カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Ullasa Utsaha】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/05/17 03:25   >>

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 ガネーシュ主演のカンナダ映画。
 本作品は2008年公開のテルグ映画【Ullasamga Utsahamga】のリメイク。
 【Ullasamga Utsahamga】は、なぜか邦人テルグ映画ファンの間でもほとんど話題にされないが、現地ではかなり観客を集めた大ヒット作。私は劇場で観ることができなかったが、テルグ人に勧められ、DVDで鑑賞して気に入り、いつかどこかで触れてみたいと思っていた。
 監督したA. Karunakaranは、【Tholi Prema】(98)や【Happy】(06)などのヒット作のある人で、趣向のあるロマンス映画の作り手として知られている。【Ullasamga Utsahamga】も、傑作・衝撃作というほどのものでは全然ないのだが、都市部の若者層にアピールするような、コミック映画とも呼び得る近ごろのテルグ映画のトレンドを特徴付ける作品の一つとして、一顧の価値はあると思う。(ちなみに、現在公開中で、ヒットしているプラバス主演の【Darling】もカルナカラン監督の作品。)

 ところで、【Ullasamga Utsahamga】で注目すべきもう一点は、ボリウッド女優のスネーハ・ウッラールがヒロインを演じていることだ。
 スネーハ・ウッラールといえば、「アイシュワリヤ・ラーイ似」の外見の持ち主として大いに話題になったが、その割に女優としての資質に乏しく、ボリウッドでは大した仕事をしないままテルグ映画デビューとなった。ところが、どんな女神が微笑んだのか、この【Ullasamga Utsahamga】では批評的にも興行的にも成功し、‘Santhosham Film Awards’で最優秀新人女優賞まで獲ってしまった。おそらく彼女のキャリアの中では唯一の成功作だと思われるが、演技の巧拙は別として、確かに印象に残るヒロイン像ではあった。(彼女は先日紹介した【Simha】にも出ていたが、気の毒にも、あれはまったくのミスキャストだった。)

 実は、ここで私がスネーハ・ウッラールについて言及した真意は、女優スネーハ・ウッラールそのものというより、彼女の出自について注目してもらいたかったからだ。
 アイシュワリヤ・ラーイやシルパ・シェッティ、ディーピカ・パドゥコーネなどがカルナータカ州南西岸に出自を持つことはよく知られているが、以前、他にもこの地域に縁のある美人女優はいないかしらと探っていたときに、「アイシュワリヤ似」で「Ullal」という姓から、もしやと思い調べてみたら、やはりスネーハ・ウッラールの家族がカルナータカ州のマンガロール出身だということが分かった(Ullalはマンガロール南部の町)。
 それだけのことなのだが、しかし、アイシュワリヤやディーピカ、それにこのスネーハ・ウッラールと、どことなく似た面々を眺めていると、彼女らのエキゾティック美が特定のコミュニティー(例えば、バント・コミュニティー)によるというよりも、この地域の人々が歴史的に内外から受け継いで来たDNAによるものなのかなぁ、とも思え、そうすると、この地域からまた第二、第三のアイシュワリヤやディーピカが現れる可能性がある、というロマンも湧く。
 さらに突っ込むと、スネーハ・ウッラルとその家族がデーヴァディガというコミュニティーに属していることにも興味を覚える。
 デーヴァディガ(Devadiga)とは、ダクシナ・カンナダ(カルナータカ州南西部)に起源を持ち、ヒンドゥー寺院の音楽を担って来たコミュニティーで、ブータ儀礼やヤクシャガーナなど、この地方固有のディープな文化とも関係の深い人々らしい。私がこの間から有望なカンナダ映画の音楽監督として紹介しているManikanth Kadriと、その父で著名なカルナーティック音楽のサックス奏者であるKadri Gopalnathもこのコミュニティーに属している。
 もっとも、スネーハ・ウッラール自身は湾岸生まれのムンバイ育ちで、祖先の地マンガロールへは子供のころに行ったきりらしいので、デーヴァディガ本来の文化・習慣に馴染んでいる可能性は低く、デーヴァディガであることと女優であることは彼女の場合ほとんど関係がなさそうだ。ただ、コミュニティー面から見た場合、こうした集団には芸能に秀でた才能が多く潜んでいるかもしれず、バントが映画産業界で活躍する人材を多く輩出したように、このデーヴァディガからも、スネーハ・ウッラールやカドリ父子の活躍に刺激されて、これからタレントが出て来る可能性もあるのである。
 (写真下:ヒンディー映画【Lucky】(05)でデビューした頃のスネーハ・ウッラール。自宅での撮影で、どうやらスッピンのようだ。このぎくっとするエキゾティック美があまり銀幕で生かされていないのが残念だ。Devadiga.comより勝手転載。)

