カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Suryakaanti】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/02/05 22:54   >>

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 さすがに1ヶ月もインドを離れていた穴は大きく、注目していた映画をいくつか見逃してしまった。例えばカンナダ映画の【Kallara Santhe】と【Shishira】がそうなのだが、前者は女性ながら【Slum Bala】(08)という暗黒街物でデビューしたSumana Kittur監督の第2作目、後者はまずまずの出来のサスペンス物だと聞いている。加えて、前者ではHaripriya、後者ではMeghanaという、新進カンナダ女優が出演しているというのも魅力だった。

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 さて、今回紹介する【Suryakaanti】も楽しみにしていた1本で、公開が遅れたせいで見逃さずに済んだ。
 話題点は【Aa Dinagalu】(07)でデビューしたK・M・チャイタニヤ監督の第2作目ということだ。
 【Aa Dinagalu】は大騒ぎするほどの傑作というわけではないのだが、バンガロールの暗黒街をユニークな視点で描いた佳作として、批評的にも興行的にも成功した。私も、血みどろのバイオレンス映画の連発にうんざりしていた中に、やっと血の通ったギャング映画が出たかと、大いに慰めとなった。
 主役には【Aa Dinagalu】と同じチェータンが再登場。ヒロインにはレジナというほぼ新人女優が使われているが、彼女のカンナダ・デビューも注目点だった。
 (写真トップはChetanとRegina。)

【Suryakaanti】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞 : K.Y. Narayana Swamy
監督 : K.M. Chaithanya
出演 : Chetan, Regina, Ganesh Yadav, Ramakrishna, Nasser, Kishori Ballal, Yenagi Nataraj, Asif
音楽 : Illayaraja
撮影 : H.C. Venu
編集 : P. Haridoss
制作 : M. Vasu, B.N. Sujatha

《あらすじ》
 ローヒト(Chetan)はプロの殺し屋。孤児だった彼はマフィアのドン、スターリン(Ganesh Yadav)に育てられ、以来、彼の下で仕事をしていた。
 同じく孤児のスーリヤ(Chetanの二役)は、非常に聡明だったため、バンガロールの大企業家、アッパ・サヘブ(Ramakrishna)に養育されていた。彼はアメリカの大学で経営学を学び、今まさにバンガロールに帰って来るところだった。
 折りしも、スターリンから殺しの指令を受けたローヒトは、ウズベキスタンからバンガロールの空港に降り立つ。ところが、空港でスーリヤを迎えに来たアッパ・サヘブのスタッフが、瓜二つのローヒトをスーリヤと間違え、車で連れて行く。遅れて到着ロビーに出たスーリヤは、スターリンに敵対するマフィアの一味によって爆死させられてしまう。この事件は、マフィアのローヒトの死亡としてテレビで報道され、スターリンもローヒト自身もそのニュースを目にする。
 ローヒトをスーリヤと思い込んだアッパ・サヘブは、彼を会社に連れて行き、重役たちに紹介する。そして、彼を新CEOに据える意向を発表する。ローヒトは行き掛かり上、スーリヤのふりをすることにする。
 アッパは娘のカーンティ(Regina)をスーリヤと結婚させるつもりだったが、それを嫌がったカーンティは父の家を出、ベルガウムにいる祖父、マーランナ・バハドゥル(Nasser)の許に転がり込む。困ったアッパは、スーリヤ(ローヒト)に娘をバンガロールに連れて帰るよう命じる。
 ベルガウムで初めてカーンティを見たローヒトは、たちまちに彼女に惚れてしまう。最初はスーリヤ(ローヒト)と距離を置いていたカーンティも、彼がレスリングの試合で祖父マーランナの面目を保ってくれたことから、彼に好意を寄せるようになる。
 マーランナは地元に製綿工場を持っていたが、所有権の問題から立ち退きを要求されていた。その解決には3000万ルピー必要だったが、彼は過去の確執から息子のアッパには相談できないでいた。それを知ったローヒトは、ゴアにあるスターリンの部下が経営するカジノに行き、大金を強奪して来て、マーランナの問題を解決する。
 ところで、ローヒトが死亡したため保留になっていた殺しの依頼が再びスターリン宛てに来ていた。その標的とは、他ならぬ大企業家アッパ・サヘブの娘、カーンティだった。
 ゴアの一件でローヒトが生きていることを知ったスターリンは、彼に会うためと、カーンティを処分するために、ベルガウムにやって来る。スターリンに会って、カーンティが暗殺の標的になっていることを知ったローヒトは、彼女を殺さないよう懇願する。スターリンはローヒトの願いを聞き入れ、その場を立ち去る。
 もはや自分の正体を秘すべきでないと悟ったローヒトは、カーンティに真実を告げる。だがその時、彼女はスターリンの送ったスナイパーに撃たれてしまう。ローヒトはカーンティを病院に運び込み、スターリンとその一味を一掃するため、ゴアに向かう、、、。

