カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Aaptha Rakshaka】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/03/12 03:10   >>

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 2004年公開のP.ヴァース監督、ヴィシュヌヴァルダン主演のカンナダ映画【Aaptha Mithra】は記録的大ヒットとなり、タミル語版リメイク【Chandramukhi】(05)がラジニカーント主演で作られ、同じくブロックバスターとなった、というのは有名な話だが、これはそもそもマラヤーラム映画【Manichitrathazhu】(93)がオリジナルで、それをプリヤダルシャン監督も【Bhool Bhulaiyaa】(07)としてヒンディー語版にリメイクした、というのもわざわざ書く必要がないほどインド映画ファンにはよく知られたことだ(ベンガリー版もあるらしい)。
 ところで、P.ヴァース監督は早くから【Aaptha Mithra】/【Chandramukhi】の続編の制作に意欲を見せており、それが遂にこのカンナダ映画【Aaptha Rakshaka】として結実した。

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 主演は【Aaptha Mithra】と同じくヴィシュヌヴァルダン。ヴィシュヌ翁の出演200本目の映画であると同時に「遺作」ともなり、二重の意味で記憶されるべき作品となってしまった。まこと、本作の撮影とアフレコを終えた後に、昨年の12月30日に急逝してしまった氏には、心からの冥福をお祈りする。
 周知のとおり、【Aaptha Mithra】の時にはヒロインのサウンダリヤが事故死しており、「ナーガワッリの祟りか?」などと囁かれたものだが、今回もまた不幸が起きるとは! 実は、撮影の間にも、乗馬シーンでヴィシュヌヴァルダンが落馬して入院するとか、ヒロインのヴィマラ・ラーマンや脇役のアヴィナーシュ、ラメーシュ・バットが体調を崩すなど、良からぬ出来事が続いていた。
 だが、そんな不吉なイメージとは裏腹に、映画は豪快にヒットし、またまた興行記録を塗り替えそうだ。

 続編とは言っても、2作はストーリー的に太い繋がりがあるわけではない。【Aaptha Mithra】では、ナーガワッリの霊が調伏され、ラメーシュとガンガーの夫婦が屋敷を出て引っ越すところで終わっていたが、【Aaptha Rakshaka】はその廃屋となった屋敷からナーガワッリの肖像画が風に乗って飛び出し、空を漂う場面から始まる。

【Aaptha Rakshaka】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・監督 : P. Vasu
出演 : Vishnuvardhan, Avinash, Vimala Raman, Lakshmi Gopalaswamy, Bhavana, Sandhya, Srinivasa Murthy, Vinaya Prasad, Vineeth, Komal Kumar, Ramesh Bhat, Rajesh
音楽 : Guru Kiran
撮影 : P.K.H. Doss
編集 : Suresh Urs
制作 : Krishna Kumar

