カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Premism】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/04/07 22:56   >>

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 ラトナージャ監督のカンナダ映画。
 デビュー作の【Nenapirali】(05)で興行的にも批評的にも大成功を収め、一躍サンダルウッドの注目監督となったラトナージャだが、残念ながら、第2作の【Honganasu】(08)は不発に終わっている。しかし、【Nenapirali】効果は今だに生きているようで、3作目のこの【Premism】も期待作の一つに挙げられていた。
 【Nenapirali】は理屈の勝ったようなラブストーリーで、ちょっと引くところもあるが、きれいに作られており、私のお気に入りの1本でもある。そんな次第で、ラトナージャ監督には注目したいと思っていた。
 題名の「Premism」については、このアルファベット表記にぴったり一致するカンナダ語はなく、正確な意味が分からないのだが、もしかしたら「Prema(愛)」に英語の「−ism」をくっ付けた造語かもしれない。

【Premism】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Rathnaja
出演 : Amoolya, Chetan Chandra, Varun, Anant Nag, Avinash, Sunil Rao, Ashwath Neenasam
音楽 : Hamsalekha
撮影 : Ananth Urs, Gnanamurthy
制作 : Ajay Gowda

《あらすじ》
 マイソールに暮らす大学生のニティン(Chetan Chandra)とワルン(Varun)は、子供の頃から犬猿の仲で、何事においてもライバル意識を燃やしていた。ところが、ニティンの父(Anant Nag)もワルンの父(Avinash)も共に警察官で、非常に仲が良く、同じ官舎に住んでいた。父親たちは、やがて息子たちの間にも友情が芽生えるだろうと楽観していたが、ニティンとワルンの関係は改善しそうになかった。
 ある日、プラヴィーン(Ashwath Neenasam)という警官がベルガウムからマイソールに転勤となり、この官舎に引っ越して来る。彼にはアムーリヤ(Amoolya)というPUCに通う妹がいたが、ニティンもワルンもアムーリヤを見て惚れてしまう。二人は、例によって激しいアムーリヤ争奪戦を繰り広げるが、一向に埒が明かなかった。それで二人は、まず兄の意向を伺おうと、揃ってプラヴィーンの職場を訪れ、アムーリヤに対する気持ちを伝える。ところがプラヴィーンは、君たちが妹に惚れているのなら、他にも彼女に惚れている男がいるかもしれないね、と仄めかすだけで、まともに取り合わない。
 そこで二人はアムーリヤを呼び出し、それぞれ直接気持ちを告白する。だが彼女は、そんな二人に対し、まだベルガウムにいた頃の回想話を語って聞かせる。
 ・・・ある時、アムーリヤはパッチ(Sunil Rao)という男と知り合う。パッチは友人3人と詐欺行為を働いて生計を立てているような男だったが、アムーリヤに惚れてしまったため、それを隠して彼女に接近する。アムーリヤもパッチの人柄に興味を示し、やがて二人は恋仲となる。だが、パッチの嘘がばれてしまい、アムーリヤは失望する。改心したパッチは職を得、ヨーロッパに出稼ぎに行くことになる。アムーリヤもそんなパッチを赦す。ところが、次にインドに帰省したパッチにはヨーロッパ人の妻がいたのである。・・・
 アムーリヤはニティンとワルンに対し、気まぐれな愛は信じないと言う。そして、身近な人とさえ親しくできない人が真剣に人を愛することができるはずがないと言って、私を愛する前に、まずはあなたたち二人が友達として仲良くなるようにと要求する、、、。

   *    *    *    *

 これまたカンナダ映画らしい(とも言える)、風変わりな作品だった。
 事前に公開されたスチール(例えば、上の写真)やビデオ・クリップからすると、純粋なラブストーリーと予想されたのだが、まったく違っており、「ロマンス」と言える展開はほとんどなく、メッセージ色の強い教訓劇みたいな作品になっていた。
 前半のニティンとワルンによるアムーリヤ争奪戦は典型的な三角関係ドラマの展開なのだが、当のアムーリヤはてんから二人に対して恋愛感情はなく、ここでは何事も起こらない。後半の回想シーンでのアムーリヤとパッチのエピソードにはロマンスらしいムードがあるのだが、しかしこれは、アムーリヤがニティンとワルンを諭すために考え出した作り話だったという、ずっこけるオチがラストで明かされるのである。

