カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Naanu Nanna Kanasu】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/05/20 01:07   >>

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 【Antharathma】、【Prithvi】、【Ijjodu】、【Ullasa Utsaha】と、まずまずのカンナダ映画が続いたおかげで、再びカンナダ番をやっていく意欲が蘇った私であるが、今回紹介する【Naanu Nanna Kanasu】も良さげな話題作だ。
 何が話題といって、あの有名な俳優兼制作者のプラカーシュ・ラージが監督としてデビューするということだが、その初監督作品になんでカンナダ映画を選んだのか、その真意はここでは問わないことにする。
 ちなみに、プラカーシュ・ラージはカルナータカ州出身で、本名はプラカーシュ・ライだというのはご存知だと思うが、カンナダ人は誰も彼のことを「ラージ」とは呼ばないので、私も今回はカンナダ仕様に従って「プラカーシュ・ライ」を使うことにする(本作のクレジットでもPrakash Raiとなっていた)。

 本作品はオリジナルではなく、ラーダーモーハン監督のタミル映画【Abhiyum Naanum】(08)のリメイク。これはテルグ語ダビング版【Akasamantha】(09)も作られ、私はこちらを劇場で観たので、このブログにも鑑賞記を上げておいた。
 タミル語版オリジナルの【Abhiyum Naanum】は、まさにこのプラカーシュ・ライが制作したもので、主要登場人物も演じていたが、このカンナダ版【Naanu Nanna Kanasu】でも制作と出演(同じ役)、加えて監督をこなしている。

 実は、本作の制作が発表された時点では、ヒロインにラミャが使われる予定だったが、彼女がギャラの安さに腹を立てて降りてしまったため、まだキャリアの浅いアムーリヤの起用となった。しかし、これはタミル版オリジナルではトリシャがやっていた役で、また彼女のプレゼンスが素晴らしかっただけに、ここはぜひともサンダルウッドの看板女優ラミャで攻めてほしかった。私的にはラミャのむちむちっとした、ほとんど猥褻物になりそうな学童姿を楽しみにしていたので、とても残念なのだが、しかし逃げてしまったものは仕方がない、ここはアムーリヤの健闘に期待するとしよう。

 「Naanu Nanna Kanasu」は「私と私のカナス」という意味。「カナス」の意味は「夢」だが、本作ではヒロインの役名でもある。

【Naanu Nanna Kanasu】 (2010 : Kannada)
監督 : Prakash Rai
出演 : Prakash Rai, Amoolya, Sithara, Achyuth Kumar, Kawaljith Singh, Rajesh, Veena Sundar, Ruthu, Sihi Kahi Chandru, Baby Krithika, Ramesh Aravind
音楽 : Hamsalekha
撮影 : Anant Urs
編集 : Harsha
制作 : B. Suresh, Shailaja Nag, Prakash Rai

《あらすじ》
 ラージ・ウータッパ(Prakash Rai)はクールグで茶園を営む実年男。ある朝、山道をウォーキングしているときに、小さな娘を連れたジャヤント(Ramesh Aravind)という男に会う。ウータッパはその女の子を見ているうちに自分の娘カナス(Amoolya)のことを思い出し、ジャヤントに思い出話を聞かせる。
 ・・・
 カナスはウータッパと妻カルパナ(Sithara)の間にできた一人娘。ウータッパはカナスに溢れんばかりの愛情を注ぎ、片時もそばから離さないよう育てていたため、彼女が幼稚園に入るときは大騒ぎ。入園の日に彼はぽろぽろ涙を流す。
 カナスが10歳のとき、彼女は学校の近くにいた乞食の男(Achyuth Kumar)を家に住まわせるようにと、だだをこねる。ウータッパは当惑するが、その乞食が意外に頭の良い男だったので、ブリジェーシュ・パテルという名前を与え、使用人として使うことにする。カナスはパテルを気に入り、家族が高級ホテルで食事するときも一緒に連れて行ったので、パテルはカナスのことを「私の母だ」と称える。それを見て、ウータッパは娘に一目置く。
 カナスは大きくなると、それまで父が車で学校まで送り迎えしていたが、自転車で通学したいと言い出す。ウータッパはしぶしぶ承諾するが、初自転車登校の日、心配のあまり車で後ろをつける。それに気付いたカナスは「私は自分が何をしてるか、分かってるの」と、父の援けを断る。ウータッパはショックを受ける。
 カナスは地元の大学を卒業する。そして、MBAの勉強のためにデリーへ行きたいと言い張る。ウータッパは猛反対するが、カルパナは賛成したので、彼も承知せざるを得なくなる。
 2年の勉強期間を終えて、カナスが実家に帰って来る。ウータッパは大喜びするが、それも束の間、カナスに「結婚したい人がいる」と告げられる。ウータッパは激怒し、カナスやカルパナが駅まで「フィアンセ」を出迎えに行く際も、家に残る。そして、やって来たフィアンセがジョーギンダール・スィン(ジョーギ:Kawaljith Singh)という名の、頭にターバンを巻いたスィク教徒の男だと分かり、ウータッパはのけ反る。
 ジョーギは若いながら非常に優秀なジャーナリストで、好人物だった。にもかかわらず、ウータッパは二人の関係を肯定できず、不自然な態度を取ったため、カナスは父に対して「失望した」と言う。だが、ウータッパもジョーギの人物像を知るにつれ、カナスの信念を理解するようになる。
 ほどなく、ジョーギの親類や関係者が大挙してやって来る。ウータッパの家はすっかりパンジャーブ州と化し、てんやわんやの中で結婚の準備が始まる、、、。

