そんな時に、アルジュンの母が「政治家ではなく、リーダーになれ」という言葉を遺して他界する。また、レイプ殺人の被害者の父が、アルジュンの不正義を直訴しにやって来る。
 非を悟ったアルジュンは、シャルマらにブラックマネー押収の強化とラームの抹殺を指示し、州首相を辞職する。新たな選挙キャンペーンが始まるが、アルジュンは自ら真のリーダーとしての資格を問うため、大衆の中に入っていく、、、。

   *    *    *    *

 ダメ出しは決してしないが、やや残念な作品になってしまったかなと。
 映画作品としての出来を言うなら、脚本に不備があるように思う。
 ほとんどのレビューが等しく指摘しているとおり、前半と後半ではがらりと違っており、後半はだるい。前半はラーム・ゴーパール・ヴァルマー風の比較的緊張感のある政治ドラマだったのに、後半ではロマンス面(アルジュンとアルチャナの)に時間を割きすぎ、盛り上がりが沈んでしまった。ストーリー上必要なのではあるが、やや引き摺りすぎた感は否めない。
 私が劇場で観たのは上映時間が2時間50分と長いものだったが、それでもエピソードをいくつかカットしたようで、ストーリーのつながりが不自然な部分があった。
 また、肝心な場面、例えばアルジュンが州首相になるとか、局面が大きく展開する場面を描くのに、1つの音楽シーンで片付けてしまったのもいただけない。(これは、うまく行けば非常に効果的なのだが。)

 形の問題と退屈なのは我慢するとして、政治ドラマとしての内容面にも私的には疑問が残る。
 真の「リーダー」のモデルとして、やはりマハトマ・ガンディーを重ねているのだが、それは問題ないとしても、「結局、そこか」という物足りなさは感じた。
 また、本作では政治家のほとんどが悪で、片や一般大衆は無垢で善な者として描かれている。これが私の最も腑に落ちない点で、インドが民主主義国家である以上、政治家と市民は持ちつ持たれつの関係にあるわけで、片方が悪で他方が善という色分けはあり得ない。シェーカル・カンムラ監督の政治的な立場や支持政党は知らないが、本作を見る限り、貧者、弱者、マイノリティーにかなり強い共感を示している。庶民と共に歩めば政治家の腐敗を根絶できるという考え方は、かなり空想に近い「理想主義」だと思う。

 もっとも、本作も商業娯楽映画なのだから、現実離れした「理想」を見せるのも構わないのだが、これがまたラジニカントの【Sivaji】(07)やチランジーヴィの【Tagore】(03)ぐらいの荒唐無稽なフィクションになってくれれば、悪徳政治家をなぎ倒すヒーローを見て爽快な気分になれるし、メッセージとしても率直に庶民の胸に届く。だが、本作のようにリアルな仕立ての政治ドラマとなると、逆にこの理想的な政治家像というのが現実味をなくしているように思える。(現役の政治家は、【Tagore】のチランジーヴィを見て怖いと思うかもしれないが、本作のアルジュンを見てどう思うだろうか?)

 2007年に起きた2つの事件、「アーイシャ・レイプ殺人事件」と「ルンビニ・パーク爆弾テロ」が映画のストーリーにうまく組み込まれている。これは評価できる。(他にも実際の事件が取り入れられているようだ。)

◆ パフォーマンス面
 アルジュン・プラサドを演じたラナ・ダグバーティは、デビューとはいえ、理想に邁進するリーダーを好演している。
 この人は声が良く、落ち着いた演技もでき、期待の新人と言えるだろう。ただ、視線は鋭いのだが、日頃から眼鏡を着用しているのか、目の表情が豊かでないように思えた。これはインド映画のヒーローとしてはマイナスだろう。
 (写真トップ:左端がRana Daggubati。どうも雰囲気がシェーカル・カンムラ監督自身に似ているような気がするのだが。)

 ヒロインは2人で、どちらも非常に魅力的な女優なのだが、映画の中では気の毒な使われ方だった。
 まず、ラトナ・プラバを演じたプリヤ・アーナンであるが、本作での位置付けが中途半端で、結局はコメディー的、息抜き的な役割に終わっていた。無駄遣いだ。
 この人はタミル女優で、「ポスト・トリシャ」候補とも見なされているのだが(ああ、トリシャも「ポスト」が云々される時代になったか)、まだ当たり作はない。この【Leader】でのパフォーマンスも彼女を押し上げるとは思われず、ブレイクはひとまずお預けだろう。注目しているだけに、残念だ。

 他方、アルチャナ役のRicha Gangopadhyay(発音が分かりません!)はもっと良い役だったが、それでもオチが付かずに終わっていた。(この辺、監督にはもう少し頑張ってストーリーを作ってほしかったのだが。)
 まるでプリヤンカ・チョープラの普及版といった感じのリチャだが、2007年にアメリカ国内でのミス・インディアに選ばれ、たぶん本作が映画デビューだろう。快活でキュートな彼女にはきっとオファーが集まるに違いない。
 (写真下:左がPriya Anand、右がRicha Gangopadhyay。)

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 腹の中に毒ガスが溜まっていそうな政治家を演じた男たち、コタ、スッバラージュ、アーフティ・プラサド、ラオ・ラメーシュはOK。スマンとタニケッラ・バーラニはニート。ハルシャ・ヴァルダンも印象的。
 (写真下:Kota Srinivasa RaoとSubbaraju。)

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 もう一人忘れてはならないのは、やはりこのお方、スハシニさんだ。

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◆ テクニカル面
 ミッキー・J・マイヤーの音楽は、後半、【Happy Days】みたいに甘くなりすぎた曲はあったが、相変わらずフレッシュで良い。
 Wikipediaによると、「テランガナ・州独立騒動」に関連して、問題になるのを嫌った監督が音楽シーンの1つを撮り直し、テランガナ地方ではその改訂版を上映しているらしい。(私が観たのはたぶんオリジナル版だろう。)

◆ 結語
 【Leader】は、シェーカル・カンムラ監督の理想主義が空回りしたようにも思える作品だが、その理想そのものは美しい。南インド娯楽映画の中では、「政治腐敗」の問題に対してユニークなアプローチをしている作品なので、一見の価値はあると思う。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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