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この【Happy Husbands】はマラヤラム映画の今年のヒット作第1号となった作品らしい。ケーララ州では1月14日に公開されたのだが、バンガロールでは2月19日の公開。こちらでも上映4週目に突入するヒットとなったため、観に行くことにした。 始めに言っておくと、本作はオリジナルではなく、2002年のタミル映画のヒット作【Charlie Chaplin】の翻案である(映画冒頭にちゃんと断わり書きがあった)。ただし、この3組のカップルによるホーム・コメディーはインド人の好みにフィットしたらしく、まず2003年にテルグ語版リメイクとして【Pellam Oorelithe】が、続いて2005年にヒンディー語版の【No Entry】が作られた。どれも観ていないので断言できないが、あらすじやレビューを参照する限り、このマラヤラム語版【Happy Husbands】は【No Entry】に最も近いようだ。 マラヤラム映画産業といえば、どちらかと言うとリメイク・ネタ供給地で、リメイクするよりはされるほうが多いという認識がある。本作のように、タミル発、ボリウッド経由のネタがマラヤラム映画にリメイクされるというのは、珍しいケースじゃないだろうか。 (写真トップ:左より男はJayasurya、Jayaram、Indrajith、女はVandana、Bhavana、Samvrutha Sunil。) 【Happy Husbands】 (2010 : Malayalam) 脚本 : Krishna Poojappura 監督 : Saji Surendran 出演 : Jayaram, Indrajith, Jayasurya, Bhavana, Samvrutha Sunil, Reema Kallingal, Vandana, Suraj Venjaramood, Salim Kumar, Manianpillai Raju 音楽 : M. Jayachandran 撮影 : Anil Nair 編集 : Manoj 制作 : Milan Jaleel 《あらすじ》 雑誌社を経営するムグンダン(Jayaram)にはクリシュネードゥ(Bhavana)という妻がいた。ムグンダンは不倫とは無縁の堅物だったが、クリシュネードゥは夫を愛するあまり、絶えず彼の浮気を疑っていた。 この二人の友達にラーフル(Indrajith)とシュリヤー(Samvrutha Sunil)の夫婦がいた。ビジネスマンのラーフルは、妻の前では善き夫で通していたが、裏では何人ものガールフレンドといちゃついていた。しかし、シュリヤーはまったく夫を疑うことがなかった。 また、ムグンダンの家の離れにジョン(Jayasurya)という若者が居候していたが、彼はムグンダンの雑誌社のカメラマンだった。ジョンは結婚には特に関心を持っていなかったが、サリーナ(Vandana)という女性と知り合い、彼女との結婚を望むようになる。 ある時、遊び人のラーフルは、ムグンダンを悪の道に誘い込もうと、バー・ダンサーのダイアナ(Reema Kallingal)を彼に紹介し、誘惑させる。ムグンダンは最初のうちこそ拒絶するものの、次第次第に浮気心が芽生えてくる。 そしてある日、クリシュネードゥが外出した際に、ムグンダンはダイアナを家に呼び寄せ、ジョンの部屋に入れる。だが、そこへ忘れ物をしたクリシュネードゥが戻って来たため、慌てふためいたムグンダンは、ダイアナのことをジョンの妻だと紹介してしまう。クリシュネードゥはそれを信じ、二人を祝福する。 ジョンを言い訳のネタに使ってしまったことに責任を感じたムグンダンは、彼を連れてサリーナとその父(退役警官)に会い、縁談をまとめる。だが、その場所に売春容疑を掛けられたダイアナが現れたため、彼女の嫌疑を晴らすために、今度はムグンダンがダイアナの夫ということにされてしまう。 やがてジョンとサリーナの結婚式が行われるが、それにはダイアナも呼ばれており、なお悪いことに、サリーナと交友関係にあったクリシュネードゥも現れる。窮地に陥ったムグンダンは、心臓発作のふりをして、クリシュネードゥに病院まで運んでもらう。 