   *    *    *    *

 素晴らしい出来だった。
 プラカーシュ・ライほど映画業界での経験が豊富な人なら、また、自身が制作した作品のリメイクであるなら、監督としてもある程度の水準のものを持って来ると予想できたが、その予想を上回る、隅から隅まで丹念に作られた作品だった。

 プラカーシュ・ライには実際に5歳と15歳になる娘がいるのだが、その親子関係がどんなものかは私は知らない。ただ、タミル語版オリジナルの【Abhiyum Naanum】を制作・自演した動機には、やはり自身の娘との関係があるらしく、この物語は彼にとって特に「思い入れ」の強いものだと考えてもいいだろう。その思い入れの強さがカンナダ語版リメイクをも生み出したようで、本作は、父と娘の関係のように、監督プラカーシュ・ライの愛情がたっぷり注ぎ込まれたかのような作品となっている。
 (写真下:「一応、監督してま〜す」の図。)

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 もっとも、映画の作りそのものはオリジナルに忠実なリメイクで、ストーリーもメッセージも変わりはない。かといって、手抜きというわけではなく、冒頭シーンを見ただけで、本作がヒット映画の安易なコピー・リメイクでないことが分かる。基本は同じなのだが、随所に考えて再構成した跡があり、こっちがオリジナルでは?と思えるほどの生命力が感じられるのである。リメイクの方法にもいろいろあるだろうが、本作はリメイク映画の一つの手本となるような作品だと思う。

 さて、上で「オリジナルに忠実なリメイクで」と書いたが、タミル語版とテルグ語版のどちらを基にカンナダ語版を作った?という問いかけがこれまた興味深い。というのも、タミル版(そもそものオリジナル)とテルグ版(そのダビング版)とでは、ずいぶん違っているからである。
 私はテルグ版【Akasamantha】を観たとき、タミル版オリジナルとの異同は、せいぜい父親が娘の思い出話を語る相手(タミル版ではプリトヴィラージ、テルグ版ではジャガパティ・バーブ)が違う程度だろうと踏んでいた。ところがどっこい、後にタミル版【Abhiyum Naanum】をDVDで鑑賞した結果、テルグ版はオリジナルを大幅に編集し直したもので、もはやダビング版の域を超えて、改造版と呼び得るものであることが分かったのである。
 どこがどう違うかはここでは触れないことにして、上映時間だけ記しておくと、タミル版オリジナルが約2時間25分あるのに対し、テルグ版は約1時間55分にまで縮まっており、この一点だけでいかに大胆に鋏が入れられたか想像できるだろう。しかも、このカット・編集の仕方が絶妙に上手く、娯楽作品として気軽に鑑賞するだけなら、テルグ版のほうがはるかに努力が要らない。