《あらすじ》
 廃屋となった旧ラメーシュ宅の一室から、非業の死を遂げた踊り子、ナーガワッリの肖像画が飛び出し、風に乗って空を舞い、ある画家に拾われる。画家の妻はそれを売ろうと提案するが、夫は拒否する。だが翌朝、画家は謎の死を遂げる。その肖像画はある古典ダンス競技会の賞品となり、優勝したサラスワティ(Lakshmi Gopalaswamy)と夫のペアがそれを獲得する。
 それから5年後、サラスワティの妹、ガウリ(Sandhya)の婚約式が行われようとしていた。ガウリは大学院生で、80歳以上の長寿を保つ老人の食生活を研究し、論文にまとめているところだった。実は、この家にはサラスワティ、ギータ、ガウリの三姉妹がいたが、サラスワティは精神に異常を来たしていたため、両親(Srinivasa Murthy & Vinaya Prasad)はその存在を隠していた。また、次女のギータ(Bhavana)は、その精神異常の姉のせいで失恋した経緯があり、結婚することには消極的だった。
 婚約式は不幸な形でお流れとなった。婚約者がガウリとは結婚できないと言って、逃げ出したのである。また、ガウリの友達も巨大なコブラを目撃し、気絶する。翌日、ヘビ使いを雇ってコブラを捜索するが、見つからない。それどころか、そのヘビ使い自身も変死してしまう。
 困惑した家族は、高名な祈祷師であるラーマチャンドラ・アーチャーリヤ(Avinash)を屋敷に呼ぶ。ラーマチャンドラは、屋敷の一室にあるナーガワッリの肖像画を見つけるなり、一連の奇怪な出来事はこの絵が原因だと言う。そして、以前ナーガワッリの怨霊調伏の件で協同した精神科医のヴィジャイ(Vishnuvardhan)を呼び寄せる。
 屋敷に泊り込んだヴィジャイは、夜中に奇妙な物音を聞く。それを頼りに、彼は離れに隔離されている女の存在に気付き、それがこの家の長女、サラスワティであることを突き止める。サラスワティは、ダンス競技会で賞を獲得した直後に夫が交通事故死したため、精神に異常を来たしていたのである。
 ラーマチャンドラはナーガワッリの霊がサラスワティに憑依していると断言する。そして、彼女にお祓いを施すため、家族全員と共に寺院へ行く。しかし、一同が寺院の敷居をまたいだとたん、家畜が怯えて大騒ぎし始める。この怪現象を見たラーマチャンドラは、ナーガワッリがサラスワティに取り憑いていることを確信する。
 しかし、ヴィジャイはこの見解には懐疑的だった。彼は図書館へ行き、100年ほど前にいたマハラジャ、ヴィジャヤ・ラージェンドラ・バハドゥルに関する史書を繙く。
 ・・・ヴィジャヤ・ラージェンドラ・バハドゥル(Vishnuvardhanの二役)は兄を殺してマハラジャの地位を簒奪すると、そのパレスにいたナーガワッリ(Vimala Raman)という美しい踊り子を見初め、寵愛する。だが、彼女にはラーマナート(Vineeth)という舞踊家の恋人がいたため、ラージェンドラ・バハドゥルは嫉妬に燃え、ラーマナートの首を刎ねた上、ナーガワッリをも焼き殺してしまう。死に際に彼女は、マハラジャに対する復讐を誓う。以来、ラージェンドラ・バハドゥルはナーガワッリのこの言葉に怯えるようになる。また、民衆が残酷なマハラジャを殺そうと蜂起したため、ラージェンドラ・バハドゥルは逃亡し、それ以後、彼の行方を知る者はいなかった。・・・
 ヴィジャイは図書館で、ある人物がこの本を数日前に借り、その際「ナーガワッリ」とテルグ語で署名していることを知る。彼はまたヴィジャヤ・ラージェンドラ・バハドゥルのホロスコープを調べ、この男が半不死身の身体の持ち主であることを知る。
 ナーガワッリを殺したマハラジャが今も生きていることを確信したヴィジャイは、彼を捜索し、ついに丘の上の廃墟に生き長らえる125歳のラージェンドラ・バハドゥル(Vishnuvardhan)を発見する。ここで二人の間で格闘が始まるが、凄まじいラージェンドラ・バハドゥルの妖力にヴィジャイは倒されそうになる。だが、ラーマチャンドラからもらった「オーム」のペンダントのおかげで、危機を脱する。
 一方、ラーマチャンドラにプージャを施されたサラスワティは、自分のことを「ナーガワッリ・サラスワティだ」と名乗る。これを聞いたラーマチャンドラは、いよいよ彼女にナーガワッリの霊が憑いていることを確信する。
 しかし、ヴィジャイはそれに反論し、サラスワティを催眠療法に掛ける。その結果、彼女が精神病になったのは夫の事故死が惹き起こすショックが原因であり、自分のことを「ナーガワッリ・サラスワティ」だと名乗ったのは、単にダンスの師匠からその称号をもらっていたためだと解明する。そして、この治療の結果、サラスワティはすっかり正常に戻る。
 サラスワティはナーガワッリではなかった。では、誰にナーガワッリの霊が憑依しているのか。ヴィジャイはその問い明快な回答を与える、、、。

   *    *    *    *

 映画は理屈抜きに面白く、2時間20分、フルに楽しめるものだった。
 それで、ほとんど文句はないのだが、同時に、複雑な気持ち、痛々しい気持ちにも捉われてしまった。

◇ 私が痛々しさを感じた理由・その1
 もう、ヴィシュヌ翁が予想以上に衰えていて、場面によっては哀れで目頭が熱くなったのである。
 撮影時は60歳のはずで、まだまだ元気な年齢なのだが、彼の場合、ここ2,3年で急速に老化が進行したのか、昨年の【Bellary Naga】でも危なっかしいものを感じた。病気のせい、または落馬の影響もあるかもしれない。とにかく、歩行さえぎこちなくなっており、にもかかわらず、アクションとダンス・シーンはあるのである。
 ラジニカーントはこの【Aaptha Rakshaka】のヴィシュヌヴァルダンを見て涙したと報道されているが、そりゃあ、これを見て涙を流さないインド映画関係者・インド映画ファンはいないだろう。

◇ 私が痛々しさを感じた理由・その2
 またまたタミルのスーパースターさんに栄誉を与える機会を作ってしまったか!
 前作の【Aaptha Mithra】は、そりゃあ、【Manichitrathazhu】という偉大なオリジナルがあったとはいえ、【Chandramukhi】、【Bhool Bhulaiyaa】とリメイクの連鎖を生み出すきっかけとなったインド映画史上の重要な作品である。にもかかわらず、カンナダ人以外からほとんど無視され、あたかもそれが【Chandramukhi】の習作であるかの如く扱われて、憤った私は【Bhool Bhulaiyaa】評の中で半ば怨念を込めて怒りをぶつけさせていただいた。
 ところが、この【Aaptha Rakshaka】は、一見してラジニカーントでリメイクしてくれと言わんばかりの内容なのである。今のところP.ヴァースもラジニも「リメイクはやりたいけど、やるかどうかは分からんよ」みたいな言い方に留めているが、作りさえすればブロックバスター確実の映画、作らんわけがないでしょう。
 「ああ、ヴィシュヌ翁の命がけのパフォーマンスが、またもやラジニのお膳立てに使われるのか」と思うと、心臓が破裂するほど悲しくなった。