 過去2作の内容からすると、どうもラトナージャ監督の中心テーマは「調和の取れた人間関係から見た恋愛や結婚のあるべき形」ということのようだ。簡単に言うと、愛というものは確かに男Aと女Bを結びつける原理にはなるが、そのために友人Cが傷付いたり、家族との不和を生んだりするような、人間関係の破壊をもたらすこともある。しかし、あるべき恋愛や結婚というのは、気まぐれな愛、エゴイスティックな愛とは違った次元の愛に基づくべきで、それは他の人間関係とも調和するものだ、という信念だと思う。
 この【Premism】もそういう内容で、ヒロインのアムーリヤは、自分のせいで馬鹿馬鹿しい対立をしている二人を見て、私のために他人を傷付けたり貶めたりする人に私を愛する資格はない、と訴えるのである。これなどは、ラトナージャ監督の恋愛ごっこに浮かれている若者たちに向けたメッセージだろうし、アムーリヤは劇中のキャラクターというよりは、ほとんど監督自身の口となっているようだ。

 レビューによると、本作はおおむね好意的に評価されており、それなりに面白いのだが、ただ、こういう「生硬な」というか、むき出しの形で道徳的意見を表明した作品が、映画作品として良い出来かというと、私はちょっと疑問に感じる。少なくとも、娯楽映画として酔えるものをあまり感じなかった。

 ただ、【Jhossh】(09)を観たときも感じたことだが、映画というメディアを通して馬鹿正直にモラルを語るというのは、カンナダ映画では常識的なことなのかもしれない。
 【Jhossh】にしても、この【Premism】にしても、表向きは若者映画なのだが、最後には渋い「説教」が待っているという、まるで何かのサマーキャンプに参加したら、それは宗教団体の主催するもので、バーベキュー・パーティーやキャンプ・ファイヤーなどの楽しい娯楽の後に、お坊様の法話が待っていた、といったようなものだ。
 こういう映画手法は、私はどうかなぁと思うのだが、カンナダ人が良しとするなら、一つの文化として捉えていくべきだろう。

◆ パフォーマンス面
 本作の真の主役は監督のラトナージャだと思うのだが、彼の考えを伝える巫女の役目として、アムーリヤが最も重要な登場人物となる。
 演じたアムーリヤはまだ10代の女優で、本作のアムーリヤ役と実年齢はぴったり重なる。子役として活躍し、タミル映画【Kaadhal】(04)のカンナダ版リメイク【Cheluvina Chittara】(07)でヒロイン・デビューした人なのだが、演技もダンスもまだまだ未熟。ただ、ラトナージャ監督は期するところがあるらしく、アムーリヤを大人の女優に脱皮させようと、本作で彼女に対していろいろなことに挑戦させている(例えば、セリフもセルフ・ダビングさせている)。
 まだ子供っぽい顔立ちなのだが、大人になって表情が引き締まってくると、意外と良い女優になるかもしれない。

 ニティン役のチェタン・チャンドラは【PUC】(08)でデビューした人で、たぶんこれが2作目。ワルン役のワルンは新人。
 この2人は今風のハンサム・ボーイで、体もしっかり鍛えているのだが、俳優としてどこまで成功するかは分からない。とにかく、次々とデビューする新人について私も覚えきれなくなっているので、この2人についても、大物になった暁に多くを語ることにしよう。
 (写真下:左よりVarun、Amoolya、Chetan Chandra。)

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 もう一人、忘れてはならないのは、パッチ役のスニル・ラオだ。
 と言っても、私はプレム監督の【Excuse... Me】(03)に出ていた彼しか知らないはずだが、こういうクセのある役は彼にはよく似合う。

◆ テクニカル面
 【Nenapirali】も【Honganasu】もハムサレーカの音楽が売り物だった。本作もハムサレーカの担当なのだが、前2作ほどの出来ではないようだ。
 1曲、大きな滝で撮影した音楽シーンがあり、印象に残るものだが、それはチャッティースガル州にあるティーラトガル滝(Teerathgarh falls)らしい。
 動画はこちら。(危ないんですけどね、この撮影。)
 http://www.youtube.com/watch?v=Vv8OohgkAIg

◆ 結語
 本作は、ラトナージャ監督がインド(カルナータカ州)の若者に向けてメッセージを発したような作品で、日本人が観てもほとんどピンと来ないだろう。映画的にも面白い部分が少ないので、私からは特にオススメしない。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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