カーヴェリ川長治の南インド映画日記

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zoom RSS 【Nooru Janmaku】 (Kannada)

<<   作成日時 : 2010/06/01 00:51   >>

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 ナーガティハッリ・チャンドラシェーカル監督のカンナダ映画。
 ナーガティハッリ監督は、カンナダ映画界では「先生」の異名をとる高名な監督で、娯楽映画に社会問題を組み込んだ知的な映画の作り手として知られている。本作でも、リーマン・ショック以降、インド経済にも大きな打撃を与えた世界不況の問題が取り上げられているとの触れ込みだった。
 ところで、ナーガティハッリ監督は、知名度と話題性の割には【Amrithadhare】(05)以降ヒット作が出ておらず、過去の人になってしまったか、との観測もある。本作では、サンダルウッドで今最も勢いのあるアインドリタ・レイをヒロインに起用し、ヒット狙いと行きたいところだった。だが、皮肉にも「先生」と「アイドル女優」はよっぽど相性が悪かったようで、撮影中にナーガティハッリ監督がアインドリタを引っ叩くという事件が起きてしまった(記事はいろいろ面白いのが出回っているが、まずはこちらでも)。
 総合的に判断すると、非はアインドリタにありそうだが、しかし、監督がタカピー・アイドルに暴力を振るってしまったのはまずかった。映画は何とか完成・上映まで漕ぎ着けたが、この件が作品の出来に悪影響を及ぼしていないことを願う。

【Nooru Janmaku】 (2010 : Kannada)
物語・脚本・台詞・監督 : Nagathihalli Chandrashekhar
出演 : Santosh, Aindrita Ray, Adarsh Balakrishna, Sharan, Bhavya, Bank Janardhan, Veena Bhat, Mandya Ramesh, Karibasavayya
音楽 : Mano Murthy
撮影 : Santosh Rai Pathaje
編集 : Basavaraj Urs
制作 : Vinay Lad

《あらすじ》
 ヴィニヤス(Santosh)は優秀な建築デザイナーだが、ある日突然、会社を解雇される。これを機に彼は一念発起し、従兄のハヌマントゥ(Sharan)と共に自らの建築設計事務所を立ち上げる。
 ヴィニヤスは自分の片腕となるアシスタントを募集する。彼のモットーは「週末なし、休日なし、感情抜き、私情抜き、仕事、仕事、仕事!」だったため、求人広告にも「男性のみ」と記載していた。しかし、面接にドゥリシュティ(Aindrita Ray)という女性がやって来る。ヴィニヤスは断ろうとするが、デモに持って来た彼女のデザインが非常に素晴らしかったため、雇うことにする。
 ヴィニヤスとドゥリシュティのデザインはたちまちに評判となり、会社は次第に大きくなる。そして、ドゥリシュティの頑張りで、海外の優良顧客も獲得する。すべてが順風満帆に進む中、ヴィニヤスはドゥリシュティの3年契約が残り3ヶ月となっていることを知る。と同時に、自分が彼女を愛していることに気付く。
 ヴィニヤスは以前とは打って変わって、ドゥリシュティに感情的に接し始めるが、逆に彼女から「感情抜き、仕事、仕事!」とあしらわれる。彼はまた妹を使ってドゥリシュティの気持ちを探らせようとするが、うまく行かない。
 そうこうしているうちに、ドゥリシュティの退社の日となる。ヴィニヤスは彼女に自分の気持ちを伝えるチャンスをうかがうが、逆に彼女からフィアンセのジーワン(Adarsh Balakrishna)を紹介され、ショックを受ける。
 落ち込んだ彼はしばらく仕事をする気力も失うが、母(Bhavya)とハヌマントゥに励まされ、職場に戻る。だが、折りしも発生した世界不況のせいで、請け負ったプロジェクトのキャンセルが相次ぎ、不渡り手形もつかまされる。彼はとうとう会社の全社員を解雇せざるを得なくなる。
 局面を打開するため、彼は「国際建築コンテスト」に応募する。賞金は500万米ドルだった。最終10人に残った彼は、豪華客船「スタークルーズ」上で行われる本選に参加する。だが、そのライバルの中には、ドゥリシュティとジーワンのペアもいた。
 審査の結果、ヴィニヤスのデザインが見事1位となる。2位はドゥリシュティとジーワンのものだった。だが、授賞式の前日に、ヴィニヤスはジーワンがやはり不況のせいで深刻な経済問題を抱えていること、また、ドゥリシュティとジーワンが強く愛し合っていることを知る。
 翌日の授賞式で、司会者はヴィニヤスがよんどころない事情で受賞を辞退したことを告げ、優勝者としてドゥリシュティとジーワンの名前を発表する、、、。

   *    *    *    *

 各レビューの評価は軒並み低く、失敗作と見なされている。残念ながら、私が観た限りでも秀作だとは言えない。
 何がいけないかと言って、問題点はいろいろあるのだが、第一はやはり触れ込みにあった「世界不況」の問題がまったく浅薄にしか描かれておらず、こんなオート運転手でも知っていそうなネタだけでお茶を濁されるとは、誰もナーガティハッリ監督からは予想していなかっただろう。もちろん、ラブストーリーを見せるのがメインで、不景気の問題はその背景に使っただけとの言い訳もできるが、それなら「世界不況の問題は映画でも取り上げられるべきことだ」などと勿体ぶってあちこちのインタビューで答えないでほしい。
 かと言って、そのラブストーリーのほうも十分工夫を凝らした展開というわけではなく、コメディー・シーンはほとんど笑えなかった。(ナーガティハッリ監督はけっこうクリスピーなコメディーを作っていたものだが。)
 これはアインドリタとの確執が原因というわけではなく、間違いなく監督のストーリー作りと脚本がまずかったということだ。