病院でムグンダンは、医師のサティヤパラン(Salim Kumar)からマレーシアで転地療養するよう勧められ、クリシュネードゥと共に行く。だが、おかしなことに、宿泊したホテルにはジョンとサリーナ夫妻、ラーフルとシュリヤー夫妻、そしてダイアナまでもが愛人と共に宿泊していた。ここで大混乱が起きる。クリシュネードゥはジョンとダイアナが夫婦だと思い、サリーナはムグンダンとダイアナが夫婦だと思っていたからである。男3人はなんとかごまかそうとするが、結局、ウソがすべてバレてしまう。 男3人は妻たちの機嫌をとるため、友人のラージャッパン(Suraj Venjaramood)の策を実行するが、却って逆効果となる。いよいよ憤った3人の妻たちは、直談判するためにダイアナの家に押し掛ける。しかし、彼女たちは逆にダイアナに諭される。そこへ、3人の夫たちが帰依者の姿となって現れる、、、。 * * * * ふと抱いてしまった浮気心と、それをごまかすために咄嗟についたウソが雪だるま式に大きくなって、ハチャメチャな事態に陥るドタバタ・コメディーだった。私はマラヤラム語を一語も解さないので、セリフによる機微は掴めないのだが、それでもコメディー的状況と登場人物たちの表情だけで十分笑えた。 浮気心といっても、ムグンダン(Jayaram)の場合はちょっとした好奇心程度のもので、ダイアナ(Reema Kallingal)と肉体関係を持とうなどという大胆な意図はなく、むしろ彼女に対しては常に恐る恐る遠巻きに接しており、家庭崩壊を予測させるようなものはない。 ラーフル(Indrajith)はもっと悪い男なのだが、本来なら天罰が下ってもいいプレイボーイでも、映画ではインドラジットが演じることにより、その時点で客は笑ってしまい、このキャラクターに対して嫌悪感は抱かないだろう。 おかげさまで、浮気をネタにした物語でありながら、まったく危険性はなく、家族揃って笑えるコメディーになっていたと思う。それでいて、十分な妻/夫がいながら、裏切ったり、ウソをついたり、疑ったりしてはいかんという教訓が効果的に提示されていて、実にうまくまとめられた作品だった。こういうコメディーはインド人の最も好むものであり、いつの時代にインドのどこで作られてもウケるだろう。 とは言うものの、オリジナルが2002年の制作で、最新のボリウッド版【No Entry】からでさえ5年近く経っている古ネタ(?)を、なんで今ごろマラヤラム映画界が採り上げたのかは気にかかる。それは結局、ケーララの観客が今もこうした家族物・夫婦物の映画を愛し、映画産業界もその観客の嗜好に応えているということだろうか。 というのも、家族物・夫婦物というのはインド映画の主要モチーフの一つだとはいえ、実際には近ごろでは、ボリウッドでもタミル、テルグ、カンナダでもそれほど頻繁に作られてはおらず、印象に残るヒット作も少ない。それが(大雑把な観察だが)、どうもマラヤラム映画界では家族や夫婦のあるべき姿を描いた作品が今もコンスタントに作られ、ヒットしているようなのである。(傍証として、私がよく行くDVD屋のお兄さんがマラヤラム映画のオススメ新作として必ず挙げるのが【Innathe Chinthavishayam】、【Veruthe Oru Bharya】、【Bhagyadevatha】、【Kaana Kanmani】という、家族・夫婦の関係を通して社会問題を見ようという作品なのである。) 理由は分からないのだが、もしかして、モリウッドには実力ある中年男優の層が厚く、対して、ラブストーリーなどをやるのに適した若手男優が少ない(ひょっとして皆無?)という事情があるのかもしれないし、豪華なアクション物を作る予算が組みにくいのかもしれないし、もっと、そんなふうにケーララ人の意識を規定している社会的背景が何かあるのかもしれない。 なんであれ、こうした一連のマラヤラム映画を観ている限り、ケーララ州には既婚者しかおらんのか?と思ってしまうほどだが、そんな言い方をすると、カルナータカ州にはITエンジニアか田舎からバンガロールに出て来て暗黒街に迷い込んでしまうバカ者しかいないことになり、同じく、タミルナードゥ州にはマドゥライの毛むくじゃら男かチェンナイで酒ばかり飲んで女の尻を追い回している落ちこぼれ学生しかおらず、AP州にはハイダラーバードのクラブで踊ってるスマートガイかラヤラシーマでナタを振り回している乱暴者しかいないことになり、ちとまずいのである。