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 さて、前置きが長くなりすぎたが、この【Ullasamga Utsahamga】のカンナダ版リメイク【Ullasa Utsaha】に話を移すと、これはオリジナルで主役を務めたヤショ・サーガルという俳優(実はカンナダ人)がガネーシュの友人で、フロップが続いたガネーシュに対し、「これはお前のイメージにぴったりだから、このリメイクをやったら」と勧めたもの。本来は去年のうちに公開されるはずだったが、ガネーシュが自家プロダクション制作の【Maleyali Jotheyali】の先行公開にこだわったため、今年までずれ込むことになったらしい。

【Ullasa Utsaha】 (2010 : Kannada)
台詞・監督 : Devaraja Palan
出演 : Ganesh, Yami Gautham, Rangayana Raghu, Thulasi Shivamani, Preethi Chandrashekar, Sharan, Sadhu Kokila, Kavitha
音楽 : G.V. Prakash Kumar
撮影 : Seetharam
制作 : B.P. Thyagaraju

《あらすじ》
 少女マハーラクシュミは早くに母を亡くし、意地悪な継母(Kavitha)に育てられていた。ほどなく大好きな父も死に、寂しい日々を過ごす中、いつも励まし、助けてくれたのは近所に住むバーラジ少年だった。だが、バーラジもある日突然、行き先も告げずに引っ越してしまう。やがてマハーラクシュミは成人するが、継母は彼女に遺された遺産を狙い、勝手に結婚相手を決めてしまう。幼いころのバーラジの思い出が忘れられないマハーラクシュミは、この縁談を嫌って家出する。
 バンガロールに暮らすプリータム(Ganesh)は、友人たちと好き放題をやっているお気楽な若者で、いつも父(Rangayana Raghu)を困らせていた。だが、母(Thulasi Shivamani)と義姉(Preethi Chandrashekar)はそんな彼を可愛がっていた。
 ある日、プリータムはマハーラクシュミ(Yami Gautham)と出会い、一目惚れする。彼はなんとかマハーラクシュミの気を引こうとするが、彼女はまったく靡かない。それもそのはず、マハーラクシュミは幼馴染みのバーラジ以外愛することは考えられず、必ずバーラジと再会できると信じていたからである。
 そんなある日、故郷の継母とその兄弟がマハーラクシュミの居場所を探し出し、連れ戻しにやって来る。だが、その時はプリータムが警察を呼んだため、継母らは引き下がる。
 そうこうしているうちに、故郷の屋敷で働いている使用人がマハーラクシュミに会いに来、バーラジからの手紙を手渡す。彼女は歓喜し、早速コルカタにいるバーラジに会いに行くことにする。
 プリータムは義姉からマハーラクシュミのことを諦めないよう励まされる。しかし、彼女の気持ちが堅いことを悟ったプリータムは、父の希望に従い、コルカタにいる義兄の許で働く決意をする。
 だが、プリータムとマハーラクシュミは偶然同じコルカタ行きの列車に乗り合わせる。ここから二人の珍道中が始まるが、なんとかコルカタに到着し、プリータムはマハーラクシュミをバーラジに会わせる。
 数日後、バーラジの家に継母らが乗り込んで来る。継母はマハーラクシュミを連れ戻そうとするが、バーラジの父が資産家なのを知り、手のひらを返すように二人の結婚を認める。
 あれよと言う間に結婚式の準備が整い、前夜祭が行われ、プリータムやマハーラクシュミの友人も出席する。だがその場で、すっかり酒に酔った使用人がある重要な秘密を暴露する、、、。

   *    *    *    *

 ガネーシュはネパール移民の息子で、カンナダ映画界には特に縁故もなかったはずだが、そんな彼が‘ゴールデン・スター’と呼ばれるまで成功した裏には、やはり人脈・顔の広さがあったのだろう(実際に顔の面積も広いのだが)。この場合、ヤショ・サーガルとその父(【Ullasamga Utsahamga】のプロデューサー)と親しくしていたことが幸いしたようだ。ヤショくんが勧めた言葉のとおり、本作はガネーシュにぴったりのロマンティック・コメディーだった。