 とは言うものの、無理から持ち上げるつもりはないが、私はこの作品にかなり感じてしまったのも事実だ。その感動ポイントはただの1点、サントシュくん演じるヴィナヤスのキャラクターに尽きるのだが、このバカなほどの「お人好し」加減に美しさを感じた。

 ちょっと遠回りになるけれど、、、ナーガティハッリ監督の作品を貫く思想というのは、総合して考えるに、「変化の中にあって永遠不変のものこそが貴く、それを見出す/見失わないことが重要だ」ということだと思う。
 彼の場合、変化というのはほぼ「インドにおける西洋化」ということになると思われるが、【America! America!!】(96)では、アメリカかぶれの風潮に対して、インドの大地に根を張って暮らすことが大切だと主張され、「大地」が不変なものの象徴だった。【Mathad Mathadu Mallige】(07)もそんな作品だろう。
 また、反西洋化ということで、【Paris Pranaya】(03)や【Olave Jeevana Lekkachara】(09)では、古来より受け継いで来たインドの文化や習慣こそが不変の価値を持つものとして重要視されていた。
 そしてもう一つ、「永遠の愛」(「愛の永遠性」と言ったほうが正確か)もナーガティハッリ監督の関心事となって来るわけで、【Amrithadhare】がその代表作で、タージマハルが「永遠の愛」のシンボルとして使われていた。この【Nooru Janmaku】も同じ系列の作品だと思う。

 「Nooru Janmaku」というのは和訳しにくい言葉だが、「nooru」は「百」で、「janma」は死んでまた生まれ変わる輪廻転生の一つ一つの生を意味する言葉。全体としては「100の生に亘って」とか、意訳して「100回生まれ変わっても」ぐらい意味になると思う。(結局は「永遠に」ってことなのだが。)
 本作のヴィニヤスは、ドゥリシュティとジーワンを見て、自分のドゥリシュティへの愛が叶わぬものであることを悟り、それが却って愛の永遠性に気付くきっかけとなり、1等の名誉と賞金を二人に譲ることにする。これは一見、犠牲のようにも見えるが、実は自分が得たものに対する対価で、賞を譲ったことを難詰する従兄のハヌマントゥに対して、ヴィニヤスは100回生まれ変わってもなくならないものを手に入れたと満足するのである。そして、人を愛することの価値を悟った彼は、確かな1本の命綱を手に入れたようなもので、そうなると、これまで彼がこだわって来た事柄が無意味に見えて来る。映画は、ヴィニヤスがハヌマントゥと子供のように無邪気に戯れるところで終わるのだが、ここには「休日なし、感情抜き、仕事、仕事!」と言っていたヴィニヤスの姿はない。
 自分の失恋体験を基にここまでまっさらになれる人物というのは、やっぱり超ド級のお人好しに違いないのだが、見ている私もさばさばっとした気分になった次第である。

◆ 演技者たち
 主役のサントシュくんは、ヴィニヤスのキャラクターにピッタリすぎる風貌。
 彼はこれまで脇役をこなして来た人だが、念願叶って初ヒーロー。張り切る気持ちが伝わって来る熱演だったが、今後も単独ヒーローとしてやって行くのは厳しいかな。
 (写真下:黒々とした髭剃り跡が特徴のサントシュくん。)

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 ドゥリシュティ役のアインドリタ・レイは、各レビューはこぞって評価しているが、私は平凡な出来だと思った。むしろ、何か体調でも悪かったのか、またはよっぽど裏方との相性が悪かったのか、いつになくブサイクなカットが目立った。
 大体、彼女は典型的な「メイク美人」で、バシッとメイクが決まってこそ可愛く見えるタイプの女優なのだが、下の写真の右側を見ても分かるとおり、本作では右目の下にむくみができ、それをメイクで隠せていないシーンが多かった(左側がノーマルな状態のアインドリタ)。やっぱり、報道されているとおり、夜遊びのしすぎが祟ったのかな?

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 ジーワン役のアダルシュという人はテルグ俳優で、【Happy Days】(07)や【Evaraina Epudaina】(09)などに出ていた人。ミスキャストだったかな。

◆ 音楽・撮影・その他
 音楽は、ナーガティハッリ監督作品のレギュラーとして、マノ・ムルティの担当。
 テーマ曲の‘Nooru Janmaku’は耳に残る名曲。だが、実はこれは【America! America!!】で使われた曲のアレンジ。参考に、新旧2ヴァージョンのYouTube動画を紹介しておく。
 【America! America!!】より http://www.youtube.com/watch?v=aG32Qhs_9_k
 【Nooru Janmaku】より http://www.youtube.com/watch?v=zTfgSA7S4do
 (こうやって比べてみると、旧ヴァージョンのほうが良いね。)

 映像は、【Jhossh】(09)と同じSantosh Rai Pathajeの担当で、異様に美しかった。
 海外ロケは主に香港、マカオで、バンガロールのプチ成金の興味をそそりそうな観光プロモーション的な撮り方だった。
 クライマックスの舞台に使われた客船「スタークルーズ」については、下記参照。
 http://www.starcruises.com/newweb/main.aspx

◆ 結語
 【Nooru Janmaku】は、ナーガティハッリ監督らしさが散見されるものの、全体としては内容不足、力不足な期待はずれ作。私個人的にはちょっと好きだが、特にお勧めする理由はない。

・満足度 : 2.0 / 5
 

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