カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Just Maath Maathalli】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/02/15 03:31   >>

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 スディープ監督・主演のカンナダ映画。
 先月公開されたラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の【Rann】が大当たりし、俳優としての力量が再認識されたスディープだが、監督としても【My Autograph】(06)、【No.73 Shanthi Nivasa】(07)、【Veera Madakari】(09)を作り、うち【My Autograph】と【Veera Madakari】はヒットと、まずまずの仕事をしている。
 物足りないことに、前3作はすべてリメイク作品だったが、本作ではスディープ自身の手によるオリジナル・ストーリーと脚本で、一段と気合いが入っているようだ。

 ところで、本作は撮影段階から「ラミャ騒動」とも言うべき出来事で話題になっていた。主演女優のラミャが、音楽シーンの撮影が納得できず撮り直しを要求したところ、ダンス監督のハルシャに流されたため、彼とそのダンス・チーム、監督のスディープにまで暴言を吐いて、結果、ハルシャとダンス監督組合は今後一切ラミャとは仕事をしないという決定を下した、というものだ(こちらの記事)。結局これは、ラミャが公式に謝罪するという形で収まり(こちら)、こうして上映まで漕ぎ着けたわけだが、作品の出来に対する影響はなかったか、気になるところだ。

【Just Maath Maathalli】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・監督 : Sudeep
出演 : Sudeep, Ramya, Rajesh, Keerthi Gowda, Arun Sagar, Avinash, Yethiraj
音楽 : Raghu Dixit
撮影 : Sri Venkat
制作 : R. Shankar

《あらすじ》
 ポップ歌手のシッドゥ(Sudeep)は、タヌーという女性を探し出すために、バンガロールからシンガポールへ飛ぶところだった。彼は機内でアディ(Rajesh)というシンガポール在住のビジネスマンと言葉を交わす。映画のシナリオ・ライターでもあるアディは、シッドゥとタヌーのラブ・ストーリーに関心を持ち、彼から詳細を聞き出す。
 ・・・人気歌手のシッドゥは常に女性ファンに取り囲まれていたが、彼女らと遊び感覚で付き合っては、捨てていた。ここにディヴィヤ(Keerthi Gowda)という熱烈なファンが登場し、シッドゥにプロポーズする。しかし、彼に強く拒否され、彼女は自殺してしまう。この一件はシッドゥに強いショックを与えた。愛の観念を見失った彼は、どこへ行く宛てもなく、アパートを出る。
 シッドゥはとある田舎町をさまよう。そして、そこで出会ったのがタヌー(Ramya)だった。駅での奇妙な出来事の後、二人は親しくなる。タヌーは列車に乗ってクールグの実家に帰るが、シッドゥは彼女から金の腕輪を預かっていたことを思い出し、彼女の後を追う。二人は再会し、タヌーはシッドゥを家に連れて行く。
 翌日はちょうどタヌーの誕生日だったため、シッドゥは彼女の家に留まることにする。しかし夜中になって、過去の記憶に苛まれた彼は、こっそりと家を抜け出し、バススタンドへ行く。翌朝、タヌーはバススタンドで彼を見つけ、プロポーズする。しかし、気持ちの整理が付かないシッドゥは、「ノー」と言うしかなかった。
 バンガロールに戻ったシッドゥは、自分がタヌーを真剣に愛しているのに気付く。友人のラーガヴ(Arun Sagar)は、ディヴィヤの二の舞にならぬよう、彼にタヌーのプロポーズを受け入れるよう諭す。
 シッドゥは再びクールグに赴くが、タヌーは父(Avinash)と共にシンガポールに引っ越した後だった。・・・
 この話を聞いたアディは、タヌー探しの協力を申し出、シッドゥをシンガポールの自宅に滞在させる。シッドゥは様々な方法で彼女を探してみるが、すべて無駄に終わる。
 ところで、アディはナンディニというフィアンセがおり、シッドゥも結婚式に招待されていた。いよいよその式の日となるが、式場に入ったシッドゥは驚愕する。そのナンディニという女性は他ならぬタヌーだったからである。彼はこっそりと式場を後にする。不審に思ったアディはシッドゥの携帯に電話を入れるが、シッドゥは彼を祝福し、「もうタヌーを見つけたので、インドに戻る。私のラブ・ストーリーは誰にも話さないでほしい」とだけ告げ、空港へ向かう。

   *    *    *    *

 非常に惜しい作品だ。スディープはみすみす傑作を一つ逃したと言ってもいいだろう。

 本作の問題点ははっきりしていて、テンポが遅すぎることと、クライマックスが弱く、結局、言いたいことが分かりやすく表現されていないということだ。
 脚本は基本的に良くできており、回想シーンの組み方も上手い。俳優の演技、演出、カメラワーク、編集、音楽など、どれも通常のカンナダ映画より一段上の水準を行くもので、スディープ監督の映画表現に対する認識の高さと執念は感じ取れた。ただ、この沈黙の間をしっかり取ったセリフの入れ方に我慢できるインド人は、まだまだ少数派に属するだろう(外国のシリアスなロマンス映画には珍しくないテンポなのだが)。