 と、ここまで書いた時点で、なんと【Aaptha Rakshaka】はウェンカテーシュ主演でテルグ映画としてリメイクされるというニュースが入って来た!(こちら参照。)
 ぬぬぬ、‘ヴィクトリー’の野郎、心臓が裂けんばかりの私の感傷の邪魔をしおって。
 ま、誰でもいい、とにかく【Chandramukhi】パート2の冒頭には、「故ヴィシュヌヴァルダンに捧ぐ」ぐらいの献辞は入れてほしい。

◇ 私が痛々しさを感じた理由・その3
 ナーガワッリの執念。
 まぁ、自分自身と恋人が殺され、ヴィジャヤ・ラージェンドラ・バハドゥル憎しという気持ちは分からぬでもないが、二度も化けて出、本作のクライマックスで見せたマハラジャを睨み付ける恐ろしい形相と、本懐を遂げた後の狂おしい歓喜の表現には、「そこまでやらんでもなぁ」と、痛々しくなったのである。
 いやぁ、ヘビ娘の執念には恐ろしいものがある。

 ところで、【Manichitrathazhu】シリーズの4作は、「解離性同一性障害」に罹患したヒロインを治療する話なのか、踊り子の怨霊を退治する話なのか、作品によってどちらかに分かれると思うのだが、この【Aaptha Rakshaka】を見る限り、P.ヴァース監督の【Aaptha Mithra】と【Chandramukhi】は「お化け退治」の話だったことが分かる。
 ナーガワッリの敵であるラージェンドラ・バハドゥルが今なお生きていた、という発想が本作の核で、それで彼女の霊が鎮められず、再び活発化し、本作のクライマックスでいよいよ直接対決することになる。
 アイデアは面白いのだが、P.ヴァース監督らしく(と言っては失礼か)、ヒネリやタネ明かしはやや緩い。クライマックスも面白いのだが、鮮やかさという点では【Aaptha Mithra】のほうがずっと良い。(もしリメイクを作るなら、このクライマックスは改良したほうがいいだろう。)

◆ パフォーマンス面
 ヴィシュヌヴァルダンの演技については何も言うまい。
 動かない体に鞭打って、それでも3相の役柄(精神科医ヴィジャイ、残酷なマハラジャ、125歳になったマハラジャ)をかくしゃくと演じており、それなりに決めているところがアッパレだ。まさに、ヒーロー俳優として大往生したと言えるだろう。

 もう一人のオジサマ、【Aaptha Mithra】でもラーマチャンドラ・アーチャーリヤを演じたアヴィナーシュも忘れてはならない。やはりこの強面は本シリーズに不可欠な薬味だ。
 (写真下:Vishnuvardhanと、珍しくセクシー・ショットのAvinash。)

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 この作品のゴージャスな雰囲気は、女優陣に負うところが大きい。
 カンナダ人は映画でダンスを愛でるという意識が希薄なのだが、作品が作品だけに、本作ではラクシュミ・ゴーパラスワミとヴィマラ・ラーマンの2人の古典ダンサー兼女優を起用し、ダンスシーンにも力を入れている。狙いはかなり当たっている。(それにしても、古典舞踊の振り付けからいきなり盆踊りに移行するところなどは、カンナダ映画らしかった。)
 両者とも、演技、ダンス、共に申し分なかったと思うが、特にナーガワッリ役のヴィマラ・ラーマンはお色気がむちむちと発散されていて、ますます好きになった。「ラ〜ラ〜」の歌に合わせて恋人のラーマナート(Vineeth)を誘惑するシーンは見ものだ。
 (写真下:Vimala RamanとVineeth。)

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 他に、タミル女優のサンディヤ、ベテラン・カンナダ女優のバーヴァナという、個性的な2人を使ったのも成功ポイント。【Manichitrathazhu】以来、このシリーズとは縁の深いヴィナヤ・プラサードの存在も大きい。
 (写真下:この家族の女たち。左よりBhavana、Vinaya Prasad、一人置いて、Sandhya。この中の誰かにナーガワッリの霊が憑依しているのだが・・・。)

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 ヴィニートについては、残念ながら、ヴィニート・ファンは本作を観ないほうがいいかもしれない。2,3分ほどのダンスシーンはあるのだが、馬に引き摺られ、首を切られるために出て来たようなものだ。(P.ヴァースは何度ヴィニートの首を刎ねれば気が済むのだろう?)

◆ テクニカル面
 グル・キランの音楽は、まずまずのコマーシャルな出来だったと思う。というより、「ラ〜ラ〜」の歌が何度も聴けて、うれしかった。

 仕方がないことかもしれないが、アクション・シーンは冴えていなかったし、不必要な場面もあった。
 グラフィックスはそんなに高い技術ではなかったが、漫画っぽくて面白かった。

◆ 結語
 カンナダ人にとって特別な意味を持つ作品として、爆発的なヒットを記録しているが、厳しい目で見れば、中程度の面白さだろう。ただ、展開にはダレるところがなく、こんなに気楽に楽しめる娯楽作品も近ごろ少なくなりつつあるので、一見の価値はある。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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