(同じインド/インド人なのに、各映画産業によってフォーカスするテーマ、ジャンルに違いがあるというのは興味深いことだ。) ちなみに、監督のSaji Surendranは本作が2作目で、デビュー作の【Ivar Vivahitharayal】(09)も結婚・夫婦関係をテーマにした作品のようだ。彼はテレビドラマの監督から映画界入りした人のようだが、テーマの採り方はテレビドラマ的かもしれない。 ◆ パフォーマンス面 主要登場人物を演じた役者がそれぞれ芸達者だったので、ドタバタな展開もスムーズに見られた。 まず、ムグンダン役のジャヤラームは、困惑や言い訳の表情が上手く、可愛いとさえ言える。羽目は外しかけたものの、このキャラクターは理想の「亭主」像として、インドの妻たちに愛されるのではないだろうか。 ラーフル役のインドラジットは、この人がプレイボーイを演じても全然プレイボーイに見えないところが愉快だった(ボリウッド版ではサルマン・カーンが演じていた役に当たるのだが)。ただ、いつになく腹回りは締まっていたようで、この役をやるためにジムに通うぐらいの努力はしたかもしれない。 ジョン役のジャヤスーリヤは、好人物だが脳ミソの4分の1ぐらいは道に落としてしまったかのような、どこか間抜けなキャラクターが笑えた。(これは「演技」で、よもや「地」ではあるまい。) 女優陣も重要なのだが、まず、クリシュネードゥ役のバーヴァナは、例によって可愛かったが、信じるべきときに疑い、疑うべきときに信じるというトンチンカンな妻を、本人はまったく自分のトンチンカンさに気付かないという無邪気さで演じていた。 シュリヤー役のサムちゃんは、出番は少なかったが、ケーララの中流階級のプチ・マダムというのはこんな感じなのかなぁ、と思わせるようなエレガントさだった。 サリーナ役のVandanaさんについてはよく分からなかった。 私的に最も瞠目したのは、ダイアナ役のリーマ・カリンガルだった。ボリウッド版ではビパーシャー・バスが演じていたセクシーさが勝負の役なのだが、これがまた実に見事に色っぽさを出しているのである。 とにかく、本作での彼女のフェロモンの発し方というのは尋常じゃなく、「人」というよりは、花粉を出しまくる3月の「杉」といった感じだった。 激しくエキゾチックな彼女に対して、私は「激ゾチック美女」という称号を与えたい。【Kerala Cafe】(09)と【Neelathaamara】(09)でも限られた出番で強い印象を残していたが、マラヤラム映画界がこういうコマを手にしたのは大きいだろう。(デビュー作の【Ritu】を見逃したのが悔やまれる。) ダイアナの登場シーンの動画はこちら。(こんなナイトクラブがほんまにケーララにあるんかいな?) http://www.youtube.com/watch?v=MsPuLUfyGh0 ◆ 結語 理屈抜きに楽しめる純インド的コメディーということで、観て損はないと思う。私は未見だが、もしかしたら、ボリウッド版の【No Entry】と併せて観ると、面白い発見があるかもしれない。 ・満足度 : 3.0 / 5 |
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【Mummy And Me】 (Malayalam)
このマラヤラム映画【Mummy And Me】は、レビューの評価がそう高くないにもかかわらず、観に行ったのは、アルチャナ・カヴィさんに対する愛ゆえである。まったく、デビュー作の【Neelathaamara】(09)で見せた、土手に生えるつくしんぼうのような素朴な可愛らしさに参ってしまった私は、この2作目を待ちわびていたわけである。 しかし、アルチャナさんよりもっと私の気を引いたのは、この映画は母と娘のジェネレーション・ギャップを描いたものだ、という触れ込みであり、これはもしやマラ... ...続きを見る |
カーヴェリ川長治の南インド映画日記 2010/06/21 01:25 |
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