 テンポの遅さはなんとか我慢できるとして、クライマックスの不発がそれまでの高水準の映画的ドラマをおじゃんにしてしまっているように思える。
 テーマとしては、そもそも異性を愛するということを知らず、また、愛の感覚が混乱してしまった男が、真面目に人を愛せるようになったことを確信として得るという、今どきのインド映画のトレンドとも言えるもので、それ自体は問題ない。それに対して、本作はハッピーエンドという形は取らず、シッドゥ(Sudeep)が失恋した形でぷっつり終わっている。それも絶対にダメだとは言わないが、このテーマに即して、もう一つ突っ込んだ形でシッドゥの後日談か何かを入れてもらわないと、泣くに泣けないし、晴れ晴れとした鑑賞後感も残らないのである。観客はおそらく、タヌー(Ramya)は幸せになるだろう、シッドゥも別の形で幸福を見出すだろうと、推測しながら観終わるわけだが、ここはもっと具体的に泣くか笑うかさせてもらわないと、幅広い観客の支持は得にくいと思う。
 だからと言って、従来のインド映画によくあるように、花嫁が結婚式場から抜け出すとか、花婿の方が「本当に愛し合っている者同士が結ばれるべきだ」と言って譲ったりする展開も本作の場合御法度なのだが、ちょっとしたアイデアで別のエンディングは用意できたはずだ。(この終わり方に「ラミャ騒動」が影響しているかどうかは定かでないが。)

◆ パフォーマンス面
 スディープの演技は、彼の得意とする「間で語る」というもの。退屈な感じは否めないが、スディープらしさは出ていた。
 彼は、売れっ子ポップ歌手という設定で、コンサート・シーンも1つ用意されていたが、女性ファンが騒ぐようなカッコよさには見えなかった。
 飛行機の中でのアディとの会話はOK。アディ役のラジェシュはややオーバーアクティングが気にかかるところ。

 しかし、スディープ以上に光っていたのがタヌー役のラミャだ。さすがに騒動を起こすだけあって、やるべきところはきちんとやっていた模様。
 【Mussanjemaatu】(08)でも感じたことだが、スディープとの相性も良い。
 セリフ回しも良かったのだが、これはDeepuさんによる吹き替えらしい。
 (写真下:RamyaとSudeep。駅での印象的なシーンより。)

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 もう一人、意外な驚きは、シッドゥの友人ラーガヴ役をやったアルン・サーガルだ。
 アルン・サーガルと言っても誰も知らないと思うが、キモいコメディー役で時おり見かける人で、それが本作ではまるで別人のようにシリアスな役を、しかも上手く演じていた。(彼については、本職は映画の美術監督だとか、テレビドラマの俳優だとかいう情報があり、よく分からない。)

◆ テクニカル面
 音楽は、【Psycho】(08)で映画音楽デビューしたラグ・ディークシト。【Psycho】の音楽も素晴らしかったが、本作もフレッシュな曲を提供し、言われないとカンナダ映画とは気付かないほどだ。
 なお、ラグはレコーディング監督の役で本作にちらっと出演もしている。

 撮影はSri Venkatという人で、【No.73 Shanthi Nivasa】でもそうだったが、かなり凝った美しい映像を見せてくれている。
 回想シーンのロケ地はSakleshpurとCoorgが使われた模様(シッドゥとタヌーが交流する鉄道駅はSakleshpur駅)。
 音楽シーンの1つで、回想シーンであることを表現するために、スディープだけが順転で、バックの人々は逆転のスローモーションになっている、という技法が使われている。試みとして面白い。

◆ 結語
 以上、本作は傑作になる可能性を孕みながらも、エンディングのせいで、なんとも味気のない作品になってしまったが、スディープが従来のカンナダ映画を乗り越えようとした意図は評価できる。カンナダ・ウォッチャーなら観ておくべきだ。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Eega】 (Telugu)
 S・S・ラージャマウリ監督、スディープ主演のテルグ映画。  いやぁ、長い間南インド映画とお付き合いしてきたが、「スディープ主演のテルグ映画」が、しかもトリウッドを代表するヒットメーカー、ラージャマウリ監督の作品で観られるとは、夢にも思わなかった。  実は、周知のとおり、「Eega」は昆虫の「ハエ」のことで、本作の主役は「ハエ」になるのだが、「ハエ主演」と書くのも変なので、ここでは「スディープ主演」とした。 ...続きを見る
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2012/07/13 21:39

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