 ところが、じゃあ、タミル版は問題ありかというと、これがそうでもなく、さすがに30分もカットすると、味のある台詞やジョークのいくつかが落ちてしまい、勿体ないなぁという気がする。
 しかも、タミル版は登場人物の「声」、特に母親を演じたアイシュワリヤの声が素晴らしいのである(たぶん彼女の地声だろう)。タミル版のDVDを観たときの最大の驚きがこれなのだが、彼女のドスの利いた声とぞんざいなセリフ回しを聞いて、ラーダーモーハン監督がこの父・母・娘の三位一体をどんな家族として描きたかったのか、一瞬にして理解できた。ところが、テルグ版では普通のオバサマの声になっており、それが鮮やかには浮かび上がらないのである。元乞食の使用人の声も、タミル版はぼそぼそとした情けない声が滑稽なのだが、テルグ版では妙に張りのある声に変わっており、旨くないと思った。
 細かい話のようだが、声一発でこれだけ作品の印象と理解が変わるとは、私にも驚きだった。やっぱりオリジナルは観ておくものだ。

 カンナダ版は基本的にテルグ版に沿っている。しかし、テルグ版でカットしたシーンを少し復活させ、情感たっぷりに歌い上げる長めの音楽シーンを入れたせいで、上映時間が2時間20分にまで延びている。

◆ 演技者たち
 監督として良い仕事をしたプラカーシュ・ライだが、もちろん演技者としても父親役を完璧に演じている。気のせいだと思うが、今回のセリフは彼にとってほとんど母語とも言えるカンナダ語ということで、心なしかリラックスして演技しているようにも見えた。
 それにしても、俳優としては国家映画賞主演男優賞まで獲得し、プロデューサーとしてもまずまずの業績を上げ、今回、監督としても成功し、しかも近々結婚(再婚)までするという、今まさに人生の絶頂期にあり、今後は堕ちて行くしかないというプラカーシュ・ライだが、まずは後妻と娘たちの関係がうまく行き、この映画が本当にプラカーシュ・ライの「夢でした」なんてことにならないよう、お祈りする。
 (写真下:妻カルパナ役のシータラと。)

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 娘カナス役のアムーリヤは、女優としての成長の跡がうかがえ、頑張りは評価してあげたいが、オリジナルのトリシャと比較してしまうと、悲しいものを感じる。彼女はまだ幼すぎて、意志の強いカナスをやるには頼りなかった。
 それで、ちょっと工夫がされていて、カナスがカレッジに上がるまでの場面ではアムーリヤ自身がアフレコしているが、それ以降ではしっかりした声優の声に変わっており、成長したという感じを出していた。

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 脇役陣では、母親カルパナ役のシータラはOK。オリジナルのアイシュワリヤよりはやや品の良い感じの母親像だった。
 特別出演のラメーシュもエレガントな演技だった。
 注目のジョーギ役はKawaljith Singhという人がやっていたが、これはオリジナルのガネーシュのほうが光っている。
 オリジナルでは抜群に印象的だった元乞食の使用人役はアチュユタ・クマールで、こちらも上手いところを見せていた。(写真下)

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 ちなみに、この元乞食男の名前は、オリジナルでは「ラヴィ・シャーストリ」、カンナダ版では「ブリジェーシュ・パテル」と、どちらも元クリケット選手の名前が使われている。ブリジェーシュ・パテルはバンガロールに縁の深い人なので、カンナダ版ではこちらが使われたのだろう。

◆ 音楽・撮影・その他
 ハムサレーカの音楽がまた完璧。タミル版のヴィディヤサーガルの曲に比べるとオーソドックスな感じだが、映画の内容によく合った、じっくりとゆったりと歌い上げるような美しい曲だ。

 撮影はアナント・アラスという人の担当。オリジナルを凌駕する美しい映像で、サントーシュ・シヴァンがカメラを回しているのでは、と思ったほどだ。

◆ 結語
 リメイク作品の場合、たいてい「よくできたリメイクだが、、、、オリジナルを観ておけばいいだろう」と評している私だが、今回はそうでもない。主演女優のギャップにさえ目をつぶれば、映画作品として同じように楽しめるだろう。
 プラカーシュ・ライの映画人としての能力の高さ、意外に純な一面がうかがえる作品として、お勧めしたい。

・満足度 : 3.5 / 5
 

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