   *    *    *    *

 【Aa Dinagalu】がドラマ性の強いシリアスなタッチの作品であったのに対して、【Suryakaanti】ではがらりと趣を変えて、娯楽性の強いアクション物になるだろう、とチャイタニヤ監督自身が事前に予告していた割には、【Aa Dinagalu】とあまり変わらないムードの作品であるように私には見えた。確かに、ジャンルに入れるとするとアクション物になると思うが、ロマンス色の強い落ち着いたドラマだった。

 【Aa Dinagalu】もこの【Suryakaanti】も、扱っているテーマは「転向」、「改心」といったことだろう。
 【Aa Dinagalu】は恋人に絡むトラブルから暗黒街に踏み込んでしまった青年が悔い改めるという物語だったし、【Suryakaanti】はマフィアに育てられた孤児が堅気の人間に生まれ変わるというものだ。どちらも愛は暴力より強しということがメッセージとしてある。
 本作の場合、日陰の道を歩むローヒトが、自分の代わりに死んでいったスーリヤになる、、、それもふりをするだけでなく、カーンティに対する愛情ゆえ、本当の意味でスーリヤとして生まれ変わる、という点がミソなのだろう。ちなみに、タイトルの「Suryakaanti」はスーリヤとカーンティの名前を合わせたものだが、普通名詞として「太陽光線」という意味になる。そのとおり、ローヒトの心の中にも、観ている観客の胸の中にも、一条の光が差し込むような結末だった。
 上のあらすじをよんで分かるとおり、ストーリーとしてはかなり陳腐なのだが、作者の言いたいことを拾っていくと、けっこう気の利いたドラマとなっているのが分かる。

 上にも書いたとおり、アクション・ロマンスの総合娯楽映画の体裁を取っていながら、アクション・シーンも音楽シーンも控え目な作りで、同ジャンルのテルグ映画のような力ずくとも言えるスピーディーな展開もない。むしろ、テンポとしては遅すぎるぐらいで、しっかり固定したカメラの前で俳優たちが間を作りながらセリフを喋る、といった演出となっている。
 それに輪を掛けるかのように、イライヤラージャーの音楽が近ごろ主流の電子系のものではなく、アクション・シーンのバックでさえオーケストラでパンパカくるものだから、味わいはかなりレトロ。80年代の作品かとも思えるほどだ。
 おかげさまで、刺激の乏しい娯楽映画になってしまっているのだが、近ごろのアクション映画のトレンドとは違った道を歩もうとするチャイタニヤ監督の独自性は評価したい。

◆ パフォーマンス面
 主役のチェータンは、一応、一人二役という設定なのだが、スーリヤの役はちらっとしか画面に出て来ないので、実質的にはローヒトの一役。しかし、殺し屋から堅気の人間に移り変わっていく様はまずまず演じられていたと思う。
 【Aa Dinagalu】以来、出演作が待たれる俳優となったチェータンだが、その後出た【Birugaali】(09)はフロップに終わっている。よって、本作が仕切り直しとなるのだが、筋肉は鍛えているものの、小柄なので、アクション俳優としては苦しいものを感じた。
 ちなみに彼はアメリカ帰りで、カンナダ語のアクセントがちょっとおかしいらしい。

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 カーンティ役のレジナは、夢に出てくるほどの見事なパフォーマンスでもなかったが、表情の作り方は可愛らしく、ヒロインとしての務めは全うしていた。
 ところで、私はこの人のことをてっきりカンナダ娘だと思っていたのだが、調べて見ると、チェンナイ出身のクリスチャンだということが分かった(本名はRegina Cassandraらしい)。まだ20歳になっていない若いお方だが、4歳から芸能活動を始め、2本ほどタミル映画に出ているようだ(こちらの記事)。
 南インドでは好まれそうなタイプなので、世代交代期にあるタミル映画界などでいくつかオファーが来るだろう。

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◆ テクニカル面
 撮影はまずまず。
 ラヴィ・ヴァルマのアクションも悪くないのだが、平均的なレベル。
 イライヤラージャーの音楽は良い。音楽シーンは、チェータンもレジナもダンスらしいダンスはしていないのだが、絵的にはきれいにまとめている。
 1曲目の‘Swalpa Soundu Jaasthi Maadu’という曲はウズベキスタンで撮られたものだが、可愛らしいウズベク娘にすっかり魅せられてしまった(特にこの娘)。

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 YouTubeはこちら。
 http://www.youtube.com/watch?v=Awr6_EEpib0

◆ 結語
 【Suryakaanti】は、生真面目に作られたきれいなギャング映画なのであるが、この種の作品にもっとも必要な「勢い」を欠くため、多くの観客を集めるのは難しいだろう。私は好きだが、特にオススメはしない。

・満足度 : 2.5 / 5
 

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