 例によって、オリジナルに忠実な作りのリメイクで、オリジナルが面白かっただけの面白さは保持している。しかし、ストーリーの運び方やテンポ、音楽などから受ける印象は完全にテルグ映画で、そこにガネーシュがいるというのがなんだか違和感だった。
 もちろん、ヒーローとヒロインが変わっている分だけ、映画の持つイメージもずいぶん変わっているのだが、質的に落ちてしまった感はない。オリジナルと大きく違っている点は、コメディー・シーンが大幅にカットされていることだが、実はオリジナルのスニル、ヴェーヌ・マーダヴ、ダルマワラプ・スブラマニヤムの出番はややくどかったので、これは賢明な措置だったと思う。

 ヒーローがお助けマンとして、ヒロインを彼女が愛する人の許に送り届けるという話で、途中からロードムービー仕立てとなり、ちょっと【Jab We Met】(07)に似た展開。しかし、本作で強調されているのは、ヒロインが子供のころから抱いていた「愛着」の感情を脱皮し、本当の愛とはどういうものかを悟るということで、【Jab We Met】とはずいぶん違っている。併せて、無責任なお気楽者のヒーローが、唯一責任のある行動(つまり、ヒロインを無事に男の許に送り届けるという)を取り、次第に彼自身が成長していく姿も描かれている。
 ストーリーはほどよくヒネリが効いていて、最後まで楽しめる。

◆ 演技者たち
 ガネーシュについては特に何も言うことはない。一時はアクション映画の領域に足を踏み入れ、失敗した彼だが、得意なラブ・コメということで、水を得た魚状態だった。
 テルグ版オリジナルとの比較では、ヤショくんの「何じゃ、こいつは!」という不可解キャラのほうに軍配を上げたいが、ガネーシュがまずいというわけではない。
 それにしても、ガネーシュの役名はなぜこうも「プリータム」が多いのだろう?

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 ヒロイン、マハーラクシュミを演じた女優はYami Gauthamという人。詳細は知らないが、北インドのテレビ女優らしい。(【Yeh Pyar Na Hogakam】というヒンディー語の人気連続テレビドラマでヒロインを務めている人でした。)
 きりっとした美人で、印象は悪くなかったが、女優としての面白みは欠けるかも。演技的にはまずまずだが、ダンスはからっきしだった。

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 このところ、南インドに登場する新顔にはダンスの下手な人が多く、ダンスができるということは俳優としての徳目であるはずなのに、まるでいかにダンスができないかということを競い合っているかのようだ。インド映画がミュージカル形式を保持している以上、これは由々しき事態なので、自覚的にダンススキルを磨いてほしいものだ。

 脇役陣では、主人公の母役のトゥラシ・シヴァマニと義姉役のプリーティ・チャンドラシェーカルが面白かった。これはテルグ版ではスダーとサティヤ・クリシュナンが演じていたもの。
 (下:左がThulasi Shivamani、右がPreethi Chandrashekar。)

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 他に、ヒロインの女友達ギータを演じた女優も印象的だったのだが、例によって名前は分からない。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽はA.R.ラフマーンの甥、G.V.プラカーシュ・クマールの担当。サンダルウッドでの初仕事だが、そもそもテルグ版オリジナルも彼の担当だった。
 オリジナルから5曲をそのまま使い、2曲は新曲らしい。なかなか楽しい曲を揃えている。

◆ 結語
 テルグ・ヒット作をガネーシュ主演でそつなくまとめたリメイク作品ということで、ヒットは堅いだろう。十分楽しめるものだが、どうせならテルグ版オリジナルの【Ullasamga Utsahamga】のほうを推しておく。

・満足度 : 3.0 / 5
 

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【Aenoo Onthara】 (Kannada)
 ‘ゴールデン・スター’ガネーシュ主演のカンナダ映画。  しばらく不振にあえいだガネーシュだが、昨年末公開の【Maleyali Jotheyali】がまさかのフィルムフェアー賞(カンナダ・カテゴリー)最優秀作品賞受賞、ガネーシュ自身も最優秀主演男優賞を獲得し、息を吹き返したかに見えた。ところが、続く【Ullasa Utsaha】はぱっとせず、すんなりとは上昇気流に乗り切れないようだ。  【Ullasa Utsaha】はりメイク作品だったが、この【Aenoo Onthara】も200... ...続きを見る
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2010/11/17 00:24

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